アリアンロッド~ISを駆る冒険者~   作:アルシェス

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今回は一夏の専用機が登場します。
この話の一夏が白式を使うわけがない。


専用機、そして試合前

自宅通学の期間が終わり、今日から寮生活になったその日。

専用機が完成したとの連絡があったので、放課後アリーナのピットに来ていた。

 

「いや~、お久しぶりだね」

 

篝火が抜けた表情で手を振る。

おい、目の下に隈が出来てるぞ。

 

「じゃあほい、これが君の専用機、第三世代型IS[夏風]だよ」

 

コンテナが開くと、そこには灰色のISが鎮座していた。

専用機は搭乗者に最適化するまでは無骨なデザインだと聞いたが、そのとうりだな。

 

「さっそく装着してね、第一次形態移行(ファーストシフト)始めるから」

 

装着し、銃を打撃武器として使用する武術[銃衝術(じゅうしょうじゅつ)]の動きをしながら、

最適化が終わるまでの30分間待つ。

そもそも銃は拳銃にしろ長銃にしろ、取り回しの問題から

近接戦では剣やナイフに劣る。

そこで、その欠点を克服するために銃衝術が考案されたわけだが、

元々はマスケットなどの銃身が長い銃でやるものだった。

こっちでもイギリスなどで見ることができるな。

魔導銃でやる銃衝術は割と最近形を整えたのだがのだが、

やっぱり個人個人で違ってくる。

あくまで俗称でしかないんだよなこれ。

そして30分後、ようやく夏風が光り輝き、第一次形態移行(ファーストシフト)が完了する。

何とも特徴的な機体だった。

第三世代型なら背中あたりに浮いている非固定浮遊部位(アンロックユニット)が無い。

これはブースターや砲台といった、多種多様な機能を持つ部分なのだが、

俺が[瞬動術]を応用した動きをメインにした故に、

不要な品だと判断されたのかもしれない。

そして装甲も、触ってしまった第二世代型IS[打鉄]と比べればかなり少ない。

足は膝、腕は肘までしかないうえに、腰に申し訳程度のサイドスカートと

リアスカート部分があるだけ、後は頭にゴーグル状のバイザーがあるのみだ。

肘にはスパイク、足の装甲はブレードのように鋭い。

色は、灰色に空色が追加されたな。

そして、サイドスカートにはホルスターがあり、

そこに俺が注文した魔導銃の複製品が収まっている。

ついでにリアスカートにはシースがあり、ナイフが収まっている。

俺は魔導銃を構え、銃衝術と試射を試してみる。

少々違和感があるが、問題なく手になじみ、

反動もかなり再現されている。

 

「ここまで再現できるとは……」

「うん、苦労した甲斐があったね」

「ありがとうございます」

 

こういう時は素直に礼を言うべし。

これは最低限の礼儀だよな。

さてと、ついでに装備を確認しよう。

 

魔導銃の複製品ガンブレード[昇竜]×2

大振り片刃ナイフ形ブレード[狼牙]×2

小振り両刃ナイフ形ブレード[飛燕]×6

リロード用の各種弾丸と……ん?

 

「なんですかこの刀?」

 

もう一種装備があった。

白一色の刀型ブレードだ、勿論注文した覚えはない。

でもどっかで見たことがあるような………

 

「[雪片弐型]、お姉さんが使っていた刀の後続型さ

自身のシールドエネルギーを消費してバリアー無効化攻撃を繰り出し、

強制的に絶対防御を発動させる一撃必殺の武器だね」

「どうりで見たことあるわけか」

 

ISでの試合は、ゲームでいうHPであるシールドエネルギーを0にした方が勝つ。

絶対防御が発動すれば、シールドエネルギーを大幅に消費するので、

確かにこの武器は一撃必殺の威力を持っているだろう、だが……

 

「素人に自爆武器を渡されてもな……大して使い道ありませんよ」

「ああ、やっぱり?」

 

発動させるには自身のシールドエネルギーを消費する自爆武器だ。

下手すると使って負けました、なんて間抜けな結果になりかねない。

それに剣を捨てた俺には到底使いこなせる代物ではない。

今更剣を振るう気も無いしな。

 

「武器は完成速度重視して別部門に任せてたんだけど、

『織斑千冬の弟なら持つべきだ』って勝手にね」

「そこまで姉を求めるか……(!)糞姉の

要請もあったんじゃないですか?」

「ああ~、あったって聞いたね」

 

糞姉は俺に同じ道を歩んでほしい様だ。

お断りだし、それ以前に不可能だが。

 

「もっと短くできません?せめて小太刀くらいに」

「無理があるね、申請に時間がかかるから」

「外すのも?」

「ごめんね~」

 

これをつけたまま試合に出なければならないらしい。

ここまで来ると糞姉を本気で殴りたくなってきた。

余談だが、雪片を搭載すると拡張領域(バレスロット)と呼ばれる

武器を搭載できるスペースの容量を食潰されるそうだが、

夏風はいろいろ省いて余裕がるので、問題ないらしい。

 

__________________

 

さて、今日から寮生活になる。

一回どこぞの国の特殊部隊が襲撃してきたが、

全員残らず両腕の骨をへし折り、装備を剥いで下着だけにした後、

纏めて縛り上げて交番の前に転がしておいた。

いやいや、大量大量 。

剥いだ装備はエリンで使っていたベルトポーチに放り込んでおいた。

これも明久さんから餞別にもらったマジックアイテムで、

こっちで市販されているベルトポーチとサイズは変わらないが、

なんと車庫並みの容量を持っている。

剥ぎ取り品は闇に流してもいいんだが、使えるかもしれないので取っておこう。

家の食材も片づけ、ライフラインの停止も終了。

他にしなければならないものも終わっている。

 

「1023、1024、1025……ここか」

 

渡されたか鍵にあった番号は1025、今日からここで暮らすことになるのか。

そういや、しばらくは相部屋だって聞いたけど、同居人誰だ?

俺はドアをノックする。

 

「はい?」

「聞いてると思いますけど、今日から相部屋になるものです」

「い、一夏!?」

 

声の主はモップだった。

うげぇ、よりにもよって同居人かよ。

ドアを開けると、寝間着であろう浴衣姿のモップがベットに座っている。

シャワーを浴びた後なのだろう、ポニテを下した髪が湿っており、

肌も少しだが赤く火照っているのが妙に色っぽい。

だがそれはそれだ、俺の顔はみるみる不快に染まっていく。

 

「使ってるベットはどっちだ?」

「ま、窓側だ」

 

俺は扉側のベットに座り、備え付けのタンスに

下着とタオル、私服を放り込み、右腕についたリストバンド状の物を見る。

これが夏風の待機状態だ。

専用機なら、この様にアクセサリー状にして持ち運ぶことができる。

一応慣れが必要らしいんだが、あっさりできたな。

 

「お……お前が言ったのか?私が同居人がいいと……?」

 

モップが淡い期待が込められた声で尋ねるが、

 

「ほざくなドブス、なわけあるか」

 

俺は一蹴にする。

 

「おおかた糞姉が『同居させるなら幼なじみである篠ノ之のほうがいい』

とでも言ったんだろう、俺は知らん」

 

案外、糞兎も壱枚かんでるんじゃないだろうな。

妹には甘かったし。

顔も見たくない奴との同居など腹立たしいが、

まあしばらく我慢すれば一人部屋だ、それまで耐えればいい。

あの糞姉に抗議したところで聞きはしないだろうしな。

俺はモップに背を向け、ポーチから本を取り出して読み始める。

実はこの本、エルダーナンの言語で書かれているのだが、

既に習得済みの俺には問題なく読める。

 

「一夏、何があったんだ?」

「貴様に関係あるか」

 

話しかけるな、こっちは声を聞くのも不快なんだ。

 

「関係ないはないだろう!?私はお前の幼なじみだぞ!」

 

「幼なじみだからなんでも話せと?

ただ昔から親しかっただけの幼なじみの貴様に?

貴様に相手の全てを知る義務なんてあるか」

「し....しかし」

「それに言ったはずだぞ、『二度とその顔を見せるな』と

同室になっちまった以上最低限の付き合いはやってやるが

こっちは貴様の声を聞くのも不快なんだ、必要事項以外

話しかけてくるな、この汚れモップが

シャワー使わせてもらうぞ」

 

替えの下着とタオルを取り出し、俺はシャワー室に向かった。

 

________________

 

一夏が部屋を立ち去った後、私は悔しさで顔を歪めた。

 

「お前に何があったというのだ……一夏」

 

私にとって一夏はヒーローだった。

小学校の頃、私は剣道と腕っぷしの強さ、言葉遣いから男女と馬鹿にされ、

物を取られる、悪口を言われるなどのいじめを受けていた。

それを一夏が助けてくれたことがきっかけで、私は一夏に好意をよせている。

 

私にとってIS学園への入学は義務だった。

私が小学校の頃に転校したのも、篠ノ之束の妹だから狙われる危険性があるというもので

家族も同様の理由で離れ離れになってしまった。

家族を、一夏を奪ったISや姉を私は嫌悪している。

そんな時、一夏がISを動かし、IS学園の入学が決まった。

私はそれを運命だと思った。

今まで離れていた分一夏との時間を取り戻そうと、取り戻せると思った。

しかし、実際は違った。

 

乱暴な物言いに捻くれた態度。

あの優しかった面影はどこにも見当たらなかった。

あんなのは一夏ではない、そうであるはずがない。

何かの原因で狂ってしまったのだ、そうに違いない!

 

「待っていろ一夏、必ず私がお前を救ってみせる....!」

 

_____________________

 

翌日、オルコットとの試合当日だ。

俺は現在、ピットにいるのだが……

 

「何故貴様がここにいる?」

 

ピットには糞姉とモップがいた。

糞姉はいい、担任で、一学年主任として俺が専用機を受け取ったことを確認する義務がある。

だがモップはただの生徒だ、居ていい理由はない。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだ」

「私はお前の幼なじみだ、ここにいる義務がある」

「あるわけないだろう、

クラスメイトが立ち入り禁止なら貴様も立ち入り禁止だろうが」

「幼なじみである私と会って間もないあいつらが一緒だと言うのか!?」

「一緒だ一緒、寝言は寝て言え」

「なんだと!?」

 

詰め寄ってくるモップを蹴り飛ばし、俺は夏風を展開する。

 

「織斑、夏風の武装は確認したか?」

「ガンブレード、ナイフ各種、弾丸各種問題無し」

 

今度は糞姉が訪ねてきたので、淡々と返す。

 

「違う、雪片弐型の方だ」

「ああ、そっちのガラクタのこと?

簡単にチェックしたから問題無いだろう」

「ガラクタだと!?使う気はないのか?」

「剣を捨てた俺には不要なガラクタでしかねぇよ

まあ、必要があれば使うかもしれねぇけど、基本は拡張領域の肥やしだな」

 

俺はさっさとアリーナに向かった。




次回はセッシーとの試合。
さあさ、どうなることやら
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