アリアンロッド~ISを駆る冒険者~   作:アルシェス

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試合=蹂躙

アリーナでは、オルコットが専用機[ブルーティアーズ]を

纏ってこちらよりも高い位置から見下ろしていた。

ライフルを持っているが、構えてさえいない。

完全にこっちを見下している様だ。

 

「あら、逃げずに良く来ましたわね」

「何で逃げる必要があるんだ?雌豚風情との試合如きで」

 

俺の挑発返しにむっとするが、

男の戯言と気を取り直したらしい、すぐに表情が戻る。

 

「まあいいでしょう、チャンスをあげますわ」

「チャンス?」

「この試合で私が勝つのは当然の理、土下座して「言いたいことはそれだけかドブス?」な!?」

 

おいおい、さっきと同じで流せばいいだろうが。

 

「こっちはやりたくもない事押し付けられてイライラしてるんだ

御託なんぞ並べる前にとっととかかってこい」

「ッ!男風情がバカにして!」

「そうだセシリア!男なんてやっつけちゃえ!」

 

観客がセシリアに声援を送る、別に気にしない。

そして試合開始のブザーが鳴る。

 

「それでは、お別れですわ!」

 

セシリアがライフルの引き金を引くのと同時に、

俺はそっとガンブレードを動かした。

 

__________________________

 

私、更識簪は目の前の出来事が信じられなかった。

 

世界初の男性IS操縦者[織斑一夏]と

イギリスの代表候補生[セシリア・オルコット]が

一組クラス代表の座を掛けて戦うことになったのだ。

 

普通なら、オルコットさんの圧勝で終わる。

代表候補生と昨日今日の素人、どちらが勝つかなど明白だ。

だから、私の周りにはにやけた表情を浮かべる面々が多い。

おそらく織斑君が無様に負ける光景を見たいのだろう。

私には心底どうでもいい、整備室でやるべきことをやろうと席を立った、

まさにその時だった。

 

オルコットさんの放ったレーザーを織斑君は

直撃するでも回避するでもなく……斬ったのだ。

レーザーは光、その速さは無双だ。

ハイパーセンサーによってようやく見ることが出来る代物のはず。

しかし織斑君はどこに飛んでくるかを正確に見切り、

銃と小太刀を足して割ったような武器で切り裂いた。

 

「な!?」

「バレバレだ、アホたれが」

「ま、まぐれですわ!」

 

尚もオルコットさんはレーザーライフルを撃ち続けるが、

織斑君は片手に持った銃剣でことごとく切り裂き、弾いて見せる。

どこを狙ってるかと、発射のタイミングがわかってなければ出来ない芸当。

 

「な、何故?」

「お前理論派みたいだな、正確すぎて分かりやすい」

「なら!これはどうです!?」

 

スカート部から四つのパーツが外れ、織斑君に襲い掛かる。

機体名の元であるビット型自立攻撃端末[ブルーティアーズ]

四方八方から攻撃することが出来るこの兵装を回避しきるのは容易じゃない。

しかし………

 

「~♪」

 

織斑君は軽く踊るような動きで、鼻歌交じりに難なく回避していく。

そして二三回回避した後、ビットの一つをキックで破壊し、

残ってる三つのビットも、ただ一発の弾丸ですべて破壊する。

どうすれば一発で三つの標的を破壊できるのだろう?

しかし、織斑君に隙が出来た。

 

「かかりましたね!ブルーティアーズのビットは六機ありましてよ!」

 

オルコットさんが後ろについていた筒状のパーツを前に向ける、

だけど、それから何かが発射されることなく爆発した。

何故か、それは織斑君が撃ち抜いたからだ。

 

「バーカ、気付いてたに決まってるだろ」

「あ……あ………あ………」

「スカートのエッジ状パーツが武器だったなら、

その筒も武器だと考えるのが自然だ、だから先に手札を切らせるために

ワザと隙を作ったのさ、まんまと引っかかったな

まあ、人を上辺でしか判断できない雌豚如きじゃしかたないのかもな

それより一つだけ忠告だ、人をなめるのも大概にしろよ」

 

そう言って、織斑君は不思議な構えを取る。

お腹が右を向くように体を横にし、足を開いて腰を落とす。

そして左腕を肩に水平に真っ直ぐ突き出し、右腕も

肩に水平の高さにするが、肘を曲げて直角を作り、前に向ける。

左足を深く落としているので、両腕は自然と下向きになる。

 

「さあ、どこを撃ち抜かれたい?五秒以内に応えれば、リクエストに応えてやる」

 

言いようのない恐怖を感じる。

それはオルコットさんも同じだったみたい。

後退りの様な動きをした後、慌ててライフルを構える。

しかし、それが放たれることはなかった。

 

「時間切れだ!」

 

一瞬、ほんの一瞬で織斑君はオルコットさんの前に立ち、

容赦なく銃弾を叩きこんで、そして蹴り飛ばす。

勢いそのままオルコットさんは吹き飛ぶけど、

辛うじて踏みとどまり、追撃しようと向かってきた

織斑君に向かって、ライフルを盾として突き出す。

しかし、織斑君はそれを蹴り一つで圧し折ってしまう。

ISの武装は頑丈だ、それこそ棍棒代わりにして

ブレードとチャンバラをしても、多少傷が付くぐらいで済む。

それを、織斑君は唯の蹴りだけで圧し折ってしまう。

 

「そんな!」

「師匠直伝の足技だ、そんなチャチなライフルで防げるか!」

 

そのままオルコットさんは斬られ、撃たれ、そして蹴られていく。

もはや一方的な蹂躙だ、戦いとは絶対に言えない。

そして最後に織斑君が放った一発の弾丸が、オルコットさんの眉間部分に当たった。

 

『試合終了・勝者織斑一夏』

 

試合終了のブザーがなり、オルコットさんは唖然としたまま座り込み、

対照的に、織斑君は心底つまらなそうにピットに戻っていった。

信じられないほどの一方的な蹂躙に、皆言葉が出ない。

今この場を支配しているのは[恐怖]だ。

唯単にブリュンヒルデの弟、そう思っていたのが自分達よりも

圧倒的に上に居る実力者、それを信じたくなかったのかもしれない。

男は女よりも下、その事実を証明したかったからこそ。

でも、そんな中で私が感じたのは恐怖じゃなかった。

 

(凄い……凄い!)

 

興奮だ。

 

私はいつの間にか拳を握りしめて興奮と感動に包まれていた。

私は自分の能力の無さ故に、姉と比べられ続けていた。

だから彼の傍に居れば、あの圧倒的な実力の秘訣が分かれば、

私はもう姉と比べられずに済むかもしれない。

そんな考えが、私の中で駆け巡っていた。

 

_________________

 

私は言葉がでなかった。

代表候補生のオルコットを相手に、

異常なほどの一方的な蹂躙としか言えない戦い方。

何をどうすればあれほどの戦闘力を得られるのだろうか。

ハッキリって、全盛期の私よりも上だ。

 

「千冬さん」

 

一夏に冷たくあしらわれていた箒が訊いてくる。

 

「学校では織斑先生と言え」

「織斑先生、一夏に何があったんですか?」

「わからん、二年前に誘拐されてそのままだったからな」

「誘拐!?」

 

あの事件は公にされていない。

政府と私の体面を気にして箝口令が敷かれていたからだ。

知っているのはごくごく一部のみ。

すると、一夏が心底つまらなそうな表情を浮かべて戻ってきた。

 

「はぁ、大口叩いた割りに弱すぎ、つまらん」

「つまらん……だと?」

「自分が上だと思ってる雑魚を叩き潰すのは楽しいけどよ

それはそれで面白みに欠ける、候補生は全員この程度なのか?」

 

ISを待機状態に戻し、一夏はどこから取り出したのか、

リボルバータイプのモデルガンをくるくる回して遊び始めた。

 

「あ、そうそう……クラス代表は辞退するからよろしく」

「辞退だと!?どうゆうことだ!?」

「あの連中だよ」

 

一夏は侮蔑だけの視線を、モニターに映る観客達に向ける。

試合が始まってから、ずっと静まり返っていた。

 

「連中が見たかったのは俺が無様に負ける姿

好意的でもボロボロになりながら喰らい付く姿だったんだろ?

要するに、男は女より下だって証明してほしかったのさ

バカバカしい、なんでそんな馬鹿共に合わせないといけない

ふざけるのも大概にした貰いたいね、付き合いきれるか」

 

今度は同じ視線を、私に向ける。

 

「貴様もだ糞姉、頼みもしねぇのにガラクタ押し付けやがって

俺は血縁者であっても本人じゃねぇんだ、貴様と同じようにできるわけないだろう

雪片は倉持に返しておく、文句は言わせない」

 

いや、それだけじゃない。

見下し、それと憐れみも籠ってる。

まるで弾丸の様にこちらを射抜こうとする。

 

「それと、さっさと俺の前から消えろモップ」

 

それが箒に向けられた言葉だと、しばらく気付かなかった。

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