最後のトリックオアトリート   作:痲歌論

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最後のトリックオアトリート

「トリックオアトリート!!」

その元気な声が俺を目覚めさせる。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。トリックオアトリート!」

「んん...なんだよ、霧歌。お菓子ならお前の部屋にもたくさんあるだろうよ。」

俺の妹___霧歌は今日は10月31日だからなのか、お菓子をせがんでくる。

確かに、ハロウィンだからなぁ。仕方ないな。

俺は俺の上にまたいで乗っている霧歌を優しく持ち上げてベットに座らしてだるそうに机へと向かう。

机に置いてあるお菓子の袋を手探りで中身を探る。

だが、袋の中にお菓子は入っていなかった。

「あぁ、ごめん霧歌。お菓子がないからあとで一緒に買いに行こう。」

「あとで~!?今から買いに行こうよ~!!」

「わかったから、準備するからちょっと待ってて。」

俺はゆっくりと部屋着から外着へと着替えていく。

だが、この時はまだ思っていなかった。

そんなトリックが俺に降ってくるなんて。

とてもこのお菓子は俺にとって、甘くなく、とても苦いお菓子だった。

 

 

俺は身支度をし、霧歌と一緒にスーパーへと向かった。

霧歌は幼いころから俺と出かけるときは手をつないで出かけることが大好きだ。

今は、中学生になっても変わらない。いい加減、兄離れしてくれてもいいと思うが...。

「ふんふん~♪」

霧歌は鼻歌を歌っている。どうやらご機嫌のようだ。

「なにかいいことでもあったのか?」

霧歌は一度笑顔を向けてから言った。

「それはね~、お兄ちゃんと一緒にお出かけできたこと!」

「そうか、お兄ちゃんも霧歌と一緒に出掛けれてうれしいよ。」

霧歌はほんとに中学生かと思うくらい精神的に若いというか、俺に対してとても甘すぎるやつなんだ。

そんな霧歌も悪いとは言わないが、さすがにもう中学生だ。もう小学生とは違う。

「霧歌は、学校とかで好きな子はいたりしないのか?」

「うーん、いないかな。でも、霧歌にも好きな人はいるよ。」

「その人って、誰なんだ?」

「...秘密!今日帰ってきたら教えてもいいけどね!」

そんな他愛もない話をしていると、スーパーに着いた。

「ほら、好きなお菓子買っていいぞ」

「わーい!!」

霧歌は走り出し、お菓子コーナーへと向かう。

霧歌はお菓子を手に取り、どれがいいかと選んでいる。

俺は決まるまで、大学の友達にあげるようのお菓子を考えていた。

俺が気になったお菓子を手に取ろうとしたとき、霧歌は欲しいお菓子が決まったのか俺に駆け寄ってきた。

「お兄ちゃん、これがいい!」

「お、霧歌が一番好きな”まぜまぜまぜま”だな。いいよ、お兄ちゃんも買うからちょっと待っててね。」

霧歌は元気に「うん!」と返事をする。

俺は即座にお菓子を決め、霧歌とともに会計へと向かった。

ハロウィンのせいか人は多く、会計をするまでに多少時間がかかってしまった。

「人いっぱいいるね~。」

「そうだな、きっとみんなハロウィンでお菓子が取られちゃうからだな。」

「霧歌も、お兄ちゃんからお菓子取ろうとしちゃったね。...ダメだった?」

涙を今にも流しそうな目で霧歌は俺のことを見る。

そんな目をされたら、霧歌が悪いなんて言えるわけがないだろう。

「霧歌は悪くない、むしろ、お兄ちゃんからどんどんお菓子を取ってもいいだよ?」

「そうなの、じゃあお兄ちゃんからお菓子取っちゃうね!」

霧歌がそう言った瞬間、レジが空いて俺たちの番になった。

人がまだ後ろにも続いていたため、なるべく早めに会計を終わらし、スーパーを出た。

店を出ると、霧歌がある提案をした。

「ねぇ、お兄ちゃん。久しぶりにあの公園に行かない?」

あの公園とは、俺と霧歌が幼いころによく遊びに行っていた公園である。

昔は砂場やブランコでよく遊んだなぁ。

「久しぶりに行こうか。じゃあ、せっかく行くんだし、久々にあの対決する?泥団子勝負。」

「いいよ~、ぜったい負けないからね!!」

霧歌は俺の手から離れ、先へと走って向かう。

「霧歌、危ないからな。信号には気をつけろよ~。」

「うんわかってる!!」

霧歌はお菓子の入った袋を握りしめ、走る。

走り、公園へと向かっていく。その先には。その、霧歌の走る姿に横からある物体がものすごいスピードで進んでいく。

「霧歌!!」と叫ぶころには、もう遅かった。霧歌だったものは手にお菓子の入った袋を最後まで強く握りしめていた。

霧歌にぶつかったものは、トラックだった。その運転手は引いたことに気付かなかったのか、はたまたひき逃げなのかわからない。

ただ、俺に残ったものは絶望と袋に入ったお菓子だった。

俺はその霧歌だったものを見つめることしかできなかった。

この状況をどうすればいいのだろうか。ここからどうすればいいのだろうか。

俺の頭の中は真っ白だった。いきなり霧歌は引かれて死に、その運転手も止まらず逃げていった。

俺の中には恨みもない。ただの絶望。光なんてさらさらない。

こんなとき、どうすればいいのだろう。

神様のトリックだと言ってほしい。こんなトリック...御免だ。

俺はこの現実から逃げるように部屋に引きこもった。

俺が悪いのか?俺がなにか霧歌に対して悪いことをしてしまったのか?

ハロウィンの日に最悪のいたずらをされた。神に冗談だと言ってほしかった。

でも、あの元気な声はもう俺の家からは聞こえてこない。絶対に。

俺には、生涯最悪のハロウィンで、最悪のトリックオアトリートだった。

最後に笑っていたずらをしよう。

俺に死というトリックを。




ご読了ありがとうございます。
作者の痲歌論です。
今回はハロウィンということで、新しく一話完結のオリジナルを作らせていただきました。
内容は短めになっておりますが、楽しんでいただけると幸いです。
みなさんは、楽しいハロウィンをお送りしましたか?
もし、送れなかった人は私と一緒に次のハロウィンを楽しめたらいいですね。
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