最後のトリックオアトリート   作:痲歌論

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第2話

最近色の判断がつかなくなった。

なぜだろう。と思いつつ、心の中ではわかっている。

自分が1番わかっている。

あの日から何年か経った。いや、経ったのか自分はわからない。

部屋に引きこもっていたせいで外がどのように変化したか、流行りがなにかとか何も知らない。

ただ、俺の中で時々思い出すのは霧歌(きりか)の声だ。

変わらず聞こえる彼女の声。

どこからとも無く俺を呼ぶ。悲しくも嬉しくとも感じれる声色。

俺と離れて悲しいのか、それとも死んでからでも俺の近くに入れて嬉しいのか。

ただ、俺は彼女が近くにいるのを最近感じる。

霧歌が死んだ日、俺は絶望で部屋に引きこもり始めた。

数日間立ち直れず、俺は死ぬことを何度も考えた。そして、それを実行に移そうとしたことも同じくらいある。

だが、どんな手段も摩訶不思議(まかふしぎ)な現象によりすべて阻止されている。

新品の縄はいきなり切れ、包丁も持った瞬間刃の部分が折れた。

恐らくだが。恐らくだが霧歌が止めているのだろうと俺は考えている。

霧歌は俺が死ぬのを嫌がっている。俺はそう思い込んで今は仕方なく生きている。

今日もいつも通り霧歌が声が聞こえた時、ふとあるものを思い出した。

「久々に食べたいな…。」

”まぜまぜまぜま”という水と粉を混ぜることで作れるお菓子だ。

戒めというわけでもないが、俺はあの日___霧歌を失った日と同じスーパーへと足へ運んだ。

スーパーへ向かう最中、景色が変わりすぎて本当に地元か怪しくなるくらい変わっていた。

見知らぬファミレスや雰囲気の変わった道路。

昔よく行っていたコンビニも気づけば違う店舗へと変わっていた。

普段と違う道を歩くせいか、少し緊張している気がする。

本当にこの道で合っているか、間違っていないか不安になりながらもスーパーに無事着いた。

スーパーの品並びも昔と変わっているせいで、少し迷いながらも、まぜまぜまぜまを買うことが出来た。

帰り道、俺はあの日を思い出した。

俺はあの時、悲鳴に包まれた。俺の中では霧歌の悲鳴が響いてる。そう思っていた。

だが、俺の悲鳴が俺を騙していた。あの時響いていた悲鳴は俺の泣き声だった。

悲鳴を思い出すと霧歌だったものの姿が鮮明(せんめい)に脳裏に焼き付く。

節々が折れ、何色か分からない液体が飛び散り、地面へと這う。

俺は気づくと涙が零れていた。

涙を拭き取り、悲しみを噛み締めた。唇を強く噛んだせいか口の中で血の匂いがする。血というものはわかるが、何色かわからない。

部屋の机に雑にまぜまぜまぜまを置き、袋を幼い子供がプレゼントを開けるかのように開けた。

混ぜている時、まるで俺の心が表されているようだった。

灰色なのか赤色なのか青色なのか、何色かわからないまま混ぜるのは、あの日からの俺の心情のようだった。

悲しみの青、嬉しさの黄、怒りの赤。

俺には今全てない。きっとこのように、俺は灰色で出来ているのだろう。

俺の耳に、混ぜるぐちゃぐちゃと音と、あの日の悲鳴が混ざる。

俺の目に、渦巻状に灰色が巻かれていく。

俺の肌に、そよ風を感じる。少し肌寒い。

「俺には、どうすれば正解なのだろうか…。俺は生きていいのか?」

そう呟き、1口分を口へ運ぶ。

美味い不味いより、霧歌を思い出した。彼女を思うには、美味いも不味いも関係ない。

そして、俺は外へと駆け出した。

まだ1口分しか食べていないが、あの場所へ行かなければならないという衝動に駆られた。

投げるように食器を置き、靴のかかとを踏んだまま霧歌が引かれた場所へ向かった。

走ってる時、場所へ近づくごとに霧歌の声がだんだん大きくなる。

「ここに…ここに霧歌が……!!」

現場に着くと、まるで霧歌を失った日のようになった。

色を取り戻し、霧歌が目の前に袋を持って呑気に歩いている。

「き、霧歌…。」

小さく声が零れた。

今のが聞こえたのか、霧歌が振り向き俺の顔を見る。

「お兄ちゃん?どうしたの泣いちゃって…。」

「霧歌!!」

霧歌の髪の色、匂い、姿、形。

すべてが目の前にある。

抱きしめて改めて認識する。俺の目の前に霧歌がいる。

「霧歌!よかった…!」

「お兄ちゃん…。ごめん。」

「どうしたんだ、いきなり謝って。」

この幻覚が、現実(ゆめ)が続いて欲しい!

終わらないでくれ!これが続けば救われる!

そう願うも、これは一瞬にして終わった。

霧歌の姿が薄れていく。

粒となり、霧歌の姿が消えていくのがはっきりと見えた。

去り際、霧歌の言葉が一瞬聞こえた。

「一緒に来て。」

そして霧歌の声はトラックのクラクション音にかき消されていった。

俺が自分の手で死ねなかったのは、霧歌の目の前で死ぬ事で一緒に逝けるようになるからだ。

だから、新品の縄も包丁も壊れていった。

最後に感じたのは、最後に食べたまぜまぜまぜまの、ほんのりとした甘みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ご読了ありがとうございます。
痲歌論です。
お久しぶりに書いたので、質は下がったと思いますが、書き手が楽しく書いたものを、読み手が共感して少しでも楽しいという感情が1ミリでも生まれたら嬉しいです。
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