月夜に陰る機構人形   作:こんぺいとー

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メイドと遭遇

「……あ」

 

 思わずやってしまったその行動に頭が真っ白になる。そしてついでカツン、と金属が地面へ落ちる音がなり、意識が開けた。

 コロコロと転がり、そして人形の足下でパタリと停止した円盤を手に取る。男は穴にもたれかかるようにして死んでいた。ドクドクと内容物が地面へ広がる。

 

 それを横目に、機構人形は未だに少しぼんやりとした頭を抑える。

 

(……えぇ、そんなにこれ一つでキレるもんか? いや、キレた本人は俺なんだけどさ……それにやけに罪悪感がないのも気味が悪い……)

 

 まるで誰かに操られているかのような異常な感情の変位について来れずにいると、はっと気付く。さっさとしないと大事になりそうだ。

 

「そうだ──早く掃除しないとヤバい……床に染みこんじまう前にさっさと拭かないと……何があったっけ?」

 

 円盤を服のポケットに。頭は既に死体から離れていた。足早にそこから離れる機構人形。

 その後に残ったのは、トクトクと流れる血液の音と広がる惨状だけであった。

 

 

 ◆◇

 

 

 とある都市の冒険者であるリリアは、大理石のようなもので作られた暗い廊下をジッと見詰める。そもそもこんな何があるか分からなそうなところに来たくなかったリリアは、慎重に慎重に、そして同時に半分物見遊山の気持ちで足を進めていた。

 

 元々は《リィーシィの砂漠》の異変についての調査に来ていたのだ。その中にある謎の遺跡の捜索なんて、パーティーメンバーが先駆けてやろうと言い出さなければ絶対にしないはずだった。

 大規模な探索隊が展開される見通しだったが、先ずは現状確認ということで派遣されたのがリリアのパーティーである。突撃気質の多い野蛮……というか無謀な人間が多いのも当然であった。

 

(ほんと、貧乏くじよね……これで原因見つけられなかったらどうしようかしら)

 

 逆に見つからない方が良いかもしれないとリリアはぼんやりと考える。

 砂漠を通る行商人達からの連盟で出された異変解決の依頼──その『異変』の内容は、一言で言って異常が過ぎたからだ。

 

『夜狼がやけに凶暴になっている』

『かと思えば、ある地域を中心にぱったりと魔物と会わなくなる』

『道中で潰れた肉塊を見た』

 

 こんな異変の要因がロクでもないことはその実物を見るまでもなく明白だった。

 

 探索の途中で見つけた、これまで報告にあがることなかった遺跡を見つけたときもリリアは入ることに余り乗り気でなかったくらいだ。

 

 はぁ、とため息をつくと、前へ突撃していった協調性のない3人へ追いつこうと足を進める。

 

(……いえ、というかよく考えると突撃した方が多数派だから、まさか私の方が協調性がない……? いやいや、毒されすぎよ私……んなことあってたまるもんですか)

 

 そして、そんな詰まらないことを考えながら曲がった角に、『それ』はいた。弾むようなステップで歩く後ろ姿。

 魔物が多数生息するその砂漠で見るはずのないその様相に、思わずリリアの口から言葉が漏れる。

 

「──え? ……メイド、さん?」

 

 バケツと廃れた雑巾片手に弾んでいたメイドがピタリと停止する。

 

 そして、あわわ……、という擬音がぴったりなその表情をこちらへ向け、こちりと停止した。

 

 その全貌は、なんど見てもやはりおかしいとしか言えなかった。

 月光に(まみ)れる白銀の髪に金色の瞳。荒れているという言葉を知らなそうな白色の肌。この危険地帯に似つかわしくない、余りにも綺麗なメイド服。

 

 そしてなによりも一番奇妙なのは、頭と手に奇妙な歯車が二対、付いていることだった。

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