月夜に陰る機構人形   作:こんぺいとー

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無口な機構人形

「それ……え? 歯車……? それで、遺跡……ってことは、貴女機構人形(オートマドール)?! ……あれ? でもこの遺跡に反撃機構とかなかったわよね?」

 

 ピシリと停止したメイド服を着た少女。それを前に、リリアはうーんと唸りながら思考を巡らす。

 

「……聞きたいんだけど、この遺跡に敵を倒すための装置ってなかったかしら? 普通、貴女みたいな機構人形がいるところには大体あるらしいのだけれど」

 

 停止していた機構人形は、その言葉を聞き勢い良くリリアに向かい直る。バケツと雑巾が慣性力により、荒ぶった挙動でぶんぶんと揺られていた。

 

「…………ぇと」

 

 そして、数秒後。人形の口から響いたのは、意味を成さない言葉の雫。

 それを聞いたリリアは思わず目を瞬く。おかしなことに、目の前の少女も自身の発言に驚いたように目を丸くしていた。

 

 再び固まった少女を前に、リリアはゆっくりと改めて問いを口にする。

 

「……その……えっと、じゃあ……ここら辺で私以外の人見なかったかしら?」

 

 ビクリと跳ねるように体が震えた。その反応が恐怖なのか、『心当たりが有る』という反応なのか判断しかねていると、少女がゆっくりと動き始めた。

 

「どうしたの?」

 

 そして目の前で人差し指を立て、ある方向に指し示し始めた。そして、少女は突然そちらへ向かい歩き出す。

 

「……付いてこい、ってこと?」

 

 こちらへ振り向き、頷く。どうやら『はい』と『いいえ』くらいの意思疎通は出来そうなことに、ほっと一息。胸をなで下ろす。

 

「分かったわ。機構人形は『人に害をなせない』って聞くし、取りあえず貴女のことを信じてみるわね」

 

 ビクリと再び少女は震えた。

 

 そして、それを押し隠すように少女はカツカツと足音を立てて歩き始める。それを不可思議に思いながらも、リリアはその後ろに従うように続く。

 

 ちなみに。もし、だが。

 

 もし、リリアに相手の心を読めるような能力があれば、目の前を歩く機構人形から叫び声が聞こえたことだろう。

 

 

(──なぜだか知らんが、()()()()()()()!!!)

 

 

 ──という絶叫が。

 

 

 ◆◇

 

 

 耳の尖った蒼髪の女が月の光を横顔に、砂漠へ手を付けていた。しん、と静まり返った大地には彼女以外の人影は一つも存在しなかった。

 そして、ピクリと耳を震わせる。ゆっくりと手を離すと、ため息を付いた。

 

「ああ、1人死んでますね。そして2人は深部へ迷い込んで……そしてもう1人が一番危ないですね、これ」

 

 眠たげに瞳を細め、ふわぁと欠伸をする。そして、うーんと伸びながら、彼女はその装飾で彩られた白いローブを風に揺らした。

 

「……さて、どうしましょう。2人から回収するか、1人から助けるか……」

 

 眼下の遺跡へ視線を向ける。その瞳に過るのは、微かな憤り。

 

「まったく……こういう猪突猛進な若者を止めるのが本来のギルドの役目でしょうに。相変わらず現場のことには興味がないのでしょうね、上の方々は」

 

 そして数秒の熟考の後、《最上位》を冠する冒険者である彼女──シストリは1人確かめるように呟いた。

 

 

「──そうですね、そうしましょうか」

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