ハリー・ポッターと面霊気の少女 作:あたし、綺麗?
クリスマスの昼、イギリスのとある町で謎のお祭り騒ぎが起きているとの報告があった。
偶然にもその時は別件で忘却術士の手が空いていなかったのと、事態の規模が大きい故の緊急性の高さから、
幸いなことに、事態は
原因は子供の魔法発現による暴走と思われるものだったが、ここで問題が発生してしまう。
お祭り騒ぎの原因である子供の身元が無いのだ。
本人が分からないのではなく、無い。
親もいない、身なりからして孤児とも思えない、本人がボロ屋敷に住んでいたetc……理由を挙げればキリがないだろう。
数時間の会議の結果、誰かが引き取る事までは決まったのだが、担当していた
唯一、『マグル製品不正使用取締局』の局長であるアーサー・ウィーズリーが名乗りを上げたが、彼の家計が不安定なのを考慮して不適切だと判断され、予め弾かれていた。
放っておく訳にもいかず八方塞がりになったその時、狸爺が首を突っ込んできた。
狸爺の言い分を纏めると、『独身で、魔法薬の分野で実績もあり、特段金に困っていることもなく、安定した職に就いていて、それなりに面倒見が良い人物』がいるから彼に引き取らせよう……とのこと。
尚、当の本人はそんな事は露知らず。
特大のくしゃみをし、風邪だろうかと思いながら魔法薬を鍋でかき混ぜている。
狸爺の意見をそのまま通すのは少々癪に障る者もいたが、かと言って件の少女を引き取る程の覚悟も持っていなかったし、何より面倒事の予感がした。
そんなこんなで、本人の了承は無しに暴走事故を起こした少女、秦 こころは、ホグワーツで教鞭を執っている魔法薬学の教授、セブルス・スネイプに引き取られることが決まった。
ホグワーツの校長室で、脂ぎった髪の男、セブルス・スネイプが、校長であるアルバス・ダンブルドアに対して怒鳴っていた。
「ダンブルドア! 何故吾輩の了承も無しに吾輩が子供を引き取る事になっているのですか!」
「そうは言ってものう、セブルス。もう君しか候補にいないのじゃよ……」
頭では分かっている。
お人好しなアーサー・ウィーズリーが引き取りの選考から弾かれた以上、魔法省の大半を占める腰抜けではあの少女を引き取る事などできないし、他の教師は家の都合が悪かった。
ダンブルドア本人が引き取らないのも、引き取った少女が権力的なものに縛られるのを嫌がった為であることも分かっている。
自分が元死喰い人という経歴こそあるが、ダンブルドアから最も信頼を寄せられているのも分かっている。
十二分に分かっている。
だが理解するのと納得するのは全くもって別だ。
ただでさえ来年の夏には何の地雷を抱えているのか分からないわ、自分にとって厄ネタ満載なクソッタレのアバズレポッターの特徴を引き継いでいるであろう子供が入学するのに、更に無表情な少女を引き取れだと?
この狸爺はこちらの都合を一切考えずに動く事を忘れていた。
とにかく1発はぶん殴ってやりたいぐらいだ。
「それで、吾輩が引き取る事が、誠に、遺憾ながら、決まってしまった少女はどこにいるのですか」
「彼女には
バチン!
スネイプは、ダンブルドアとの姿くらましで件の屋敷に着いた。
目の前にあったのはオンボロ屋敷。
こんなオンボロ屋敷に少女が1人で住んでいた事にも驚いたが、それよりもこの屋敷の異常性に驚いた。
この屋敷……魔法の形跡からして、何かの実験施設としての役割を持っていた。
当然ダンブルドアもそれに気がついていたようで、少し表情が暗くなっていた。
「やーやー、われこそは秦 こころなり〜。隣の髭爺がアルバス・ダンブルドアで、貴様が私の親になるセブルス・スネイプか?」
秦 こころと名乗った、狐の面を付けている少女は恐ろしいまでに無表情だった。
表情だけではなく…目まで笑っていない。
まるで東洋の能面が顔になったかのようだ。
だが、雰囲気だけは何となく変化を感じられる。
奇抜な服装に関しても言いたい事があったが、それを差し引いてもその無表情さは異常だ。
「……あぁ、誠に遺憾ながら、吾輩が貴様を引き取る事になっているセブルス・スネイプだ」
「そうか。これからはよろしく頼むぞ〜」
感情豊かな面霊気と、歯車に狂わされた男が出会った……