ハリー・ポッターと面霊気の少女 作:あたし、綺麗?
就寝時間となった為、特徴的なバッジをつけた“監督生”に引率されながら私達は階段を下っていく。
どうやらスリザリンの寮は玄関ホールから地下牢を下り、湖の方向へ進んだ先にあるようだ。
(まさか地下に寮があるとはな……それにしても、学校に地下牢とは……どんな必要があって作られたんだ…?)
「こころ、何故学校に地下牢があるのかが気になるのか?」
「……よく分かったな。心でも読まれたのかと思ったぞ?」
「(その面のせいで分かりやすいのに気づいていないのか……)あー……父上の話では、父上がホグワーツに居た頃には管理人からの罰として、ここで鞭打ちなどをしていたそうだ。今でこそ体罰は禁止されているらしいけど、そんな野蛮なものが最近まで行われていたのかと思うとゾッとするね」
こころが地下牢の存在を不思議に思っていると、それに気づいたドラコが説明をする。
ドラコは冗談っぽく言っていたが、その顔は僅かに青くなっていた。
そんなやり取りをしていると、地下牢の奥の湿ったむき出しの石が並ぶ壁の前で先頭の監督生が立ち止まった。
「穢れた血!!」
彼は息を大きく吸って、とてもじゃないが合言葉とは思えない言葉を大きく叫んだ。
その途端、壁に隠された石の扉が滑るように開き、談話室に入ることが可能になる。
(セブルスに
私は入学するにあたって、セブルスから使ってはならない言葉を幾つか教えられた。
そのひとつが『穢れた血』である。
マグルの存在を忌み嫌う者達が────主にマグル生まれの魔法族に使う言葉で、この言葉について説明していたセブルスは、私に穢れた血という言葉を使う事を固く禁じた。
まるでその言葉を使うとどうなるか体験したかのように……
全員が談話室に入ったのと同時に、やや細身の監督生がこちらへ振り向き、口を開いた。
「さて、まずはスリザリンへの入寮おめでとう。俺は監督生のヒューゴ・クラッグ。親戚に教えられて知っている奴もいるだろうが、スリザリンの談話室は湖に面している。偶に巨大イカが通る事もあるな。ある意味ではスリザリン生の特権だ」
談話室は細長く天井の低い地下室で、丸い緑がかったランプが天井から鎖で吊るしてある。
壁と天井は荒削りな部分がちらほらと見られる石造りで、暖炉や談話室においてある椅子も彫刻が施されており、レトロな雰囲気を感じさせられる。
「ここの合言葉は2週間ほどで変わる。偶に合言葉が変わる日がズレる時があるから、掲示板には毎日目を通しておくように。どうしても覚えられないなら他のスリザリン生に聞いてくれ。ただし、他の寮の生徒に合言葉を教えたり、談話室に連れてくるのは基本的に禁止だ。ここに連れてきたり、他の寮の談話室に入った場合、大幅な減点と罰則がある。友人が他の寮になってしまっても、連れてくるのは諦めるのが賢明だ……さて、ここまでで何か質問はあるか? あるなら手を挙げてくれ」
クラッグ先輩が質問を許可したので、私は手を挙げてふと疑問に思ったことを聞こうとした。
挙がった手が少なかった為か、先輩も私にすぐ気が付き、私を指名する。
「お前は……ハタノだったな? 言ってみろ」
「何故他の寮の生徒が入るのを禁止しているのだ? 罰則がある理由も聞きたい」
クラッグ先輩は少し考えてから口を開いた。
「……そうだな、今のうちに知っておいた方がいいだろう。10数年前までは他の寮の生徒が談話室に入っても良かったそうだ。形式上は禁止だったが、寮監や監督生も黙認していた……が、グリフィンドールの悪戯ばかりしていた生徒がスリザリンの談話室に入り…ここに糞爆弾をばら撒いた。当時はかなりの騒ぎになって、当時のスリザリンとグリフィンドールの寮監がカンカンになって、その生徒に呆れるほどの罰則を言い渡したらしい。……まぁ、今の生徒にそんな倫理観の欠片もない奴はいない。よく悪戯を仕掛けてくるウィーズリー兄弟も多少の節度は持っているからな。談話室に入って糞爆弾やネズミ型花火をばら撒くような真似はしない……と、少し話が逸れたな。他に質問は……無いな。なら話を続けよう」
クラッグ先輩は真面目そうな感じで、まだ魔法界では右も左も分からない私にとってとても心強い存在に見えた。
クラッグ先輩は話を続ける。
「次は、スリザリンの本当の姿を教える。皆が闇の魔術にのめり込み、純血の血統書が無ければ口を聞かれない……そんな下らない噂はすぐに捨ててしまえ。確かに魔法使いの子供が多いのは事実だが、マグル生まれの子供だろうと差別はするな。寮監のスネイプ先生はそういった差別的な発言を嫌うし、俺もそういった発言をしていたら減点する」
「さて、最後にひとつ聞いてくれ。これは俺の信念でもあるし、スリザリン生として絶対に忘れないでほしい…スリザリンは、決して仲間を見捨てず、手を取り助け合う…では、男子は俺についてこい。女子はルイーズについていけ。明日から授業が始まる。夜更かしはしないように」
そう言って、クラッグ先輩は男子寮の方へ消えていった。
「(部屋はどんな感じなのだろうか……)おやすみ、ドラコ」
「あ、あぁ。おやすみ、ココロ」
私はドラコに手を振り、クラッグ先輩にルイーズと呼ばれていた監督生について行った。
ルイーズ先輩はクラッグ先輩とは真反対な快活な性格をしていて、私の心細さを更に和らげてくれた。
つくづく私は恵まれている。