シンボリルドルフと聞けば多くの者が思い浮かべるのは『最強』という単語かもしれない。
トレセン学園でも生徒会長を勤めあげながらレースでも結果を出す。でも、そんなシンボリルドルフとトレーナーとの出会いのエピソードを知っている者は少ない。
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「そろそろ決めなくてはならないな」
私はそんな独り言のように呟いた。誰もいないこの場所でならこんな独り言も許される。いつも完璧であろうとしている私が唯一、本音をこぼせる場所。
「どのトレーナーも私と何を目指したいのかを述べてくれた」
それぞれトレーナーによって微妙に違ったりしていたが、私と共に歩んでいきたいという想いはあった。
そんなことを考えていると誰かの足音が聞こえてきた。姿を現したのはスーツに身を包んだ成人男性だった。
「………」
その姿を見た瞬間に金縛りにでもあったかのように動けなくなってしまった。自分でもこんな経験は初めてで唖然としてしまった。
「生徒会長もここで一息付いているんですか?」
「あ、ああ」
から返事のようなものになってしまった。
「そうですよね。生徒会長なんてやっていると色々と大変なことも多いでしょうしね」
そう言って、男性は私と同じようにここで一息つき始めた。私はそれよりも今、心臓の鼓動がうるさくなっている。
「生徒会長も大変ですね」
スーツに身を包んだ男性は私に笑みを浮かべながら話している。私はその笑顔を見たのと同時に顔の温度が高くなっているのを感じる。
「………///」
「どうしたんですか?顔が赤いですが、大丈夫ですか」
「う、うん。大丈夫。ちょっと疲れてしまって…」
「そうなんですか。ちゃんと休みを取った方がいいですよ。生徒会長として学園の運営に携わりながら、レースへとトレーニングも欠かせない。そんな風にしているといつか壊れてしまいますから」
「…は、はい」
「あ、あの!!」
「どうしましたか?何か用ですか?」
「あの…もう少し話しませんか?」
「…別にいいですけど、生徒会長の方は大丈夫なんですか?」
「私は生徒会長という名前じゃなくて…シンボリルドルフ。だから、私を呼ぶ時はそのように呼んでくれると有難い」
生徒会長は只の役職の名前に過ぎない。よく『生徒会長』と呼ばれることがあるのも事実。
今までそこまでそれに関して気にしたことはなかった。でも、さっきからこの人に『生徒会長』と呼ばれる度になんか嫌な感じがした。
なんでか分からないけど、この人には名前で呼んで欲しい。
「そうだね、気分が害したのであればすいません。シンボリルドルフ」
「別にそんな畏まったような口調じゃなくていいんだが…」
だって私は只の生徒であなたは教職員。私が敬語を使うことはあっても教師の方が敬語で話す光景はあんまり見ない。
「これは昔からの癖で。僕は誰に対しても敬語のような口調で話してしまうんです。だからこれは気にしないでください」
「そうなのか。それだったら仕方ない」
それから私はトレーナー選びを悩んでいる事や日々の小さな愚痴などを話したりした。いつもより話す時は緊張したし、彼が退屈していないかとか顔色をうかがいながらだった、でも、なんでか分からないけど、この人と一緒に居られるだけで心がとても高揚した。
「そういうことがあるんだ。本当にここまで愚痴を聞いてくれてありがとう」
「別に僕は大したことはしてないよ。ただ聞いてあげただけだから」
「いや、それだけでも私にとっては有難い。こんな風に話せる相手は限られているからね。生徒に対してはやっぱり生徒会長として威厳を見せないといけないからね」
「やっぱり大変なんだね…。これからせい…いや、シンボリルドルフも頑張ってね。次のルドルフのレース、見に行くからさ。頑張って。まあ、僕なんかが行っても行かなくても何も変わらないと思うけど」
彼は笑みを浮かべながらそんなことを呟いていた。そして私としては彼が『ルドルフ』と呼んでくれたこと自体がとても嬉しいことだった。人に呼ばれることがこんなに心地いいのは初めてかも。
「そ、そんなことない!絶対に見に来てくれ。キミをガッカリさせないようにすごいレースを見せるからさ。見に来た事を後悔なんて絶対にさせないから」
「う、うん。わかったよ。頑張ってね」
そして現在に時間は戻る。
「ルドルフさん、少し僕の膝から立ち上がってくれませんか?」
「やだ!!あと、二人きりの時は『ルナ』と呼んでと言ったぞ。私は『ルナ』と呼ばれないと返事もしないぞ」
「る、るな、仕事をいたいんだけど…」
「だめ。ルナはトレーナーとずっと一緒にいる」