私は一目惚れというものを信じていなかった。元々、『恋愛』というのは私に関係なく、私のような者とは交わりのないことだと思っていた。だから自分が一目惚れのようなものをしたことに自分自身も困惑している。これを『一目惚れ』というのかは分からないが急に目を釘付けにされた。
頭で考えるよりも体が先に動いてしまって気付いた時には一目惚れをした男に話し掛けていた。
「お、おい…」
「な、なんですか?」
呼び止めた男は私に話し掛けられた事に驚きを示している。別に人の反応に一喜一憂することなどないと思っていたが男にそんな反応を示されると少し悲しいと感じてしまう。
「お前は誰かのトレーナーなのか!?」
「い…いや、違います」
「だったら私のトレーナーになれ!!」
急にこんな事を言っている自分に驚きつつも今更撤回はできない。目の前の男は本当に困惑しているのが伝わって来る。まあ、誰でも急に『トレーナーになれ』と言われたら驚くだろうな。
私としてはこの人しかいないと感じた。私とのトレーナー契約は長く持たない。トレーナーにはこんな風にトレーニングして欲しいという想いがあるのも理解しているつもりだ。でも、私にも自分なりのやり方や後輩たちの面倒を見たりとやることはあったりする。そういうこともあって私とトレーナーの間に確執のようなものが生まれて解任してしまったりする。
でも、この人なら私と共に歩んでくれる気がした。
「……え、…」
「だ・か・ら、私のトレーナーになれと言っている!」
「……う、はい…」
「はいと言ったな。私のこの耳が聞いたからな。後で取り消すのは無しだぞ」
承諾してくれた。その結果が何よりも嬉し過ぎる。こんなに高揚感を感じるのはレースで一着を取った時と同じような感覚。今さっき初めて会った奴なのに私は信頼を寄せている。
あの男であれば私は歩んでいける気がする。
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1年後
エアグルーヴは運命のトレーナーと出会った日から全てが変わったかのように走りも良くなり、結果も出る。そしてあっという間にエアグルーヴの名前は有名になっていった。
レースへと向かう前の最後の休憩場所。ここでトレーナーとウマ娘は分かれる。トレーナーは観客席にウマ娘はレースへと。
「トレーナー、私のレースだけを見てくれ」
「うん。わかっているよ。エアグルーヴ」
「じゃあ………」
「うん?」
「うん?じゃなくていつもの!!私が言わなくてもやってくれ!」
「うん。わかったよ…」
トレーナーはエアグルーヴの頭を優しく撫でると一瞬、俯いているエアグルーヴの顔が緩む。でも、それを表に出さないように必死になっているように見える。
「それじゃあ、エアグルーヴ頑張ってね。僕も応援してるからね」
「ああ、貴様が見ている前で恥は晒せないからな」