紅蓮の騎士〜Crimson Knight〜   作:犬社長

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最終回となりました。(´∀`*)ユックリシテイッテネ




〜結末〜〈この世界で生きる意味〉

 

 

 

 

ーーーーーーーーー瓦礫の山の中心で、二つの光がぶつかる。

 

 

 

……かたや、バックルームの伝説にして真の姿を解放した〈紅蓮の騎士(Crimson knight)〉。

 

 

……相対するは、彼と同じ無尽蔵な力の源…〈クリムゾンハート〉を持ちし放浪者。

 

 

 

ーーーレベル11で始まった彼ら2人の戦いは、佳境に差し掛かっていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

…騎士が手をかざす。

 

 

掌に赤い光が集まり、それが弾丸の様に打ち出された。

 

 

「ーーーーーーーーー!!遠距離攻撃まで可能とはな!!…最早唯の騎士を相手にしてるとは思わないほうがいいなぁッ!?」

 

その光を避けた男がそう叫ぶ。

 

騎士はただ黙って、攻撃の手を加速させて行く。

 

 相手には伝えていないが、この真の姿は自身の生命力を大きく消耗するのだ。ーーーーーーーーー彼の全身を包む赤い光は、彼自身の生命力が具現化したモノであり、この光が薄れると彼は自身の生命を維持する事が不可能になる…………つまり死ぬのである。

 

 

(……あまり時間は掛けられないな。ーーー終わらせねば。彼の為にも…。)

 

 

 ………騎士は剣を構え、激しく打ち掛かって行く。男と剣がぶつかり、火花が散る。しかし戦いは最早接戦になる事は無い。ーーーーーーー力は常に、騎士の方が上回っていたのだ。

 

 男は吹き飛ばされて行く。……何度も、何度も互いに剣を打ち合うのに、決まって大地に転がるのは騎士ではなく、放浪者の男だ。

 

…しかし、男は立ち上がった。……倒れる事なく、その目には光すら宿っていた。

 

「……ハハハハ…。絶望的な強さだな…流石はバックルームの救いの象徴。……あの時の俺にも、こんだけの力が有れば…皆んな救えたのかな……??」

 

 穴だらけになった大地の上で、ボロボロの体を立ち上がらせようと震えながら、男が呟く。

 

「ーーーーーーーーーきっとそうだよな…。こんな力が有れば、何でもできるに違いない……。だからか?…アンタは希望を持って生きてられる。……出来る事が多けりゃ、心も強くなれるーーーーーーーーー俺は出来なかった……。」

 

……ソレは彼の後悔の念に塗れた、独り言だった。騎士はそんな彼に声をかける。

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーキミを見ていて、ふと昔を思い出した。」

 

 

 

「……あ?」

 

 最早立つ事も出来なくなった男は、騎士の声にかろうじて顔を上げた。騎士は彼に話始める……誰にも話した事の無い、自分の過去のことをーーーーーーーーー

 

「ーーーーーーーーー私も、昔この世界に迷い込んだ時、何度も辛い目にあったよ。……この力だって、最初から持ってた訳じゃ無い。」

 

騎士は続ける。

 

「……キミの話を聞いて、直ぐに分かった。……キミは私と同じ道を辿っていたのだ……とね。」

 

「ーーーーーーー希望を目指し、道中で仲間を得て、そしてそれをアッサリと失い、それでもこの世界から逃れようと、自暴自棄になって戦い続けているうちに、いつの間にか遠ざかるどころか、この世界の存在に近づいてしまう。人として元の世界に戻ると言う事すらできぬ様になり、救いなど無いと考えるようになる。……キミの辿った道がどれだけ当てはまるかは知らないが、私はそうだった。」

 

 騎士は何処か遠い所を見ている様に、言葉を紡いでいく。男はそんな騎士を見上げ、納得がいかないかの様に声を漏らした。

 

「……なら、アンタはなんでそうやって、しっかりと立ってられるんだ…!?どうやって希望を取り戻したと言うんだ…!俺と同じ目に遭いながらも……どうしてーーー。」

 

 

 騎士は彼を見下ろした。……そこには、敵意はなかった。…ただ、哀しみだけがあった。

 

 

「ーーーーーーーーーキミと私の違いは、絶望し切った後で何に希望を見出したか……だ。キミは〈ALPHAOMEGA〉を知り、破滅の道たるソレに希望を見出した。一方で私は再び、元の世界へ帰るための理由を与えてくれる者に出会った。…たった一回の出会いが、私とキミの運命をこうまで変えたのだ…………。」

 

 語りながら、騎士は思い出していたーーーーーーーーー嘗て、目の前の男と同じ様に、ただ意味なく生きるだけとなっていた己に、新たな意味が与えられた日の事をーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

……ソレはどれぐらい昔の事だろうか?ーーー彼(・)女(・)に会ったのは、とある森の中だった。

 

 

 

ーーーーーーーーー彼(・)女(・)は、森でハウンド達に襲われていた。自分は偶々、そこに通りかかったのだ。その時はまだ、率先して人助けをする様な心持ちをしていなかった。……勿論、死に向かう人を黙って見ている様な事もしなかったが。

 

 

……だから助けた。……目の前で死なれるのはゴメンだ。

 

 

ーーーーーーーーー別に特別なことはしていない。ただ剣を抜き、ハウンドを片づけた。その時の自分にとってはもう、赤子の手をひねるより簡単な事になっていた。

 

 ハウンドは相当な数が居たが、特に苦労する事なく倒す事が出来た。

 

ーーー全てが片づいてから、彼女の無事を確認しようと彼女の方を振り向くと、彼女は呆気にとられた様な顔で地面に座り込んでいた。

 

 

「……びっ……びっくりした………!…あ、貴方1人だけで全部倒しちゃうんだもの……。強すぎる……!」

 

騎士は肩の埃を払い落としながら答える。

 

「……まだハウンドだけで良かった。……キミは放浪者か?ソレとも、前哨基地に住んでる人か?」

 

…しばらく彼女は放心状態に陥って居たが、彼の呼び掛けにハッとなって返事を返した。

 

「…え、あ、あの…私エミリーって言います。ーーーーーーーこの近くの村に住んでます…はい。」

 

ーーーーーーーーーそう言って、エミリーはフラフラっと立ち上がる。彼女の手には、小さなカメラが握られて居た。

 

「………そうか。一つ言っておくが、村の外れをあんまり彷徨かない方が良いぞ。」

 

 騎士の言葉に、エミリーはバツが悪そうに小さく笑う。

 

「……いや、ソレはそうね。…写真が撮りたくて、つい…」

 

騎士はそんな彼女に手招きする。

 

「……命が無きゃ何にもならないんだ……何も。ーーーーーーとにかく、キミを元の場所へ帰そう。村まで案内してくれないか?…このレベルに来るのは初めてなんだ。」

 

エミリーは頷いた。

 

「ーーーーーーー分かったわ。こっちよ。」

 

彼女は騎士を先導して歩き始めた。

 

 

ーーーーーーーーー木漏れ日の中、落ち葉を踏む2人の足音だけが静かに響いていく……

 

 

 

「あのーーーーーーーーー」

 

暫くしてから、エミリーが口を開いた。

 

「ーーーーーーーーー先程は助けてくれてありがとう。貴方…お名前は?」

 

騎士は小さく首を振る。

 

「…もう、名乗る様な者じゃ無い。……『騎士』とでも呼んでくれ。」

 

「…ふーん。じゃ、赤い騎士さんって呼ぶ事にするわ。だって真っ赤なマントだもの。…ソレにハウンドの血で赤く染まってるし。」

 

そう言ってエミリーは、騎士の体を指差した。

 

「……血だけでも、洗い流したら如何かしら?ーーーハンカチ私持ってるわよ。使う?」

 

 スッと、彼の目の前に白いハンカチが差し出された。しかし、騎士は首を振る。

 

「…いや、構わない。ーーーハウンドの血は穢れている……キミのハンカチだろう?綺麗な物だし、使えなくなってしまうぞ?」

 

エミリーは軽く首を振った。

 

「ーーー良いのよ、別に。私同じのあと3枚持ってるから、1枚ぐらい貴方にあげるわよ。…穢れた血なら、余計に綺麗にしなきゃ。」

 

 

 騎士は暫く躊躇って居たが、その白いハンカチを結局受け取る事にした。

 

「………ありがとう。ーーー貰っておくよ。」

 

エミリーは微笑んだ。

 

「ーーー如何いたしまして。汚れたって、よく洗って乾かせば綺麗になるわ。そしたら、また使えるから。」

 

騎士はただ頷いた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 エミリーはゆったりとした足取りで森の中を歩いて行く。騎士はそんな彼女を暫く見て居たが、ふと何か思う所があったのか、彼女に話しかけた。

 

 

「ーーー写真を撮りに来た…と言っていたな。」

 

エミリーが振り向いた。

 

「ーーーえ?…ええ。そうよ、森の写真をね。」

 

「ーーー何故だ?只の森だろう。」

 

エミリーは首を振った。

 

「いやいや。勿論ちゃんとした理由があるわよ。ーーー私達はこのレベルからの出口を探してるの。…此処はずっと森が続くから、写真を撮ったりして森の様子を知る事も大事なのよ。ーーーそれで、地図とか作れば道に迷ったりしないでしょ?」

 

「……ああ。そうか…キミも放浪者だったな。」

 

 エミリーはちょっと不思議そうな顔をして、騎士の方を見た。

 

「…貴方も放浪者なんでしょ?今から行く村も、放浪者達の村よ。…みんな此処で長い時間を掛けながら、出口を探しているわ。…森には危険がいっぱいだけど、きっと何処かに出口がある筈だもの。」

 

 そう言って微笑むエミリーの顔を、それ以上見る事が出来なくなって騎士は目を逸らした。

 

…自分がとっくのとうに無くしていた希望を、まだ彼女は持っていたーーーーーソレが少し羨ましく、そして疑問にも思った。

 

 

…何故、先の見えない世界でもこんなに笑っていられるのだろうか?

 

 

「ーーーーーーーーそれは過酷な道のりだろう。……不安にさせることを言うかも知れないが、出口なんて無い…とは思ったりしないのか?」

 

 エミリーはちょっとの間、黙り込んでから口を開いた。……少し遠い所を見るかのように、ゆっくりと話し始める。

 

「ーーーーーーーーー勿論、確証はないわ。…でも、探すことを諦めちゃったら、出口を信じて探し求め、死んでいっちゃった先人達に顔向けできないでしょ?」

 

騎士は黙ったまま彼女の話を聞く。

 

「ーーー私も、友達を森の探検で亡くしたわ。……貴方の言う通り、確かに過酷な道よ…。」

 

 そう言った彼女の顔は陰っていた。騎士は自分の嘗ての仲間達を思い出す。……それらを失った日も。

 

ーーーーーー騎士は思わず疑問を口に出していた。

 

 

「ーーーーーーーーーならば何故進む…。友を失くした苦しみは筆舌に尽くし難いモノだろう。私もそうだった…貴方は、誰かと死に別れる事が怖くないのか?」

 

 

 エミリーは顔を上げた。…ソコには、驚くほど強い力強い眼差しが宿っていて、騎士は少したじろいだ。

 

 

「ーーーでも、まだ私の中にはみんな生きてるわ。……皆んなが忘れない限り、心の中に生きてるの。ーーーーーーそしていつか元の世界に帰った時、私がその人達の生きた証を世界に遺すのよ。…そうすれば死んでおしまいなんて事にはならないわ。」

 

 

彼女の視線を受けて、騎士は呟いた。

 

「……強いな。キミは。ーーー私には出来そうにない……。」

 

エミリーは小さく首を振る。

 

「ーーー出来るわよ。…貴方が今までどんな旅をしてきたか分からないけれど、誰にも会わなかった事なんて無いでしょ?ーーーーーー出会った人達のことを、ちゃんと覚えているだけで良いの。…そうすれば、その人達が死んでしまっても貴方が生きた証を持っていることで、その死は無意味なモノじゃなくなるわ。」

 

「ーーーーーーーーーなら、キミの事も…覚えておけば……?」

 

騎士の呟きにエミリーは笑って返した。

 

「そうね。…私の事も、貴方が覚えて居てくれれば良いわ。……他の皆んなもそうよ。コレから貴方が出会う人達も…ね。」

 

 

 

ーーーーーーーーーその言葉は、騎士の心の中に今でも残り続けている。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、それから長い時が経った。

 

 

 騎士はあれから、1人でも多くの人が生きた証を残しておく為に、バックルームを彷徨う事になった。

 

 

 

…沢山の人に出会った。

 

…沢山の人が生きて居た。

 

…皆んな、歩き続けて居た。

 

 

 

 彼等が道の途中で力尽きようとも、自分が彼等の軌跡を覚えておけば、その死は無駄なモノではなくなる。……コレは安っぽい慰めだろうか?ーーーいや、きっとコレは大事な事なのだ。

 

 

 

 死んだ者たちを忘れない…コレは生きて先へ進む生者の義務でもある。騎士はそう思うようになった。

 

 

ーーーーーーーーーいつか、いつの日か、この世界から解き放たれた時に、自分がこのバックルームに挑んだ勇気ある先人達の、生き様を知る証人となる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーそして舞台はレベル11へ戻る。

 

 

 

 騎士は瓦礫の中心で、ついさっきまで殺し合っていた男を見下ろしていた。

 

 度重なる激闘で、彼の持つ〈クリムゾンハート〉が急速に弱まっていくのを騎士は感じ取った。鼓動は間も無くやむだろう。…それを理解しているのか、男が騎士を見上げてボソリと呟く。

 

 

「ーーーーーーーーー出会いか………。」

 

騎士は頷く。

 

「ーーーああ。……人々が生きた証を残す為に私は生きようと思った。…失った仲間達の事も、嘗てのように忘れかける事も無い。……覚えてい

る限り、人は生きるのだ。」

 

 

 男は地面に這いつくばったまま、薄らと笑って騎士の足を掴んだ。…震える声が、騎士にかけられる。

 

 

「……なら、ならアンタ…俺の事も、覚えておいてくれるのか?ーーーーーーーーー俺の辿ってきた道も、想いも、何もかも全部アンタが背負って覚えてくれるのか…?」

 

 騎士は跪いて、彼の手を握った。ーーーそして、最早風前の灯となった彼に、語りかける。

 

 

「ーーーーーーーーーあぁ、覚えておこう。キミの辿った道も、キミが感じた想いも、キミが話した事も全て。……キミがここまで生きてきた事は無駄では無かった。…私がソレを証明しておこう。」

 

 

男は笑った。……屈託の無い笑顔だった。

 

 

「ーーーーーーーーー嗚呼………それは……良かった……………。」

 

 

 最後の最後に、彼は騎士に希望を与えられたのだ。

 

 男の手から力が無くなり、男は目を閉じた。その顔に笑みを浮かべたままーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーこうしてレベル11での戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

場所:???

 

 

〈???視点〉

 

 

「ーーーーーーーーー残念…。良いところまで行ったのだがなぁ。」

 

 

 死んだように静かで暗い部屋の中で、ボロボロの服を纏った者が1人、虚空を見つめて呟いた。

 

 

 闇の中で輝くオレンジの瞳が、キョロキョロと動いて、そして閉じた。ーーーため息が1つ、闇の中に響く。

 

「ーーーーーーーーーまぁ、良い。またいつか、挑戦するにふさわしい者が現れるだろう…。時間なら、無限にあるからな。」

 

 

…………そして今度は闇の中に笑い声が響く。

 

 

「ーーーーーーハハハハハハハハ…………〈ALPHAOMEGA〉への道を開く者はまた必ず現れる!!その時だ…その時、我はまた王冠をこの手に…………。」

 

 

 

彼は笑う…………何処までも、傲慢に。

 

 

 

 

 

 

……何の話かって?あぁ、今は彼の言葉の意味を気にする必要はない。…君は歩きたまえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

…なぁ、アンタはバックルームの伝説を知ってるか?

 

 

 俺達がバックルームのど真ん中で如何しようも無くなって、あとはもう神に祈るしか無いって時に必ずやって来て助けてくれる、あの騎(・)士(・)の事を。

 

 

 何者なのかは分からない。でもソイツはバックルームを彷徨う者にとっては救いの象徴なのさ。

 

 

…………騎士は俺たちに手を差し伸べる、そして導いてくれる。何故そんな事をしてくれるのか?…別に命を救う代わりに何かを求める事も無い。ただ無償で助けてくれるだけ……不思議な存在だろう?

 

 

だから誰しもが彼の事を知ろうとして、尋ねるんだ。

 

 

『貴方は誰だ』って。

 

 

帰ってくる答えは決まってこうだ。

 

 

 

 

 

 

『私は騎士だ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






…………トウトツニオワッタ。

取り敢えず、ブツ切りですが完結といたします。……コレ読んでる人居るんかね?

ーーーーーーーーーいやー、よく考えずにノリで描き始めるのはやっぱ危ないっすね。話が続かない事この上ない。

反省して次頑張ろう。ウン。

ーーーって事でまたどっかで逢いましょうか。

サラダバーヽ(・∀・)

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