白夜の中の渡り鳥   作:凍り灯

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真白な床、緩む糸

 

 

 

 

 

遠くに聞こえる連続して咆哮(ほうこう)を上げる大砲の音、船内を駆け回る船員の慌しい足音、それに伴う振動によって棚に並ぶあらゆるラベルの貼られた瓶がカタカタと騒ぎ続けている。

船が90度傾こうが、瓶が床に中身をバラまかないように取り付けられた落下防止の処置も、瓶同士がぶつかり合う小さな喧嘩までは止めることはできない。その小さな音が目立つほどに、このある程度防音の効いた部屋は静かだ。室内で苦悶(くもん)の声をあげて騒ぐ船員も、まだいない。

 

このまま静かにこの戦闘が―――

 

「何してんだよい!」

「きっちりと準備をしたから…サボってる」

「だろうと思ったよい!」

 

勢いよく開けられたドアから、マルコが眉間に(しわ)を寄せて飛び込んでくる。

ジャケットの(えり)を掴まれ、狭い医務室からズルズルと引きずりだされながら、俺は木張りの床を全身で味わいながらマルコの後頭部を見上げた。

 

「いやぁめんどいっすよ…どうせあれだろ、あの"バカ"が最初に運ばれてきて、後は怪我人もなく俺たちがずっと駄弁り始めるだけだよな」

「もしもに備えんのが俺たちの役目だろうよい」

 

そうは言われても、マルコがわざわざ俺を探す暇がある時点でお察しだ。

否応(いやおう)無しに聞こえてくる"声"はどれも敵船の者たちばかり。…蹂躙(じゅうりん)だ。そりゃぁ新入りが怪我をすることもあるだろうが、それを防ぐために「再生の炎(能力)」を持つマルコが常に前線を見張っているのが常。

つまりここにいるということはその必要すらないほどだってこと。

 

狭い医務室を出て、階段に尻をぶつけながら甲板(かんぱん)上へと上げられる。甲板上は既に幾つかの大型のテントや、壁のない屋根だけの簡易テントが立ち並び、その下には綺麗に一定感覚で怪我人用の寝具類、医療器具が整列する。同じように並んだ折りたたみ式のデスクの前には"オヤジ"の趣味で豹柄と短いスカートの看護服を着たナースたちが待機していた。

引きずられている俺に会釈をする彼女らに適当に手を振りかえしていれば、視界が一回転、雑に放り投げられた。床に背をつけた俺が見上げた先、すぐ目の前にはオレンジ色のテンガロンハット。

 

「お、やっと出てきやがった」

「おー。今日の"野戦病院"の防衛当番はお前か、エース。珍しいな?」

 

俺の一言にエースは軽薄そうな笑みを潜めてぶー垂れた。ぶー垂れ顔のままその上半身裸の格好のまま船の床に背中をつけて仰向けに、腕枕をして足を組み、いかにも「拗ねてます」と言った態度。別に怪我人用のマットに寝ていいぞ?どうせあまり来ない。

そのエースを見下ろしながらマルコが意地悪そうに笑う。

 

「コイツはな〜ルート、この前の海戦の時に一人で突っ込んだから、今日は親父直々の命令でここまで下げられたんだよい」

「そりゃまた何でだ。他にも突っ込むバカはいるだろう?余程無茶したか?」

「…してねぇよ…」

 

エースから感じた感情は"羞恥心"。そこで俺は察する。この船に"息子"として迎え入れられた人間なら、多くがやらかす()()だ。

 

「あぁ、"オヤジ"の悪口でも言われたか…それで、か」

「そうだよい」

「ぶーぶー」

「何今更恥ずかしがってるんだよい」

「しかし、そいつらもそいつらで命知らずだな…」

 

現に、この前沈められていたから既に命はないのだが。

 

「つーわけだよい。じゃぁ俺は行くよい」

「ああ、気をつけろ」

 

青い炎を(まと)ったマルコは、その身を鳥へと変化させて飛び去っていく。その先では、こんな呑気な会話にはまるで釣り合わない黒煙と炎…まぁ燃えてるのも沈みそうなのも敵船なのだが。

未だぶー垂れポーズのままのエースの横に椅子を持ってきて座り、空高く立ち上がる黒煙をなんとなしに眺める。

 

その根本、燃え上がる船からは断末魔の"声"がガンガンと俺の頭へと流れ込んできている。

後悔、絶望、諦め、なんとも(おぞ)ましい限りだ。目で見える範囲であれば余計に"声"ははっきりと大きくなる、なってしまう。取捨選択の余地はなく、全てが流れ込む。

 

「………だからやなんだよなぁ」

「何がだ?」

 

俺の独り言をエースが拾い、その三白眼と目が合う。

俺も独り言うようなおっさんになっちまったか…とげんなりしたところで、遠くから早くもここへと舞い戻る青い不死鳥………の足に引っ下げられている男を見つけた。

 

「…いやな、見ろよエース。俺が後方担当の時はいつもあいつが運ばれてくる」

「あいつって…あぁ、見えた…」

 

上半身を起き上がらせたエース、ため息を吐く俺、二人の目線の先には巨体を持った騒がしい男。

 

「怪我人!任せたよい!」

 

そうして怪我人なのにわりかし雑に地面へと捨てられた男を尻目に再び苦労人マルコは戦場へと羽ばたいていった。すぐに俺を先頭に寝転がっていたエースと待機中のナースを二名引き連れてそいつの元まで歩みを進める。目の前まで来たところで俺は再度空を飛んでいったマルコの背を見上げた。

飛べる人間は貴重だ、それだけで一気に役割は増え、忙しなく駆けずり回らなければいけないのは間違いないのだろう。それでもどうにも、羨ましくなってしまう。

 

「――――――で、今日はなんだ、"ティーチ"」

「ゼハハハハハ!!爆風で吹っ飛んできた舵輪が腹に刺さっちまった!!」

「どこぞの"金獅子"とお揃いで頭に刺されば良かったのに」

「ヒデェな!?取り敢えずよろしく頼むぜ!」

 

いつもいつもこいつは真っ先に運ばれてくる。何度言おうと、痛い目見ようと()りないのだ。突っ込んで怪我して笑ってまた突っ込む。その繰り返しだ。俺はジェスチャーでナース二人に「下がっていい」と伝え、ティーチをむすっと見た。

そのティーチは何がおかしいのか大笑いしながら、腹に舵輪がぶっ刺さったまま構わずその場に座り込む。さぁ、さっさとやってくれや!とでも言いたげに。

エースがその腹の舵輪をうへぇと言わんばかりの顔で見ている。

 

めんどくせぇなぁ。

 

どうせこいつはちょっとやそっとじゃ死なん。とは言え、やることはやる。

俺は舵輪を握り込んだ。

 

「はいよ」

「ぐへぇ!?いきなり引っこ抜くやつがあるか!?」

「おおい!結構血出てんなティーチ!?大丈夫かよルート!?焼いて塞ぐか!?」

「そっちの方が嫌だぜエース隊長!?」

「こいつはほら、頑丈だから大丈夫だ?」

「疑問系じゃねぇか!?本当に大丈夫か!?お前ってティーチにだけやたら辛辣(しんらつ)だよな!?」

「まぁな、日頃の恨みだ」

「言い切りやがった!血は止めてやれよ!?」

 

ティーチの腹から噴き出る血、慌てるエース。後ろでひそひそ慌てるナースたち。

あぁ、甲板上は和気藹々(わきあいあい)としていて平和なもんだった。

 

 

しかし、そう言う時だからこそたまにこう言うことが起こる。

 

 

「ルート」

「ん?マルコ、何あったのか?」

 

ティーチの治療も終わり、三人で緊張感もなく雑談をしていれば、再びマルコが降りてきた。話してる途中も見聞色で警戒していたが、まだ戦闘が終わった気配はないし、こちら側に怪我人も大していないのだが―――

 

「―――あーわかった。行くよ」

 

続きを聞くまでもなく、理解した。

選手交代だ。基本的に俺は後方支援だが、戦える力があることに越したことはない。こうやって適度に入れ替わり、前線で立ち回って腕が鈍らないようにする。その裁量は同じ船医でありより古株のマルコに一任されている。

 

立て掛けてあった"羽刀"を片手に椅子から立ち上がり、パキリと指を鳴らす。

「俺も行っていいか?」「ダメに決まってるよい」「ぶーぶー」「ゼハハハハハ!いいもん奪ってこいよ!」なんて声を背に、船の(へり)へと足をかけた、が。

 

「…遠いな」

 

如何(いか)せん、敵船までの距離が遠い。隣の船まではなんとか飛び乗れるが、それ以降は厳しそうだ。

 

「だからこうするよい」

「お」

 

大きな鳥の爪が俺の胴体を掴む。あぁ、これは…

 

「鳥になって来るよい」

「…それは成功した覚えが今まで一度も―――」

 

言葉は続かず、俺は遠心力をつけて射出された。

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

眼下に浮かぶモビーディック号を超え、そこから手を振る船員の面々に手を振りかえしてロケットの如く突き進んでいる俺は前方を睨んだ。目標はたった今逃げ出した敵海賊団のフラグシップ(旗艦)

打ち出されてしまったものは仕方ないし、流石に慣れた。やがて逃げる敵船にぴたりと張り付いて追いかける別のモビーディック号の頭上にたどり着いたところで、顔面に凄まじい風を受けながら俺はふと考える。

 

あ?位置ずれてないか?

 

「いや、海じゃないだけだいぶマ」

 

 

俺は敵船の甲板上…ではなく、船尾へと派手に突っ込んだのだった。

 

 

「あ!ルートが船尾に突っ込んだ!」

「またマルコがミスったか」

「遅れを取るなよ!ルートに続けぇ!!」

「おおおおおおおおおおおッ!!!」

 

 

 

 

「おーじゃないんだよ…危なかった…」

 

船尾の木壁を刻んでぶち破り、ついでに目に入った海賊どもを二人勢いのまま()ね飛ばして地面を転がり片膝をついて思わず一言。

見回せばここは船尾(ろう)…船長室だろうか?あまりいい趣味とは言えないが、なるほど金はかけてあると一目でわかる派手な内装だ。

 

「…で?この机の上の明らかに高そうな宝箱は?」

 

たった今吹き飛ばしたやつらが守っていたと思われるのがこれだ。白髭海賊団に追われる絶体絶命のこの時でも船員に守らせていたとなると相当貴重なものだろう…こう言う明からさまなものを見ると、多少はワクワクしてしまう。他のやつらもすぐ乗り込んでくるが、先に中身を見るくらいはいいだろう。

 

 

「―――…成程、な」

 

 

その中には紫色をしたパイナップルのような果実―――悪魔の実だ。それが、宝箱の中に入れられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

床に落ちたカンテラの灯だけが頼りの真っ白な空間、そこで鍔競(つばぜ)り合いをするモネの白い羽と俺の"羽刀(はねがたな)"。

 

"羽刀"

諸刃(もろは)の刃を持つ歴とした刀で、その肉厚の刀身と、他の刀と同じように湾曲した形状と幅に対して短い刀身が、一見して鳥の羽のように見えることからそう名付けている。刀にしては幅が広すぎるのは"オヤジ"のような大柄な人間が扱うことを想定していたのだろう。実際に、見つけた当初は中頃から綺麗にへし折れており、本当はもっと長い刀だったのが分かる。それを研いで切っ先を整えてようやく俺のような体躯の人間に合う長さになった。

"(つか)"を取り付けるにも俺の手では片手で握るには無理がある太さになるため、刃からそのまま続く鉄の"(なかご)"部分を削りサイズを調整、そこに上から樹皮を巻きつけ持ち手としている。

銘は不明だが、質はいい。まだ海賊にもなる前、十にも届かない年頃の頃に死体から拝借した名もなき刀。以降ずっとそれは20年数年もの間手元にある。

 

刃をモネに向けるわけにはいかない。

諸刃故に(みね)のない刀で切ってしまわないように俺はモネの翼を刀の腹で受け、その刃越しにモネの目を見ていた。

 

目は怒りを十分に蓄えており、瞳孔は開き切っている。殺意がピリピリと肌を冷気と共に撫で付け、ゾクリ、と体の()が震える。

 

「懐かしいなぁ…」

 

久しく感じていなかったこの空気。

たった二年、されど二年!戦いに狂うタイプではないが、それでもかつての船上での日々を思い出すこの状況に、小さく笑みが浮かぶ。

 

「っ!…そうやって笑って…!人を、見下してッ!!」

 

しまった。地雷だったようだ。

 

だが押し込む力は増えたが、それでも形勢は変わらない…俺の既に体は人間形態から人獣形態へと変化しているのだ。

動物(ゾオン)系、トリトリの実。動物(ゾオン)系とは言え、鳥であるからか膂力(りょりょく)の増大に関しては他の種に比べると劣る。劣ると言ってもそれでも確かに上がっているのは間違いない。鳥の胸筋は翼を動かすために特に発達しており、それだけで体重の15%~25%を占めるほどだ。弱いわけがない。

 

翼で羽刀を握り込み、押し返す。

怒りのままに力を振るうようじゃ勝てないぞ、どうする?

 

「万年雪ッ!!」

 

部屋中に降り積もる雪が動き出し、俺たち二人を中心に渦巻き始める。閉じ込め、能力で凍死、あるいは圧殺する気か。

 

―――ここは地上の私室と同じ、広さ10畳の地下室。

資料を保管する棚があることによってせいぜい自由に動けるのは6畳ほど、戦うにはあまりに狭い。互いに羽を伸ばしてもぶつかるほどの狭さ、衝動的な翼での攻撃はこれっきりで、必然的に能力を主軸の先頭にシフトしていくと予想はついていた。

 

だからこちらも、まともにやりあう気はない。短期決戦、不意をつき終わらせる。それの算段は、これだ。

 

「悪いな…少し熱いかもしれんが」

 

床に転がした、灯のついたままのカンテラに向けて足を持ち上げ。

 

「何を…っ!」

 

動きを止めようと絡みつく雪を無視して、鳥の硬い爪でカンテラを踏み抜いた。

 

 

瞬間、光が俺たちを覆う。

 

 

「きゃっ!」

「っう…!」

 

このカンテラは"カーバイドランプ"だ。

燃料の"カーバイド"は、水と反応して引火性と爆発性の高いアセチレンガスを発生させる危険なもの…つまりこのカンテラは水とカーバイドを容器に入れ、必要量のガスを発生させ着火させることで火の灯りを確保するランプだ。

容器を破壊したことでカーバイドと水…おまけにあたりの雪も追加して多量のガスが発生、瞬時に引火して小規模な爆発が起こった。

 

…所詮は小さな爆発、しかし俺たちの周りにはそれをよく()()させる真っ白な雪が囲んでいる。想像以上の光量は、モネの目に入り込む。

 

「あぁっ!……つよい光、ひかりが…っぁ!」

 

―――それがきっと、トラウマなのだと分かってて俺はやった。

 

心の傷をさらに(えぐ)るような所業。

小さな罪悪感を他所(よそ)に、刀を投げ捨て、目元を翼で(おお)って(もだ)えるモネの肩を掴み素早く、且つ優しく雪の敷き詰められた床へと押し倒した。モネは混乱しているのか、そのことにすら彼女は気がついていない。ただただ光を拒む叫びが、そしてそれに反するように暗闇に戻りたくないと言う矛盾する叫びが頭の中に流れ込んでくる。

幼いモネが、不定のストロボが()かれる白と黒の連続する世界でもがいている。水底に沈んで、浮き上がれない人間のように。

近ければ近い程、強く認識できる距離にいればいる程それは強力にイメージが脳裏に焼き付いて来る…けれどそんな叫びは、()()()の上で聞き飽きていた。今更、何を(おく)することがあるものか。

 

混乱状態によって能力も満足に働いていない…雪はさらに無茶苦茶に吹き荒れているが、それだけだ。

人獣形態を解除し、鎮静剤の入った注射器を構える。モネの体に急な圧を与えないようにゆっくりと地面に押さえつける力を強く加えていき、大きく動けないように固定。そのまま顔を覆う翼の隙間を縫って首の側面の内頸静脈(ないけいじょうみゃく)へと針を素早く刺し入れた。

 

針の突き入る感覚に、俺の存在を思い出したモネがその金色の瞳で見上げ、目があった。

 

その時、薬が効くまでのこの一瞬に、一撃もらうことを覚悟した俺に…しかしモネは俺を見て両翼の力を抜いた―――何故だろうか…その時最後に聞こえた"声"は、"安堵"だった。

 

「――――――っぁ………」

「大丈夫だ…大丈夫…」

 

地下室の床に薄っすら積もった雪はモネの支配下から外れたためか溶け始めている。温暖な気候なためそれもそうだろう、俺は溶けた雪で濡れないように手のひらをモネの頭の下に置き、優しく支える。溶け始めたとはいえまだどこもかしこも雪だらけでひどく冷えるが、それを悟らせないように体の震えさえコントロールして。

まだ薬は効き切ってない。

痛み止めをずっと服用していたせいか、やや効きにくくなっているのだろう。うつらうつらと意識が落ちる間際を、モネは薄く目を開けながら彷徨(さまよ)っていた。

 

…何か、伝えようとしたのか口が小さく動く。

 

「――――――…」

「…なんだ?」

「――――――妹が、寝れるように―――お話を、しない…と…」

 

「ここか、ら―――いつか、出れるよう―――に…って…」

 

「自、由に―――なれる…そんな、お話を―――」

 

「お、父さん―――許し、て…じゃない、と――――シュ、ガーは………眠れ、ない」

 

 

頭に流れ込む、黒の中に浮く、一羽の真っ白な鳥が入った鳥(かご)のイメージ。

思いつくのは北の海(ノースブルー)の童話。偉大なる航路(グランドライン)出身の俺は、偶然子供の頃にティーチと盗んだ本の中にあったから覚えている…この家にも、前の家主が置いていった本の中にあったから懐かしくて手に取ったものだ。だからよく、覚えている。

『夜の中の小鳥』…そこに描かれた表紙と、このイメージはかなり似通っていた。

 

 

「シュガー…――――――」

「………」

 

 

 

「―――少年は鳥籠の中の小鳥をまるで子供のように可愛いがっていました」

 

「いい子だね、いい子だね」

 

「可愛いね、可愛いね」

 

「鳥籠の中で、それはそれは大事に育てられていました」

 

「しかし小鳥はある日、どうしても鳥籠の外の大空を飛びたいといいます」

 

「少年はそれを許しません、こんなに可愛がってあげているのに、何てことを言うんだ、と」

 

「小鳥はそれきり外に出たいとは言いませんでしたが、毎日自分が大空の中を飛ぶ…"夢"を見るようになります」

 

「小鳥はもう一度だけ、少年にお願いします。どうか一度だけでいいから外に出してほしいと」

 

「意地っぱりな少年はそれでもダメだと聞きませんでした」

 

「それから太陽が五回昇って沈んだ夜に…"強い光"が外を照らします」

 

「さっき沈んだばかりの太陽が昇ったのかと、小鳥は驚きました」

 

「そして小鳥は、いつの間にか鳥籠が無くなっていることに気がつきます」

 

「外は何故か夜のままでしたが、小鳥は喜びます」

 

「これで自由だ!夢にまで見た!」

 

「小鳥は星空へと飛び立ちます」

 

「もう二度と、戻ることはありませんでした」

 

「小鳥は自由になったのです―――」

 

 

 

 

 

「――――――そうだ、だからもう自由に生きていいんだ、モネ」

 

 

 

 

 

 

クルルルルルルルルルルル…

 

 

安らかに目を閉じるモネに(ささや)けば、遠くでチューイが心配するように何度も鳴いた。

 

クルル、ルル………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 














お気に入り登録者数200人突破しました!何で!?ありがとうございます!

そして完全に伝え忘れておりました。毎話ごとに誤字報告をしていただきありがとうございます。自分一人だと気がつけないことが多いので本当に助かっております。
今後とも稚拙なこの作品めをどうぞよろしくお願いします。
よければお気軽に感想をどうぞ。

※一部キャラ同士の呼び方に誤りがあったので修正しました。22/11/24
※誤字がありましたのでひっそり修正しました。23/03/07


■ルート
元白髭海賊団1番隊船医。
戦闘時は主に後方の船の甲板上で、野戦病院さながらに大勢の怪我人を受け入れ可能な設備を準備して待っている。きっちり準備してから船内に逃げた。
懸賞金は0。これはほとんどが後方での治療担当だったからなのと、自分の死のリスクを下げるため目立たないようにしていたから。26年に渡って在籍していた。

モネが何かに囚われ続けていることは、よく理解した。


■モネ
つよい光の後にはあの人がいた。
愛しくて憎くて仕方がない不敵に笑う彼、どうして私の前に現れるの?キリリと張り詰めた音がすれば全てが切り裂かれる。
あの日も、緑髪の剣士が私を切り裂いた、真っ二つに、あの日の父のように私はなった。

また差し込んできたつよい光の後に、今度はあの人はいなかった。


■ティーチ
ルートの4歳年上。
ルートに(笑いながら)迷惑をかけることが多いからたまに冗談にならない仕返しをされる。
互いに古い付き合い。


■マルコ
ルートの9歳年上。
医者見習いの時にまだ8歳のルートが入団してきた。既にどこか冷めきったような子供だったのを覚えている。以降、当人の意思もあってか、共に医術を学んできた弟分の一人。
ルートの制御不能の見聞色のことは当然知っている。


■エース
ルートの14歳年下ぶー垂れポートガス。
彼にとってティーチとルートはセットのイメージがある。余談だが入団当時のジンベイとの怪我を治療した一人にルートもいて、前々話の「炎よかマシか…」はそういうこと。


■『夜の中の小鳥』 
強い光の後に、きっと夜に飛び立てるはず。
白夜の中は居心地が良いけれど、その()に囚われる必要はない。もうないんだから。

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