ガバガバですが許して下さい
私の鎮守府には提督の補佐の方がいます。ただ補佐と言っても秘書官や大淀さんではありません、人間の若い男の人です。
私が彼と初めて出会ったのはカボチャ畑でした。珍しくお冬さんも姉さん達も非番で、いつもは交代で行っている畑仕事を皆で行っている時だったのを覚えています。
手の届く範囲の雑草を引き終わりふと立ち上がってみると、見知らぬ男の人が近くの畦道にしゃがみ込み苗を観察していました。
「これは君達がつくってるのかい?」
こちらも振り向かずにかけられた言葉はひどくのんびりとしていて、完全に無警戒である事が伝わってくる程でした。
カボチャの苗を観察しているんでしょうか?
確かに鎮守府では珍しいでしょうし、あまりに邪魔にならない様に……
そこまで考えてはっとしました。
あまりにも自然で気がついていませんでしたが、顔も知らない男性が付き添いも無しに鎮守府内にいたのです。それも、比較的奥の方にある私達の畑に。
逃げられない様に取り押さえてしまいましょう。話は後ででも聞けます。
そう判断した私は、返事が無い事すら気がついていない不審者を一瞬で取り押さえました。駆逐艦とはいえ艦娘です。1度取り押さえてしまえば人間ではそうそう抜けられません。
取り押さえられ、べしゃりと倒れる彼。
「!?!?ちょっと!?」
「姉さん!お冬さん!」
よかった……!お冬さん達を呼ばなくちゃ。
逃げられると大変ですから、拘束の手を緩めるような事はしません。しっかりと腕を締め、すぐに皆に声をかけました。比較的近くにいたお冬さんがすぐに駆け寄ってき、肥料やジョウロを持っていた秋月姉さん達が続いて集まりました。
「まって!ストップ!頼むから名札をみてくれないかな!あともう少しサブミッションを緩めて貰えると助かるんだけど!凄く痛い!」
無理に抵抗せずタップを繰り返すあたり、武術経験者なのでしょうか……?とりあえず、名札を見て貰えばわかるでしょう。
私は後ろから拘束している関係で、名札を見ることができません。彼を慎重に立たせ、到着したお冬さん達に確認して貰います。
「友野鎮守府 提督補佐……」
首から下がる名札、それを読み上げる照月姉さんの声は先に進むにつれ小さくなっていきました。
さっと血の気が失せていくのがわかりました。周りを見ると、皆の顔も青くなっていました。
艦娘はその性質上かなり特殊な扱いになりますが、基本的に階級としては提督の下にあたります。提督補佐もまた提督の下という扱いになりますが、限定的な艦隊の指揮権を持っているのです。つまり明記こそされていませんが、実質的に艦娘より上の立場となる階級なのです。
それでなくても、客人に対しての振る舞いというのは鎮守府の評判に直結します。間違えて傷害を負わせたとなっては只事では済みません。
「あ……す、すみません!」
「いや、私こそ。説明も無しに訪れてしまって申し訳ない」
パッと手を離し、すぐに頭を下げました。
下がった視界に銀色の髪が見えましたから、お冬さん達も頭を下げていたのだと思います。
お互いに頭を下げあい、居心地の悪い空気が流れます。
「えっと、君達がこの畑を管理してる……って事でいいのかな?」
「あ、はい。そうです。秋月型の皆で南瓜を作っているんです」
彼の一言で私達は頭を上げました。
私はここで初めて彼の顔を見ました。
困ったような申し訳ないような表情の顔でした。
そして顔が見えるという事は、当然その下の体も見えるという事です。服だけでなく顔までついた泥汚れが目に止まり、罪悪感が押し寄せて来ました。何かしらの処分を受ける事も覚悟の上でした。
「そっか、重ね重ねになるけど本当にごめん。鎮守府の窓からこの畑が見えたから、気になって来てみたんだ」
しかし、彼はそんな事は全く気にしていない様子でした。
変わっている、そう思いました。
確かに提督としての素質というのは人を選ばず発現します。けれど、この様な役職の人は大抵服に土がつく事をもっと忌避するものです。
「えっと……今日は休みで暇なんだ。一緒に作業をさせて貰えないかな……と思ったんだけど」
おっかなびっくりといった様子での提案に、私達は思わず顔を見合わせました。
こんな人と出会ったのは初めてでした。
休みの日は書類をこなしたり読書をしたり、鍛錬をするのが私達が考える軍人であり、また今まで見てきた軍人達の多くがそうだったのですから無理もないです。
「だ、大丈夫だと思います……よ?ね?」
「あ、秋月は大丈夫です!」
「……ああ。私も構わない」
「う、うん……」
「私も……」
皆、上擦った声でこくこくと頷きました。
断る選択肢なんてありませんでした。
「あ~……そんなに固くならなくても。私、そんな偉くないし。もっと気軽でいいよ」
「本当ですか……?」
ここでそう聞ける照月姉さんの明るい性格が少し羨ましいです。
実際に取り押さえてないので、迷惑をあまりかけていないのもあるんでしょうけど。
「ほんとほんと、大本営でなんて……」
そんな彼の言葉を遮るように胸ポケットが震えました。
「あ、はい、提督補佐です……え?あ、うん、本当にごめんなさい……はい……反省してます……はい……いや、ほんと助かる……え?ああ、わかった」
チラリとこちらを確認し、スピーカーモードにしたスマホを手渡して来る彼。
『突然すまない、秋月型の皆でいいだろうか?』
なんと、電話の相手は提督でした。
「は、はい!秋月型、全員揃っております!」
『そうか。そこの男が迷惑をかけたようですまない。この件において君達に一切非は無いので安心して欲しい。それと、そいつは使い潰して貰って構わない。私が許可しよう』
「え……え?」
皆、驚きのあまりぽかんとしてしまいました。
私達の提督はとても生真面目で硬い方です。そんな部下にも人一倍丁寧に接する方が、こんな風に人を扱う所なんて想像もできませんでした。
『勿論邪魔なら追い払わせるが……』
「い、いえ!問題ありません!大丈夫です!」
『そうか。非番の日にすまなかった。では失礼する』
ぶつりと通話が切れると、また居心地の悪い静寂が漂います。
「まあ、そういう訳だから……とりあえず、私の事は気にしないで、作業に戻って貰えれば……」
「ええっと……わかりました」
秋月姉さんの言葉と共に、皆は農作業に戻って行きました。
つまり、私と彼だけがこの場に残されました。
待って下さい。ちらちらと確認するだけじゃなくて、フォローして貰えないでしょうか!?
固まってしまった私をおいて、彼はしゃがみこみました。
「……いやあ、よかった。潰してしまったかと焦ったよ」
あっ……
ほっとした声を出す彼の視線の先には、えぐれた畝と無事なカボチャの苗がありました。地面に押し付けて拘束しましたから、普通なら潰れていたでしょう。それを彼は無理やり倒れる場所をずらす事で回避していたのでした。
「……えっと……」
「あ、補佐さんでも雑用係でも、好きに呼んで貰っていいよ」
ざ、雑用係……提督の1件もあり彼の扱いが少し心配になってしまいます。
「……でしたら補佐さんで……補佐さんは提督とどの様な関係なんですか?」
「ん〜、同期で訓練生時代からの腐れ縁かなぁ。どうも私は提督には向いてないらしくて、こんなに出遅れちゃったんだよねぇ」
「あ、スコップならあっちに……」
「いいのいいの。少しだし、私がやった事だしね」
この人には驚かされてばかりです。
何せ手で崩れた畝を直し、そのまま雑草を抜き始めたのですから。
悪い人ではないのでしょう。そして同時に、提督には向いていないという言葉の意味が少しわかった気がしました。
すごく難産でした
反応次第で続くかもしれないし続かないかもしれない
幕間的な感じのヤツは要りますか?
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いる
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いらない
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(´・ω・`)出荷よー