「『華に欠ける』という印象論に代表されるような、各家庭の安楽椅子トレーナーたちから投げかけられる無責任かつ的はずれな意見を無視したとしても、その年のクラシック三冠戦線がややパンチに欠けていたのは事実だった。それがひとえに未完の大器フジキセキの電撃引退に依って引き起こされたムードであったことは、あえてあげつらうまでもない。
(中略)……秋に皐月賞覇者ジェニュインが天皇賞でサクラチトセオーの二着という好成績を残そうと、暮れの有馬記念をトップガンが押し切って勝とうと、結局のところメディアや世間はたら・ればに目を向けていた。彼女らを手放しで讃えようという熱意が薄い。それがトップガンを担当していた私の肌にもひしひしと感じられたくらいだから、選手たちが味わった寂しさ、やるせなさは一通りではなかっただろう。
無理もない。この世代の生徒たちは誰もがフジキセキの強さを知っていた。心のどこかで、自分たちが勝ち得たものがフジキセキの不在に乗じた成果なのではないかという思いを振り払えずにいたのだ。謂れのない中傷であったならば、まだ耐えようはあったものの……
『フジキセキが三冠全てに出走していたなら』
そして、『ナリタブライアンが無事だったなら』
この後二年に渡って私とトップガンを苦しめた、実に残酷な仮定である」
んなこと言ったって、走るっきゃなかったんだよな。みんなさ。
──駿栄社刊『ハンマーソングを待ちながら』(著作・畠山繁之/乙名史悦子、二○XX年)より抜粋
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
岡澤浩一郎という男の図体の巨大さと来たら、たとえ雑踏の百メートル向こうに現れようと、衆人にとって無視できるものではなかった。
自称百八十八センチの上背も、多分に生徒たちに無用な先入観を抱かせないための嘘だろうと信じられている。若い時分から大樹の如しと称えられていた横幅に関しても年々増加し、このごろはもはや相撲部屋にでも赴かねば類似した体型の人間を探すことは難しいほどの偉容を顕示していた。
巨大なのは体積にとどまらず、指導者としての彼もまた巨大であった。URA開催の主要平地競走はあらかた制覇している。直接彼の下で汗を流している教え子は毎年三〜四十人程度と「一チームにしては少々多い」程度だったが、岡澤はそれに加えて多数の後輩・同僚トレーナーらと密接な協力関係を結び、彼ら「傘下」の生徒たちの育成にも大いに力添えをしていた。
結果的に岡澤が練習プランを管理している生徒は百二十人以上に及ぶとか、彼の度を越したマルチワークぶりに戦慄した当代理事長が就任早々に視察と称して遠回しに休養するよう薦めに来たとか、早朝ドラム缶を抱えた状態で部室エリアを走って逃げ回っていたとか、その剛腕ぶりを示す逸話には事欠かない。
さて、ここまで影響力の大きい指導者となれば──世間一般の教育機関であれば──負の側面も現れるものである。権威主義におもねった妙ちきりんな忖度がそこかしこで発生したり、指導者本人が知らず知らずのうちに増長し歪んでいくことも多い。
しかしながら、それが岡澤本人にとって幸か不幸かはさておき、ここトレセン学園においては、「そうはならなかった」のである。
「いやほんまに、ほんっと、面目ない」
豪華な革張りのソファーやどっしりとしたオーク材の執務机、どうやら本物らしいペルシア絨毯などを眼前にして、現在の岡澤浩一郎は前方斜め三十五度の角度で頭を下げている。長辺が三十メートルはあろうかという広々とした豪奢な部屋は、普通の学校であればおそらく校長室か応接室の類いであっただろう。しかし、ここはなんと生徒会室である。
入口から数歩進み出た地点で低頭している巨漢を挟み込まんとするような形で、会議用の長机が二列に配置されている。列の奥に鎮座する執務机に座る人物──スーツ姿のウマ娘──は、眼鏡越しの穏やかな視線を数秒間岡澤に注いだのち、威厳と慈しみの籠もった低い声を紡ぎ出した。
「顔を上げてくれ。私はそうさせるために君を呼んだわけではないよ」
岡澤の上半身の角度が十度ばかり上向いたが、そこで静止した。
「常識的に考えて」と、今度は右手の長机から穏やかな声がする。その主は百八十センチメートルになんなんとする褐色の大女で、奥地の女戦士を彷彿とさせる無骨な顔立ちにはあまりにも似合わない当校の学生服を身に着けていた。
「構内で学生がこっそりと寝泊まりを、しかも野宿に近い暮らしをしているなどという事態を想像できる方は少ないでしょう。警備会社や事務方……あとは強いて言うならクラス担任の不行き届きであることは明白です。わずか二週間接触しただけのトレーナーの貴方には、責任を負う必要も、気に病む必要もありません。どうか……」
「んなこと言ってもねぇ〜〜」
ようやく顔を上げた彼の表情も声音も実に情けない。さしづめ不要な買い物を咎められてプチ家族会議で晒し上げられるダメ親父のそれであった。
「僕はね、親御さんから預かった子をこんなね、こんな目に遭わせちまったのがほんとに情けなくてしょうがないのよ。猛省させてくれぇ」
岡澤はぶんぶん手を振りながら長机の中央に置かれたレコーダーとスピーカーを指差した。先程まで某トレーナーH氏によるハンマーソングへのファーストインタビューを再生していた機器である。
執務机の女性は困ったように一息ついた。
「私としてはそろそろ話を建設的な方向へ持っていきたいのだが──」
「ははは、まァ、まあ。会長さん、ワンクッションな。おっさんの性根が許さへんのはわかる」
ここで半笑いで割って入ったのは、女戦士の向かい側に(行儀の悪いことにパイプ椅子の上であぐらを組んで)座っている生徒。こちらもかなり上背があるが、どこもかしこもグラマーかつ筋肉質な向かいの褐色とは正反対に、色白でやや線は細く見える。高く結った黒髪に赤い簪、どんぐり眼が印象的な生徒だった。
「せやけど
「ケンザンさん、簡易とはいえ一応議事録が残るので言葉の選び方をもう少し考えて」
「んやホクトがカタす……」
「栗東寮長。書記のことも慮ってやれ」
「おん……」
この場の長から穏やかに刺された釘にケンザンと呼ばれた少女は浮きかけた腰を下ろした。
「ま、まあアレ、いやちゃう、万が一なんかあっても栗東寮でちゃんとアフターケアはやるから気にせんといてってこと! あーもう終わり終わり! おっさんも次行ってええよな! な!」
「……うん」
「ほんじゃぶった切って話進めるで。本来の議題は、えーっと、再来月から高等部生の希望者十名でアメリカ留学に行くわけやけど。これ怪我と家庭のご事情で二名欠員が出ましたっちゅう話やね。ほんでこの補欠枠、やっぱし成績優秀者から見繕うのが筋やろと──」
ここからはひとまず本筋に関係のない事務的な話題が数十分に渡って続くために描写は省く。
内容についてはこの日より数日前、主だったトレーナーや生徒会役員を召集して行われた会議で決定した事柄の確認と補足事項だった。
本校における生徒会の権限は非常に大きい。学内行事の全てを立案から認可、執行するためのほぼ完全な権限を有するばかりか、在校生の過半数から同意を集めることで理事会や教職員組合に対する強力かつ広範な請求権を得ることさえできる。
であるから、本来このような場に岡澤のような
一体どうしてこんな事になってしまったのか……という遡行についても今回は省略される。
「はぁぁぁー、めんどくさいなぁ〜〜〜〜」
常人離れした肺活量から繰り出される、長音記号いくつ分とも知れない嘆息がそこら中に広がった。
所と時は変わってすでに会議は終了、ここは特別教室棟の三階廊下である。放課後ということもあって、辺りには人気が──岡澤の後ろに付き従う一人を除いては──まったくない。廊下の半分以上は専有していそうな肩を丸めてとぼとぼしょんぼり生徒会資料室に向かって歩く岡澤の背中を見つつ、その生徒は躊躇いがちに口を開いた。
「お骨折り頂きありがとうございます。ほんの一部目を通して認可頂ければ結構ですので……」
やや低い、凛とした声音ではあったが言葉運びにはやや初々しい点もあった。声の主は黒髪をワンレンボブに撫で付けた生真面目そうな生徒で、身につけた制服の板につかない印象や体格からしても中等部、それも入学したてではないかと思われる。しかしながら肩口には既に、生徒会補助役員の立場を示す腕章が縫い付けられていた。
岡澤はひとつ伸びをして朗らかに笑う。
「いんや、確かにめんどくさいけどね。会長殿のためならエンヤコラさ。今日中に全部片付けてしまうよ。君こそ引き継ぎだけ済ませたらなるたけ早く練習に行きなさい。奈瀬君が待っとるよ──しかも今から予報雨だからね。はよはよ」
「しかし」
言い淀む彼女の気配を背後に察してか、岡澤は苦笑の欠片らしいものを浮かべた。その視線が廊下の突き当りの一点に止まる。
「ちょうどいいや」
そう呟いて彼は小走りにその地点へ向かった。生徒も慌てて付き従う。
「君、この部屋が何なのか知ってる?」
岡澤が足を止めたのは、L字型になっている校舎の「角部屋」にあたるのではないかと思われる地点のドアだった。古ぼけて、ところどころ塗装の剥げかけた白い引き戸。生徒はゆっくりと首を振った。
「いえ。隣は……家庭科準備室? のようですが」
「はは、そっちも使ったことはないよな。んで、ここはね」
彼は手にした鍵束を十秒近くガチャガチャやってから「正解」をロックに挿し込んだ。ザザザーッという砂埃を巻き込んだような音と共にドアが開く。
二人の視線の先に現れたのは、薄暗く、むき出しのコンクリート壁に四方を覆われ、久々の客人に粉塵を舞わせて歓迎の意思を示す無人の部屋だった。十二畳もなさそうな空間に、ところ狭しと長机や学習机が積み上げられ、壁面を埋め尽くす棚にはぎっしりと古い教科書や書類ファイルなどが詰まっている。
そんな雑然とした様相を、入口の真正面に設えられた煤けた窓から差し込む西日だけが浮かび上がらせていた。
「ゔぇーっほ、ゲホ。しねぇよな掃除は。うわ、なんだこれ。誰かインクこぼしたんかな?」
「……物置のようですが。ここが何か?」
顔をしかめて怪訝そうな顔をしている生徒に、岡澤は振り返って微笑んでみせた。
「ここはね、十五年くらい前まで生徒会室だったとこ」
「…………」
予想通りの絶句に、彼は少し得意げな表情を見せた。
「僕がここに赴任した時の生徒会なんか、ほとんどおままごとみたいなもんでね。歴代の生徒会が少しずつ頑張って、大人たちを相手に自治の権利を主張し続けたから今があるんだ」
「…………」
「その中でも、『ウマ娘第一主義』……あのスローガンをぶち上げて学園を今の形にしたのが、君らの会長さんってわけ」
「……噂には聞いていました。しかし、これほどとは」
無意識に袖の腕章に手を遣りながら、生徒会補助役員の少女は改めて部屋を見渡した。最も古い屋内練習場の倉庫やトイレでさえ、眼前に広がっているごみ溜めと比べれば若々しく清潔な場所だと言えそうだ。
たとえ往時は清掃・整頓されていたとしても、この狭さを考えれば確かに「おままごと」くらいしかできまい。
「でしょ。トレセン学園は彼女の力でこそ、今の姿で立っていられるんだ──僕はね、エアグルーヴ君。日本の競走のレベルを上げるためにも、世間様の流れについていくためにも、彼女の道以外にやりようはないと思ってるんだ。だから生徒会への協力は惜しまない。いつでも頼ってくれていい」
そうして岡澤浩一郎は、これまでのトレーナー生活で繰り返し放ったあの台詞を──公私ともに彼を象徴してやまないともっぱらの評判である、あの台詞を放った。
「すげーんだよ、シンボリルドルフはさ」
ザラザラガラガラと耳障りな音を立てて扉が閉まっていく。エアグルーヴという、後に畏敬と憧憬を以て語られる名を持つ少女の視界から、学園の過去を覆い隠すように。
それが閉ざされた直後、埃にまみれた悪質な空気の印象に混じって、アルコール製剤のような鼻をつく香りが廊下に揺蕩い、やがて霧散した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シンボリルドルフがもはや学生服に袖を通さなくなってから、五年の月日が経過している。にも関わらず、彼女は未だにこの学園に生徒として在籍していた。
高等部三年目。史上初の無敗クラシック三冠をはじめとする輝かしい競走成績はもちろんのこと、学業においても六年間すべての学期で学年上位十傑に名を連ねる秀才ぶりを発揮し続けた彼女が選択した進路は──「留年」であった。
就職を望めば、史上最高の広告塔たりうる彼女を求めてあらゆる上場企業が手を挙げただろう。電話一本で芸能事務所から社長を飛んで来させることもできただろう。「行きたい」と言っただけであらゆる大学が返済不要の奨学金を携えて形ばかりの試験を設けただろう。
シンボリルドルフは、それらすべての可能性を一顧だにしなかった。あらゆる言葉を尽くして卒業を促す関係者たちを、彼女は言葉少なにこう拒むだけだった。
「為さねばならないことがまだ残っているんだ」
翌春の生徒会選挙。留年生であったとしても、ここまで大人たちを相手に大立ち回りを演じ続け、世界のどこにもないレベルの学生自治を平和的に実現したルドルフを拒む生徒など、誰一人としていなかった。
そうして、彼女が生徒会長の座に着いてから、今年で十一年目になる。
その月日を経て、学園は完全に生まれ変わった。手始めとばかりに体罰らしい体罰は早々に一掃され、不正な手段で生徒たちの
また、アイルランドの名門・バリードイル校との姉妹校提携が開始され、短期指導員免許を交付された欧州トップクラスのトレーナー達と共に最先端の機材や理論が多く渡来。それと並行して、URA理事会を通したスポーツ用品開発会社や教材を扱う会社との連携強化も行われた。
「衣錦之栄というわけでもないが、そろそろこの服もお役御免かな」
ルドルフが不意にそんなことを言い始め、学生服ではなくスーツに身を包んで衆前に姿を現すようになった時分には、既に欧米の一流どころと同程度の練習環境が構内に整えられていた。
おがくずや砂を適当に敷き詰めただけの粗末なトラックなど、もはや敷地の片隅に僅か残るばかりとなり、怪我を招く恐れのある古い器材は全て、安全機構と扱いやすさを両備えした新型に入れ替えられていく。その頃には二つの寮も大幅に増設・改装され、設計段階から学生たちの意見を取り入れた全館電化済みの高級集合住宅と化していた。
これらの改革を支える資金は、従来のスポンサー方式──すなわち「競走事業関連企業が学園を支援する」方式とはまったく別のやり方によって補われた。
かつて巻き起こった、ハイセイコーやオグリキャップがスポーツ選手という枠組みをも越える熱烈な支持を得た現象。その再現を目的とし、学園の生徒たちをエンターテイナーとしてプロデュースするアイドル事業を打ち出したのである。
その事業を象徴するのが、ハイセイコーの登場を契機として樹立されたウイニングライブという概念の新解釈だ。かつてはその日のメインレースの勝者にのみ許された特権として、儀礼的な意味合いの色濃い発表会が開催されていた。歌われる曲目も学校で習うような唱歌か、指導者が相応しいと判断した歌謡曲が大半であったそれを、ルドルフ政権は原型をとどめない程に改造した。
最寄りのアリーナクラスの会場を貸し切りった絢爛豪華なステージに上がるのは、その日開催されたレースの走者全員。同じレースに出走した者を一つのグループとみなして一曲ずつ歌わせる。演奏されるのは最新の流行を意識した書き下ろしのポップスやロック調の何らか、もしくはダンスミュージックだ。
もちろん着順によってステージでのポジションやソロパートの有無など各人への待遇は変化するが、自己表現の場は全員に与えられる。
このライブを観覧する権利を販売するにあたっても、実に「巧い」方式が採られた。以前からレース場で販売されていた【人気投票券】を抽選チケットに仕立て直したのである。
この人気投票券というのはかつて、レース場内外の売店や自販機で一枚ウン百円だかスン百円だかいう値で売られていた。購入者が指定した番号のウマ娘がレースで好成績を収めると、売店で簡素な記念品と引き換えてもらえるという代物だった。勝者一人を予想する方式のものが的中していればキャンディ一袋と絵葉書セット、一着と二着を両方当てればメッキの記念メダル。レース場によっては上位四人、五人と正しく的中させることで清酒の一升瓶とか小型家電一台などという賞を用意していたところもあったようだ。
そもそもレースの動員数自体が現代の半分以下という時代である。景品が基本的に駄菓子程度のものだったことや、直接現地に赴かねば買えなかったこともあり、この頃は投票自体さほど参加する人数の多いものではなかったようである。ふつうにバラ売りされている絵葉書と一人分の菓子や飲料の値段を合計した額が投票券をわずかに上回る、その程度の設定が為されていたのだから仕方がない。
そんな投票券は、新生トレセン学園とURAによって「ウイニングライブの座席抽選券」として生まれ変わった。価格は以前と比べると十倍以上に跳ね上げられた。それでも一般的な音楽イベントにおけるアリーナ入場料の六〜七割という格安の設定で、ウェブ発売も含めて全国の至る所で販売された。着順を的中させて得られるのはティムタム一箱でもDr.Fager一瓶でもなく、より良い席でライブを見られる権利である。
「上位三位の組み合わせ」や「上位二人の枠番を当てる」、「一人選んでその選手が三着以内に入っていれば的中扱い」など、様々な方式の投票券が発売される。レース後、結果に応じて購入者にポイントが付与される。人気薄を巻き込んだ上位三人の組み合わせなど、難しい方式の投票券を的中させればより多くのポイントを得られる。こうして得たポイントが多い者から順に、最前列エリアや軽食付きのテラス席などの特等席があてがわれるというわけである。むろん全部外しても自由席にあたるエリアでの観覧は保証されている。
この投票券は爆発的に売れた。
今までライブをやっていたハコは小さく、演出も大したものではなかった。今日では考えられないような「歌を歌っとる暇があったら走れ」という(ある意味常識的な)教育方針もあってパフォーマンスのレベルは高いとは言えなかった。ただでさえ少ない席のほとんどを学校関係者や保護者が占め、そもそも一般人の付け入る隙もなかった。そこへ急に「チケットを一般発売し、数万人規模の会場を用意します。選手たちはダンサー・ボーカリストとしての訓練もある程度積んでいます。着順予想を当てればわずか数千円で特等席をゲットできるかもしれません」ときた。それはもう、飛ぶように売れた。
そうして売れた数の十分の一程度は集まってきた批判の声──内容についてはお察しの通りである──に対しても、生徒会長は矢面に立った。チケットの発売方式については現行の法規上何らの問題もない旨、狙いは今までレースコンテンツに興味を持っていなかった層に予想を通してこのスポーツに関する知識をつけてもらうことである旨、従来通り有料TVチャンネルやWEB配信によってこのチケットを経由しない観覧のルートも保証されている旨などが、他の誰でもないルドルフ自身の言葉で各種メディアに掲載された。
また、そもそもスポーツ専門学校の学生に芸能活動のマネごとをさせること自体が不健全であるとの意見にはこのような回答が為された。
「このライブ活動に対して、学生たち自身が個々にその意義を見出す時が来る。私はそう信じています。今しばらくは、彼女たちのゆく道を見守っていただきたい」
シンボリルドルフがもはや学生服に袖を通さなくなってから、五年の月日が経過している。
かの言葉の真意は未だ、大衆の前に顕れない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
音一つ立てることなく金網フェンスを登れるような軽やかさと、学園中の警報装置の位置や警備員の巡回ルートを知り尽くしているような狡知を併せ持つ侵入者がいたとして、彼女は何を目的とするだろうか。
窃盗? 盗撮の準備? あるいは破壊工作?
容易く思いつくのはこの辺りだ。
いずれも、彼女の綴る物語には必要ない。
旧い錆の滴るナイフも、紙面に踊る不治の病も、群衆を脅かすピストルの音さえもいらない。
絹糸のごとく降る初夏の雨に身を貫く夜、たった一つわがままに灯された投光器の下で、素足に血を滲ませながらも
そんな描写を身に纏って生きるために、彼女はそのために、今夜も檻の中に自らの身を滑り込ませたのだ。
ウィーッポッポッポ、これで主要人物紹介が終わりましたでポスト
あとは年代順に御当地の生徒さんたちが追加されていくだけでポストねぇ
次回から楽しい夏合宿編にGoでウイポよ
海水に脚漬けてソエを治すでポスト