すらっぎーあにみずむ!!!~動物が人になる現代世界で動物嫌いがヌルヌル生活~   作:囚人番号虚数番

10 / 20
自由な彼女

草加葵の心配は幸運にも杞憂であった。この辺りは大学から近いとはいえ田舎である。遊ぶ為にちょっと水着で歩くのはまれによく見る光景だ。むしろ近年でも子供がTシャツで海に入るなど水着の方が目立つまである位だ。それを何分子供時代の昔の光景だからつい忘れてしまっていた。

 

「うん?かいすい……よくじょう?」

 

それと彼女は偶然にも海水浴場への道順の看板を見つけていた。最も内容までは理解していないまでも

 

「うーん、青いからこっちにあるのかな」

 

少なくとも、看板に描かれた清涼な雰囲気の絵で察したようだ。彼女は看板に書かれた矢印に従い海水浴場に向かった。一体彼女はこの広い海に何を思うだろうか。

 

 

 

ー-ー

 

ー海水浴場

 

小さな海水浴場。海水浴場とは名ばかりの海の家も監視も無い、近くに公衆トイレがあるだけの遊泳可能な砂浜。危険だが対策はなく、利用者の多くは現地に住む玄人である。

 

 

 

おおおお!大きな湖だ。一面の波打つ青が遠くまで広がる途方もないくらい大きな水たまり。あれだけ大きければ何でもできる!お魚だって図鑑で見たうみうし?とかくらげ?とかも捕まえられるかも!

 

あ、そうだ!靴もぬるぬるで重いから脱いじゃおう。目じるしにあの岩の近くに靴を置いて……

 

「あっつ!?あちちちちっ!」

 

砂が熱い!乾燥とかじゃなくて焼けちゃうよ!フライパンの上にいるみたい!岩、濡れてる岩の上なら大丈夫なはず!

 

「あっちっち……ふぅ、危ない危ない」

 

足の裏が黒焦げになりそうだった。靴は安全に履けるね、帰りは気を付けてあんぜんだいち、もう痛い思いはしたくないからね。岩の上を歩けば海に入れるしゆっくり動いて水に近づく。

 

「おおー魚、いるねー」

 

いんたーねっとだとこの水に色んなお魚とかが生きてるらしい。すいぞくかん?って前に遊びに連れて行ってもらったところで見たっけ、でもあんなにいないね。綺麗じゃない、けどちゃんと黒くて小さい魚がゆらゆらと泳いでる。手を伸ばしたら捕まえられるかな?

 

「うーん、うーん……」プルプル

 

あとちょっと水に届かない。指先があと数本分、もう少しなのに……よし!えいやぁ!!

 

 

 

ザッパァアアンッ!!!

 

 

 

くぐもった水の音、白い気泡に遮られるにじんだ視界、空と白い海底を同時に写す視界、そして全身を襲う浮力。あれ、思ったより深い?

 

「~~~~~~!! !? !?!?!?!?」

 

息ができない!苦しい! 必死に手足をばたつかせて水面へ浮上する。

 

「ぶばっ!ごほっ!えほぇほ!!」

 

むせた。水を飲んじゃったのか喉の奥がいたいししょっぱい。いっぱいの塩をいっきに食べたときみたい、それに何だかぬるぬるが変、具体的にはすぐ溶ける!

 

「(もどる、いっかい作戦を立てよう)」

 

手足をばたつかせれば前に進めるのかな。腕を回して、前の水をどかすみたいにすると少しずつ前に進む。あ、草加が前に

 

「水着買ったら泳ぎ方も教えないと……」

 

っていってたけどこうかな?あともう少しで岩だから草加に聞いてみよう。

 

ざぱりっ

 

? 波に紛れて遠くから水に飛び込む音が聞こえた。だれが入ってきたのかな?動物のおともだちかな?こっちに誰かが泳いでくる。だから力を抜いてぷかぷか浮きながら流されるままで待ってあげた。

 

だれかは波より早く泳いで私のもとにくる。ドキドキしながら何をするのか想像していると顔に何かが当たった。びっくりして手を動かすと……ヒモの付いたわっか?

 

「あんた、しっかりしなさい!大丈夫、助かるから!」

 

私がそれを掴んだら誰かが私を引っ張ってくれた。おー、何もしてないのに動く不思議な感じ。

 

「(たのしい)」

 

それから私はその人に引っ張られて岩場まで連れていかれた。何でだろう? 流されない所まで来たので手を放すと、彼女はそのまま砂浜で仰向けになって倒れた。どうしたの?

 

「おーい、だいじょーぶ?」

 

返事がない。ただのしかばねのようだ。

 

「はぁ……はぁ……溺れてたのに、元気ね、あんた」

 

彼女は荒い呼吸をしながら上半身を起こした。あ、この子は動物の子だ。あにまって言うんだっけ、毛の生えた耳としっぽ生えてるがある女の……子?身長は私とおなじかんじがする。

 

「誰?」

 

「……溺れて助けられたのに第一声がそれなの?まあ良いけど」

 

女の子は立ち上がると私の方に歩いてきた。

 

「白野恵奈。先に教えるけど猫でも犬でもないわ」

 

いぬでもねこでも?動物の事はまだよく知らない。けど草加とかいろんな人と違って濡れるのを気にしてないみたい。でも雰囲気はねこっぽいし、いんたーねっとにあった「矛盾の塊」の子供みたい。

 

「あんた、ここの子じゃないでしょ。旅行?それとも引っ越してきたの?」

 

「そうだよ。草加についていたの」

 

「草加……ああ、あの家の大学生の連れね。姉さんから聞いてたけれどまさか会うとは……」

 

恵奈ちゃんは草加みたいにブツブツ呟いてる。草加とか姉さん?とか。白野って言葉も前にどこかで聞いた気がするけど忘れちゃった。聞けば教えてくれるかな?

 

「どうして知ってるの?」

 

「田舎だから噂話はすーぐ広まるのよ。しかもここで泳いでる子供で水着を着てるだなんてよその子くらいだわ。溺れてるのも正にここらの海慣れしてない証拠。でしょ?」

 

小さくうなずいた。すると恵奈は目を逸らしてため息をつく。なんでだろうね、けれどふんいきが草加みたいだなーって感じの人だし悪いことは考えてなさそう。

 

…………体乾くし見てない隙に水はいってこよ

 

「待ちなさいよ…………!?」

 

グイッ

 

うおっと、水に飛び込む前に捕まっちゃった。けど腕に触った時にぬるぬるに気が付いたらしい。いやな顔で私を見てくる。

 

「あちゃーばれた?あと私を触ると、汚れちゃうよ?」

 

「海音姉さん側のアニマなのね、あんた」

 

? 海音姉?どこかで聞いたような……あ、この前水族館に一緒に来た人だ、アニマだけど。それでこの恵奈って子は姉の逆、妹ってことね。草加のお友達は優しいからこのことも仲良くできそう。

 

恵奈のを手を握る。ちょっとぎょっとしてたけど驚かせちゃったかな?

 

「これからよろしくね」

 

「え、う、うん。よろしく。でも流石にあんたと私は初対面でしょ」

 

「? 考えてるよ。あなた、いい人でしょ」

 

「まあね!人望はある方だわ!」

 

良く分かんないけど胸を張って自慢げに語る姿に少しだけわたしも嬉しくなった。

 

「(やっぱり、この子も草加に似てるかも)」

 

さてと、そろそろ水に入るかな。握った手を引いたまま後ろに倒れる。

 

「って待って待って待った!!」

 

重力に従い二人で海に落ちる。水は透き通り、丸い青い視界の上には恵奈が見える。

 

「(きれい)」

 

思わず心に出てしまうほど、綺麗だった。だけど今度はもう一人、恵奈のうしろの岩に誰か白い人がいる?その人は両手で口を抑えながら私たちを見て固まっていた。どうしたんだろう?

 

あ、上から跳び込んできた。水面に誰かが触れた途端、私たちより大きな泡をたてて水が弾ける。

 

 

 

「ごぁぼ!ごぼごぼぼ!(いた!カツユちゃん!)」

 

「ごぼぉ!?(古渡さん!?)」

 

「(あ、白いお姉さんだ)」

 

ーーー

 

水から出てサンゴのお姉さんは家に連れて帰ってくれた。草加が心配してたから探しに来てくれたらしい。別に一人で帰ってこれるのに。でもびしょ濡れで3人で並んでいるとちょっと楽しい。

 

「ただいまー」

 

玄関を開けるとだれもいない。草加のくつもないからお散歩かな。

 

「先輩、まだ探してるみたいです。今呼び出します」

 

サンゴのお姉ちゃんが電話してるあいだちょっと暇。最近日の光が暑くて肌がひりひりするから玄関で座る。靴を脱いで足をパタパタさせてたら後ろで声をかけられた。

 

「ねえ、あんた名前は?まだ聞いてなかったわ」

 

恵奈ちゃんだ、まだいたんだ。恵奈ちゃんも私から少し離れて一緒に座った。

 

「カツユだよ。よろしく」

 

「ふぅん、変な名前ね。でもあんたには似合ってるかも」

 

「ありがと」

 

草加以外に褒められたのは初めてかもしれない。なんだか嬉しい。

 

「ねぇ、あんた、草加の連れなんでしょ?」

 

そうだよ。けど何でそんな事聞くのかな?

 

「……ご近所付き合いでしか知らないからどんな人が知りたいの。ここの家の大学生」

 

「草加のこと?」

 

うーん、草加の事……草加のことはいろんなことを知ってるよ。けれど誰かに教えるとなると口では言いずらいな。

 

「別に、そんな深く考えないでもいいのよ」

 

恵奈が私の顔を覗き込むように見てくる。

 

「じゃあ、草加はねーかっこよくて、かわいくて、頭が良くてー」

 

「あははっ、なにそれ、ノロケってやつ?」

 

のろけ?たぶんううん違うよ。だって本当にそう思ってるもん。あれれ、なんか恥ずかしい。顔熱いかも。

 

「あ、でも駄目な所もあるかも」

 

「例えば?」

 

「多分、私より臆病なの」

 

そう言うと恵奈は笑い出した。なんで笑うのかな?私おかしなこと言った?

 

「あははははは!なによそれ」

 

「うーん、そうなんだけどね。でも……」

 

すると外から誰か、あ、草加だ。

 

「おかえりなさい!」

 

立ち上がって駆け足で外へ出る。草加は息を切らせてふらふらと私に倒れ込む。

 

「はぁ……はぁ……やっと見つけた……はぁはぁ」

 

汗だくになってる。こんなになるまで探してくれたんだ。

 

「おかえりー」

 

ぎゅっと抱きしめると、草加は顔を上げて笑顔になる。

 

「ああ、本当に、気が休まらなかったよ」

 

「この人が草加?あ、私白野。ナマコ姉の妹」

 

恵奈ちゃんも外に出てきた。

 

「うん、そうだよ。この人」

 

「ああ、君は……久しぶりだね。君が溺れていたカツユを助けてくれたんだね」

 

溺れてたわけじゃないのになー。ちょっと不満だけどま、いっか。で、ふたりは知り合いなんだね。でもよくは知らない、私とカタツムリみたいにちょっと離れてる。

 

「ありがとう、探してくれたお礼にアイスでもいる?丁度冷蔵庫に何本かあったんだ。古渡もどう?」

 

「ダッツあります!?」「ありがとうございます」

 

みんなが次々に草加の家に入っていく。私も乾燥するし絵も描きたいし涼しい所部屋にもーどろ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。