すらっぎーあにみずむ!!!~動物が人になる現代世界で動物嫌いがヌルヌル生活~   作:囚人番号虚数番

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初めての友達

「ふんふーん♪」

 

鼻歌を歌いスケッチブックを片手に坂道を登って歩く。今日は一人でお出かけ中。草加が家族や大学についてお父さんたちとお話してるらしい。私がここの学校に通えるかもって、大学もこっちから何とか通えるかもって教えてくれた。だから我慢、私は今日は一人でもいいの。

 

ー現在位置 偉守学校

 

この前来たようにここには子供がいっぱいいる。草加はこれでも少ないらしいけど回線?が弱い田舎だとローカル通信じゃないとだめらしいって珊瑚のお姉さんが教えてくれた。だからゲームを持ち寄って日陰で空調もある学校に集まって遊ぶらしい。

 

でも一つ気になることがある。今、この村に私のお友達はいない。お姉さんは草加のお友達だから仲はいいけどなんか違う。この前会った恵那ちゃんとか、どこかにいるのかな?

 

「(お友達、できるかな?)」

 

そういう訳で、学校に着きました。今日はかなり暑いから人は少ないかもだけど、今日も誰かいるのかなー?

 

……あれ、今日は誰の声もしない。みんな海に行ってるのかな?校庭には誰もいないし扉も空いてない。一周ぐるっと回っても気配は無い。これじゃ友達も何も駄目そう。

 

仕方がない、もともとそうなる事も考えてたから持ってきたんだ、スケッチブック。絵具は持ってこれないから濡れても描ける鉛筆を買ってもらったんだ。傘をさして木のベンチに座る。そこでスケッチブックの空のページを開いてあたりを見る。

 

ここから見える海は青くて綺麗だ。緑の森とその間に建つお家、さらにその先にはどこまでも広い海。船が小さく浮かび三角のアレの壁の向こうへと向かっている。駅がギリギリ隠れてるから草加の家も探してみれば見えるかも。

 

「…………」

 

しばらく無言で鉛筆を走らせて絵を描く。この風景を見て思ったことを忘れないように描く。太陽の位置が変わったり雲が流れていく。風が少し吹いてきて髪を揺らす。蝉が鳴く声、葉っぱの擦れる音、太陽の光が眩しい。

 

「……?」

 

それと森の中に紛れる人影。

 

それらからいくつかを選んで組み合わせ描いていく。私だけの景色を形にしていく。そして一時間が経過して色の無い黒だけの絵が描けた。出来はそこそこ、初めて描いた物だから心配だったけど意外と上手くいった。

 

「上出来」フンス

 

始めて絵を描いた時から段々と上手くなってきた。絵はパソコンでここと似てる所を知って描きたくなってきたから始めた。行ったことも無いのに、知らない物の筈なのに、絵を描いていると不思議と安らかな気持ちになれる。しかも草加も上手に描けると褒めてくれるから嬉しい。だからもっと頑張ろうと思った。

 

「さて」

 

私は画材をまとめて学校から立ち去る。学校に人がいないのなら今見えた人に会いに行こう。せっかく絵に描かせてもらったんだ。すぐに見せたい人は今はその人、だから私は会いに行く。コンクリートの道を下り家を曲がって山への道なき道へと入る。

 

「(誰なんだろ)」

 

風景を眺めていてちらちら視界の端に何かが動いてた。試しに近付いてみるとそこには古い建物があった。コンクリートで作られた、ボロボロで中まで草の生えた何か。入り口の横に注意書きが書いてある。

 

『関係者以外立ち入り禁止』

 

「……まいっか」

 

入っちゃ駄目とあるけれど壁は崩れてボロボロ、きっと長い間だれもいなかったんだと思う。そんな事を思いながら中に足を踏み入れる。中は薄暗くて埃っぽい。床はコンクリートでじめじめしてる。ひんやりしてて心地はいいけどかび臭いのから空気が悪い気がする。棚に古い本が沢山あってよく分からない機械もある。

 

「でもいないなー。ここにいた筈なんだけど……」

 

適当に隠れられそうな場所には誰もいない。だけどその過程でたまたま見つけた階段は上へと続いている。もしかしてこの上かな、暗いので手すりを持って登って行く。暗くて目に見えずとも劣化が酷く足元に注意しないと転びそうだ。

 

 

 

ガチャ

 

階段上の扉を開くと屋上だった。何もない場所で隠れられそうなところもない。だからすぐに人は見つかった。

 

「恵奈ちゃん?」

 

「……」

 

赤錆びたフェンスに一人でもたれ掛かっている恵那ちゃんがいた。私に気がついて一度目があった。そしてまた私から目を離して黄昏れて、やっと理解してもう一度私の顔を見る。とても驚いた顔をしていた。

 

「な、何でここにいるの!?」

 

「学校から見えた」

 

「えっ?ほんと!?じゃあここも限界かもね……」

 

恵奈ちゃんは残念そうな顔になった。私は恵奈ちゃんの隣で同じ様にフェンスにもたれ掛かる。うっとおしそうな顔をされたけど気にしない。

 

「ここってどういう所なの?」

 

「さあ、使われてない廃墟ってだけ。私もよく知らないし興味無いし、誰もいないから好きなの」

 

そう言いながらも恵奈ちゃんはスマホを取り出して調べている。恵奈ちゃんは慣れた手つきで操作している。凄いなぁ……。でも結局何も分からないからすぐに諦めてた。

 

 

「で、何であんたはここにいるのよ」

 

「それはね、これ」

 

私はスケッチブックを出して私の描いた絵を見せた。私が見えた物を全部描いたんだから見せたいと思った。家々と緑の木、それから青くて広い海を鉛筆だけで描いた。すると恵奈ちゃんは目を丸くした。

 

「へぇ、上手いじゃん。中学生たちの美術部?写真部に入らないの?」

 

私はまだ学校に通ってないから今は関係ない話。それよりも

 

「これあげる。描かせてもらったし、この前のお礼もしてなかったから」

 

「これ、絵?」

 

「私、海で溺れてたんだよね、だからあげる」

 

スケッチブックの絵を彼女に渡すと彼女はじっくりと見つめる。そして絵を見ていると何故か頬を緩ませていた。

 

「ふーん、悪くないじゃん。随分と大作じゃない?」

 

「ううん、全然。それは20分くらいで描いたから。むしろ別の練習のほうが時間がかかった」

 

風景を描く前に手を動かすのに軽めに描いていた絵がある。でもあんまり上手に出来なくて、かえって時間がかかっちゃったんだよね。上手でもないし……

 

「他の絵もあるのね。それも見せてくれないかしら」

 

「はずかしい、手直ししたいからちょっと待って」

 

ここは暑いから日陰に隠れて絵の手直していく。さっきまでは遠くから見えていたものもここに来れば近くからよく見える。遠くの景色を思い出しながら絵を描いていく。

 

そうだ、恵那ちゃんにも手伝ってもらおう。

 

「恵那ちゃん、階段の下に立ってくれる?」

 

「なんでよ」

 

「人の体は難しいから見ながら描きたい」

 

すると渋々といった感じだけど恵那ちゃんが立ってくれた。私はそれを見てから鉛筆を走らせる。恵那ちゃんをしっかり見ながら描く。大まかな構図は出来てたから思ったよりも時間は掛からなかった。

 

「はい、出来た。恵那ちゃんだよ」

 

ページを開いて見せる。恵那ちゃんは期待した目で私の描くところを見てたのを知ってる。一枚目の絵、あまり喜んでなかった風だけど、実はとっても嬉しかったのかな。

 

「ありがとう……って、これ……」

 

「上手?」

 

私が聞くけど答えは来ない。それにどこか浮かない表情をしている。顔は青いし震えている。どうしたんだろう。

 

「あの、見てたの?私を、あの距離で?」

 

「あんまり、でも見えたものを写してたらこうなった」

 

「でも何で私の、よりによって裸で描いた!?」

 

「だって、服は上手く描けないもん」

 

服を着てると難しくて、裸ならちょっとだけ簡単だし。遠くに小さくいたからちゃんと描いてもあんまり良く分からないんだよね。それに海で見た恵那ちゃんの身体は綺麗だから恥ずかしがる事なんてないよ。

 

「いや、そういう問題じゃなくって、ああもう!なんかの脅しのつもりなの!?」

 

青い顔が今度は真っ赤になっていく。怒ってるみたい。草加もお外で裸はだめって言われたし。

 

「ごめんなさい……」

 

「いいわよ!描いたってことはどっかから見てたんでしょ!」

 

怒ったまま私からスケッチブックを取り上げて絵を眺めていく。そんなに怒ることなのかな。でもその顔は怒り以外にも何かちょっと違う感じがする。顔の赤さも単に怒ってるんじゃなくて恥ずかしそうだ。

 

「もー何でこんな絵を描いたのよ……他の人には絶対に秘密ね」

 

「? 分かった」

 

「絶対分かってないでしょ……何でもするから絶対に、ぜっったいに!他言無用で!」

 

「何でも?」

 

「あっ、いや、まあ、限度はあるけど……」

 

そう言って恵那ちゃんは顔を赤くしたまま黙ってしまった。でもなんでもって言ったから。私は決めた。

 

「じゃあ、お友達になってくれる」

 

「……」

 

やっぱりダメだよね。さっき失礼な事しちゃったからやっぱりまだ怒ってるだろうし。ぬるぬるしてる体もきっと好きじゃないんだろうね。

 

「私、お友達いないから、恵那ちゃんとお友「なるから!なってあげるからそれ以上言わないで!」

 

やった、これで恵那ちゃんは私の初めてのお友達になった。嬉しい。とても、凄く嬉しい。すると恵那ちゃんはまた呆れたような、疲れたような、それでいて少し安心したような顔を見せた。

 

「……私、あんたが怖いよ。何考えてるか全然分かんない。普通、もっと別の事を頼まないの?」

 

「一人は寂しいからね」

 

「そっか、そうよね」

 

恵那ちゃんは何かを諦めたようにため息をついた。そして私に向かって手を差し出してきた。

 

「よろしく、カツユ」

 

「うん、こちらこそ」

 

差し出された手を握り返すと、彼女は優しく微笑んでいた。

 

「って手汚れてない?」

 

「大丈夫だよ」

 

「いや、待って、ぬめぬめしてるじゃない!後で洗うからね!」

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