すらっぎーあにみずむ!!!~動物が人になる現代世界で動物嫌いがヌルヌル生活~   作:囚人番号虚数番

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人とけものと

今日も今日とて学校へ。いつもは一人で歩く道も今日は隣に一緒に歩くがいる。

 

「あんた夏休みなのに学校に行ってるの?」

 

「うん、あそこって人が多かったから友達が欲しくって」

 

「友達、ねぇ」

 

恵奈ちゃんがこの学校に通ってるから恵奈ちゃんのお友達とも遊びたいって頼んでみた。苦い顔をされたけど、私達を描いた水彩画をプレゼントしたら快く受け入れてくれた。

 

「あの絵もみんなに見せてあげないの?」

 

「私とあなたが粘液塗れで絡んでる絵なんて見せられるわけじゃないでしょうが!」

 

「草加は褒めてくれたよ」

 

「見せたの!?」

 

けど物凄く怒られたけどね。友達は駄目だって。次は自分の裸を練習にしようかな。だってお洋服描くの、時間かかって面倒くさいんだもん。

 

今は恵那ちゃんは勉強道具を、私は鉛筆とスケッチブックを持ってる。今日は学校が空いてる日だから中で勉強できるんだって。私はまだ生徒じゃないけど先生はほとんどいないから大丈夫?とか言ってた。ホントかなぁ?

 

そんな事を考えながら歩いてると学校の門が見えてきた。ひび割れたコンクリートの石壁と雑草だらけのグラウンド。校庭には小さな男の子たちがサッカーをして遊んでいる。校舎はボロボロだけど人がいっぱいいるみたいだ。

「んー、人がいるとしたら……校内か。とりあえず入りましょう」

恵那ちゃんについていくと、正面玄関じゃなくて裏口みたいなところに着いた。扉を開けると中は薄暗くて少しカビ臭い。靴箱にはスリッパが沢山入ってる。

「ほんとは勝手に使っちゃ駄目だけどバレないでしょ」

 

そう言いながら奥へと進んでいく。そういえば、学校の中は初めてだ。いろんな張り紙と人の気配にいつか私が通う姿を重ね合わせた。恵奈ちゃんと一緒にここを歩いたり、お勉強したり、とっても楽しみ。

 

廊下からでも教室から誰かの笑い声と電子音が聞こえてくる。恵奈ちゃんが「あいつら、没収されても知らないわよ」って言ってた。私でも分かる、多分ゲームしてる。

 

「男子達ー何ゲームで遊んでるのよ」

 

教室に入ると何人かが一斉にこっちを見た。声の通り中には男の子が数人、携帯ゲームをもって遊んでいた。

 

「うわー白野かよ」

 

「なんだよ~お前らも来たのか?」

 

「そりゃ来るわよ。ここしか暇潰す場所ないし」

 

その子達は楽しそうに会話しながらまた画面に集中し始めた。私達が来ても誰も気にしないみたい。するとその中の一人が私を見て話しかけてきた。

 

「あれ?そいつ誰だよ。見たこと無い奴じゃん」

 

「えっ、あ、あの……」

 

急に声をかけられてビックリした。どうしよう、なんて言えばいいんだろ……。私が困っていると代わりに恵奈ちゃんが答えてくれた。

 

「友達、草加さん家のアニマ」

 

その言葉を聞いて後ろの一人がふーん、と言って一人が近づいてきた。ちょっと怖い。

 

「どの動物?」

 

「な、なめくじだよ。ほら、頭とか」

 

私は頭の触覚を小さく動かす。うねり、伸び縮みして、湿っている。それを見ると彼はニヤッとした顔になった。

 

「気持ちわる!犬猫、友達いないからってこんなの友達にしてんだ!」

 

ケラケラと笑う。他の子たちも笑った。誰かが笑うところは嫌いじゃない。けど今の笑いは私も知らない。胸の奥が痛くなるこの気持ちは嫌悪、じゃなくて何だろ、言葉に出ない。

 

「アニマだったらオレみたいなもっと強い動物じゃないとな!」

 

いつの間にか退路を塞ぐように立っていた男の子の一人、動物の耳の生えた大柄の強そうな子が突っかかってきた。そして私の肩を掴む。私は怖くて動けなかった。体が震えて足が動かない。

 

―――怖い。

 

「やめなさいよ。怯えてるじゃない」

 

恵那ちゃんが私の代わりに前に出た。私を守る様に背中を向ける。彼女は少しだけ振り返って小声で言った。

 

「ごめん、来るんじゃなかった」

 

男の子たちは普段とは違う恵奈ちゃんに気圧され気味になってる。

 

「い、いやだってこいつの体ヌルヌルだしキモいし……」

 

「! あんた「恵奈ちゃん、絵を描きたい」

 

怒れる恵奈ちゃんの手を引き不意打ち気に男の子らの間を通り抜ける。教室のドアを開けて逃げるように廊下に出た。一瞬の出来事で怒りと驚きが入り混じる恵奈ちゃんに私は聞いた。

 

「静かな場所はある?」

 

「あ、えーと、空き教室ならいくつか、上の階なら空いてると思う」

 

階段を上って2階の一番奥の部屋に入る。鍵は開いていて机と椅子がいくつか並んでいた。電気をつけると少し埃っぽいけど何とか使えそうだ。

 

窓を開けると風が流れ込んでくる。

 

「あ”ームカつくわね!元の動物が何よ!私達はアニマよ!」

 

「うるさい、外まで聞こえるよ」

 

「だってあいつらが!」

 

さっきの事を思い出したのか恵奈ちゃんは興奮している。そんな彼女を見ながらスケッチブックを開く。鉛筆を握って紙の上に走らせる。

 

「恵奈ちゃんは強い動物だったの?」

 

「まあね、でも……いいや、強かったはず」

 

絵を描いていると次第に落ち着いてきて会話ができるようになってきた。絵の具が無いから急遽この前家で見つけた色鉛筆で我慢する。

 

「あんたももっと言い返してもよかったのよ。悪いのは明らかにアイツらだし」

 

「ううん、平気だよ。ちょっとビックリしちゃって」

 

「あいつらはいつもああなのよ。自分より弱い動物に目をつけて虐める馬鹿。私も目をつけられて大変だったのよ」

 

恵那ちゃんはため息をついた。あの子達は色んな子に迷惑をかけてるんだ。私も恵那ちゃんみたいに強くなれたら仲良くなってくれるのかな。

 

「みんなをああやって笑うんだ」

 

「叩かれないだけマシよ。それともああいうのは初めて?。」

 

私はその言葉と同時に一瞬鉛筆の動きを止める。

 

「うん、私は笑われたのは初めて。でも嫌われてないなら私はいいかな」

 

恵奈ちゃんは私の反応が予想外で不思議そうに口を閉ざす。

しばし静かな教室に鉛筆を動かす音だけが響く。

 

「絵、好きなの?」

 

静寂を破ったのは彼女の方だった。

 

「ううん。今の私にはこれ以外無かったから」

 

「どういう事?」

 

「やりたい事があって、たまたま絵だったの」

 

鉛筆を動かしながら淡々と答える。彼女は私の隣に椅子を持ってきて座る。足を組んでゆっくりと足を揺すりながら、その目は私を見つめていた。

 

「絵を描くと段々考えが変わるの。最初は頭に浮かんだ描きたい物を写す。輪郭も何もぼやけた形を数本の線でなぞる。すると少しずつ線がはっきりしてくる」

 

言葉に合わせてキャンバスに線を引いていく。すこしづつ私の頭にある物が形を成し、だけど具体性を帯びていくにつれて逸れていく。

 

「でもね、何度も繰り返していく内に今度はどんどん頭の中から離れてくの。いつの間にか頭の景色も紙の絵の形に変化する。本当は私の絵がへたっぴだからだけどその時の感覚が楽しくて」

 

私がそう言うと彼女は驚いた顔をした。意味の分からないような、まるで恐ろしい物でも見る、けれど何か違う。

 

「ごめんね、上手く伝えられなくて」

 

「い、いや、ボーっとしてるイメージあるから意外だなと思って。あんたが喋ってるとこ初めて見たかも」

 

「むぅー、私はいつも真剣だよ」

 

頬を膨らませて抗議する。私はいつもお勉強とお散歩、それからお絵かきで忙しいのに。もしかして草加も私をそういう風に見てたりするのかな。

 

「今の絵もちゃんと考えて描いてるんだよ。ただちょっとだけ他の人と違って見えるかもしれないけど」

 

うーん、でも一応この描き途中の絵がどう見えてるか評価しよう。

 

「これは絵なのかしら?」

 

「私と恵奈ちゃんと動物が木の下で眠っている所、だったんだけど……」

 

恵奈ちゃんが私の絵をまじまじと見つめている。

 

「……キメラって分かるかしら」

 

「ううん」

 

「私には青白い塊にいろんな動物のパーツが生えて何かに潰されてるようにしか見えないんだけど」

 

「うん、そうなっちゃった」

 

「絵はちゃんと上手いし妙に写実的だから美術館の絵にあってもおかしくない雰囲気ね」

 

「ありがと」

 

褒められた嬉しさでつい笑顔になる。そんな事を話しているとチャイムが鳴る。同時に私達のいる数人の女の子が教室に入った。

 

「恵奈ちゃんも学校来てたんだ。その子は?」

 

「知り合い」

 

恵奈ちゃんが答えると私の周りに集まってきた。彼女らは私と私の描いた絵を交互に見る。まだ描いている途中だから整っていないけれど私の絵に何かを感じたみたいだ。私は自慢げに彼女らの方を向くと全員が驚いた顔をしていた。

 

「すごい……。これあなたが全部一人で?」

 

「えっ、う、うん。そうだよ」

 

その言葉に皆がざわめく。そして口々に話し出す。

 

「上手すぎる」「こんなの見たこと無い。プロ並みじゃん!」

 

今までで一番の反応に私は嬉しくて、照れくさくて俯いてしまう。恵奈ちゃんも彼女らと混じって近くで

見ていた。

 

「でもこれ。何の絵?普通の絵じゃないよね」

 

一人が言うと周りの子も確かに、と言って考え込む。そこで私は言った。

 

「私の場所だよ」

 

私の言葉の意味が分からなかったのか、周りは黙ってしまう。

 

「私、あんまり他の人の絵は見たことなくて。だから練習以外だと何を描くのが普通か分からなくって。インターネットだと練習で人の絵が多いけどどういうのがいいのか良く分かんなくて」

 

私は恥ずかしさで早口になっていく。顔を上げると、恵奈ちゃん以外の子が優しい目つきをしていた。

 

「それじゃあ私達を描いてみてよ。それでどんな感じか教えてあげる」

 

私はその言葉に目を輝かせる。

 

「いいの!?」

 

「うん、ちょっと待ってて」

 

そう言って彼女達は教室を出て行く。恵奈ちゃんが言うに美術室にペンがあるらしい。みんなそれを取りに行ったんだそう。みんな私に協力してくれるのかな。

 

「あの子達、お友達になってくれるかな」

 

「いい子達よ。多分数日一緒にいればすぐかもね」

 

彼女は少しだけ笑ってくれた。良かった。仲良くなれたら嬉しいな。それにしても今日は良い日だ。絵が上手く描けるし、新しい友も出来た。私は彼女らの紙を用意するためスケッチブックから紙を破く。その途中、その中で一枚この前描いた恵奈ちゃんの更に別の練習絵が出てきた……写しただけで分かる、でっかい。

 

あ、そうだ。これを使えばあの男の子たちも誘えるかな。

 

「恵那ちゃん、トイレ行ってくる」

 

「なるべく早くね」

 

「はーい」

 

ーーー

 

ガラッ

 

「おーい、こんにちはー」

 

一階のあの教室にはまだあの男の子達はいた。今度はゲームこそやっていないものの机のいくつかをを一箇所に固めて沢山のカードを並べていた。

 

「? あれ、お前まだいたのかよ。雑魚はとっとと帰れ」

 

私を見た途端彼らは怪訝な顔をする。私はそれを無視して適当に場に出ている一枚をじっと見つめる。白い女の子が描かれたキラキラと輝く他とは違うカードだ。

 

「このカードが欲しいのか?駄目だぞ。レアカードで6000円くらいする、でもお前には絶対に売らないからな!」

 

アニマの一人がうるさいけれど今見たカードを覚え、黒板を前に適当に写す。指先から濃い粘液を出して指を走らせる。程なくして白い跡がカードの少女の形に黒板に残る。簡単だから服は描かずに、だけど体つきだけは頑張って再現してみた。出来は時間の割には良い。男の子たちは驚いて声も出ていないけれど私は振り返って一言。

 

「こんなことしか出来ないけれど、あなたが良ければよろしくね」

 

それだけ言い残して私はまた駆け足で教室を出る。教室の中の男の子たちもが途端に騒いでるけど追う気配はない。遠目に中を覗くと皆が私の絵に見とれていた。

 

「ありがとね。私で喜んでくれて」

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