すらっぎーあにみずむ!!!~動物が人になる現代世界で動物嫌いがヌルヌル生活~   作:囚人番号虚数番

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帰郷

電車に乗って30分、水族館の更に向こうの秘境駅。窓の外には海と緑、街からの距離を段々と感じる。隣にはカツユが座り持参したスケッチブックに鉛筆で絵を書いている。しかし移り変わる風景を描くには電車は速すぎた。困り顔になりつつパッチワークのように窓の景色を紙に編み込んでいた。

 

僕はスマホで仕切りにメールをチェックする。家族からの定期的な連絡とそれ以上に来るほか二人の連絡が止まらない。部屋はどこを使うかとかご飯はどうするかとか、そしてカツユについて。両親は多分数日すれば旅行中でいなくなるだろうに。僕は適当に返事を返す。

 

朝が早く、メールの疲れから僕は窓の外を見る。すると丁度荒れ果て草木に埋もれた無人の駅を通過した。つまり、と地図を見れば残りは数駅。いよいよ僕らの向かう先だ。

 

7月の夏休み、僕は実家に帰省中。

 

ー句蔵市 偉守漁村

 

時刻は朝九時、人が本格的に動く時間帯。太陽の光が照りつけて暑い。

 

駅を出て真正面にあるのは古寂れた釣具店とコンビニ、それと背後にそびえる一面緑の山。海と山、対局の2つに挟まれたこの村は見ての通り過疎地域である。だがアニマの発生以来、この地域は意外とアクセスが良い自然豊かな場所だと彼らからは隠れた人気スポットだ。

 

ただし、移住者はやっかいな体質のアニマ多いらしい。僕らみたいな。

 

「草加、あついよー」

 

彼女には以前に買った白いワンピースを着てもらっている。耐水性は無く粘液で濡れている。夏のために買った新品の黒い日傘をしていても彼女にはまだ駄目らしい。

 

「家は近いからもう少し待ってて」

 

ひび割れた坂を上り僕は見慣れた家に向かう。実を言うとここに帰ったのは学校を出たきりいらいないのだ。なにせ田舎の閉鎖的な村社会とアニマの自由奔放な性質はどうしても空気が悪かったりする。まあ、多くは平気なのだから僕が異常なのだろう。

 

やがて着いた僕。海の見えるこの古く小さな家が僕が高校生までを過ごした家である。玄関を開けるなり出迎えてくれたのは誰もいない。母はパート、父は仕事に行っている時間的であるから当然だ。事前に連絡もあったからこれは想定済みだ。

 

「お邪魔します」

 

「いらっしゃい。じゃあ、大分汚れちゃったからお風呂ね」

 

カツユを風呂とトイレを案内して粘液まみれの洋服を水で洗い干す。悔しいけれど彼女の扱いにも慣れてきた。

 

さて、今の内に彼女の為にプレゼントを用意した。家に帰る時の荷物に僕と彼女の衣服以外にも大切な物がある。とは言ってもここに来るにあたり彼女であれば必須であろう物だ。早い所渡したいので僕はそれを風呂場に着替えと一緒に置いた。

 

 

 

バン!

 

「草加ー!水が冷たい!」

 

「ッうわ!?濡れたまま出てこないで!」

 

恐らく風呂のシャワーの温度調整を知らなかったのだろう。お湯と水を混ぜるタイプ化石のような方式の風呂なのだ。彼女は僕に助けを求める為に冷水を飛ばしながら勢いよく扉を開く。

 

「待って!シャワー止めて!服がまた濡れちゃうから!」

 

「うん」

 

そう言うと彼女は冷静に蛇口を閉めた。

 

「あぶない。凍えるところだった」

 

その言葉通り、彼女の体は突然の冷水で震えている。しかし十分な水分は浴びれたらしく概ねの粘液は落ちた。加えて外気もあってすぐ寒いから涼しいと感じたらしくバスタオルで体を拭き始める。

 

……僕の前で。

 

「……あ、あの!服置いておくね!」

 

「ありがとー」

 

湿った体で彼女は若干皺ついた服を手にする。その隙に僕はいそいそと風呂場から離れた。

 

 

 

一方彼女は渡された服を着用しようとしたとき、いつもとは違う物が紛れているのに気が付く。下着に似た、だが質感は初めてで滑らかである。とりあえず着用してみるとやはり何かが違う。

 

「何これ……あ、草加いないや」

 

ー--

 

久々に帰った家は相変わらず古臭く、僕が去ってから何も変わらない。リビングには使い込まれた家具が、台所も大学を出る前に変えた電気コンロのまま。一人暮らしの家より広い実家の素晴らしさを改めて感心する。

 

となると僕の部屋はどうなっているだろうか。2階に上がり久々に部屋に入る。部屋の扉を開ければそこには懐かしい匂いがあった。本棚の漫画、机の上にあるパソコン、ベッドの上に折りたたまれた布団、そして壁に貼られた色褪せたアニメキャラの大きなポスター。どれもこれも変わっていない。手入れはされているらしく埃は無く、掃除した跡がある。

 

僕は自分の部屋を見て少し安心する。ここでなら落ち着けそうだと。ついでにまだ残っているだろうか。壁際にあるクローゼットを開く。

 

「海なんて久しぶりだな」

 

好奇心に誘われるがまま僕はクローゼットを開いた。ここにはプラスチック製の入れ物が一つしかない。ついでに卒アルとかもあるが今は別だ。殆どの衣類は引っ越しの時に持っていった。だからここにある物は使用頻度が少ない季節ものや過去の制服である。さて、まだあるかな……

 

「お、あった。サイズも平気そう……うん、平気…………うぅ、成長が……」

 

あるにはあった……けど……屈辱だ。部屋で一人、時間の経過に置いて行かれた体を思い悩んでいると下から階段を駆け上がる足音がする。

 

「草加ー?ここにいるのー?」

 

そして僕が返事をする前に扉を開けた。

 

瞬間、持っていた服をクローゼットにしまい込み何食わぬ顔で振り向いた。

 

「ど、どうかしたの」

 

「ん、ちょっと聞きたいことがあって。なにこれ」

 

すると彼女は上着をたくし上げ、中に着ていた服を見せた。露出の少ない布面積の大きい服、トップスとボトムスが一体となった構造。生地も下着には無い独特な質感。体のスタイルがくっきりと表れるそれは彼女が着るとエロティックな印象を受ける。

 

「あー、それは水着っていう海とか川に入る時の服だよ」

 

彼女に説明するとすぐに階段を降りる。そして5分程してから下から走って戻る足音が聞こえてきた。そして勢いよく扉が開かれる。

 

「何これ!?一瞬で水がはけて軽い!これいいね!」

 

普段比較的厚手な服をあれだけ粘液で濡れているのだ。水着の生地に感動したらしい。水着姿で自分の体を見回す彼女は見ていて微笑ましい。

 

「ちょっとあっちの大きな水辺で泳いでくる!」

 

彼女は再び部屋を出た。窓越しにガラガラと玄関の開く音が聞こえる。カツユ、もう外に出たのか。さて、彼女の喜ぶ姿に満足しながら僕は持ってきた服の整理をしようか。彼女の服は一階、僕の水着も見つけられたし濡れた服の洗濯もしないと。

 

洗面所に向かうと床に服が放置されている。彼女なりの実験なのか手に取った服は粘液以外にも水で濡れている。

 

 

 

……床に放置、服が、床に放置?

 

「その恰好じゃ不味いよ!」

 

あの野郎水着のまま海に出ていきやがった!慌てて玄関を飛び出すと素手に姿はない。加えてアイツには泳いでいい場所を教えていないのだ。

 

完全に想定外、緊急事態が発生した。今すぐに彼女を見つけなければ何が起こるか分からない。補導されるとかならまだしも水難事故なんて起こされたらたまったものではない。

 

「(このまま見つからないのは不味い。何としててでも早急に見つけないと!)」

 

その時、僕はあることを思い出した。今の時期なら……急いで家に戻りスマホで友人に連絡する。

 

『古渡、今どこ?』

 

『え、いつも通り海ですけど』

 

『偉守の僕の家から近いか?カツユが行方不明、海にはいったけど近場は遊泳禁止の岩場、カツユは場所を知らない』

 

『それは不味いですね。私も見回りに行きます」

 

よし、これで協力者は確保できた。スマホを片手に僕は潮風と共に走り出す。

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