腐らせておくのもあれかと思ったので。
ここだけアルトリアに‐表
どうやら、随分と過去の時代に生まれたようだ。
ついでに俺の知っている世界より、ファンタジー要素が多分にトッピングされた環境らしい。
湖の妖精やら、夢魔の魔術師やら、白き竜の化身やら、前世じゃまずオカルトとして片付けられる言葉も、もうすっかり聞きなれたもんだ。
まあ受け入れられた主な原因は、夢の中で延々とこういった事情を説明してくる胡散臭い優男の存在に尽きる。
最初は自分の妄想かと思ったが、流石に寝ている間ずっと語り続けられるほど妄想のストックもないし、いい加減現実逃避するのは諦めた。
非常に面倒極まりないが、どうやら国を一つ救う羽目になったのだ。
まずは岩に刺さった剣を抜くところからミッションが始まるらしい。
ハッ、なにそのアーサー王伝説。
俺でも知っているくらい有名なお話じゃないか。
でも思ったんだよ。
確かに俺の置かれている状況は伝説の主人公のソレに酷似している。
だがしかし、一つ決定的な違いがあるんじゃないかって。
えぇ?
アーサー王が実は女でした?
何だその陳腐な裏話は。
冗談じゃないぞ全く。
か弱き少女にとんでもなく重い責任載せてるんじゃないよ。
いや本当。
幾ら備え付きのチートパワーがあったって、こんなん大変なことに変わりはないんだぜ。
何せ、モチベーションが湧かない。
こう頑張ったあとのご褒美的なモノとか、そういうのが一切ない時代なわけよ。
あ、違うか。
あるにはあるんだけど、俺が満足できるものがないのか。
特に飯。
言っちゃなんだが、クソ不味い。
文明の偉大さをしみじみと感じるわ。
何故か存在するジャガイモを蒸したのをモソモソ食うほど虚しいことはない。
あの食感には時代考証とは一体って突っ込みも消え失せるね。
とか思っていたのだが、そんな俺にも心境の変化があった。
まあなんてことはない。
道端で死にかけている人間の身体がグロかった。
瀕死で呻いている人間の表情がキモかった。
あんな風には死にたくないと思ったら、やることは一つだろう。
強くなるのだ。
幸いと言っていいのか分からないが、この体のポテンシャルは中々のもの。
竜の心臓なんてゲテモノを入れられているだけあって、鍛えれば鍛えた分だけ伸びる才能の塊だ。
暇つぶしが出来ない環境なのも、逆にちょうどいい。
そんなこんなで、寝る間も惜しんで強くなるために鍛え続ける日々が続いた。
ちなみに、そんな人間やめたようなスケジュールで動く俺を見て、義兄の表情が複雑になったのはご愛敬。
もともと積極的に話すような仲でもなかったし、別にそこまで気にする必要はないだろう。
ああそういえば、修業に打ち込んでいるとはいえ王になる覚悟とやらはない。
王になる理由があるだけだ。
手下を増やして俺の肉壁として扱き使うという理由がな。
命惜しさに努力している俺だが、流石にこの体がどれだけ優秀でも一人で何でもかんでも打ち負かせるとは思えない。
所詮戦いは数だ。
だったら少しでも手下を増やして、自分の安全くらいは確保できなければ話にならないだろう。
そしてこの時代、如何に野蛮とはいえただの脳筋にトップは務まらない。
とすると、自然にこの国の王に相応しい教養を身に着けるべく勉学にも励む必要がある。
今までは多少邪険に扱っていたが、今後は夢に出てくる自称魔術師の話にも注意を割いてやるとするか。
飲み込みのいい体だし、そこまで心配することはないだろう。
なに、これも武力とは違う方向での強さだ。
総合的に自分が強くなるということであれば、文句の一つもない。
王になることで得られる権力を思えば、むしろ安いくらいだ。
◇◇
十五歳になった。
変化のない毎日を送っていると時間経過に鈍くなるが、どうやら最初のミッションをこなす日が来たらしい。
というわけで剣が刺さっている岩の前まで来た。
義兄の話を聞くに、この国の連中はあの胡散臭い魔術師が下した預言を信じないことにしたらしい。
結局腕試しで救世の王とやらを決めるとのことで、主だったギャラリーはそちらに移った。
まあ俺としては人がいない方が気が楽で、むしろありがたいくらいだが。
……正直、これで剣が抜けませんだとかなり困る。
こちとら人生設計の全てを自分が王になることを前提に立てているのだ。
今までの苦労がパーになったと知れば、俺は軽く一日は寝込む。
しかしまあ、そんなことはもう散々悩んだ後だ。
それに、ここでうじうじ怖気づいているのも、伝説の主人公として恰好がつかないだろう。
俺は剣を握ろうと一歩踏み出そうとした。
が、その前にこの場に現れた気配を察知して振り返る。
視線の先には、白いローブに身を包み如何にも魔術師然とした風貌の優男が佇んでいた。
どうやら、最終確認のためにわざわざ出向いてきたらしい。
よく考えた方がいいとか、人間ではなくなるとか、本来ならもっと前に掛けておくべき言葉を飄々と嘯いている。
今さらな話だ。
コイツも俺がそんな心無い言葉で止まるようなヘタレじゃないことぐらい、とうの昔に知っている。
俺は形ばかりの静止を振り切って、剣を取った。
岩と剣が擦れる鈍い金属音が、俺と魔術師以外誰もいない草原に響く。
やはり俺は王になるらしい。
この後はこの剣の使い方を修業したあと、いよいよ俺の親父の後継として宣伝を始めることになる。
当然味方になろうと思う奴も来るだろうし、それ以上に俺を殺したいドラゴンおじさんとかその他諸々の相手をしなきゃならない。
あ~あ。
さっさと優秀な手下を集めて楽をしたいもんだ。
初期投資を回収できるのがいつになるのか分からないってのが、厄介なところだよな全く。
とかボヤきながら各地を旅すること数年。
なんか自然と優秀な手下が集まってきた。
あ、これやっちゃう?
全面戦争やっちゃう?
なんて呟いたら皆もやる気になっていた。
雄叫び上げだしたよこいつら。
で、大所帯になった此方のことは、当然ドラゴンおじさんの知るところになった。
まあ向こうとしてはかつて殺した宿敵の後継者が旗揚げしたのだ。
当然ながら速攻で潰しにかかってくるわけで、あっさりと戦争が始まった。
そして、俺が思っていたよりも俺は強かった。
いや、持ってる武器の性能がバカ高いっていうのもあるが、それにしても強い。
雑兵の百や二百、文字通り瞬殺である。
そんで手下どもの中にもそういう類の武器を持っている奴が数人いるわけで。
連勝が止まらないんですわ。
生命の危機とか感じる暇がない。
それよりも別の、人間としての倫理観みたいなものが削れている瞬間の方が多かった。
やべーな俺めっちゃ人殺してるぞ、みたいな。
でもそれも最初のことで、後半はもう慣れた。
個人的には楽になったような感覚だったのだが、俺の武器にとっては気に食わない出来事だったらしい。
いきなり剣から光が消えやがった。
仕方がないので、優男の助言に従って新しい剣を取りに行く羽目になった。
で、新しい剣の名前はエクスカリバー。
多分あれでしょ。
世界で一番有名な剣の名前でしょ。
流石の俺も手に入れたときはちょっと感動しました。
使ってみたら感動も冷めたけどね。
あ、そういえば、少し引っかかることがあった。
ドラゴンおじさんはなんで戦場に出てこないんだろうって疑問だ。
ここ最近はずっとロンディニウムとかいう都市に引きこもっているらしい。
意味が分からん。
まあ、此方にとっては有難い展開なんだけど、どうも気味が悪い。
……行ってみれば分かるか。
そんなわけで来ましたロンディニウム。
向こう側はサクソン共の大軍がうじゃうじゃしているが、正直雑魚は数に入らない。
ちゃちゃっとお供を排除したあとに、本命のドラゴンおじさんを始末することにしよう。
で、大分敵の数を減らしたところでドラゴンおじさん襲来。
一応俺にとっては伯父さんなんだけど、もうあっちが親父を殺しているし大義名分は十分。
数で囲んで殺しましょうと思ったんだけど、――なんか一撃でうちの軍勢半分くらい吹き飛んでますねぇ~。
まっ、想定内っていえば想定内か。
俺が同じようなことを出来るんだし、ここはこっちの雑魚を動員するわけにはいかないようだ。
肉壁として消費するにしても、体力勝負なら向こうの方が圧倒的に勝っているようだし、倒すにゃ相手が回復するよりも早く止めを刺すしかないな。
じゃっ、行くぞ使える手下ども!
って感じで先頭斬って突っ込んだんだけど、思ったより状況悪いわこれ。
何か黒っぽいドラゴンに変身したおじさんの周囲には、強力なデバフがまき散らされている様子。
耐性を獲得できる装備がないと戦えませんとか、聞いていないぞ優男。
俺以外だとその条件満たしているの筋肉ゴリラ一人しかいないんだぞ!
しかもそいつも何か絶望顔してへたってるし。
おいっしっかりしろ。
相手の活動フィールドがこの島全部なんだから、逃げる場所なんてねえんだよ!
とか発破かけながら戦うこと数時間。
何とか回復したらしい筋肉ゴリラがおじさんの腕をぶっ刺して地面に固定することに成功した。
しゃあっチャンス到来ってことで俺が持っていた切り札を発動させると、おじさんは胴体に大穴開けて倒れた。
しかしまだ生きているようで、何やら意味深なことを色々と呟いている。
要約すると、色々あったけど今後も身の安全には気を付けろってことだな。
言われるまでもないことだ。
俺は人間らしい最期を遂げるって決めてるんだから。
あ、でも今は移住予定の新しいお城のことが気になるな。
快適な空間にしたいものだ。
◇◇
ドラゴンおじさんを撃破し新居に移ってから早数年。
ここ最近は姉からの嫌がらせに対処していることが多い。
一応半分だけとはいえ血は繋がっているのだし、なぜこんなに嫌われているのか理解に苦しむ。
まともに会話したことすらない相手に、ここまで執念を滾らせるとは。
我が姉は奇特な性格をなさっているようだ。
しかしこちらもただやられっぱなしでは性に合わない。
ここらで先手を打つことにした。
あの魔女は厄介な魔術を使うが、直接戦闘では俺や使える手下ども――最近は円卓の騎士とか名乗り始めてる奴らには敵わない。
そこを利用して、あいつの根城に精鋭部隊で片っ端からカチコミをかける手はずだ。
無論うちの魔術師とタメ張れる凄腕の姉上が、そう簡単に居場所を察知させてくれるとは思っていない。
もし運よく発見できたとしても、用心深いあいつのことだから戦いを避けて逃走するだろう。
しかしそれはそれで結構。
あいつ自身は確保できなくても、あいつの手札は幾つか潰せるだろう。
そうすれば失ったリソースを取り戻すために、しばらくは大人しくなるって算段だ。
てなわけで早速計画を実行してみた。
怪しげな品々が毎日のように目に見える成果としてキャメロットに運び込まれてくる。
実際にはちゃちなガラクタが大半だが、そんなことは一般民衆には分かりはしない。
こうしていれば、自分たちの王様が仕事をしていると納得してくれるだろう。
ほとんど抵抗らしい抵抗もないし、此方の損害はほぼゼロ。
上手いパフォーマンスだな。
あ、ちなみに姉上本人の行方はさっぱり分からん。
どうやら全力で息を潜めているらしい。
ただ、俺が担当した捜索範囲の中から、奇妙なものが見つかるというちょっとした事件は起きた。
なんかこう、如何にも怪しげな液体に人間の幼女らしきものが漬けられていたのだ。
早速花の魔術師殿に調べて貰ったのだが、正体は俺と姉上の遺伝子を組み合わせて作った人造人間らしい。
何でも姉上が俺の生体情報をどこかで手に入れて、手駒として育てる計画を立てていたのではという推測を聞かせられた。
正直ちょっと引いた。
だが色々と考えてみると、これはこれで利用価値があるような気がする。
いつの世も王様には後継者が必要なものだ。
俺はもう結婚しているが、同性同士で子供は出来ない。
そして性別程度であれば優男が何とかするが、根本的には俺に夫婦の時間を持つような余裕がないという大問題もある。
だったらこの人造人間を成長させて俺の子供として育てれば、後継者問題は一応の落ち着きを見せるだろう。
そんな経緯で始まりました子育て生活。
とはいっても、俺自身が四六時中面倒を見ているわけではない。
それじゃ俺に時間がないからって無理に捻りだしたその場しのぎの策が、まるで意味ないものになってしまう。
だからしょっちゅう自宅を留守にしている俺では、日ごろから成長を見守るってわけにはいかない。
すると、子供の成長は早いのなんの。
一瞬で大きくなっていく。
あれおかしいな。
発育の速度は一般的な子供とほぼ変わらないように調整したよねって優男に確認したら、もっと顔を見にいってあげなよと嘲笑いやがった。
そんなのお前に言われる義理じゃないわ。
しかし子供、娘か。
滅多に会わないとはいっても、何だかんだ愛着は湧く。
俺に似た顔立ちだし、将来は美人になるんだろうな。
なんであんなに懐いているのかは謎だが、そんな子に慕われているなんて、意外と俺は幸せ者なのかもしれない。
あの子のためにももう少しましな国にしたいなー。
うん?
俺は今あの子のためって思ったのか。
とすると、初めて人に話せるモチベーションが生まれたってことになるが。
そうか。
俺は意外と子供好きだったのか。
フッ。
終わっている食糧事情の改革とか始めてみましょうかね。
効果があるのかは別だけど。
◇◇
俺の娘が騎士になると言い出した。
男として育てられている以上仕方ないことだが、ちょっと複雑な心境になる。
随分昔に義理の兄が俺を見ていたときの気持ちが、なんとなく最近は分かるような気がしてきた。
あの人も結局俺についてきたし、家族思いなのは兄妹でお揃いってことかもしれないな。
血は欠片も繋がっていないけど。
しかし、親子揃って性別を偽る羽目になるとは。
もうちょっと上手い手を考えるべきだったのか?
経験上強くなってた方がいいよねってことで訓練を受けさせてきたが、まさか本当に騎士になりたいとは思いもよらなかった。
いくら気が強いとはいえ女の子だし、病弱設定でもなんでもつけて後ろに下がることだって可能だったのに。
いや、俺もたまに剣を打ち合ったりしてたから分かるけど、確かにあの子は強いよ。
成長したらうちの使える手下どもとかとも戦えるようになるくらいには、才能があると分かってる。
でも俺としてはこう、うっかり罠に嵌められたりしないかとか、酷い目に遭ってほしくないとか、色々考えちゃうわけ。
とかいう愚痴を優男にしてみたら、珍しく苦笑いしていた。
君は立派な親だねとかなんとか。
お前が親を語るなと一瞬言いかけたが、何か致命的なダメージをこいつに与えそうで遠慮しておいた。
こんな馬鹿でも一応恩があるし、何より能力だけは一流だ。
使えなくなってしまったら困る。
ただでさえこの国は問題が山積みだってのに。
ハア。
北方のエイリアン共に、海から尽きることなく渡ってくるサクソン共。
侵略者という外部の脅威もあるが、何より問題なのはこの国の土地だ。
神秘が絶えるからとかいうふざけた理由で、この島の土地は死にかけている。
死にたいなら勝手に一人で死ねよと個人的には言いたいが、土の上で人間が生きている以上そうはいかない。
食糧問題は年々深刻化し、餓死者は増え続けている。
ダメ元で聖杯なんていう奇跡を探させるという案もあるが、発見できるかも怪しいものに縋りたくないし、発見したとしてもそいつが素直に持ってくるかどうか。
……やめよう。
部下を疑い出した独裁者の末路は悲惨だ。
ともかくも、まずは異民族との片を付けなくては。
最低でもこの島で悪さをしない程度には痛めつけて、時間を稼ぐ必要がある。
てなわけで俺が始めた戦争だが、正直酷いものだった。
俺や使える手下どもは確かに強い。
だがどれだけ強くても、人間である以上は食べなきゃ戦えない。
だからどうにか物資を集める必要があるわけだが、こんな島じゃ戦争なんて非生産的な行為に費やす余分な資源はないわけだ。
でどうするかっていうと、適当に人口が少ない村を一つ二つ潰す。
いや~効率的なんだけどこれやると士気が下がるんですわ。
士気が下がると当然異民族共との戦闘に支障が出て、余計な犠牲者が増えたりするわけで。
あとはもう負のスパイラル。
単純に敵と戦うのとは、また違った不快感だ。
でも、やめるわけにはいかない。
少なくとも異民族を島から一掃するまでは。
そんな覚悟で戦い続けて一年。
俺たちは何とか戦争に勝った。
が、士気の悪化は俺の予想を超えていたらしい。
何人か手下どもが騎士団から去り、残っている面子も俺に向ける目が前よりも厳しくなっている。
……最初はあんなにノリが良かった連中なんだけどなー。
疲れた心を癒すために娘に会いに行く。
久しぶりに会った子供は、また成長していた。
この分だと、いよいよ騎士になるときが近づいてきたらしい。
今回の戦いで空いた穴を埋めるために、この子も含め若手を入れて組織を再編しないといけないか。
暫くは書類仕事がメインになりそうだ。
まあ、剣を振るのには飽きたし丁度いいか。
ついでに秘書官と相談したいこともあったし。
◇◇
聖杯探索なるものが始まった。
と言うと仰々しく聞こえるが、実際には手下どもへ休暇を与えることが目的だったりする。
ここ最近の疲れを取るべく、のんびりと諸国漫遊の旅を楽しんでもらいたいものだ。
そして願わくば、俺に対する態度を改善してほしい。
戦争が終わってからこのかた針の筵に包まれているような気分で、正直こっちも疲れてきた。
一旦距離を置いて、互いの関係を見直すのもいいだろう。
そういえば、うちの娘もいよいよ騎士の受勲を済ませて働きだした。
しかしまだまだ経験が足りないガキンチョであるため、あまり危険な現場に出すことは気が引ける。
というわけで、彼女にも聖杯探索を建前とした旅行に行かせることにした。
お守りとしてうちの手下の中で一番腕が立つ奴を付けておいたから、危険が及ぶことはないだろう。
ただ懸念事項として、そいつの顔面が整いすぎているという問題がある。
性格面でもちょっと影はあるがそこが逆に色気を放っているとかなんとかで、ご婦人方からの人気がエグイ。
うちの娘のことは男だと思っているだろうからそいつから手を出すことはあり得ない筈だが、万が一ということもある。
一応二人きりの旅というわけではなく、イケメンの従者を務めていた若手騎士がもう一人ついていくのだが、どうなることやら。
旅から帰ってきて孫が出来たりしていたらどうしようか。
取り合えずイケメンを半殺しにすることは確定として、生まれてくる孫をどう扱うかという点でも問題だ。
俺は果たして正しい選択を出来るのだろうか……。
などと二人が出発した後も真剣に悩んでいた。
結局事情を知っている優男に相談してみたところ、うちの娘はイケメン野郎の守備範囲外だから大丈夫と説得された。
どうしてそんな情報を把握しているのかという嫌悪感を味わう羽目になったが、お陰で正気に戻った気がする。
まっ、あいつはいい奴だし、そんなに疑ってかかることもないだろ。
俺のことを何となく避けているような気はするけど、付き合いは長いしそれなりに信頼できる。
何よりうちの可愛い娘を無下に扱うことなど出来るわけがない。
仮にもうちの国の王子様なんだからな。
で、俺の心配は結局空振りに終わり、しばらくして三人は何事もなく旅から帰ってきた。
結構いいところを見せつけてきたらしく、うちの娘がイケメンを見る目がなんかキラキラしているのが少し心配だが、それ以外におかしな点はない。
普通に騎士として尊敬できるとか、まあその辺だろう。
イケメンの息子さんが聖杯の探索中にうっかり昇天しちゃったって事故もあったし、せめて俺たち家族はあいつを支えてやりたいもんだ。
そして他の騎士たちもキリのいいところで戻ってきて、また城が賑やかになった。
ベテランと若手との交流も含めた旅だったが、こう仲良くしているのを見るとそれなりに成功を収めたようだ。
……相変わらず俺は何となく孤立しているけど。
じゃあ手下どもの仲も深まったところで、いっちょローマに行ってみようか!
目的地は昔から憧れていた夢の大都会。
ちょーっと苦手な皇帝と場合によっては戦う羽目になるかもしれないが、まあそこは気にしないでおこう。
とにかくこれ以上ちょっかいかけてくんなってことを相手に認めさせたら、それでこっちは勝利条件を満たせるわけだからな。
あと海!
敵の船団が発見されたとかいうクソ面倒な報告を聞くのとは違って、今度はこっちが船に乗るんだ。
あんまり乗ったことないから今から楽しみだな全く。
てな感じで準備を進めていたら、とんでもない報せが入ってきた。
うちの奥さんとイケメンの不貞が発覚したとかなんとか。
最初は何の冗談だって余裕ぶっこいてたけど、流石に現場を暴いたとされる手下の一人がその場で死亡していたとなると話が変わってくる。
状況証拠的にイケメンが殺したのは確定で、当の本人は釈明どころか現在消息不明。
オイオイオイオイ。
こんな最悪の形でフラグ回収しなくていいんだよ。
お前はちょっとヤンデレ系に好かれるっていう厄介な体質持ちだったけど、お前自身は普通にいい奴だったろうに。
ひとまずはその場に取り残されていた奥さんを謹慎させておくようにとの命令を先に出し、俺は急いで出張先から自宅へ戻る作業を始めた。
が、俺が何とか引継ぎを終えて自宅に戻ったときには、既に現場には手遅れ感が漂っていた。
イケメンが突如として城に現れ、奥さんを攫って自分の領地へと逃走。
その際に奥さんの警護を担当していた騎士複数人がイケメンに殺害された。
人望が厚かったこともあり、城に詰めていた騎士の中からもイケメンに付いていく奴がそれなりにいたらしい。
結果として手下どもの中には動揺が広がっているとのこと。
イケメンンンンンンッッッ!!
お前何やってんだッッ!
あれか。
そういえばお前色々と溜めこんじゃう性質だったよな。
それが爆発したってのか?
いやそれにしてもやりすぎだろ。
筋肉ゴリラなんて一気に弟たちが皆殺しにされて激怒してるじゃん。
これどうすんの。
戦力ガタ落ちした状態で海越えろってか?
……ハァ。
何か疲れたな。
これからどうしようか。
差し当たっては関係各所に連絡を入れて落ち着かせて。
で、そのあとはイケメンと奥さん、その他離反した手下どもへの対処を決めなきゃいけないが。
これがな~。
今あいつらがいるのってイケメンの領地でしょ?
つまり大陸側なわけよ。
ローマと事を構えようってときにあいつらとも戦えるわけないじゃん。
二正面作戦って奴か?
よく知らんけど。
とにかく手持ちの戦力じゃ二つとも相手にするのは無理。
じゃあ片方とは戦わないようにしなきゃだが。
うん。
流石にイケメンとは戦いたくない。
お互いについ最近まで仲間だったわけだし、手下どもも戦いにくいだろう。
それにあいつ強いし。
相手にするのは面倒だ。
だけどそれをどこまで手下どもが理解してくれるかがなー。
筋肉ゴリラみたいに肉親や友人を殺されている奴が、あいつらを許すっていうのを受け入れられるのか?
この時代わりと面子勝負なところあるし、やられっぱなしだと国の団結に影響が出るとかなんとか昔優男に教わったが。
いや、正直面子とか気にしている余裕はこの国にない。
今は何が何でもローマからの干渉を排除しなきゃいけないときだ。
あいつらから攻撃してくるっていうなら別だが、そうじゃないんだからさっさと手打ちにして問題解決が最善。
じゃあひとまず、お前たちがしたことをこれ以上咎める気はないからお幸せにって内容を手紙に書いて送っておこう。
そのまんまじゃ恰好がつかないから、色々と王様っぽい言い回しで誤魔化してっと。
うん?
なんだかうちの娘が暗い顔して部屋に入ってきたな。
奥さんを許すのかどうなのかって聞いてきたぞ。
ああ。
この子はずっと奥さんに育てられてきたんだから、そりゃ心配か。
イケメンのことも尊敬してたみたいだし。
大丈夫、まああいつらは色々やらかしたけどそのことについて怒る気はないよと、安心させてやろう。
……あれ?
なんだか安心している顔じゃないな。
大丈夫か?
本人が大丈夫だって言って下がっていったから呼び戻せなかったけど、かなり引っかかるな。
……不安だ。
翌日、無事に不安が的中しました。
うちの娘が現在家出中です。
泣きたい。
◇◇
俺は今、ローマへと向かう船に乗っている。
テンションは低い。
生来のポーカーフェイスが更に硬くなっている有様だ。
無論船酔いなどではない。
偉大なる王は船酔いなどしないのだ。
では何が原因かと言うと、それは今のこの状況そのものだった。
何か間違えているような気がする。
そして間違えているだろう物事も見当がついている。
今すぐに引き返し、娘を捜索したい。
いや、するべきだとまで思っている。
だがそれは出来ない。
ただでさえ荒れ果てたうちの島の住人達に更なる負荷をかけてまで、何とかこうして遠征の準備を整えたのだ。
可能な限り最速で、絶対に成果を出さなければいけない。
たとえ一国の王子が失踪していたとしても、それに全力を費やすなどあってはならないと、俺は判断した。
それに、捜索自体は島に残している面子でもできる。
遠征を終えて帰れば、何事もなかったかのように娘は見つかっているかもしれない。
あの子は腕も立つし、騎士の作法に囚われない柔軟な考え方の持ち主だ。
そうそう危険に晒されることはないだろう。
そうだ。
あの子のためにお土産を選んでおこう。
交渉で可能な範囲で出来る限り物資をローマからもぎ取ってくる計画だが、それとは別に俺個人が娘に贈り物を用意しておくのだ。
あの子が小さい頃に思い付きで渡したことがあるが、そのときはすごく喜んでいた。
今度もきっと、あの子の笑顔が見れるはず。
うん。
そんな妄想をしていたら、だいぶ気持ちが上向きになってきた。
これはやれるな。
速攻で片付けて俺はあの子に会いに行くんだよ!
こんな感じで戦ってたら、いつになく調子が良かった気がする。
上陸した勢いのままにローマ皇帝率いる敵軍を撃破。
混乱しているローマ市を一時的に占拠し、此方の条件をあらかた飲ませて交渉は成立。
そのまま大急ぎで取って返して、ここまでで一年も掛かっていない。
流石に強行軍だったし手下どもにも疲れが見えるが、あとはもう帰るだけ。
山のような物資を船に積み込む光景は、まさに勝利の凱旋だ。
これで帰ってあの子が波止場で待っていたら最高なんだけどなー。
いや、案外いけるかもしれないぞ。
あの異常に眼がいいことに定評がある優男だって向こうに残って探していたんだ。
見つかっていることだって十分にあり得る。
まああいつは最近眼の調子が悪いとかなんとかほざいてたからあんまり当てにならないが。
しかし、終わったか。
昔から積み重なっていた目に見える障害は、今回の遠征を最後に全て取り除いた筈だ。
唯一の懸念は我が姉上だが、あの魔女はもう何年も姿を現していない。
拠点はあの大掃除以降も潰しまくったし、早々何か出来るはずが――なんかフラグっぽいな。
やめておこう。
幸せなことだけを考えておくんだ。
そうそう、あれは俺のことをあの子が初めて「ちちうえ」と呼んでくれたときのこと……ってなんで先に島へ送っておいた船が引き返してくるんですかねぇ~。
なになに?
島の大部分の人間がゾンビになっている。
主な集落はほぼ壊滅し俺の自宅も炎上。
生き残りは海岸部に避難して船で海を渡ろうとしている。
何か黒い影のようなものを見た人間もいる。
……ハッ?
……突然のジャンル変更やめてもらっていいですか?
ここはファンタジー世界だろ。
何でいきなりバイオハザードしているんだよ。
……まあ、文句を言っていてもしょうがない。
まずは生き残りを収容して情報を集め、問題の解決を図るしかないな。
そのためには何とか上陸する必要があるが、どうする?
ローマのときは皇帝が余裕かまして上陸時に妨害してこなかったが、今回もそうなると甘く考えるのは危険だ。
あれはあいつが馬鹿だったからだし、今回の事件にもし黒幕がいるとするならばまず残った戦力である俺たちを潰そうとするはず。
となると海上での戦いに不慣れな俺達には厳しい戦いになりそうだ。
……フッ。
結局いつも通りだな。
俺が敵を吹き飛ばして突破する作戦も何もないごり押し。
今回もこれを使うことにしよう。
他にまともな策なんてないんだから。
そうしてクタクタに疲れた遠征軍を連れて、俺はまた戦う羽目になった。
予想通り、俺たちが上陸を試みた海岸線には数えきれないほどのゾンビが待ち構えていたが、奴らには遠距離攻撃手段がなかったらしい。
おまけに一体一体の戦闘力も思考力も低いから、泳いで此方の船に乗り込んでくることも出来ない。
つまり戦いの先手を取れるのは此方だったってことだ。
しかし逆に言うと、それぐらいしか有利な点はなかった。
なにせせっかく戦いから帰ってみたら故郷が滅んでいたってことで、うちの手下どもの士気は極限まで低かった。
怒りを通り越して絶望しているんだよこいつらは。
だが俺としちゃ戦ってもらわなきゃ困る。
ということで、悪趣味だと思うが手下どもの復讐心を煽ることにした。
お前らの大切な人間は全員惨たらしく殺されたんたぞってな。
正直これで立ってくれなきゃほとんど詰んでた。
あとはもう俺一人で特攻するくらいしか手がなかったからな。
でもまあ、こいつらは結局立ち上がった。
まがりなりにも騎士としての矜持があったんだろう。
このときばかりは、それに感謝したね。
俺たちはゾンビ共と戦い、海岸線を突破した。
途中から島の生き残っていた奴らも加わって、何とかってところだ。
それで生き残りたちが籠っている海沿いの都市まで移動し、そこでようやく状況を整理できた。
とはいっても、分からないことが多くてろくに原因もつかめなかったがな。
しかし一つだけはっきりしていることがあった。
この都市に向けて既に大量のゾンビ共が移動しつつあり、そいつらを排除しない限り俺たちは全滅するってことだ。
こっちの戦力はかなり酷い状態だ。
使える手下どもはほとんど残っていない。
あれだけ死にそうになかった義兄も、海岸線の戦いで俺を援護しようと無理をしたせいで戦死している。
優男の居場所は分からず、一番の腕利きで信頼していたイケメンも遥か海のかなた。
一応助力の申し出は既にあったらしいが、イケメンを嫌っている筋肉ゴリラが断ったらしい。
……今ここでそれを責めてもしょうがない。
せめてイケメンの領地で非戦闘員を受け入れてもらえるように手紙を書いておこう。
ゾンビ共が海には手出しできないことは分かっているんだから、俺たちが乗ってきた船に生き残りを乗せて大陸に送るのだ。
ついでに一部の戦意喪失した手下どもも逃がしておこう。
これ以上折れちまった奴を酷使しても、いたずらに敵の戦力を増やすだけだ。
どうやらゾンビ共と戦って殺された人間は、同じゾンビになっちまうようだからな。
定番っちゃ定番だが、いざ実際に目の前でそれを見ると思った以上に心が疲れる。
だから戦うのは、ほんの一握りの精鋭でいい。
とはいえ、まずは都市を包囲しているゾンビ共を壊滅させる必要がある。
この都市は切り立った崖の上に建設されている天然の要塞だが、そのために港がない。
必然的に、船を出すには外を移動する必要があるわけだが、お荷物を抱えて行軍できるような余力は俺たちにないわけだ。
残る手はここら一帯のゾンビ共を殲滅し、その隙に無事な船がある場所まで逃がせるだけ逃がす。
ゾンビ共は移動速度が遅いから、そこにかけるしかない。
籠城なんかしても満足に備蓄もないこの都市では到底持ちこたえられないし、そもそも援軍のあてがないのだから余命の先延ばしが精々。
……やるしかない、か。
正直言ってなんでこんな命がけのことをしているか、俺自身もちょっと自分のことを不思議がっていた。
都市の外の丘に突っ立って、ゾンビの大群が迫ってくるまでずっと。
だけど、ゾンビの大群が動きを止めて、空からなんか見覚えのある黒いシルエットが下りてきて、戦場に我が姉上の声が響きだしたとき、そんなことは頭からすっ飛んだ。
目の前になんかドラゴンおじさんがいるじゃんとか、えっゾンビ吸収して体でかくなってくじゃんとか、そういうことに衝撃を覚えていたわけじゃない。
重要なのは、その場にいたゾンビを全部取り込んで黒く膨れ上がった竜の中にうちの娘がいるっていう、我が姉上とっておきのネタバラシだった。
まあ、姉上はそれ以外にも色々ととっておきの長台詞を披露していたが、はっきり言って聞き流していた。
いや、内容自体は聞いていたよ。
誰も私の配下になろうとしないからいっそのこと死体として支配してあげたのとか、いやメンヘラ女って怖ッとか思ってたわ。
でもまあ、そこに感情移入する余地はなかったってことだ。
情報を引き出したいから我慢してるだけで、正直そんなことはどうでもいいから早くしろよってイライラしててさ。
で、そういうのって相手にも伝わるみたいだ。
姉上も俺が生返事しかしないから最後はキレ気味に通信切って、支配しているらしいドラゴンおじさんに火を噴かせやがった。
そんで見るからに俺に向かって一直線に黒い光線みたいなのが飛んで来るから、俺も開幕ブッパかましてやりましたよ。
で、光線自体は相殺したけど、前みたいにデバフ撒きやがったからこっちはもう俺と筋肉ゴリラで何とかするしかなかったわ。
たった二人の最終決戦てか。
まあ一人じゃないだけマシとしよう。
どうも姉上の話だと別動隊のゾンビ共が海の中を歩いて都市の方に向かってるぽかったしね。
都市の方に残していた戦力には、時間稼ぎを頑張ってもらいましょう。
んじゃ、二度目の決着つけますか。
本当にラスボスになったドラゴンおじさんよぉ。
そっから始まったのはマジモンの死闘だった。
俺は前のときと違って鞘の守りがないから普通にダメージ入るし、向こうは体脆くなってるけど再生するし、いやーこれは軽く俺を殺せる布陣っすわ。
結局戦場を縦横断しながら数時間くらい格闘し続けて、決着が付いたときにはもうお互い酷いもんよ。
俺は全身打撲にあちこち骨折れてるし、ドラゴンおじさんはドラゴンおじさんで体を崩壊させて取り込んでいた死体を全部吐き出しやがって。
お陰で眺めがよかった丘の景観が最悪の状態になった。
あっ、筋肉ゴリラは途中で脱落しました。
うん。あいつも頑張ったんだけどさ。
流石に光線直撃は無理だったよ。
でもまあ、うちの娘を最後に取り返せたから、それだけはよかったよ。
なあ、お前に一本取られるなんて、初めてだよ全く。
いや~いい一振りだった。
こう、顔面に剣がめりこんだときに、ああ死んだなって。
ハハ。
まだ死んでないんだけどな、っとと。
平衡感覚が終わってもう立ってられないな……。
流石に頭蓋骨叩き斬られたら、俺でもちょっと厳しそうだ。
ハア。
油断したよ。
しちゃいけなかったんだけどな。
ドラゴンおじさんに槍をぶち込んだときに、前回勝利した瞬間をふと思い出しちゃってさ。
間抜けなもんだ。
まさか胴体突き破ってお前が出てくるとはな。
しかも全身鎧姿で俺が渡した剣持ってさ。
立派になったもんだって柄にもなく見惚れていたら、この様さ。
あ~あ。
これが最後の立ち合いだっていうんなら、もうちっと気合入れといたんだけどな。
娘に先立たれて、俺ももうすぐ死にそうで。
どうやら、俺たちの国造りはここで終了だったみたいだ。
他の連中はどうしたのかなー。
運が良ければ少しくらいは脱出できたといいんだけど、無理か。
せめてイケメンに手紙くらいは届いて、もし姉上が海を渡ろうとしたら対策を打つくらいの展開は期待したいけど。
……やり残したこと、結構あるなー。
って思ってたらあれ、何か馬の蹄の音が聞こえるような。
ああ、片腕じゃん。
こいつ生き残ってたのか。
で、いったい何しにこんな血生臭いところまで?
あれ、なんか問答無用で俺のこと馬に乗せやがった。
いや問答無用っていうか、俺もう喋る体力もないんだけど。
あっ、やばいもう意識が……。
フゥ。
危ない死にかけた。
まだ死にかけだけど、移動している間に何とか喋れるくらいには回復したぞ。
何かいい雰囲気の木に寄りかかって、まずは状況確認をと。
えっ?
ゾンビ共が活動を停止した?
まじで?
こんなこと出来るのは優男ぐらいだけど、あいつがなにかしたのか。
てっきりスタコラさっさと逃げたもんだと。
へぇ。
じゃあもうあんまり心配することはないな。
優男がそんなこと出来たってことは、それを妨害しようとするはずの姉上も何かの理由でいなくなったってことだし。
少しは生き残りもいるみたいで、何より何より。
あとはこの剣を妖精に返せばそれで終わりだ。
片腕は何度か渋ってたけど、どうにか言いくるめて返させた。
うん。
畳の上で大往生というわけにはいかなかったけど、ほとんど何もかも守れなかった王様にとっちゃ、贅沢な死にざまだ。
客観的に見て、あんまり醜くない最期じゃないか?
木漏れ日が綺麗ないい場所で、俺が死ぬのを惜しむ騎士に見送られて。
道端でゴミのように転がっている死体に比べたら、遥かにいい。
無理に生き続けて、人じゃないモノになってしまうのもやだしな。
――あぁ。
――終わりか。
◇◇
何やらハイライトが死んでいるおっさんに召喚されたで御座る。
聖杯戦争がどうとかこうとか。
わけわからん。
……本日中に続きが投稿されるはず。ひとまずそれで終了予定。