あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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はじめまして”ちひろ”です。

こんな闇鍋みたいな作品ですがどうかよろしくお願いします。


第1章 冒険の始まり
知らない世界=新しい世界


       

 

 

ザッザッザッ...と静寂の中、草原に小さな足音が響き渡る。

その後すぐに別の足音が―――先ほどまでよりは大きな音が―――遅れて聞こえてきた。音の数で考えると前者は一人、後者は複数人の足音だろうか...長く続くかと思われた足音だがすぐに前者の足音が小さくなりだし、やがて最後に”ドン”という大きな音を立てて足音が途絶えた。

それに続き後者の―――複数人と思われる―――足音も途絶える。静寂を取り戻した草原に一つの小さな影と二つの大きな影が映し出されていた。

 

「はぁ...はぁ...はぁ...い、いや...。」

 

小さな影の方から言葉が吐き出される、非常に幼くあどけない声である。

その可愛いらしい声は震えており、それに比例するかの様に小さな体も震え、明らかに怯えが見てとれる。

 

(殺される...殺される...)

 

そんな小さな影と対面している大きな二つの影の片方が口を開いた。

 

「あぁ~...なんかわりぃな、嬢ちゃん。ちょっち早めにクラスアップしたいから”PK ”せんと駄目なんだわ...これがな。」

 

「異業種なら良かったんだけどな~...同じ人間種すんのは少し気が引けるよな。可哀そうだから早くしてやれよ。」

 

片方の影からの言葉を皮切りにもう片方が口を開く。

 

(くらすあっぷ...ぴけーい...?なんの話をしているの...?怖い、怖いよ...。)

 

自分の知らない言葉達が羅列され脳裏を支配する。ほとんどが理解できない事であるが一つだけ理解できた事がある...この二人によって自分の命は潰えるのだと...理解してしまった...できてしまった。

 

「そうだな...そんじゃすまんね、嬢ちゃん。わるく思わんでくれや。」

 

そう言って大きな影が頭上に剣を振りかざした...小さき哀れな存在の命を刈り取る為に...。

 

(嫌だ...嫌だよ...死にたく...ない!誰か、誰か助けて!)

 

死を覚悟したその時”ガキン”という鈍い音と共に目の前の存在が宙を舞った。

 

それに少し遅れて”ドォン”というけたたましい爆発音が響き渡る。

 

「えっ...?」

 

誰が聞いても間抜けだと思える程の間の抜けた声を口から吐き出しながら目の前を凝視する、そこには赤いマントをたなびかせ純銀の鎧を纏った戦士が立っていた。戦士はこちらを振り向き仰々しい身振りをしながら言葉を叫んだ。

 

「正義!降!!臨!!!」

 

その瞬間純銀の戦士の背から眩い光が差し、文字のような物が飛び出してきた。

 

「大丈夫かい?怖かっただろう?」

 

その光景にあっけに取られていると後ろから優しい声が聞こえてきた。

恐らくこちらが先程の爆発音をさせた人物であろう。お礼を言う為に後ろを振り向き、そして...

 

―――世界が凍り付いた――― 

 

「あ...ありが......ひっ!」

 

そこには、闇よりも更に深い漆黒を纏った存在が、血よりも更に赤い眼光でこちらを見据えていた。―――そこには死が立っていた...

 

 

 

 

スレイン法国の首都である”法都シクルサンテクス”

その首都の外れにある小さな―――普通の家よりは立派な―――屋敷の前で二つの人影が動き回っている。

影は一つは大きく、一つは小さい。その後ろには静止した一つの人影が見てとれた。

 

「はぁ...はぁ...やぁぁー!」

 

小さな影の方が手に持ったこん棒をを振り上げ大きな影に接近する、振り上げられたこん棒が大きな影に接触しかけた―――その瞬間”ゴン”低く、鈍い音が鳴り響き小さな影が吹き飛んだ。

小さな影は着地の際受け身が取れずそのまま地面に激突する。

ギュラギュラ、地面に激突した小さな影は一回転、二回転と転がりそのまま動きを止めた。

 

「どうしたの...さぁ、立ちなさい。」

 

言葉をかけられた小さな影は立ち上がる事も無く、また返事をする事もない。

 

「聞こえなかったの?もう一度言います...立ちなさい。」

 

「ファーイン様!!」 

 

今まで静止していたもう一つの人影が大きな人影の方”ファーイン”に言葉を発する。その言葉を聞きファーインと呼ばれた女性が振り向いた。

 

「何かしら”ナズル”?」

 

「今日はそこまででよろしいのではないでしょうか、これ以上は酷かと...。」

 

そう言葉を紡ぎながらふくよかな女性が走り寄ってきた。ナズルと呼ばれた女性は言葉を投げかけた女性、ファーインの屋敷で家事手伝いをしている人物である。

 

「酷?何を言っているの?”これは”まだ動けるわよ?」

 

ほら...立ちなさい。と言われ今まで地に伏していた”これ”と言われた小さな影が手足を震わせながら立ち上がろうとしていた。

 

「お嬢様!!?」

 

お嬢様と言われた小さな影が立ち上がった、その姿はまだ子供で非常に幼く見える。右側が白く左側が黒い特徴的な髪の色をしており髪色と同じく両の瞳も左右で色が違う。何よりも目を引くのが両耳の長さであろうか、人間よりも明らかに長くしかしエルフよりは短い。―――そう彼女は”ハーフエルフ”なのである...。

名は”アンティリーネ”この屋敷の主人ファーインの一人娘である。

 

「さぁ...続きをしましょ?」

 

「...はい...。」

 

「あ...あぁ、お嬢様...。」

 

ナズルの言葉が虚しく響く、そして幾何もせぬうちにまたこん棒が打ち付けられる音が聞こえだした。

”ゴッ”ガッ”ゴッ”...鈍い音が静寂の中鳴り続けそれは日が暮れるまで続いた...

 

 

 

 

「お疲れ様です、お嬢様...今日も頑張られましたね。」

 

「...うん...凄く痛かったけど...頑張ったよ。」

 

そうナズルは言葉を吐き、その後すぐに歯を噛みしめる。

”頑張られましたね”なんと調子の良く、残酷な言葉だろうか。こんな小さな子供にあんな酷い仕打ちを行って―――訓練と称した虐待を―――あまつさえ、それをただ見ている事しかできない自分が腹立たしい。

 

「...お嬢様、今日は疲れたでしょう。ゆっくりお休みになられてください。」

 

「うん、ありがとう。」

 

それでは...っとナズルが部屋を出ようとした...―――その時

 

「ナズルおばちゃん...。」

 

「?なんでしょうお嬢様。」

 

「私が...私が強くなったら”お母さん”喜ぶかな?」

 

「!!!」

 

母の愛を知らない子供からの悲しく、哀れな質問が投げかけられた。”それはない”...そう言えたらどれだけ楽か...少女に気づかれない様に拳を握り、血を吐くかのような思いでナズルは答える―――もちろんですよ―――っと

 

「そっか...そうだよね。変な事聞いてごめんなさいナズルおばちゃん、おやすみなさい。」

 

「...はい、おやすみなさいお嬢様...それでは失礼いたします。」

 

”バタン”扉が閉まりナズルが部屋から退出する。

 

「喜んで....くれるのかな?」

 

お嬢様と呼ばれる少女”アンティリーネ”は独り言を呟く。

その言葉を信じたい、信じたいのに疑いを持っている自分も存在しているのだ。

 

「お母さんは...私の事が嫌いなの...?」

 

心の中に潜む”疑いを持っている自分”がささやく、母は”お前”の事が”嫌い”なのだと...

 

「私は”いらない子”なの?」

 

ささやきは留まる事を知らない、深く黒い感情が渦を巻き少女の心を支配しようとする、そう―――悲しみという感情が―――気づけば少女の頬には大粒の涙が伝っている。それは留まる事無く溢れ出す...少女の悲しみに比例して。

 

「うっ...考えちゃ駄目...今日はもう寝よう。」

 

右手で伝った涙を拭いながら少女はベッドに横になる、どうやら今日は疲れ過ぎているようだ。このまま起きていても悪い事ばかり考えてしまうだろう、このまま就寝するべきだ。

布団を被った少女が目を閉じる。ナズルが言ったように明るい未来を信じて。

 

(強くなれるかな?英雄みたいに、ううん”六大神様”達みたいに...)

 

神様達ぐらい強くなるなど笑い話にもならない。不敬だ。そんな事を頭の中で考えながら少女の意識が薄れていく。眠りに落ちかけているのだ。

 

(神様達みたいに強くなるには神様達の世界に行かなきゃいけないのかな?ふふふ、どんな所だろう...行って...みた...い...な...。)

 

そして少女は深い眠りに落ちた...そして...

 

          ”カチリ”

 

なにか...そう、歯車が噛み合ったような音がした。

この世界にはタレント(生まれもった異能)という物がある。その種類は様々で強大な物から大した事の無い物まで無数に存在している。

今この瞬間この眠りに付いている少女”アンティリーネ”保有している”タレント”の”内一つ”が初めて発動した。アンティリーネの周囲の空間が歪み波を打つ。

―――今..少女は...

 

       他世界に”接続”した

 

 

 

 

 

 

眩い日差しが少女を襲う、その日差しに当てられ少女は眠りから覚める。

重たい瞼をゆっくりと開く、もう朝が来たのかと少女が驚いていると...

目の前には信じられない光景が広がっていた。

 

「えっ...なっ何?これ?...草...原?」

 

目を覚ました少女の目に飛び込んできたのは見知った自分の部屋ではなく驚く程に広い草原であった。余りの出来事に目を白黒させながら、少女はこれが”夢”なのではないかと考え...その余りのリアリティに即座にその考えを否定する。

 

「もしかして...私、捨てられたの?」

                   

恐ろしい考えに脳が支配される。しかし眠っている人間を起こす事無く運ぶ事などはたして可能なのだろうか?魔法を使えばできるのか?などと少女が考えていると後ろから足音が聞こえた。続いて声が聞こえてくる。

 

「あ~あ、明日も4時起きだよ、たく糞ブラック企業め倒産しろ!!」

 

「倒産したらお前無職じゃねぇかよ。俺達みたいな底辺は仕事を選べないの。選んじゃ駄目なの。」

 

くぅ~世知辛いぜ、などと喋っている。内容は殆ど分からないが恐らく愚痴をこぼしているのだろう。ぶらっくきぎょー?とーさん?なんだろ?

そして声の主達と少女の目があった。

 

「ん?誰かいんな?エルフの...女か?」

 

体の大きく青い髪色の、戦士風な人物が言葉を喋り、続いて白髪で細身の神官風の男が口を開く。

 

「こんな所で珍しいな、初心者か?まるっきり駆け出し装備だな。」

 

駆け出し?初心者?何の事だろうと少女は思う、駆け出し冒険者という言葉があるのは知っているがそれの事だろうか?ならこの二人は冒険者という事になる。

状況も分からないので二人に話をした方がいいだろう。

 

「あっ、あの私、スレイン法国出身で名前は”アンティリーネ・ヘラン・フーシェ”と言います。気づいたらこんな所にいて...訳が分からなくて、おじさん達は冒険者なんですか?」

 

言葉をかけられた二人は、”スレイン法国?””冒険者?”なげぇ名前だな~、覚えづら、などと言っている。見た感じ困惑しているようだ。

そして大きな男の方が何かに気づいた様に、右手に拳を作り手のひらに”ポン”っという風に叩きつける。

 

「なるほど!嬢ちゃんあれだな、ロールプレイ中なんだな!」

 

あぁそういう事か、見た目も派手だしなその顔のパーツどったの?もしかして課金してる?などと細身の男が喋り掛けてくる。ぱーつ?かきん?益々意味が分からない。

 

「あっ...あの。」

 

意味が分からず少女が口を開こうとした...その時

 

「見た感じロール重視見たいだし装備も変えてないしな、デスペナとかも気にしてないんだろ?そんな嬢ちゃんに一つ頼みがあってよ~...ちょいと死んでくれね?」

 

爆弾が投下された。

 

 

 

 

 

 

少女は相手の言葉の意味を理解するまでに長い時間を有した。やがて頭の中に染み込んだのか恐る恐る言葉を投げかける。

 

「死...死んでって...どういう...」

 

”意味”と言葉を続けようとした時相手から言葉が返ってきた。

 

「ん?そりゃおめぇ、俺に”殺されろ”って事だろ?次のクラスの条件厳しくてよ~PK 必須なんだよ、これがな。異業種狩って満たしたかったんだけどよ。嬢ちゃんデスペナとか気にしなさそうだし、ドロップ品は返すからよ、なっ?」

 

ちょっち頼むわ...っと腰を前かがみに倒し広げた右手を顔の前に出しながら大きな男がお願いしてくる。

ぶわり...汗が吹き出しそうになる...が、なぜか汗は出てこないそれを不思議に思う暇もなく少女の体がガクガク震えだした。

”殺される”脳が完全にそう理解した。この目の前の男は、お使いを頼む親の様に少女を殺させてくれと頼んできているのだ。人間の行う所業ではない、目の前の男が人間に化けた悪魔に見えてきた、いや...実際悪魔なのかもしれない。

 

「あっ...あっ...。」

 

言葉が出てこない、恐怖で口が開かない。そうしている内に隣で見ていた細身の男が、やれやれと言った風に口を開く。

 

「このこロールプレイヤーなんだろ?一方的に殺しても可哀そうじゃね?kill数貰うんだからお前も嬢ちゃんに付き合ってやれよ。お嬢ちゃん、ほれ。」

 

細身の男の右手が空間に入り込んだ、少女は余りの出来事に目を見開いている。

そして右手が引き抜かれると同時に剣が―――見た事も無いような立派な―――現れ少女の足元に放り投げられた。

 

「それ使っていいよ。なんならあげるよ低品質ドロップ品だしな。」

 

あらがえ...っと、楽しませろという事なのだろう。恐怖に打ち震えていた少女だが意を決して足元の剣を拾う。

戦わなければ殺されるだけだ。拾った剣を両手に持ち震えながら相手に構える。

 

「おぉぉーいいねぇ!」

 

相手から軽い言葉が聞こえてきた。少女は思う。相手は油断をしている。ここしか勝機はないと...そして―――

 

「武技!斬撃!!」

 

少女が唯一使えるそれで持って最大の切り札を行使する―――だがしかし

 

「えっ...?なんで...?」

 

切り札は発動する事はなかった...。

 

「うおぉぉーーー、嬢ちゃん凄ぇな!ノリノリじゃねぇか!」

 

大きな男がはしゃいでいる。

 

「その武技ってなんなん?自分で考えたのか?良かったら後で設定教えてくれよ!」

 

細身の男が武技について聞いてくる。

 

「!!!!!」

 

少女は剣を放り投げ―――二人に背を向け全力で走り出す。

 

「おぉぉー、迫真の演技だな。嬢ちゃん大女優になれるぜ!」

 

「...おい、あれマジ逃げじゃね?実は嫌だったんじゃないか?」

 

大きな男が少女の演技に感心していると、細身の男から信じられない言葉が飛び出した。

 

「んぇ!?マジで?」

 

「多分な~。声聞いた感じ子供だったし、おっさん二人に詰め寄られて言いだしずらかったんじゃね?どうするよ?」

 

「か~マジか~すまんな嬢ちゃん、しかしな~早めにクラスアップしたいしな~」

 

「ここまでしたんだしPKしてもいんじゃね?終わったら二人で全力で謝まれば許してくれるんじゃないか?お詫びに店売りアイテムでも買って上げたら喜ぶかもよ?」

 

よしっ!それで行くか!っと大きな男が叫び、そのまま少女の後を追っていった。それに続き細身の男も駆け出していく。

 

「はぁ...はぁ...殺される...殺される!」

 

少女は駆ける、今まで生きてきた中で間違いなく一番速いだろう。後ろからは先程の二人組の足音が聞こえてくる。そしてその音がどんどん近くなっていく。

もっと走らなければ...っと少女が思っていたその時”ガッ”足を絡ませ少女がこけた、そしてその間に二人組が追いつき自分を見下ろしていた。

 

「あぁ~...なんかわりぃな、嬢ちゃん。ちょっち早めにクラスアップしたいからPKせんと駄目なんだわ...これがな。」

 

そう言われ少女が覚悟を決めた―――その時

 

―――”ガキン”

 

「えっ?」

 

「正義降臨!!」

 

純銀の鎧を身に纏った聖騎士の姿がそこにはあった。

 

 

 

DMMO-RPG【YGGDRASIL】サイバー技術とナノテクノロジーの粋を終結した脳内ナノコンピューター網―――ニューロンナノインターフェイスと専用コンソールとを連結。そうする事で仮想世界で現実にいるかの如く遊べる体感型ゲームである。

このゲームは他のDMMO-RPGと比較しても”プレイヤーの自由度が異様に広い”ゲームである。九つの世界からなるマップがありここはその一つアルフヘイムである。

そのアルフヘイムに広がる大草原、そこに二人の人間が言葉を交わしながら歩いている。

よくよく見るとそれは人間ではなく”異業種”と呼ばれる存在である。

純銀の鎧を纏った虫系統の異業種と魔法使い風のローブを纏ったアンデット系統の異業種とが軽い口調で話し合っていた。

 

「すいませんたっちさん用事に付き合っていただいて。」

 

ローブを纏ったアンデッドが純銀の鎧を纏った人物に話しかける。相手の名前は”たっち”と言うらしい。

 

「かまいませんよ、モモンガさん。ドロップ品狙いはソロでは大変だし、なによりゲームは人と遊んだほうが楽しいですしね。」

 

アンデッドの方は”モモンガ”というらしい。非常に恐ろしい見た目をしているが聞こえてくる声音は優しく、物腰の柔らかそうな人物である。

 

「そろそろ二人だけではなく他の仲間も見つけたい所です。できれば異業種が望ましいのですが。」

 

「迫害を受けている異業種は多いですからね。たっちさんに助けられなかったら俺も...。」

 

異業種だからと言って迫害を受け”異業種狩り”というPKを受けているプレイヤー達は多い。モモンガもその一人だった、目の前の存在に助けられるまでは。

そんな人達だけで―――異業種だけで―――集まりを作るのも悪くはないと思う。大勢の異業種が集まり一緒に冒険に出かける光景を想像する。楽しそうだとモモンガは思う、いつか実現したいものだ。

モモンガがそのように頭の中で考えていると少し先に一つの人影が走っているのが見えてきた、次いで二つの人影も。

 

「前方に誰かいますねたっちさん、あれは...もしかしてPKされようとしているのか?」

 

少し遠くて良く見えないが恐らくPKされる寸前と思えた。二人組の男性プレイヤーが一人の子供風のエルフの女の子に詰め寄っている。

 

「チッ...異業種狩り所か人間種相手にも同じ事をしているのか。」

 

モモンガの機嫌が悪くなり剣呑な雰囲気を纏いだす、さっきまでの楽しい気分が台無しだ。どうしたものかとモモンガが思っていた...その時―――幼い少女の震えた声が耳に飛び込んできた―――

ギチリ...モモンガが歯ぎしりする―――音は出ないが―――声を聴く限り明らかに子供だ。そんな子供を捕まえて大の大人が、それも二人がかりで...

これは”ゲーム”だ。楽しい幻想を味わう為の場所だ。辛い現実を慰める空間だ...なんで...なんで”そんな事ができる”んだ楽しく遊んでいる”子供相手”に。

 

「たっちさん...。」

 

「モモンガさん、皆まで言わないでください。」

 

「...ふふ、流石はたっちさんだ、そうですよね。困っている人がいたら...」

 

「ええ...助けるのは。」

 

「「当たり前!!」」

 

そう言葉を叫び二人の異業種は駆けだしていった。

 

 

 

 

 

「あ...ありが...ひっ!」

 

少女がモモンガの姿を見た瞬間声にならない悲鳴のような物をあげた、完全に怯えている。そして...その姿を見たモモンガは... 

 

(うひゃー!めっちゃ怖がってるよー!!)

 

激しく傷ついていた...

 

「あ...ううん...大丈夫だよ、おじさんは怖くないからね。」

 

自分の事をおじさんと言い再度傷つく。まだ自分はそんな年齢ではないのだが怯えている少女に向かって”俺”などの呼称で名乗るよりもこちらの方が穏やかさがでていいのではないかと考えたからである。おじさんは怖くないは幼女誘拐などでは常套句なのであるが、そんな言葉が頭の片隅によぎるが努めて無視をする。これでいいはずだ...これでいい...うん。

 

「こ...怖くない...の?アンデッドなのに?」

 

アンデッドは生者を憎む、そんな事は常識である。屋敷からほとんど出る事がなく世間の常識に疎いアンティリーネでもそれぐらいは知っている。アンデッドは生きとし生ける者全ての天敵なのだから。

 

こわくないよ~、ほ~れほ~れ、と言いながらモモンガが両手を広げリズミカルに左右に飛び跳ねている。これがモモンガが考えた苦肉の策であり、現状考え付く最高の怖くないアピールなのだろう。それを見ながら少女が”でも”とか”アンデッドなのに”とか言っていると隣で静観していた、たっちが口を開いた。

 

「お嬢ちゃん、このおじさんは怖くないですよ。とても優しい人だ。お嬢ちゃんを助けようと言ったのもこの人なんだよ。」

 

たっちさん...とモモンガが言っていると少女が口を開いた。

 

「...分かりました。信じます。」

 

信じるの早くね!?とモモンガが盛大に心の中で突っ込みを入れる、たっちさんが言った途端これか!っと...心に三回目の傷を負ったモモンガが、そう言えばたっちが自分の事をおじさん呼ばわりしていた事を思い出しまた傷つく、これで四回目だ。自分はいったい今日何回心に傷をおえばいいのだ。

 

「でも...なんで?」

 

少女が疑問を口にした。

 

「なんで、初めて会ったばかりの私を...助けてくれたんですか?」

 

危険を冒してまで。と少女は付け加える。それを聞いた途端二人の空気が―――雰囲気が―――変わったようなきがした。

 

―――なんだそんな事かと二人が、さも当たり前の様に...そして誇らしげに答えた。

 

「「誰かが困っていたら助けるのは当たり前!!」」

 

二人の言葉が草原に響き渡った。そして...恐ろしい見た目をしたアンデッドから、とても優しく、安心するような、信じたくなるような声音で言葉が綴られる。

 

「だから、君が困っているなら話を聞かせてくれないか?もう少しだけ”俺達”に君の手助けをさせてくれ。」

 

手が差し伸べられる。肉の全く付いていない骸骨の手だ。アンデッドの手だ。

 

でもなぜだろう、もう怖くはない、先ほどまでの恐怖が掻き消えている。

少女は骨の手を凝視する...そして―――

 

「...うん...ありがとうおじさん。」

 

そこに怯えの混じった声はもうなく、鈴が鳴るような声が響き渡り、差し伸べられた手を握る、そして表情は分からないが、目の前の存在が笑った気がした。

 

                   




おっさんズA 「どうだ?この剣、命を刈り取る形をしてるだろ?」
こいつら多分そんな悪い奴らじゃないよね?

没ネタ

そこに怯えの混じった声はもうなく、鈴が鳴るような声が響き渡り、差し伸べられた手を握る、そして表情は分からないが、目の前の存在が笑った気がした。―――そして

「あばばばばばばばー」

「!!ちょっ!!モモンガさん!ネガティブタッチ!ネガティブタッチ!!」

「ん?...えっ?ああああぁぁぁーーー!!?」

流石に死ぬわっとなりました
もうこの後何言っても信用してもらえる気がしなくて泣く泣く没にしました。
めっちゃ使いたかった。
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