あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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ブレインさんが好きです、でもガゼフさんはも~っと好きです。


どうも、ちひろです。

今回は幕間になります、どう書いていいのか良く分かりませんでしたが、こんな感じになりました。

頑張って書いたのでどうか見てやってください。


幕間

 

 

 

 

とある建物の大広間”六つの像”が横並びに存在しその一つ一つが違う形を成している。広間の中央には円卓のテーブルが置かれておりそれと同時に円を描くように椅子も並べられている。

 

 

ここは【スレイン法国】の”最奥”神聖不可侵の間でありこの部屋に立ち入りを許されている物は”極僅か”である。

 

 

その限られた者達しか出入りできない空間で”複数”の”人影”が何やらせわしなく動き回っていた。

 

 

はたきをかけて誇りを落とす者。水拭きする者。乾拭きする者。その姿を見るに恐らく部屋の”清掃”を行っているのであろう。その動きには無駄がなく、各人が手馴れた手つきで部屋を清掃していく。

 

 

しばらくの後、動き回っていた人影の動きが止まる。清掃が終了したのであろう。周囲を見渡せば”輝く”ように”綺麗”になった部屋の光景が映し出される。

 

 

そして今まで清掃を行っていた人影たちがある一点に向かい集まっていく、人影が集まったその先―――眼前には”六つの像”全員が一列に横並び”像”に向かって深々と”頭を下げる”、一糸乱れぬ動きで

 

 

「今日もまた人間たる我々の命があった事を神に感謝いたします。」

 

 

―――感謝いたします。

 

 

横並びの中央に位置していた人物が”神への感謝”を”六つの像”に向けて陳べ、それに続くように残りの人物達も感謝の言葉を口にする。

 

 

この人物達の集まりこそ【スレイン法国】における”最高執行機関”である”総勢12名”で構成されているが、今この場にいる人物は”七名”。

 

 

―――”火の神”を崇める”火の神官長”―――

―――”水の神”を崇める”水の神官長”―――

―――”土の神”を崇める”土の神官長”―――

―――”風の神”を崇める”風の神官長”―――

―――”光の神”を崇める”光の神官長”―――

―――”闇の神”を崇める”闇の神官長”―――

 

 

―――そして、その六名を纏める”最高神官長”の計七名である。

 

 

感謝の言葉の後、深々と下げた頭を戻し、清掃によって汚れた自らの服や清掃道具を【清潔<クリーン>】の魔法を発動させ汚れを消し去る。

 

 

清めが終わった後彼らは”円卓”に座る。”法国”の最高位者である”神官長”もだ。この円卓の場に置いては全員が同等。”人類繁栄”の為の”協力者”であり”仲間”なのだ。

 

 

「ではこれより会議を開始します。」

 

 

年老いた顔をした老人―――土の神官長が言葉を発する。今回の会議においての進行役なのであろう。

 

 

「最初の”議題”は”アゼルリシア山脈”における生物達の”勢力争い”の激化、それに伴う生態系下位の者達の下山による”人類の生存圏”への”侵入”です。」

 

 

アゼルリシア山脈とはリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国の間に位置し国土を分けている境界線たる山脈である。極寒の山々の北側は海に接し、南端にはトブの大森林と言われるモンスターの生息地が広がっている。

 

 

このアゼルリシア山脈は”多数のモンスター”の群雄割拠地帯であり支配権を巡る”勢力争い”も日々行われている。その山脈の生態系の頂点に位置しているのが【霧の竜<フロスト・ドラゴン>】と【霧の巨人<フロスト・ジャイアント>】であり、長い間覇権を巡り争いを続けている。

 

 

またこの山脈には膨大で多様な鉱石が眠ってもおり、山をくり抜き”地中”深く築かれた【山小人<ドワーフ>】の国等も存在している。希少な金属を多く保有しており、時折山脈を下り近隣の”人類国家”である”バハルス帝国”とも金属やドワーフの職人達により打たれた”武器””防具”などを使い交易を成していると聞く。

 

 

最近では”亜人の氏族”達との希少金属の奪い合いが度々発生しており、こちらもいずれは、大きな争いに発展するのではと思わせる。

 

 

今回の議題の問題点はこの後者の問題ではなく、前者の問題だ。生態系の頂点たる存在達の”勢力争い”の余波によって下位の者達が行き場を失い山脈から逃亡しているのだ。

 

 

下位の者達と言ってもその保有する力は人間などよりも強い者達が多い。そんな者達が雪崩を打って侵入してきた場合”人類”が受ける”被害”は図り知れないであろう。

 

 

最も危険なのは隣国の”王国”と”帝国”であろうか。両国が亡べば、人類は更なる窮地に陥る。幸い、まだそこまでの被害は出ておらず”法国”の”間引き”だけでどうにか対処できているが、これから先は分からない。頂点たる両雄の争いが激化している以上、より多くの生物達が下山してくるのも時間の問題であるかに思えた。

 

 

「現状の状況は芳しくありません。対処できているのは事実ではありますが、これ以上長期戦になれば疲弊するのはこちら。早めに大きな策を講じねば。」

 

 

そう言葉を発したのは、鋭い目をした男で、この集まりの中では一番若い。恐らく”三十代後半”と言った所―――光の神官長である。非常に優秀な男であり、神への信仰も厚い。この若さで神官長を務めている事がそれを証明しているであろう。

 

 

この男がこのような発言をしているのは、彼が指揮する特殊部隊【陽光聖典】がこの任務に大きく関わっている事が挙げられる。【陽光聖典】は他の”五つ”の部隊の中で特に”殲滅”に優れている部隊である、故に間引きを行う以上、最適な采配だと言えた。そしてその者達が言うのだ―――もう余り猶予は無いと。

 

 

「”大元”を叩くのが”一番”早いのであろうが、それは現実的ではあるまい。数も強さも”桁違い”だ。実行に移せばこちらが”壊滅”する恐れがある。」

 

 

「トブの大森林だけでも頭が痛いと言うのに。あの馬鹿”共”が。」

 

 

口を開いた”前者”が”風の神官長”であり五十代前半程の温厚そうな中年の男だ。指揮する特殊部隊は”風花聖典”情報収集や諜報活動を主に行う部隊であり先程の発言も収集した情報を分析し持論を述べたに過ぎない。

 

 

後者が”水の神官長”でありこの集まりの唯一の女性だ。年齢は五十代後半といった所で年齢の為か、ふくよかな顔をしている。彼女が罵声を飛ばした馬鹿共と言うのは王国、帝国の両国の事である。平和に慢心し、徐々に腐敗が始まりつつある、両国に対しての彼女の怒りであろう。

 

 

両国がきちんと機能していれば、この様な事で頭を抱える事は無いのであるが、それは言っても詮無き事である。帝国は現状を見るに腐敗速度も緩やかで、将来もしかしたら持ち直せるのでは、とも思えるが、この先続くとは限らない。

 

 

素晴らしき政才を持ち、民衆を纏め上げる事が出来る、カリスマを持つ皇帝でも居れば話は変わるのだろうが現皇帝はそうではない。一つ利点を挙げるとすれば”人類最高峰”の”魔法詠唱者”を抱えている事くらいであろうか。

 

 

しかし王国には利点がない、腐敗の進行も速く、最近では”王派閥”と”貴族派閥”なる物が出来上がりつつあり、そして、内部で派閥争いが始まりつつあるのだ。このまま腐敗が続けば、将来―――後”100年”もすれば王国は内部から崩壊するのではないのか?と思わせる程である。

 

 

”そうなった時”の”プラン”も考えておく必要がある。案が無い訳ではないが”それは”帝国”次第”であろう。まだ”思案”の段階であるが、100年”先”の未来に向けて疎かにはできない。人類の”未来”の為に。

 

 

「過剰に叩く必要もあるまい?どちらか”一方の戦力”を削れれば良い。拮抗したバランスが崩れればどちらか一方が覇権を握る...とまではいかないかもしれんが、膠着状態くらいにはなろう?そうすれば、向こう数十年はどうにかなるのではないか?」

 

 

「いい案とは思いますが、もし仮に、それで片方が覇権を握ってしまった場合、その勢力が更なる勢力圏を求めこちらに進行を開始する恐れもあるやもしれません。」

 

 

「その可能性は低いとは思うが、無いとも言い切れんな。慎重に事を運ばねばなるまいが、余り猶予が無い事もまた事実...ままならぬものだな。」

 

 

眼鏡をかけた老人―――火の神官長が口を開きその言葉に続き他の神官長が各々の考えを口にしていく。

 

 

―――そして

 

 

「いずれにしろ、どちらか一方に打撃を与える事ですら容易な事ではあるまい?問題はそれが”可能”かどうか―――”漆黒聖典”なら成しえれるか?」

 

 

火の神官長がそう言葉を吐き、一人の人物を凝視する。逞しい体格をし、眼光の鋭い男に向かいそう言い放つ。

 

 

この人物こそ闇の神官長であり、年の功は四十後半と言った所か。指揮する部隊は【漆黒聖典】スレイン法国が保有する特殊部隊【六色聖典】その中でも最強―――いや人類国家最強の部隊。総勢”12名”で構成される少数精鋭の部隊であり、その一人一人が”英雄の領域”に到達した猛者達、六大伸の残したもうた桁違いのマジックアイテムを装備する事を許されており正に”一騎当千”の傑物達だ。

 

 

「そうですな。フロスト・ジャイアントであればそれなりには対処が可能かと思います。無論、各個撃破と言う形でですが、しかしフロスト・ドラゴンは少々厄介です。対空手段が限られている以上、苦戦は必至かと。」

 

 

漆黒聖典に所属する隊員の半数以上が”戦士”であり、空を縦横無尽に駆け巡る”ドラゴン”とは相性が悪い。逆に地に足を着けるジャイアントの方が愛称は良い様に思えた。

 

 

神官長達の顔に思案の表情が浮かび―――闇の神官長が言葉を続けた。

 

 

「しかし、”神人”なら別です。”真なる竜王”でもない限りは敗北する事はありますまい。」

 

 

その言葉を聞き五人の神官長達の顔に浮かんだのは歓喜の表情―――ではなく”困惑”であった。

 

 

「確かに...神人ならばそうであろう。ジャイアントもフロスト・ドラゴンも敵ではあるまい。しかし現状”いない”者の話をしても意味がなかろう。」

 

 

”神人”六大神の血を引き、尚且つその血を覚醒させる事の出来た”先祖返り”の話をされ皆一様に困惑する。現在その神人はいない。いや”存在”はしている。しかし”戦場”には立ってはいないのだ。

 

 

「ファーインは例の件で深く傷ついた。あの精神状態では使い者になるまい。自らの子供を虐待し心を慰めているくらいだ。」

 

 

「そう言えば”その子供”はどうなのだ?神人と...大罪人の血を引く者だ。素晴らしい才能を秘めているのでは?」

 

 

「今現在では目立った才能は見られていないとの”報告”があります。それどころか”並以下”かもしれません。」

 

 

「所詮は”混ざり者”か、人類の希望になりえるかと思ったが。取るに足らん存在だったか、捨て置けばよかろう。」

 

 

「流石に口がすぎますよ?それぐらいにしておいた方がよろしいかと。」

 

 

闇の神官長の言葉を皮切りに各々が言葉を発する。二つの強大な血が混じり合った存在どれほどの力を秘めているか、ファーインの”代わり”になりえるかと”期待”していたがその期待は外れだったようだ。毎日地獄の訓練を行わされてまだ”芽”が出ないのであるから。

 

 

「静粛に、皆様。これは”朗報”です。ファーインが漆黒聖典への復帰を願い出てきました。」

 

 

「なんだと!?」

 

 

「それは、本当なのですか?」

 

 

「願い出てきた?それは彼女の意志で戦場に立つという事か。」

 

 

円卓がざわめきだす。素晴らしい朗報だと、彼女の力は漆黒聖典全隊員で掛かっても勝利できない程だ。彼女が復帰する以上この議題の内容は先程より遥かに軽くなるだろう。神官長達の頭の中にはもはや先程の”子供”の話題などない。ファーインの復帰、神人の凱旋である。”スペア”はもう”いらない”のだから。

 

 

「しかし彼女も、長い間前線を退いていた身である以上、ブランクは否めません。早急には無理でしょう。それに”協定”の事もあります、余り”派手”に彼女の力を使うのはまずいのではと愚行します。」

 

 

「それは仕方のない事だわ。できる限りは他の聖典で賄う必要があるでしょうね。どれくらいの期間持ちそうなの?」

 

 

「恐らくですが現状、後二年ほどは猶予があるかと。状況によっては更に早まるでしょうが。」

 

 

「ふむ、その間は、陽光聖典を主軸に間引きを続けるほかあるまいな。無論、打ち漏らしは厳禁だぞ。」

 

 

「心得ております。」

 

 

円卓に鳴り響く言の葉は止まない。議題は―――会議は続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいよ。”フーシェ”さん。あんまり作った事の無い物だったから大変だったができたぜ。しかし珍しいなこんな物頼むたぁ。フーシェさんが”付ける”のかい?」

 

 

ここは法都にある”武器屋兼雑貨屋”であり言葉を発しているのはこの店の店主である。武器・防具を売るだけでなく”鍛冶屋”としても活動を行っておりその腕を持って多種多様な物を制作し販売している。その腕は法都でも指折りだ。

 

 

「いえいえ、まさか。近々”娘”の誕生日でして...今まで何も渡してこれなかったので、今回は”プレゼント”をと思いまして。喜んでくれると良いのですが。」

 

 

おぅ?フーシェさん子供いたのか?と店主が驚きの声をあげている。この”フーシェ”と呼ばれている人物は、リーネの母親”ファーイン”の事である。フルネームは”ファーイン・ヘラン・フーシェ”であり、ヘランが洗礼名であり、フーシェが苗字だ。

 

 

「かぁ~なに言ってんだい!娘が”母親”からプレゼント貰って喜ばない訳ないだろ?し・か・もだ、俺が作ったんだぜ!これはもう貰いってもんよ。」

 

 

勝ったも同然よ~っと騒いでいる店主に、勝つも負けるも無いのだけれどとファーインは心の中で思うが口には出さない。気持ちよさそうに喋っているのだ放っておいた方が良いであろう。

 

 

「店主さん、ありがとうございました。それでは失礼いたします。」

 

 

そう言葉を吐きファーインは店を後にする。その手には大事そうに”薄い青色の髪飾り”が握られていた―――

 

 

―――法都の中道をゆっくりと屋敷に向けて歩いていく。頭の中ではプレゼントをどうやって渡そうか考え中だ。あの子は喜んでくれるだろうか、そんな事を考え歩いていると。

 

 

「...”風花”ですか?なんの用です...?」

 

 

歩行者の少ない中道でファーインが一人口を開く、端から見れば独り言に見えるがそれは違う―――人の気配を感じさせないまま、ゆっくりと人影が路地裏から現れた。

 

 

「...流石です。ファーイン様。まさか気取られるとは...」

 

 

「そんな事は聞いていません。要件を言いなさい。」

 

 

有無を言わせぬ言葉に、一瞬目の前の人物がたじろぐが、すぐに冷静になり言葉を喋り出す。

 

 

「神官長達の会議で貴女の”復帰戦”の目途が立ちました。そのご報告にと。」

 

 

「それはここで言う事でしょうか?わざわざ”風花”を使ってまで、屋敷まで来てくださればよろしいのに。」

 

 

「内密な話です。”ご家族”の耳に入った場合まずいかと。」

 

 

しらじらしい。ファーインは心の中で罵声を飛ばす。相手の言っている事も最もであろう、六色聖典は特殊部隊であり秘匿されている。その任務を簡単にその辺で言うわけにはいかないであろう。しかしファーインはそうとは取らなかった、これは監視だ、自分ではなく”娘”のだ。

 

 

あの子の潜在能力の調査、”調整”を始めたばかりの時は常に監視されていた。向こうは気づかれていないつもりだっただろうが自分の―――神人の目は誤魔化せない。それだけ隔絶した力の差が存在しているのだ。

 

 

(調整はこの為でもあったの。自分が”狂った”と見せかけ地獄の訓練をさせていると。それにも関わらず一向に”覚醒”どころか”血の力”すら引き出せない様を”見せつけ”なければならなかった。その成果もあって、ここ”最近”は興味を失っていたようだけれど。)

 

 

自分が漆黒に急に復帰した事で裏をさぐられているのか?はたまた、この話のついでに、あの子の様子を見に来たのか?そんな言葉が脳裏を駆け巡る。

 

 

「なるほど、そう言われれば納得ですね、わかりました。神官長達にお伝えください。私はどんな戦場でも構いませんよ...と。」

 

 

「御意、それでは失礼いたします。」

 

 

そう言葉を残し目の前の人物が姿をけした。その瞬間気配が掻き消える。恐らく”帰還”したのであろう。

 

 

(あの子は渡さない。しばらくは”警戒”しておいた方がよさそうね。)

 

 

心に決意を新たに再度歩を進めだす、屋敷に向かって―――

 

 

―――屋敷に向かいながら、ファーインは思う、あの子の力を、覚醒してしまった力を、あれが最大だとは思えない、間違いなくまだ強まる。それが神官長達の耳に入るのは非常にまずい、簡単には逃がせない、血眼になって追いかけてくるだろう。あの力は間違いなく欲しくなる。

 

 

(あの子は”ハーフエルフ”だから...。)

 

 

ハーフエルフの寿命は長い、エルフと比べれば見劣りするかも知れないが、人間などとは比べ物にならないだろう。ファーインは人間だ、長くは生きられない、寿命はすぐにやってくる、だが、アンティリーネは違う、長寿であり、全盛期も長い、長期間使用できる”殺戮兵器”の価値は果たしてどれほどの物なのか。

 

 

(間違いなく私より上...私と袂を別ってでも欲しがるでしょうね。)

 

 

これから先は今以上に慎重にならないといけない。そんな事を考えながら歩いていると屋敷が見えてきた、思った以上に長く思案していた様だ。辺りの風景も沈んできている。

 

 

「お母さ~ん!」

 

 

屋敷の前から声が聞こえた。ファーインは声の主を静かに見つめる。ゆっくりと歩きながら。

 

 

「おかえり~!ご飯食べよ~。」

 

 

「えぇ...ただいま。」

 

 

目の前には、この沈んでいく風景の中―――

 

 

―――優しい”笑み”で風に吹かれる”娘”の姿があった...。

 

 

 

 

 

 

 

人々の賑やかな声が鳴り響く、声は止むことはなく一層強く聞こえてくる、活気に満ち溢れている。そう感じるには十分な程の熱気がその”場所”にはあった。人々とは言うが、正確に言えばこの声は”プレイヤー達”の発している声であり”現実”の出来事ではない。

 

 

ここは”ユグドラシル”内の一つのワールド―――ヨトゥンヘイム―――にある都市の一つである。非常に設備の整った都市で有名であり、それに伴い利用するプレイヤーも多い。その都市の中を一人の”人間種の女性プレイヤー”が歩いている。

 

 

非常に整った顔立ち―――アバターであるが―――をしており”青い瞳”に切れ長の気の強そうな”目”髪の色は”金髪”で、”長さ”は腰の辺りまであり、それが三つ編みに結ばれている。身長は高く180㎝以上はあるのではと思う程だ。精強な女騎士を思わせる風貌の女性が都市の中央を一人歩いていると―――

 

 

「よう、久しぶりじゃねぇか。”アンタ”元気してたか?」

 

 

横から声が掛けられ女が歩を止める、続いてゆっくりと声の発生源に向け振り向く。

 

 

「あら、久しぶりね。”あなた”こそ元気だったの?」

 

 

声の発生源、身長の低い”盗賊風”の男に言葉を返す、どうやらこの二人は知り合いの様である。

 

 

「まぁな。ユグドラシルは広い、中々出会う事もないしな...今日はまたどうした?いつもと”装備”が違うみたいだが。」

 

 

「今”ビルド再構成”中なの。大幅にLVが”下がってる”からLVに見合った装備をしているだけよ。”盾”以外はね。」

 

 

盾以外―――そう言葉を喋った女の手には”何も無い”恐らくは、今は”装備”してはいないのであろう、その言葉を聞き盗賊風の男が口を開く。

 

 

「ビルドの見直しか...余念がないな。貪欲だ。」

 

 

「私は”皆の盾””守る”為にいるのよ?私が倒れる訳にはいかないもの。より強く、より”固く”ならないとね。”組み合わせ”は無数にあるのだし”最適”を求めるのは当然でしょ?」

 

 

ビルドの見直し、組み合わせ、最適、この言葉から考えられえるに、この騎士風の女は現在LVダウン中なのであろう、無数のクラスに、無数の組み合わせ、突き詰めればキリは無く、それは途方もない作業だ、故に男は”貪欲”と表現したのであろう―――会話は続いていく。

 

 

「なるほど。なら今からする事はクラスの条件満たしか?それともLVアップ?」

 

 

「前者ね。少し気になるクラスがあるから、条件を満たしに”ヘルヘイム”に向かう所なのよ。」

 

 

ヘルヘイム―――その言葉を聞いた途端男の雰囲気が豹変した。

 

 

「ヘルヘイム...か。今はあそこは”非常に危険”だ。まぁ、あくまで俺達”人間種”にとってはだが。」

 

 

「あら?そうなの?どうしてかしら?」

 

 

知らないのか?男が驚き、言葉を口にする。

 

 

「今あそこにはいかれた”PK連中”が居てよ。異業種で構成された、な。」

 

 

PK連中、今ヘルヘイムは人間種にとっては非常に危険な場所だ。元々異業種がばっこする地帯ではあったのだがある”九人”の集団によって異業種プレイヤーが息を吹き返しつつある。元々は異業種狩りを行っていた人間種が悪いのではあるが、迫害されていた異業種達が、その集団に続き、手を取り合いつつある。

 

 

「まぁ、”一人”だけ人間種もいるが”そいつ”が”一番”やばい。見つかれば有無を言わさず”殺される”可能性もある...異業種に手でも上げた日には、死ぬまで”追いかけ回される”だろうさ。」

 

 

「異業種の集団に人間種?変わってるわね。」

 

 

「見た目は小さな少女だ、確か...”ハーフエルフ”だったか?だがあれは少女なんて可愛い物じゃないね、”少女の皮を被った悪魔”さ。」

 

 

ハーフエルフ、余り聞きなれない種族名に、女は顎に指を当て一点を凝視している。恐らく考え事をしているのであろう。

 

 

「しかも、その集団の一人は”あの”たっち・みーだ。後”弐式炎雷”もな。」

 

 

女の雰囲気が豹変する。これは驚きもあるだろうが、それ以上に感情の高ぶりによる物が大きいだろう、これが現実なら、獰猛な笑みを浮かべているに違いない。

 

 

「それは大物ね。しかも”二大ニンジャ・マスター”もいるなんてね。なるほどね。そのお嬢ちゃんがなんで報復されないか、分かった気がするわ。」

 

 

「そういうこった、そのガキ自体も相当やるらしいが、周りがもっとヤバい、”PVP”を申し込んでやり返そうにも、なまじ強くて返り討ちに会いかねん、襲おうにも周りがヤバすぎて後の報復が怖い。」

 

 

「しかもワールドはヘルヘイム、異業種の巣窟見たいな所だもの、下手すれば袋叩きに会いかねないわね...”異業種サークル”の”姫”みたいな子ね、その子。」

 

 

「しかも、ぶっ殺された後は、こっちのドロップアイテムを根こそぎ持って帰るらしいぜ?しかも鼻歌交じりにだ。」

 

 

「...害悪プレイヤーね、嫌われるわよその子。」

 

 

もう嫌われてんだよ...男がそう口にし―――そして言葉を続けた

 

 

「まぁだから気をつけな...つっても”アンタ”なら何も”問題”なさそうだがな、アンタが、PVPやPKを中心にやる人物だったなら、瞬く間に噂になるだろうぜ?アンタ程の人物が無名なんて、只の知り合いの俺ですら悔しいからな。」

 

 

「ふふふ、買い被り過ぎよ、それに私、どっちも余り興味ないの、振りかかる火の粉は払うけどね、私は、チームの盾、私は守る事が仕事だもの。でも、忠告ありがとうね。」

 

 

それじゃあね。女がそう言葉を残し男の元を去っていく、そして、一しきり歩いた後、目的の場所に着いたのか、歩みが止まる。

 

 

「この辺でいいかしらね。【転移門<ゲート>】。」

 

 

掛け声と共に女の手に握られているアイテムが光を帯びていく。これは非常に希少な物で必要クラスを満たしていない物でも転移の魔法が”発動”できるアイテムである。一日の使用回数はあるが―――女の目の前に時空の穴が出現した。

 

 

それと同時に近くから―――斜め後ろ―――から驚いた様な声が聞こえてくる。気になり振り向くと、そこには”三人のプレイヤー”達、人間種二人と異業種一人がこちらを見ながら何かを喋っている。

 

 

最近はこの組み合わせ―――人間種と異業種―――が流行りなのだろうか?とくだらない事を考えるが、すぐに前方に向き直す。立ち止まっている時間が勿体ないからだ。そして歩を進めようとし、ある事を思い出した。

 

 

「おっと。忘れてたわね。きちんと”装備”しないとね。」

 

 

そう言葉を発した途端女の”両の手”に”体の半分程”の大きな”盾”が出現する。

 

 

盾は青白く光り輝いており、美しい模様が彫られている、しかし、その形は異様であった。

 

 

盾の内の端部分が、丸みや角張を帯びておらずに”一直線”に縦割れしている、まるで一つの盾が、中央からバッサリ切られ”別たれたかの様な”。

 

 

「ふふ、ハーフエルフのお嬢ちゃんね、面白そうな子が現れたものね...襲われない様に気を付けなきゃ。」

 

 

そう言葉を発しながら女は時空の穴に向かい歩を進めていく、ゆっくりと...ゆっくりと―――

 

 

―――奇怪な盾を両の手に持ちながら。

 

 

 

 

 

―――広く広大なゲーム”ユグドラシル”

 

 

 

 

―――未だ熱気冷めや間ぬ”ユグドラシル”

 

 

 

 

―――続いていく”ユグドラシル”は続いていく

 

 

 

 

―――まだ見ぬ猛者達が動き出す...

 

 

 

 

 

 

 

 

 




周囲の現状になります、なんか、法国上層部を少し悪く書き過ぎたかなと思いますが、人類の事を思っているのは変わらないと思います。

絶死さん何歳か分かんなかったんで、一応このSSではこの転移世界は、原作の100年前という事で進めていこうかなと。

帝国、王国がいつから腐り出したか良く分かりませんが、腐る前兆が見えだした感じになってます。頑張れ、法国!って感じです。

最後のユグドラシルの話だけ、時系列が一気に飛びます、あそこはもう2章に入ってます、2章のちょっと進んだ所くらいですかね。

気づけば投稿初めて一か月過ぎてて驚いています、投稿前はいつもドキドキしているのですが、皆さん優しい方達ばかりで、ちひろの心は守られています、非常にありがたい限りです、感謝。

今回も最後まで読んでくれてありがとう。心折れず書き続けて、きちんと終わらせたいです、それでは!また読んで下さいね。


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