あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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前回のあらすじ

ぶるぅわにゃん ぶるぅわぁ―ラ・アラフ

「ぶうううぅぅるぅうぅぅわぁぁぁぁーー!」


番外編 そのころあいつらは その③

 

 

 

 

行き交う人々の声が、大勢の足音が、熱気溢れる風景が、眩い日差しに塗れ混合し風に乗って周囲を飛び交う。その様はまるでオーケストラの合唱の様で、ソプラノの様な、テノールの様な、幾多の声が重なり合い、活気溢れる旋律を、栄光の日々を奏でている様にも思えた。

 

 

合唱は止むことはない。この熱気が止むことはない。いつまでも続いていく。栄光の日々が終わるまで。栄光の落日がやってくるその日まで。

 

 

ここはヨトゥンヘイムにある交流都市、設備の整ったこの都市は非常に人気の高い場所でありこの活気がそれを証明しているだろう。辺りを見渡せば各々が楽しそうに行きかっている。その都市の中を三人のプレイヤー達が歩を進めていた。二人は楽しそうに、一人は少し気まずそうにしている。

 

 

「やっぱ凄いな~ここ!人数が段違いだな!これがな!」

 

 

「このワールドきっての優良都市だからな。当然と言えば当然だろうさ。」

 

 

二人の人間種プレイヤー、ねこにゃんとアーラ・アラフがそう賞賛の言葉を口にしている。そしてその言葉に続く様にしてもう一人が言葉に続く、少し気まずそうな声音で。

 

 

「しかし見事に人間種だらけだね。良い場所だとは思うが、僕は少し肩身が狭いよ。」

 

 

二人の会話に続いたのはスルシャーナ、その姿は異形のアンデッドであり、明らかにこの場所では浮いている。この都市は全種族が立ち入る事が許可されている為に、何も悪い事はしていないのだが、大勢の人間種に圧倒されているのだろう、気まずさが押し寄せてくる。

 

 

「それはしょうがないな、悪いが我慢して欲しい。俺達だってヘルヘイムに行った時は気まずい思いをするんだ、お互い様だろ?」

 

 

「俺は別に気にしないぞ!これがな!」

 

 

二人にそう言われればスルシャーナとて我慢するほかない、そしてそれほど長居もしないだろうからよしとする。本日の予定は決まっている、この都市にはある理由できているに過ぎない。都市内で行う予定ではないので、人が集まればすぐにでも出立するであろう。

 

 

「確かにそうだね。君たちの言うとうりだ。あっ、そう言えばヘルヘイムで思い出したよ。最近あそこは物騒らしいよ?主に君達、人間種にとっては。」

 

 

今現在ヘルヘイムは人間種のプレイヤー達にとっては余り近づきたくない場所に変貌を遂げている。ある集団がPKを繰り返しているからだ。八人の異業達達と一人の人間種の集団が。

 

 

「あぁ...知ってるさ、異業種と人間種...ハーフエルフの少女がいるんだろ。」

 

 

異業種の集団の中に人間種の少女が混ざっているなど、どんな三流アニメだ、などと思うが実際存在しているのが現状である。そしてその集団の中に置いてその少女が一番質が悪いのだから笑えない。

 

 

「...なぁ?もしかしなくても、あの嬢ちゃんの事だよな?」

 

 

「白と黒のツートンカラーの髪に、目も対称のオッドアイ、しかもエルフで少女、こんな濃ゆい奴が他にいるのかね?まず間違いなくあの嬢ちゃんだろうさ。」

 

 

一度見たら忘れられない風貌をした少女のプレイヤーを思い出し、アーラ・アラフがねこにゃんに対して言葉を返す。あったのはたった一度だけ、しかも一年以上も前の話だ、それなのに鮮明に姿が思い出せる。

 

 

「しかもその集団にはあのたっち・みーもいるらしいね。君達に風貌を聞いた時、もしやとは思ったけど、あの化け物なら、君達を瞬時に倒せても不思議はないね。」

 

 

「多分あの後、そのまま行動を共にするようになったんだろうな、やられた奴らも報復したくても、あの化け物がバックに付いている以上、嬢ちゃんには迂闊に手は出せねぇよな。」

 

 

「嬢ちゃん穢れちまったな...あんなに純粋にロールしてたのに...。」

 

 

アラフがあんな事するから、などとねこにゃんがのたまっている。その言葉に怒りが沸いてきたのか、アーラ・アラフが、お前だろ!てか嬢ちゃんロールじゃなかったよ!などと罵声を浴びせている。

 

 

「はいはい、やめやめ。しかしヘルヘイムにはしばらくは近づかない方が良さそうだね。一年以上前の事を根には持ってはいないとは思うけど、報復されたら溜まった物じゃないからね。」

 

 

「アラフ~の~所為~♪セイセイセーイ♪...んぁ?すんげぇ綺麗な姉ちゃん!ビジュアルめっちゃ凝ってんな!」

 

 

「おっ?確かに凄いな力が入っている。てか俺の所為じゃねぇって!」

 

 

ねこにゃんの言葉を聞き二人がその人物―――騎士風の女性―――を凝視する。見事なグラフィックだ、ビジュアルにこれほど力を入れている人物に感服すると共に、改めて思う、これほど精巧な再現を可能にできる事に―――やはりユグドラシルは凄いと。

 

 

そしてその人物が、マジックアイテムを起動させた。その瞬間、最高峰の転移魔法が発動され時空の穴が生まれる。三人は一様に驚き口々に賞賛の言葉を吐きだす。

 

 

「んぁ!すんげぇ!レアアイテムじゃん!あれ欲しいぞ!」

 

 

「その気持ちは分かるな。あれがあればソロでも活動できそうだ。」

 

 

「マラソン大変だったろうね。しかしねこにゃん、もう少し声量落としなよ、こっち見られてるよ。」

 

 

ねこにゃんの大きな声に、女性が振り向き此方を凝視している。そしてすぐに視線を変え、その時、何かを呟いた様に聞こえたが、余りよく聞き取れなかった。瞬間女性の両手に大楯が出現する、そしてそのまま時空の穴の中に消えていった。

 

 

奇怪な盾を両手に持ち。

 

 

「絶対変なやつらだと思われたな。主にコイツの所為だが。」

 

 

「まぁまぁ、それじゃ、いい物も見れたし交流場所まで行こうか。もうすぐ着くしね。」

 

 

スルシャーナの言葉を聞きアーラ・アラフが了解の意を示し歩を進めていく。二人の後ろでねこにゃんが、欲しい欲しい~あれ欲しい~などと駄々をこねているが、無視して歩いていく。

 

 

待ち合わせの交流場所はもうすぐそこだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交流場所、名前の通り、プレイヤー達の交流の場でありクエスト、チームメイトの募集など、幅広い用途で使用される。基本的には大勢が入れる広い空間が使用される事が多いのであるが、まれに個室が採用される事もある、人込みを嫌うプレイヤーもいるのだ。今日三人が使用している場所はその個室である。

 

 

「...おい、いつになったら来るんだ?」

 

 

「...そう言えば時間の指定はされていなかったね。向かわせる、としか言ってなかった気がする。」

 

 

「流石クシリンだな、横暴~。」

 

 

彼らが本日この場に集まっているのはクシリンからの頼み事で一日、従弟の子供の面倒うを見て欲しいという頼み事の為である。フレンド登録をしているスルシャーナに急にメッセージを飛ばしてきたかと思えば、用件だけ言ってすぐに切られのだ。よくよく考えてみれば時間の指定は無かったとスルシャーナが言う。

 

 

「ふざけてんのか?頼む立場でそれは無いだろう、来るまで待てってか?」

 

 

「...メッセージを飛ばすけどでないね。INしてないのかも。」

 

 

やってられるか!アーラ・アラフが痺れを切らし、部屋を出ようと扉を開けた―――その時。

 

 

「ダァァァーーー!!」

 

 

扉を開けた途端、掛け声と共に、子供がアーラ・アラフの腹部辺りに体当たりをかましてきた。

 

 

「ぶほ!あぁん?なんだ!?」

 

 

「遊ぼうぜ!!」

 

 

茶色の服を着て、頭にターバンを巻いた子供が、現れるや否や、遊ぼうなどとのたまってくる。その言葉を聞き、三人の頭の中に共通の認識が生まれた、このうざさ、この横暴さ、間違いない、コイツが例の従弟だと。

 

 

「いきなり体当たりかましてきて遊ぼうとかよく言えるな。常識が―――」

 

 

「そんなのいいから遊ぼうぜ!おっさん!」

 

 

ぶふっと、スルシャーナが堪らず吹き出す。流石はクシリンの従弟と言った所か、アーラ・アラフの煽り方を良く心得ている。

 

 

「お前今笑っただろ。」

 

 

「笑ってない。」

 

 

「笑っただろ。」

 

 

「笑ってない。」

 

 

笑っただの、笑ってないだの言い合う二人を、うずうず、という雰囲気を醸し出しながら子供が見つめている、一応は約束を引き受けてしまった身だ、無下にはできない。プランは考えているのでそれを実行に移せばいいだろう。

 

 

「あぁ、ごめんね。一応は遊びは考えてあるんだ、僕はスルシャーナ、用意が出来次第出発するとしよう。」

 

 

子供が喜び飛び跳ねている、クシリンの従弟といえども所詮は子供だ、単純で扱いやすい、出発の為に用意を始めようとしていると―――覚えずらい名前だな、おっさん!

 

 

その言葉を聞き、スルシャーナは殺意を習得した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出てこい!【土の精霊<アースエレメンタル>】」

 

 

子供がそう言葉を叫ぶと共に、地面からぼこぼこという効果音と共に、土の精霊が現れる、ここはヨトゥンヘイムの初心者地帯であり非常に安全な場所だ、子供を遊ばせるには最適な場所だろう。

 

 

「んおぉ~、サモナーだったんだな、浪漫があっていいな。」

 

 

「やるじゃないか、えぇっと名前はなんだろ?」

 

 

「ふん、聞く必要もないね、ターバンのガキで十分だ。」

 

 

はしゃぐ子供を他所に、アーラ・アラフが悪態を付いている。余りにも大人げない態度だ、もう少し優しく接してあげても良いのでは?と思うが口には出さない、矛先が自分に向かってきそうだからだ。

 

 

「しかしサモナーか...直接戦闘能力はそうでもないが、パーティーに一人いれば色々と便利そうだな、状況によっては重宝しそうだ。」

 

 

「次の仲間はサモナーとか良いかもね、そろそろ三人じゃきつくなってきたし。」

 

 

ユグドラシル実装初期から三人でつるんできたが、流石にそろそろきつくなってきた、高品質の―――【神器級<ゴッズ>】とまではいかないでも【伝説級<レジェンド>】くらいの装備は欲しいが、三人では辛いのが現状である。そろそろ仲間の増員が欲しいとスルシャーナが言う。

 

 

「...ずっと三人でやってこれれば良かったがそろそろ限界か...増員するにしても吟味はしたい所だな。」

 

 

アーラ・アラフがそう小さな声で呟く、声音に含まれる感情は、三人での冒険が終わる寂しさなのか、それとも、新しいメンバーが入る事により、どう変貌するのかに対する、期待、不安なのかは良くは分からない。

 

 

目の前では【土の精霊<アースエレメンタル>】がゴブリンをケチらしている姿が見えてくる、それを見て、大はしゃぎする子供と、一緒になってはしゃぐねこにゃんの姿、その光景を凝視しながら、アーラ・アラフは思う、馬鹿はもういらんぞと。

 

 

そのような酷い事を考えていると、今まで大はしゃぎしていた子供が急にこちらを振り向いた、ジッとこちらを見つめる様に、なんだ?と思って見ていると、子供から唐突に話題が振られる。

 

 

「おい、おっさんも遊ぼうぜ!魔法使えるんだろ?なんか見せてみろよ!」

 

 

「見せてみろよ!これがな!」

 

 

二人で遊ぶ事に飽きたのか、子供から遊びの誘いをアーラ・アラフが受ける、しかし、あんまりにもあんまりな言い草だ、イラっときたが、そこは大人、我慢する他ないだろう、仕方なく遊びに混じってやろうと、重い腰を動かし歩を進める、ちなみに、ねこにゃんは無視する、そろそろ一度パーティーから追放してやろうか?などと思いながら、ゴブリン達の前まで歩いて行った。

 

 

「ふぅ...俺は大人だ、こんなのは、軽く流せる人間なんだ...ふぅ、良し。」

 

 

―――【善なる極撃<ホーリー・スマイト>】―――

 

 

その言葉と共に魔法が発動され、空から光の柱が落ちてくる、神聖さを思わせる青白い光によってゴブリン達が一撃で消滅していく、それを見つめながら、見たか、ターバンなどと思っていると―――

 

 

―――グサ...

 

 

小さな効果音と共に、アーラ・アラフのHPゲージが減少―――微減だが―――した、余りの出来事に、一瞬混乱したが、すぐに冷静になりダメージの発生源を確認する、発生源は、右足太もも部分、訳も分からず振り向き発生源を目視し―――絶句した。

 

 

そこには、ナイフを両手に握り、体ごと刺しに来ているターバンのガキの姿が映し出されている、それを見て、またもや混乱が渦を巻く、先ほどの非ではない、アーラ・アラフが訳が分からず見つめていると、ゆっくりと、ターバンが顔を上げ見つめてくる、そして衝撃の言葉が投げつけられた。

 

 

「へっ、油断大敵だぜ、おっさん。」

 

 

クゥゥゥソガァァーキがぁぁぁーーーー!!怒りのボルテージがレッドゾーンを突き抜け火柱を上げる、ぶちぶちと、頭の毛細血管が切れる様な音が聞こえてきそうな程の怒りを全身に包み込むアーラ・アラフ。

 

 

ねこにゃんは大爆笑し転げまわっている。

 

 

スルシャーナは後ろを向きプルプル震えている。

 

 

ターバンのガキが指をチッチッチッと鳴らしながら煽ってきている。

 

 

しばしの間体を震わせていたアーラ・アラフが、ピタリと動きを止めた、我に返ったスルシャーナが、その姿を不思議そうに見つめていると。

 

 

「...第10位階魔法【神のいかづ―――】」

 

 

「まってまってまって!落ち着くんだ!そんなの打ったら消滅するから!」

 

 

「離せーーー!このガキャアーーー!ぶっ殺してやる!」

 

 

怒りが限界点に達したアーラ・アラフが特大級の魔法をターバンのガキに浴びせようとし、堪らずスルシャーナが羽交い絞めにする、そんな魔法を叩きつければ一瞬でお陀仏だ。

 

 

「――――!」「――――!」「――――!」

 

 

騒ぐ二人を見ながら、残る二人がケラケラ笑っている、子守は始まったばかりだ、まだまだ続いていく―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交流場所の一室に四人の姿があった、あの後、怒れるアーラ・アラフと、それを一生懸命宥めるスルシャーナの姿がひとしきり続いた、子守は酷く長く感じたが、あれからそれほど時間は経ってはいない、あのまま続けるのは、危険だと判断した結果がこれである。

 

 

「なぁ、なぁ、おっさん、外行こうぜ!また魔法打ってくれよ!」

 

 

「.........。」

 

 

子供に声をかけられたアーラ・アラフが無視を決め込んでいる、非常に大人げない姿だ、その姿を見ながら、子供がナイフをちらつかせながら、魔法見せろよ、なっ?なっ?とお願い事をしてくる、再度怒りが沸きあがりそうになり―――

 

 

―――ポーンとインターホンが鳴らされる音が部屋に響き渡る。

 

 

その音を聞き、四人が、なんだ?と思うが、即座にスルシャーナが気づく、恐らくクシリンが迎えに来たのであろう。やっとこの地獄から解放される事にホッと胸を撫でおろした。

 

 

「いいぜ!おっさん達!俺が行くよ!」

 

 

そう言葉を発しながらターバンのガキが、軽快なステップを踏みながら入り口まで掛けていく、元気な物だ、三人が一様にそう思った。

 

 

「ふぅ。やっと解放されるね、しかし、思ったより早かったね?もっと長くなるかと思ったけど。」

 

 

「はっ!済々するぜ!それなりの物を貰わんと割に合わん!吹っ掛けてやる!」

 

 

「俺は楽しかったぞ!」

 

 

各々がそう言葉を口にしていると、軽快な足音が響き、近づいてくる。ターバンのガキが戻ってきたのだろう。

 

 

三人が振り向き姿を伺う―――が、そこにはクシリンの姿は無かった、違ったのか?そう思っていると。

 

 

「なぁなぁ、おっさん達。なんか、クシリン?の従弟って子が、おっさん達に用があるって言って来てるぜ?」

 

 

ターバンのガキの言葉に、三人の思考が停止する、静寂が辺りを包み込む、固まる三人を見つめながら、ターバンのガキが頭に?マークを浮かべ―――

 

 

―――一人の人物が、その静寂を切り裂いて行った。

 

 

 

 

 

 

「んあん?じゃあ、お前誰だよ?」

 

 

 

 

 

→ To Be continued...

 

 

 




グサ、グサ、グサ...

アーラ・アラフ「馬、馬鹿な!マシーンの様に寸分の狂い無く同じ個所を!」

ターバンのガキ「にちゃり。」


ちひろ「最近、なんかお前、六大神じゃないみたいな説流れてるからリストラして良いか?」


ねこにゃん「んあん?理不尽過ぎだろ、これがな。」
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