あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
六竜さん達、影でぶっ飛ばすと悪口を言われる。
※この章からどんどん現地民+ユグドラシルプレイヤーとしてのハイブリッド化が加速していきます。既に軽く崩壊していますが、イメージ崩壊にご注意を。
九人の自殺点
♦
薄暗い雲に覆われた空、見渡す限りの荒野、周りには少しの木々が点在し、またその木々は枯れ果て、大地につっぷしている。少し高い音を響かせながら、吹きすさぶ風によって流れ続ける雲の隙間から時折見せる日差しが、その荒れ果てた荒野に光と、少しの暖かさを齎す。
そしてその恵みの光が荒野の荒れた様を更に鮮明に映し出していく。
映し出される大地に、風に乗って、複数の音が流れてくる、様々な音色で紡がれるその音は、徐々に激しさを増していく。目を向けて見てみれば、そこには巨躯な体躯をした恐ろしい風貌の存在が巨大な剣をその手に握り、振り回す様子が見てとれた。
伸びきったざんばら髪の中から天に向かい聳え立つ大きな角、目は吊り上がり、その口からは二つの牙が存在を主張している。
その体躯は恐らくは五m程はあるのであろうか、紛れもなくその存在は人間ではないだろう、そう思わせるだけの存在感がその存在にはあった、あえて表現するのであれば、東洋の伝説に歌われる鬼、その表現が最も適切だと思われる。
その強大な存在に、五人の小さな存在が相対していた、小さき存在が剣を振り、甲高い音が鳴り響く、恐ろしい風切り音と共に迫ってくる、巨大な剣を、もう一人の小さき存在が盾で受け止める。
後方からは魔法が吹き荒れ、空中を駆け巡る、その様はこの仄暗い大地とはかけ離れ、眩く光を放つその光景はまるで、夜空に瞬く星々の様な、空から降り注ぐ流星の様な姿を幻想させた。
舞い散った流星が強大な存在を目掛け飛んでいき、衝突した流星は眩く光を上げ弾ける、目に映る光はまるで花火のようで、見る者の目を奪っていく、終わらない乱舞、その姿はまるで舞踊を踊っているかの様だった。
そして長く続いた舞踊も遂に、終幕の時がやってきた。
「態勢が崩れたぞ!今だ!」
「くらえ!第10位階魔法【
前衛の戦士による攻撃で態勢を崩し、膝を着いた相手に対し特大の魔法が放たれる。かつて鋼鉄の魔神が放ったとされる強大な炎が前方に吹き荒れ、相手を包み込んでいった。炎は轟音と共に渦を巻き、火柱を上げながら上方に高く舞い上がる、そして炎に抱かれた相手が断末魔を上げ、光の粒子になり消滅していった。
その瞬間、小さき存在達が、それを見ながら歓喜の雄たけびを上げる。
「おっしゃ!討伐成功!やったな!リーダー!」
「結構苦労したな、危険を冒してまでこの世界にやって来たんだ、頼むからお目当ての素材出てくれよ。」
戦士風の男から、リーダーと呼ばれた男がそう口にする。その風貌は魔力系魔法詠唱者を思わせ、先ほどの特大の魔法を放ったのもこの人物である。
この男のプレイヤーネームはたけしであるが、チームメイトからはリーダーの愛称で呼ばれ慕われている。
「
「おいおい、俺達だって頑張ったんだぜ?」
「あぁ、すまないな、お前達にも助けられたよ、お疲れさん、アフロ、天丼。」
梵と宙と呼ばれた前衛の二人―――アタッカーとタンク―――が労いの言葉を貰っていると後衛の二人から非難の声が上がった、俺達も頑張ったんだぜ?っと。
この非難の声を上げた二人の正式なプレイヤーネームは、前者がちょび髭アフロ、後者が眉太天丼である、アフロは盗賊で天丼は神官のクラスに付いている、ふざけた名前とは裏腹に、非常に優秀な二人である。
この五人が死闘を演じていたのはヘル・オーガと呼ばれるモンスターで、現在五人が滞在しているワールド、ヘルヘイムにしか出現しない、それなりに貴重な素材をドロップする存在である為に、わざわざ拠点にしているワールドから出向いてきたのだ―――危険を冒してまで。
「梵、どうだ?お目当ての物は出たか?」
「...いんや、駄目だリーダー、外れだわ。」
メンバーが溜息を漏らす、どうやらドロップ品狙いは失敗に終わったらしい。消耗品アイテムもそれなりに使用―――在庫はまだあるが―――した以上、継続するかは悩ましい所である。
リーダーがそう頭を悩ませていると、目の前に―――少し遠くに―――人影らしき物が目についた。ぼろ布の様な物を纏った小さな存在が、地面に蹲っている。
一瞬モンスターか?と思い警戒したが、微動だにしないその様にその線は薄いと結論ずける、そしてこうも思う、何か、そう何か特殊な隠しクエストの開始イベントかもしれないと。
「おい、皆、あれが見えるか?」
「ん?...なんだあれ?モンスター...ではなさそうだな...ってリーダー!?おい!」
「...確認だけだ、もしかしたら限定的な条件で発生する隠し要素かもしれない。」
不用意に近づこうとするリーダーを仲間が静止しようと慌てて駆け寄る、この行動は明らかに危険だ、先程の戦闘で全員かなり消耗している。
仮にモンスターであった場合、情報が不確かな以上、交戦するのは危険だと判断した結果である、しかしリーダーの言葉にも一理あるとメンバー全員が思う。
ユグドラシルに置いて情報は秘匿される、運営もなにも教えない、隠し要素などゴロゴロ転がっているのだ。
もしこれが本当に隠し要素であるならば、先程のドロップ品狙いの失敗などおつりがくるだろう、そんな事を仲間が考え、歩を進めていくリーダーに各々が追従していく、無論警戒は怠らずに。
「着いたが...何も起こらないな...。」
目の前には少し膨らんだぼろ布、布の端からは小さな足が少しだけ飛び出し微動だにしない、他に何か条件があるのか?など、リーダーが思考の波に飲まれていると。
「...ぎ...だ...ふり...」
「!?」
目の前のぼろ布から小さな―――非常に聞き取りづらい声が発せられた、もしかしてプレイヤーか?そうリーダーが心の中で思った―――その時。
「秘儀ーーー!死ーーんだふりぃーーー!!」
大きな叫び声と共にぼろ布が宙を舞い、中から小さな少女が飛び出してきた、メンバー全員が余りの出来事にたじろぐ、冷静になる暇もなく、辺り一面にボフっという効果音と共に、濃い霧が立ち込め周囲を霧が覆っていく。
「【
「ちぃ!まさか、噂のPKれんち――」
「!?おい梵!どうし―――」
「!?!?」
状況に困惑し悲鳴に近い叫び声を上げていた、梵と宙の言葉が途中で途切れた。
続いて他の二人―――アフロと天丼―――の声も途切れる、一体何が起こっている、その言葉が胸中に渦巻き、その混乱すら塗りつぶす様な恐怖が襲ってくる。
そして暗闇の中に声が響いていく。
「たらら~ん。呼ばれて飛び出て忍者じゃ~ん。」
「天誅♪あぁ~天誅~♪」
自らを襲っている感情とは真逆の、非常に明るい声が辺り一面に響き渡った、そしてその言葉の中に含まれる、忍者というフレーズ。
リーダーがその言葉の意味を―――この現状の意味を正確に理解したのもつかの間。
「とぉぉーーう♪」
甲高い声、幼さを残す声が響き渡り、その瞬間霧が晴れていく、奪われていた視界が初めて映し出したのは、空中に舞い上がり、両手に剣を握り、上段に構え、自分に向け振り下ろそうとしているハーフエルフの少女の姿だった。
それがリーダーが見た最後の光景になった。
♦
「えへへへ。お宝、おったから~♪」
「...ドロップ品くらい返してやってもよくねぇか?」
「何を言ってるんですか!?戦利品ですよ?戦利品。」
PKした際にドロップしたアイテム群を鼻歌交じりに漁る存在、アンティリーネが話しかけられた存在に対してそう言葉を返す、ついでに、しょぼ~いと言う言葉も続いた。
「しけてますね~、しかし流石!弐式さんと建御雷さんです、すぐに終わりましたね!楽勝でした。」
「闇に忍び喉元をかっ斬る、俺には一撃あればいいのさ。」
「相手もかなり消耗してたしな、当然の結果といえば当然の結果だ。」
リーネの言葉に対し、二人の異業種プレイヤーが言葉を返す。
前者が弐式と呼ばれた人物、プレイヤーネームは弐式炎雷、種族はハーフゴーレムで、忍者装束に異様な覆面を付け、腰には二本の刀が挿されている、異名としてはザ・ニンジャやニンジャ・マスターがあり、紙装甲の超高速機動力に物を言わせた超火力特化のプレイヤーである。
後者の人物が建御雷、プレイヤーネームは武人建御雷、種族は
「秘儀、死んだふり!不用意に近づくからPKされるのよ~、ご愁傷様ってやつね。」
「しかしよぉ~リーネ、多分もうこれ通用しないぜ?次から絶対警戒されるぞ。」
「ニシやんの言うとうりだな、秘儀終了だ。」
その言葉を聞き、リーネの頭上に悲しみのアイコンが表示され、続いて、あぁ~、私の秘儀がぁ~という言葉を発する。
噂は瞬く間に広がる、恐らくは、もう通用しないだろう。
「まぁ、今お前さんは大幅にLVダウン中だから奇襲戦法が取れないのはきついよな。」
大幅なLVダウン、建御雷の言葉通り、今リーネのLVは非常に低くなっている、LVにして60強と言った所か、これはビルドの大幅な見直しによって故意に下げている状態だ、ビルド完成の道は今だ遠いという事である。
「クラスが多すぎるのよ...これが人間種の良い所でもあり、悪い所ですね、組み合わせ無限大ってやつです!」
「贅沢な悩みだな―――っと、そろそろ戻ろうぜ、モモンガさんとの待ち合わせに遅れちまう。」
そんじゃ、一旦帰りますか、弐式の言葉に二人が了解の意を示し、各々が歩を進めていった。
♦
「ん~、遅いな。PKしてから来ると言っていたが...返り討ちに合ってないか?」
「大丈夫っしょ、モモンガさん。あの二人がついてるんだしさ。」
ヘルヘイムに存在する留置所、その部屋に二人の異業種の姿があった。
一人はモモンガであり、待ち合わせ時間になってもやってこない三人を心配している様な仕草を見せる。
そのモモンガに対して言葉を発しているのが、今日の集まりのメンバーの一人、プレイヤーネームはツーヤ・タ・メーヤである。種族は
ツーヤの言葉を聞き、そうですね、とモモンガが返すがソワソワは収まる気配はない、相変わらずの心配性だなとツーヤが思っていると―――
―――すんませーん、遅れたわ。
「!!」
「おっ、やっと来ましたよ。」
謝罪の言葉と共に部屋に二人の異業種が入ってくる。あれ?リーネは?とモモンガは思うが、すぐに気づく、建御雷の大きな体の後ろに小さな体が少し見てとれたからだ、恐らく隠れているのであろう、なぜ隠れる必要があるのか?とモモンガが考えていると。
「くらえぇぇぇーーー!」
隠れていたリーネが急に飛び出してきて、叫び声と共に右手から何かを遠投してきた、物凄い風切り音と共に飛んできた物体が、モモンガの右頬部分を超高速で掠めていき、甲高い音を鳴らし部屋の壁―――モモンガの後方―――に激突する。
「ひゃ!な、何するんだよ!お前!」
唐突に物を投げつけられた事にモモンガが悲鳴を上げている、遅れて来たあげくにこの仕打ちである。
一体この馬鹿げた行動になんの意味があるのかを、目の前の妹分に問いただそうとしようとしたが―――目の前では、指を、チッチッチッという風に鳴らしながら、頭上にやれやれだぜ、と書かれた文字のエフェクトを浮かばせている姿が見えた。
あっ、やべ、ムカつくと、モモンガが思ったのもつかの間。
「【
右手を突き上げ、リーネが叫ぶ、意味の分からない行動にモモンガが困惑していると―――後頭部に凄まじい衝撃が起き、モモンガが前方に吹き飛んだ、そしてそのまま部屋の床に倒れ込む。
「いたずら成功!」
「ぶほっ!モモンガさんが吹っ飛んだ!やるじゃねぇかぁ、ちんちくりん!」
ケラケラ笑うリーネにツーヤが駆け付け、二人でキャッキャッ言っている、その二人とは対照的に建御雷の顔色は悪い。
そして弐式はと言うと―――既に姿は無かった。
「なんだよそのくだらんアイテム!マジうけるわ!」
「くだらなくないですよ、投げても自分の元にまで戻ってくるんです。あまのまさんに作ってもらいました。磁力鉱石(上位)使ったんですよ!」
「ぶほっ!そこそこ貴重な素材!勿体ねぇ!」
ひとしきり騒いだ後に、リーネがモモンガに向き直す、倒れたまま動かないのだ、フレンドなのでダメージは入っていないはずだし、どうしたのだろう?と思い、倒れたままのモモンガに問いかける。
「何してるの?モモンガさん?今日何すんのよ?私早く予定聞きたいんだけど?」
寝てる暇ないよ~と急かす声が聞こえてくる、その言葉を聞き、モモンガが、ゆっくりと立ち上がる、そうゆっくりと。
建御雷は部屋から出る準備をしている。
弐式は帰ってこない。
ツーヤは未だプギャーと笑っている。
「...しろ。」
「えっ?何よ?聞こえないんだけど?」
「そこに正座しろぉぉぉーーー!!」
久しぶりにモモンガに全力で怒られて少しちびりそうになってしまった。
♦
陰気な雰囲気が漂うヘルヘイムのフィールドを四人のプレイヤー達が意気揚々といった風に歩いている、そしてそこから陽気な言葉達が聞こえてくる。
「ビッ、ビビった...。」
「いや、それこっちの台詞だからな?モモンガさん怒らせると怖いんだからやめろよな。」
余りの剣幕にタジタジとなったリーネがそう喋っていると、隣から建御雷がそう言葉を掛けてきた。続いて他のメンバーの言葉も聞こえてくる。
「いやいや、流石はちんちくりん、飽きないわマジで。」
「...ツーヤさんも笑ってたの、ちゃんと見えてましたからね。」
おっとぉ、サーセン、モモンガさん、とツーヤが軽口を叩く、絶対悪いと思ってはいない、ジト目でモモンガが見つめていると。
「っと、たでぇま。こっちは問題なさそうだ、迂回して正解だな、距離は遠くなるが時間はこっちのが間違いなく早い。」
影を縫うようにして突如現れた黒装束を着た存在、弐式がそう喋りかける。お得意の隠密を駆使し迂回路の偵察に出ていたのだ。その結果、何も問題は無いのだと言う。
「おっ、早いな、流石ニシやん、ザ・ニンジャは伊達じゃねぇな。」
「目的の対象に出会うまでは下手に消耗したく無いですからね。多少の雑魚は致しかた無いですが、こっちのが断然良いでしょうね。」
建御雷とモモンガが、そう弐式に喋りかけていく。現在彼らは五人パーティーでボスモンスターの討伐に向かう途中だ、ボスとの戦闘に入る前に無駄にリソースを割きたくはない、アイテムや魔法で隠蔽するという選択肢もあるが、安全な道があるのならそっちに向かえばいいだけだ。MPもアイテムも無限ではないのだから。
「そりゃいいですね、あっちはちょっと雑魚が多すぎる、メンドイったらねぇよまったく。」
「ツーヤさんの言う通りだ、もぐら叩きも良い所だぜ。」
建御雷がもぐら叩きと言うように、近道しようとしたら、その道中にはうざい程の雑魚モンスターがPOPしている、倒しても高頻度でPOPしてくるので余りお勧めはできない、近道せず、もっと周りをくまなく探索してくれ、と言う運営からのいらんお節介なのかも知れない。
「もぐらたたき?」
「ん?ちんちくりん、もぐら叩き知らねぇの?」
「知りません、もぐら?って何ですか?モンスター?」
素朴な疑問がリーネから漏れ出す、子供には余り聞きなれない言葉なのかも知れない。
「もぐら叩きっつーのはな―――」
「ととと、おっ、あった、コイツだよ、コイツがもぐらだ。」
建御雷が喋る前にツーヤが素早くコンソールを開き、ネットの海からもぐらの映像を見つけ出し、ホログラム映像で映し出している。そこには、リアルでは中々拝めないもぐらの姿が鮮明に映し出されている。
その映像を見て、リーネが、へぇ~、これがもぐら?変なの~と言っている。どうやら余り琴線に触れなかったようだ。
「...いやな、確かにそれがもぐらだが、そう言うんじゃなくて―――」
「もぐら叩きってのはだな、コイツの頭をハンマーでぶっ叩くのさ!大昔に流行ったらしいぜ!」
「叩くんですか!?なんて残虐な...異業種を虐めてる人間種と一緒じゃない...」
シュンと萎れたようになる、この生き物はそこまで頑丈そうには見えない、それをハンマーで殴打するなど、リアルの人間達のなんと残虐な事かとリーネが思う。
「そうへこむな、ちんちくりん、もぐら叩きは大丈夫なんだぜ、なんと叩いても死なないんだ、ていうか叩く為に存在していると言ってもいい!」
「えぇ!?死なないんですか!?もぐら恐るべし!」
「しかも一方的に叩かれるだけで反撃してこない!むしろ!叩かれるだけに存在している様なものだ!存在意義とも言える!まぁ、あんま叩きすぎると壊れるらしいが。」
壊れる?発狂でもするのかな?とリーネは思い、そしてこうも思う、本当なのか?とツーヤの言っている事だ、うのみにはできない、確認するには適任の人物が目の前にいるので、ジッと凝視する。
「あ、あぁ?なんだよ?」
「ジ~、本当なんですか?ジ~。」
口でジ~とか言うんじゃねえよ、と言いたくなるがそれは堪え、騙されている妹分に答えを教えてやろうと口を開こうとした―――したが、その後ろでジェスチャーをとる、ツーヤの姿が目に入ってきた。
恐らくは、言わないで!頼んます!と言う所だろうか、その姿を見ていると急に馬鹿らしくなってき、ツーヤの言う通りにしてやろうと、建御雷が喋り出す、実際、程よく隠蔽しているだけで間違った事は言ってはいないのだから。
「まぁ~、ツーヤさんの言う通りだな、もぐら叩きは叩く為のもんだ。」
「うえぇ!本当に?でも建御雷さんがそう言うんならそうなんだ。」
「プギャー!オメェ酷すぎ~!」
ケラケラ笑うツーヤにリーネが謝罪している、酷いのはお前だろ?と言いたくなる。完全に玩具にしている。
そうやって、一しきり下らない会話を楽しんだ後、モモンガから声が掛かった。
「三人共、集中力切れてますよ?まだ道中モンスターはいるんですから、変にダメージを負ったら、遠回りした意味がないでしょ?」
「あっ、ごめんね、モモンガさん。」
「ん~?何言ってんの?モモンガさん?もうモンスター居ないよ?」
へっ?っとモモンガが間抜けな声を出した、続いて他の三人も目を丸くしている、その姿を見ながら、弐式が両手で印を結ぶ、忍者の代表的なポーズだ。
「へっ、俺にかかれば朝飯前だ。影からドロンとお首ちょんぱだぜ!」
その言葉を聞き四人がしばし固まる―――そして。
「マ、マジか...流石ニシやんだぜ...。」
「弐式パイセン、マジパネェっす。」
「いや、ホント...ん?リーネ、そんな言葉どこで覚えてきた!!」
驚愕に彩られた言葉の中に一つ、聞きなれた声から、聞きなれない言葉が聞こえてきた、聞けばツーヤに教えてもらったと言う、本当にあの人は、仲がいいのはいいが、悪い事まで教えないかモモンガは心配になってくる。
「まっ、そういう訳ですよ、モモンガさん。なんで問題なく目的地まで行けますよ、早く行きましょう、また沸いちまう。」
弐式の言葉に四人が頷き、歩を進めていく、目的地はもうすぐだ。
♦
妖怪墓地―――ヘルヘイムでも異色の領域であり、妖怪と言われる日本の代表的な怪異が元にされたモンスターが出没するフィールド、ここはその一角である。
モモンガ達の目的地であり、本日の標的が現れる場所だ。
「着きましたよ、皆さん、周囲に警戒してください。」
モモンガの言葉を聞き四人が臨戦態勢に入る、先程までのお茶らけた雰囲気はもうそこにはない、そこにいるのは一流のプレイヤー達だ。
そして地響きが鳴り響き―――
「はは、早速おでましか、それじゃあ皆さん、戦闘開始ですよ。」
地響きと共に地面が―――墓地が捲りあがる、そして、土砂をまき散らし、地面から巨大な蜘蛛が現れる。
妖怪墓地 エリアボス 【
「【
【
眩い光に包まれ、全員の能力が強化されていく、続いて―――
「【
―――も、土蜘蛛は負の力をまき散らす上に、毒などの状態異常効果を与えるスキルを使用してくるからだ、抵抗力強化は必須だ。
「建御雷さんは前線でヘイトを稼いで下さい、ツーヤさん、タンク要因が居ない以上、建御雷さんの消耗は激しくなる、スキル等で援護防御しつつ、回復に専念してあげて下さい、弐式さんはかく乱を、リーネは今のLVでは常時戦闘はキツイ、隙を見つけ援護しろ!」
「「「「了解!!」」」」
一糸乱れぬ動き、強力な統率者による阿吽の呼吸がそこにはあった、土蜘蛛が負の瘴気をまき散らしながら突進してくる、その正面に見えるのは弐式の姿、最も近かった弐式がヘイトを買い、標的にされている。
「影縫い!」
影を縫いながら瞬間移動を行い、土蜘蛛から距離を取る、衝突するはずであった対象の消失により、土蜘蛛の動きが一瞬だが鈍る―――が、すぐに目標の対象は見つかった、土蜘蛛の右斜め後ろに移動した弐式に、土蜘蛛が再度狙いを定め―――
「レイザーエッジ!」
―――建御雷の斬撃が容赦なく土蜘蛛の胴体に食い込む、よそ見は駄目だぜと言わんばかりだ。
その攻撃でヘイトが建御雷に向き、その隙に弐式が影縫いで瞬時に退散していく、攻撃の隙は作った、お役御免だ。
建御雷にヘイトを向け直した土蜘蛛の口から糸の様な物が射出される、動きを見極め、瞬時に回避したが、それは後方の地面に接触し、その糸に吸い寄せられるかの如く高速で土蜘蛛が空中を駆けながらこちらに迫ってきている。
「
高速で迫る土蜘蛛の正面に巨大な石の壁が現れ土蜘蛛が衝突する、ツーヤからの援護魔法だ、鈍い音が鳴り響く。
障害物の出現により動きを止めた土蜘蛛の体から瘴気が再度溢れ出す、そして、赤黒く発光しだした。
「!ちっ、
周囲一帯を煉獄の瘴気で包み込み、焼き尽くす土蜘蛛のスキル、盲目や、人間種なら呼吸困難のバッドステータスも付与される嫌味なスキル、だが―――
「
―――発動する事はなかった。
モモンガが放ったマジックアローが、白い軌道を描きながら土蜘蛛に刺さる、一時的に位階を上昇させ、煉獄瘴気の発動のタイミングに合わせる事でスキルの発動をキャンセルさせる事に成功する。
土蜘蛛のヘイトは以前建御雷に向いている、そうでなくては困る、その為の―――ヘイト管理の為の、低位階魔法なのだから。
「足殺し。」
黒い短剣が上空から降り注ぎ土蜘蛛の足に突き刺さる、スキルを発動させたのは弐式だ、退散した際上空に舞い、スキルを用いて隠れ、機を狙っていた―――足止めの機を。
足殺しにより鈍足が付与され、一時的にだが土蜘蛛の機動力が低下する、畳みかけるかの如く、建御雷からスキルが発動された。
「四方八方!!」
周囲を覆う斬撃が襲う、そして最終攻撃は下段からの振り上げ、着弾点は土蜘蛛の喉元付近だ、叩き上げられた斬撃が土蜘蛛の体を後方に大きく仰け反らせ―――
「羅刹!」
建御雷とツーヤの隙間を、まるでミサイルの様にして突っ切ってきたリーネによるスキルが胴体にクリティカルヒットする、LV補正でダメージは減少しているが強力な一撃には変わりない、してやったりと悦に入っていると―――
―――土蜘蛛の複数の手が、まるで刃の様に変貌し、リーネを覆いつくさんと迫ってきていてた。
「馬鹿!油断すんな!」
「あっ...。」
建御雷の怒号が響く、とっさにカバーに回ろうとしたが、その必要はない、なぜなら既にリーネの前方には一人の男が立っているからだ―――
「なぁに、やってんの、ちんちくりん。」
―――ツーヤが。
リーネを庇う様にして、入り込んできたツーヤに土蜘蛛の手の刃が襲いかかる。
そしてツーヤを包み込み―――全ての腕が弾け飛んだ。
「不浄衝撃盾!!」
手が覆われた瞬間、ツーヤの周りに赤黒い衝撃が発せられ、覆われた手をふき飛ばしていく。
その光景を見て、我に返ったリーネが後方に退避し、それと同時にツーヤも同じく後方に飛びあがり退避していく、その際に、ついでと言わんばかりに追撃のスキルを発動させた。
「清浄投擲槍!!」
白銀の戦槍が土蜘蛛に高速で飛んでいく、MP消費により必中の効果を得た戦槍が突き刺さる。
「あ、ありがとうございます、ツーヤさん。」
「そんなの後々、建御雷さんがヘイト稼いだら体制を整えるぞ!」
その言葉を聞き、リーネから了解の意が聞こえてくる、その言葉に続いてモモンガからも全員に指示が飛んでくる。
「皆さん、少し危険でしたが、リカバリーは済みました、イージーミスを繰り返さないよう、このまま慎重に進めていきましょう。」
メンバーから、了解の意が聞こえてくる、そして、じわじわと土蜘蛛を追い詰めていった。
♦
あれからこれと言ったミスもなく、チームで連携し土蜘蛛を終始圧倒していく、そして。
「
建御雷が放った特大のスキルにより、建御雷の後方に大威徳明王が出現する、そして、その手に持つ巨大なこん棒で土蜘蛛を殴り倒した。
「今が決め時じゃない?ノリノリでやっちゃって、モモンガさん!」
リーネが振り向き、言葉を発したその先―――モモンガの周囲には青白い光のドーム状の魔方陣が展開されている、幾多の文字が浮かび、また消失する、目まぐるしく変貌を遂げる様は幻想を思わせた。
「あぁ、最高のタイミングだな、流石は俺の仲間達―――」
―――【ナインズ・オウン・ゴール】だ。
その言葉の後、魔方陣の発光がより強くなり―――視界が白く染め上げられた。
【超位魔法
超高熱原体によって生じた熱波が周囲を覆いつくし、全てを焼き尽くしていく、その熱波は土蜘蛛を覆い、それが決め手となり、土蜘蛛は光の粒子となり消滅していった。
「うひー、超位魔法えげつな、発動まで時間かかるだけあるわ。」
「流石、モモンガさん!キャー、カッコイイー!」
フライで空中に陣取っていたモモンガが、地面に着地するために高度を下げてきていると、隣から黄色い声が飛び交っている―――一人はおっさんだが―――相変わらずの馬鹿二人だが、勝利での高揚感が、モモンガの感情をむくむくと高ぶらせる。
「ふっ、当然だ!」
その言葉と共にモモンガが仰々しい素振りで右手を振るう、そしてその振るった右手を形作り、顔正面を手のひらで覆った。
「俺は、ナインズ・オウン・ゴールのモモンガ!敗北はありえない!」
モッモッンガッ!モッモッンガッ!と馬鹿二人が踊り出し、尚もはしゃぎだす、リアルなら、こんな恥ずかしい行為はできないだろう、しかし、ユグドラシルなら別だ、こういう恥ずかしい行為も醍醐味の一つなのだから。
その馬鹿二人の奇行を見ながら、それに踊らされるモモンガを、残る二人―――建御雷と弐式が見つめている、そして、モモンガさんって、やっぱ中二病だよなと、二人で目くばせをし合った。
「っと、まぁ、馬鹿はこれくらいにして、皆さんお疲れ様でした、報酬は山分けという事で行きませんか?」
「あぁ、勿論さ、モモンガさん、レアドロしてりゃいいけどな。」
「五人だと中々歯ごたえあるな、建やん、でも、久しぶりに九人集まりたいね。」
【
残るメンバーの事を思い、モモンガが考えを巡らせていると、後ろでは、尚もはしゃぎ続ける二人の声が聞こえてくる、流石に少しうっとうしく思ってきたので、モモンガが後ろに振り向いた。
「うしし、いくぜ、ちんちくりん、派手にかまそうぜ!」
「実は私、こんな事もあろうかと、在庫を沢山用意しているんです!」
二人の手には、あるアイテム、ロケットの様なアイテムが握られていた。
【ロケット爆弾】、派手なエフェクトと効果音で雰囲気を高めるお遊びアイテムである、プレイヤーにぶつけるとダメージは大した事はないが盛大な吹き飛ばしの効果を与える、二人がそのアイテムを上方に掲げ―――
「YAーーHAーー!!」
「た~まや~!!」
―――上空に派手に打ち上げた。
上空に派手なエフェクトが炸裂し、轟音が鳴り響く、続いて尚も発射されていく、二発、三発と、その光景はまるで花火でも見ているかの様だった。
「はぁ、まったく、せわしない二人だ。」
「ははは、良いんじゃねぇか?モモンガさん、ああいうのも。」
「
勝利を祝うかのような爆発、それにつられて、弐式も変なテンションで影縫いを使い空中を飛び跳ねだした。まぁ、こういうのもありだな、とモモンガが爆発を花火を見るかのように見上げていると。
「YAーーHAーー♪どんどんいこうぜぇ~♪」
「両手にロケット♪六連発ですよ~―――って、うわぁ!」
はしゃぎ巻くっていた二人―――ツーヤとリーネであるが、リーネが両手に六つのロケット爆弾を持ち、構えていた所、叫びながら回転していたツーヤの右手が、後頭部付近に激突し、そのまま前方に倒れ込む、そして、そのままロケット爆弾は発射され、飛んでいく―――
「YA――あっ。」
「あっ。」
「ん?」
―――モモンガの方向へ、六つのロケット爆弾が飛んでいく。
あぎゃあぁぁぁぁぁ~~~~!!ロケット爆弾の衝突により、モモンガが上空に吹き飛ばされ、モモンガ花火となり、空を彩った。
♦
ボスモンスターの討伐も終え、留置所に戻ってきたメンバーの姿が見える、見えると言っても、人数は先程よりも少ない、もう良い時間である、メンバーも各々ログアウトしていったのであろう、今居るのは三人だけだ。
「今日は災難でしたねモモンガさん、そんじゃ、俺も、ボチボチあがるとしますかね、そんじゃ、お疲れ様です。」
「えぇ、建御雷さん、お疲れ様です。」
「お疲れ様です!また遊びましょうね!」
労いの言葉を聞きながら、建御雷がログアウトしていく、残ったのはモモンガとリーネの二人だ。
「災難だったね、モモンガさん。」
「誰のせいだ!誰の!」
最後のは私の所為じゃないし~、と言いながらリーネが口笛を吹いている、本当にコイツは、と言う思いも込みあげてくるが、なんだかんだ、それを楽しんでいる自分も居る事は事実である、なので今回は大目に見る事にする。
「まったく、それじゃあ、俺もログアウトするが...たまにはすぐに帰るんだぞ?お母さんが心配するぞ?」
「ん?あぁ、大丈夫よ、モモンガさん帰ったら、私もすぐログアウトするから。」
そうか?それじゃあな。そう言いモモンガの姿が消えていった。
「...まっ、私まだ帰れないんだけどね、後二日あるし。」
周期までは、後二日ある、帰ろうにも帰れない、皆はリアルに帰れるが、リーネは違うのだから。
「リアルってどんな所なんだろ?話聞く限り、地獄みたいな所よね、皆大丈夫かな?心配...。」
もう、ユグドラシルに入り込み出して、一年以上経つ、それなりの事は分かってきているつもりだが、リアルは上手く想像はできない、とんでもなくヤバい場所くらいにしか認識できてはいないのだ。
「遊びの為だけに、世界作っちゃう様な所だしね、意味分かんないよね、リアルって、怖すぎ。」
ユグドラシルはゲームだ、そして、ゲームとは娯楽である、つまりは、リアルの人間達は遊びの為に、このような世界を作り上げてしまっているのである。
電子で出来た空間だ、世界創造などとは比べてはいけないだろう、しかし、リーネは、だから何?と思う、どちらにしろ、これほど広大で、精密な空間を作り上げている事は事実であるし、それを、人間の手で行っている事には、畏怖の念しか沸いてこない。
異世界人のリーネにとって、それは世界創造となんら変わらない、スケールが自分の世界と余りにも違い過ぎるのだから。
「でも、リアルには魔法とかないんだよね?じゃあ私の世界も凄い?でもその魔法もユグドラシルの魔法っぽいし...やっぱり、リアルヤバすぎ、怖すぎ。」
この一年で色々な事を知った、母から自分の生い立ちも少しは聞かせて貰えたが、話す姿が辛そうだったので余り聞けなかった、しかしその中に少し出たのだ、神々の話が、八欲王の話が、
プレイヤー、ユグドラシルプレイヤーとは無関係だとはどうしても思えない、自分達の世界に蔓延する魔法は、【位階魔法】、そして、明らかにユグドラシルと一緒のモンスターも数多く出現し、特徴も、強さも、近い物が多い。
「エルダーリッチとか、スケリトルドラゴンとかモロだよね?難度66とか、良く分かんないけど、LVの三倍にすればいいんでしょ?エルダーリッチ、22LVだし。」
自分の世界では、LVと言う言葉で強さは表さない、難度と言う括りで呼ばれている、色々な―――ユグドラシル産らしきモンスターで考えてみた所、大体LVの三倍という所で落ち着く。
「絶対何か関係あるよね?私がこっちに
ユグドラシルと自分の元の世界、無関係では間違いなくないだろう、しかし、現状それくらいしか分からない、これ以上考えても無駄だろう、頭も痛くなってきた、今日はもう休んだ方が良いと思い、就寝の準備をする。
「頭痛くなってきたし寝よ、明日も平日かぁ、はぁ、皆IN遅いんだろうな...、一人で何するか考えなくちゃ。」
そう一人ごち、就寝する、明日の予定を考えながら。
ツーヤ「なんかよ~、昨日夢で俺がロリっ子ヴァンパイアになっててさぁ、ありんすありんす言ってんの、ビビッて飛び起きたわ。」
リーネ「うひゃー、気持ち悪いですぅぅぅーーー!」
ちひろ 「モモンガ!たっち!建やん!ニシやん!ツーヤ!あまのま!フラット!エンシェント・ワン!リーネ!全員で、ナインズオウンゴール!だからウィッシュⅢお前は切り捨てだ」
ウィッシュⅢ「ファ〇ク!」
オリジナルアイテム・技
・ロケット爆弾 ロケット花火みたいな奴、当たったら吹き飛ぶ。
・マグネットダガ― 自分に磁力で戻ってくる、結構な勢い。転移世界なら凄く強そう。
・秘儀死んだふり 死んだふりをする。
・豪熱爆砕砲 ちひろはすぐこういう事をします。どうか嫌いにならないで。
ハイブリッド・アンティリーネ
LV69 前衛特化 次のクラス迷走中
最近はまっているアイテム ロケット爆弾。