あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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前回のあらすじ

モモンガさんロケット爆弾の餌食になる。


※今回も捏造沢山&アンティリーネちゃんがどんどんヤバい方向へ...?


びゃっこが欲しい

 

 

 

 

##東の空は暗雲立ち込め、豪雨轟雷が巻き起こる##

 

 

##北の山は轟音を上げ、地響きと共に山が動き出した##

 

 

「.........。」

 

 

##南の地平線に浮かぶ暁の空が更に赤さを増していき##

 

 

##西の彼方から白き閃光が絵画を描くかの如く駆け巡っていく##

 

 

「......欲しい...。」

 

 

##遥か神話の時代からこの世に降臨せし四体の四聖の神々##

 

 

「......ほじい...。」

 

 

##まだ見ぬ力が!君を後押しする!!##

 

 

##ペットモンスターガチャ!騎乗セレクション!!四聖獣イベント開催中!!!##

 

 

「......ほじぃぃ~...。」

 

 

##君は四聖を手名付ける事が出来るか!!##

 

 

「......ほしぃぃ~!!」

 

 

 

 

 

 

 第  十  話 「 ―――

 

 

 

 

 

 

 

「ほしぃぃぃぃーーー―――

 

 

 

 

 

 

 

――― びゃっこが欲しい 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「課金したい...。」

 

 

部屋の中央の椅子に座り、大きなホログラム映像を見ていたリーネがそう一人ごちた。

 

 

映されていた映像は、ユグドラシルの課金ガチャの―――ペットモンスター専用の―――PVであり、最近実装された期間限定のイベント四聖獣コラボガチャの映像だ。

 

 

東の青龍、北の玄武、南の朱雀、西の白虎からなる四体のモンスター、しかも騎乗可能なペットであり、現在ユグドラシル内では大きな賑わいを見せている真っただ中である。

 

 

しかしこのイベントは課金と書かれているだけに、リアルマネーが必要であり、また、確率も非常に低く、莫大な金額が必要となる。

 

 

運が良ければすぐに出るだろうが、簡単には手をだせそうもないイベントである。

 

 

しかし今リーネが頭を悩ませているのは、この金額の事ではなくリアルマネーの問題だ。

 

 

「課金コイン買えない...リアルマネーなんてないよ。私、リアルの人間じゃないし...。」

 

 

リーネは元々別の世界からの来訪者だ、リアルにいない以上、課金などできるはずもない。意気消沈しながらリーネがコンソールを開き、ある部分を凝視している。

 

 

そこには0コインと書かれ、その隣にコイン購入と書かれた文字が見てとれた。

 

 

指が無意識に購入ボタンに向かい、そして押していく。

 

 

続いてエラー音がなり響き、カード番号を入力してください、と声が聞こえてきた。

 

 

リーネは押す、何度も押す、その度にエラー音が鳴り響き―――

 

 

「んがぁーーー!くぅ、くうずがぁぁーーー!」

 

 

できもしない事を延々繰り返し、一人ブチ切れる哀れな少女の姿がその空間にはあった。

 

 

この行動は一度だけではない、この一年間、何度繰り返したか分からない、そしてその度虚しく吠えるのがテンプレである。

 

 

欲しい欲しい~、びゃっこ~と、ひとしきり暴れていると―――

 

 

―――ポーンというアナウンスと共に、一人の人物がINしてきた。

 

 

「ちゃおッス。おっ、やっぱいるわ。この廃人が...何しとるん?」

 

 

姿を表したのは、ヴァンパイアの神官戦士ツーヤ、INするやいなや、眼前に駄々っ子がいるのである。

 

 

この反応は至極当然と言えるだろう。

 

 

「白虎が欲しいですぅーー!」

 

 

「ん?あぁ、ガチャイベか。確率エグイらしいぜ?流石は糞運営、絞る事しか頭にないのかね。」

 

 

運営に対し特大の罵声をツーヤが浴びせていく。自分達プレイヤーは消費者側であり、その金でゲームが運営されている事は重々承知だが、ここまで低確率にされると流石に腹も立つという物だ。

 

 

運営も、もう少し金銭的な配慮をして欲しい物だと。

 

 

「てーかさ、何で白虎な訳?普通欲しがるの青龍じゃね?」

 

 

「だって、白虎さんカッコイイんだもん!青龍なんて只の蛇じゃないですか。」

 

 

聞く人によっては喧嘩に発展しそうな言葉を吐きだす相手にツーヤが苦笑いをしている。

 

 

流石に蛇はあんまりだろ、ドラゴンに対してもトカゲと言うし、前々から思っていたが、コイツは結構毒舌なのではなかろうか?と言う言葉が脳裏に浮かんできた。

 

 

「理由そんだけ?明らかに青龍のが強いぞ?ていうか青龍以外弱いしな。朱雀は...まぁ、使えん事も無いが...うん、いらねぇな。」

 

 

四聖獣―――四体からなる課金モンスターであり、そのLVは揃って100LVだ。

 

 

四体共に、それぞれ特徴を持っており、個々の強さも変わってくる。

 

 

その中でも、青龍は段違いの強さだ、口からは強大な熱線を吐き出し、ブレスと銘打っているが、もはやレーザービームである、直線状ではあるが効果範囲も広く、首を振りながら全てを薙倒していく様は正に神話の怪獣を彷彿させる。

 

 

それに加え、豊富な魔法も揃えており、スキルも超範囲攻撃から自身の身体強化までこなしていく隙の無さだ。

 

 

その強さは神器級の装備で身を包んだ100LVのガチプレイヤーですらうざがる程である。

 

 

そして、ガチャ確率も他の三体と比べても途方もなく低い、噂では三十万ぶち込んでも出なかったという話も聞こえてきた程だ。

 

 

そして白虎―――その速度は恐らく、ユグドラシルのモンスターで最も速いと言われている―――ボスなどの特殊な者は外す―――しかし、逆を言えばそれだけであり、攻撃力も低く、多少の魔法も使えるが、余り有用な物も無い、スキルも同様である、故に、100LVのプレイヤー戦においては大した活躍はできないであろうと思われる。

 

 

四聖の中では最も不遇な扱いを受けているペットであるが、その見た目は雄々しくカッコイイ。

 

 

騎乗という点だけで見てしまえば、速度、小回り、と共に優秀であり、機動力だけ見れば最高峰に位置するだろう。

 

 

「はぁ~、ツーヤさんは浪漫がありませんね~。可愛い私が白い虎に乗って駆け巡る様は非常に絵になると思いませんか?」

 

 

「なに言ってんの?このちんちくりん?ガチビルド目指してる奴が、浪漫とか。」

 

 

課金すんなら、まず指輪付けれるようにしろよな、と反論しづらい言葉を返され、リーネが押し黙る。

 

 

そして、正論言うんじゃねぇよ、と言いたくなるが頑張って言葉を飲み込んだ。

 

 

「まぁ、課金の件は置いといてだ。今日はお前だけか?」

 

 

「皆用事があるらしいですよ?今日は二人かもです。」

 

 

その言葉を聞き、あっそ、とツーヤが呟く、続いて二人で本日の予定の組み込みを行っていく、ユグドラシルでの一日の―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹きすさぶ風に乗って、酷く冷たい空気が流れてくる。

 

 

これは季節的な物ではなく、場所的な物であろう。辺り一面に広がる木々達、その隙間から先を除くと大きな山脈が目につく。

 

 

ここはアゼルリシア山脈付近の森林地帯であり、その中にある大きな丘の上である。

 

 

その丘付近―――非常に広い場所―――では、多くの人間達が動き回っている様が見てとれた。

 

 

皆一様に統一された装備を身に着けており、精強な軍隊を思わせる統率された動きは明らかに村民などではないだろう。

 

 

「物資はそこに運び込め、お前たちは見張りの交代に行くんだ、警戒は怠るなよ。医療班はケガ人を、重症者には優先してポーションを配るんだ。」

 

 

「ウズルス部隊長、お疲れ様です。」

 

 

「!!?これは、ファーイン様、労いの言葉、痛み入ります。」

 

 

部隊長と呼ばれた男が声の主、ファーインに対して感謝の意を示す。

 

 

ここはスレイン法国の軍が拠点としている場であり、この男がこの部隊の指揮官を務めている、バルマー・アルス・ウズルス部隊長である。

 

 

法国の軍が、なぜこんな所で拠点を築いているのかと言うと、現在、アゼルリシア山脈において、二つの勢力が覇権を巡り争っている事による余波により、生存圏を奪われた者達が、居場所を求め人類圏に侵入してきている為だ。

 

 

放置する事などできる筈もなく、こうして間引きしている状態だ。

 

 

「感謝など不要ですよ?私は何もしていないのですごく心苦しいです。」

 

 

「ファーイン様はこの戦の要、ここぞと言う時まで控えておいてもらわねば。」

 

 

「...そうですね、ウズルス部隊長の言う通りです...しかし、ここまで状況が悪くなるとは...予定よりは、一年程は早いですね。」

 

 

ウズルスの放った言葉【戦の要】、その言葉の通り、この戦は片方の勢力に打撃を与え、その勢力の力を削ぐ事にある。

 

 

その為のファーイン―――神人である。

 

 

先程のファーインの言葉の通り、想像以上に戦いが激化した為に、急遽作戦を実行に移す事を迫られているのである。

 

 

ウズルスとファーインが深刻な表情をみせ会話していると―――

 

 

「お母さ~ん。」

 

 

―――まだ幼さの残る子供の声が聞こえてき、二人が声の方向に振り向いた。

 

 

「ここでは、お母さんと呼んではいけないと言っているでしょう?ここは戦場です。遊びではないのですよ?」

 

 

「あっ。ごめんなさい。えっと、ファーイン様!」

 

 

それでよし、とファーインが娘、アンティリーネに喋りかける。この一年で母との和解も随分進んだようだ、今ではこうして、戦場で兵士の見習いをやらせてもらえる程には。

 

 

娘はこう言ってきた、お母さんの力になりたいと、その言葉には覚悟が垣間見えたからだ、娘の覚悟を無下にはしたくは無いが、危険であるのも事実だ―――竜王に察知される危険性、法国上層部に感づかれる危険性の両方がある。

 

 

それ故に、神人の力は使わせる事はできない、あくまで才能の無い一般兵士を演じるように口を酸っぱくして言っている―――が、正直信用できない。

 

 

その為、極力自分の目に届く範囲に置いている、この馬鹿娘は余りにも常識が無さすぎる、一人で放っておけば何をするか分かった物じゃないからだ、これが急に力を覚醒させてしまった子供の姿なのだろうと、ファーインが一つ溜息を漏らした。

 

 

それでも、これから先、ずっとは付いていてはあげれないかも知れない、後は心変わりを期待するだけだ、戦いの道以外に進む事への、言いくるめたい所であるが、どうにも強く言えない自分が居る、本当に親馬鹿な事だと呆れが漏れた。

 

 

思考の海から浮上してきたファーインが、リーネに荷物の運搬を命令している。その命を受け、リーネが物資運搬係の元まで駆けていくのを見送った。

 

 

ここでは、母と娘ではない、上官と部下である、命令は絶対なのだ。

 

 

「お子様ですか、非常に可愛らしい子ですね。」

 

 

おや?とファーインが疑問を抱く、ここは法国の軍、つまりはウズルスも法国民である。法国は人間史上主義を掲げている国家だ、エルフとて人間種ではあるが軽蔑の眼差しを向けてもおかしくはないだろう。

 

 

特にエルフとは例の一件以来戦線が開かれた、なのにこの男からは娘を見ても嫌悪感を感じた様子は見えない。隠しているという線は薄いだろう、ファーインの―――神人の感覚は誤魔化せない。

 

 

「?どうされました?」

 

 

「いえ、ウズルス部隊長は非常に大きな懐をお持ちの様で。」

 

 

「...あぁ、そういう事ですか。私は余り気にしません。手を取り合えたらいいなと思う程です。しかし弟達は違うようでして...私がおかしいのですよ、きっと。」

 

 

ウズルスは四兄弟の長男であり弟が三人いる、そしてその三人共、人間以外は認めないという思考の持ち主達だ。だから言うのだ、自分だけ法国民らしくはないと。

 

 

「...部下の中にも、表情には出しませんが、面白く思ってない者達もいるでしょう。本当に申しわ―――」

 

 

「謝らないで下さい、覚悟の上連れて来ています。本人もそうです。」

 

 

当人達にそう言われれば、ウズルスとて黙るほかないであろう。少し気まずい雰囲気になってしまった、ここは話題を変えるべきだと判断し、言葉を投げかけた。

 

 

「状況は激しさを増してきています。近々作戦も本格的に開始されるでしょう。」

 

 

「そうですね、早ければ後一か月後には作戦が開始されるでしょうね。それまでは打ち漏らしに注意しつつ、【陽光聖典】を主軸に間引きを継続して行って下さい。」

 

 

「了解致しました。」

 

 

辺りの風景も沈んで行っている。今日もまた長い夜がやってくるであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、今日も頑張ったわね。」

 

 

拠点の天幕の中で、ファーインがリーネに対して労いの言葉をかけていく。当の本人は全く持って疲れてはいないのだが、母からの優しい言葉が聞けるのだ、黙っていた方が良いに決まっている。

 

 

もうここに来てから、二週間程は経つであろうか、家に帰れないのは少し寂しいが、大好きな母と居れるのだからいくらでも我慢できる。しかも今日は例の日なのだ。

 

 

既にわくわくが止まらない、今週は何をしようかとリーネが考えていると。

 

 

「そう言えば、お給料よ。こんな所で渡す必要もないのだけど、あれだったらお母さんが預かっておくわよ?」

 

 

「うぇぇ?お給料?見せて見せて!」

 

 

ファーインの手に握られた小袋を受け取り、中身を確認していく、中からは五枚の金貨が出てくる。過剰だ、余りにも多い、兵士見習い如きが貰える金額ではないだろう。

 

 

しかし、これは大部分がファーインのお金だ、つまりはお小遣いを上げているに過ぎない、お小遣いだとしても過剰であるが、今まで辛い思いをさせ、また自分も心を押し殺していた為、堪っていた親馬鹿が爆発している状態だ。

 

 

無論給料などこんな所で貰える筈もなく、ここで見せたのも娘の喜ぶ顔が見たいが為だったりする。

 

 

「わわわ...き、金貨だ、これが労働の対価か。」

 

 

「どこで覚えてきたの?そんな言葉?」

 

 

んぇ!いやなんか兵士の人が~などと、苦しい言い訳をリーネがする。いつも社畜共に囲まれている為、ふいにこういう言葉を口走ってしまうのだ。おっさん共と遊んでるなど口が裂けても言えないであろう。

 

 

「そう、変な言葉は教えないように少し言っておかなくちゃね。それで、どうするの?預かっておこうか?」

 

 

すまぬ!一般兵士の人達よ、犠牲となってくれ!などと酷い事を考えながら、貰った給料―――金貨に向き直る、そしてこう思う、初めての給料だ自分で持っておきたいと、なので、母にそう伝えていく。

 

 

「ううん、自分で持っておくよ。嬉しいから。」

 

 

「そう?ふふふ、なくしちゃ駄目よ?それじゃ、明日も早いからね、お休みなさい。」

 

 

そう言葉を残しファーインが部屋から退出していった。今からが楽しい時間の始まりだ、寝具に横になり、貰った金貨を三枚程手に持ちながらリーネがにやにやしている。余程うれしかったのであろう、キラキラと光る金貨を楽しそうに見つめている。

 

 

「あ~、眠くなってきた。今週は何をしようかな...このお金も持っていけたらいいのに...そしたら...コイン買える...かな...。」

 

 

金貨を握りしめたまま、眠りに付く、そして移動が始まっていく、歪みに飲み込まれリーネが他世界に移動した―――

 

 

―――金貨を握り締めたまま...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!!」

 

 

そう大きな声を上げ、正に飛び起きると言う表現が相応しいかの様に、リーネが目を覚ましベッドから体を起こす。続いてガンっと頭痛がやって来た、急に飛び起きるからこんな事になるのであろう。

 

 

そして、辺りを見渡すが誰も居る気配はない、見渡した後に、一人寂しく起床後の背伸びをし、少しの寂しさと共にこうも思う、いつも道理だと。

 

 

「う~ん、この訳の分かんない現象も、もう慣れた物ね。皆は今日来れるのかな?平日だし、夕方からINして来る?」

 

 

謎の現象に対する恐怖など、もはや微塵も感じさせる事無くそう独り言を呟いた。もうこの現象に陥ってから、一年経つのだ、慣れっこである。

 

 

この世界の―――リアルの言葉の意味も大体理解した。今日は平日であり、社会人の仲間達は仕事の真っただ中、INは終業後になるであろう、つまりは夕方以降だと思われる。

 

 

「たまには有給くらい使えばいいのにね~、ブラック企業は世知辛いわね。」

 

 

子供の発する言葉の内容とはとても思えない、リーネは既に13歳である為リアルで言えば既に働いていても可笑しくはないのであるが、それでもまだ子供と言えるだろう、社会に揉まれ、くたびれ果てた大人達が言いそうな内容を口に出す様は、非常に違和感があった。

 

 

これは社会人の―――社畜のおっさん共といつも一緒に遊んでいるが為の弊害であろう。

 

 

「皆がINしてくるまで何しようかな?いたずらの準備でもする?モモンガさんにはこの前凄く怒られたから怖いな。ツーヤさんの頭にロケット爆弾でも食らわせようかな~、建やんはなんか怖いし、ニシやんには当たんなそうだし。」

 

 

リーネは、一人でいるときは建御雷は建やん、弐式炎雷はニシやんと呼んでいる。二人共、お互いをそう呼称している為だ。

 

 

リーネも呼びたいが、まだなんとなく気が引ける、もっと時間を重ね、深い仲になれば呼べるかもしれないが今はまだ及び腰だ。生意気なガキと思われ嫌われたくは無い、二人共大事な仲間なのだ。

 

 

ずっと一緒に居たいと思える程の。

 

 

「よし!それがいいよね!ツーヤさんなら、いたずらしてもプギャーって笑ってくれそうだし!場所は暗闇の沼地で~、プププ、捕食型スライム(ウボ=サスラ)の群れの中に吹き飛ばしてやるんだから~。」

 

 

ねちょねちょにしてやるぞ~と謎に意気込みながら、リーネがコンソールを開きロケット爆弾の在庫を調べだす、確かまだ大量に持っていた筈だ、どうせなら数百と使い盛大に吹き飛ばしてやろうと思いながら、コンソールのアイテム欄を見ようとした。

 

 

そして気づく、いつもと違う数字が目に入る。

 

 

「あれ?課金コインの数字が増えてる...えっ...?18万コイン?えっ?えぇ!?」

 

 

リーネが目を見開き―――ゲームなので表情は動かないが―――驚きの悲鳴を上げる。続いて、なぜ?と言う疑問が押し寄せてくる、自分はリアルの人間ではないし、リアルマネーなど持ってもいないし、使用する事も出来ない筈だ、本当にこれは増えているのだろうか?バグじゃないの?これ?と一人結論を急いでいると、頭の中に一つの考えが浮かび上がる。

 

 

「...もしかして、金貨?寝る前いじってた記憶あるし、そうよ!私、持っていきたいって思ったもん!」

 

 

一つの答えに行きついた、それ以外に考えられないと、しかし、なぜ自分の世界の通貨がこの世界の―――ユグドラシルの通貨に変わったのだろうと再度混乱が押し寄せてくる、脳内を混乱が圧迫していく。

 

 

「意味わかんない、えっ?どういう事?私の世界のお金を、この世界の価値に合わせたって事?...はっ!これが私の真の力、置き換える能力!す、凄い...って、そんな訳ないでしょー!あぁ~意味わかんないわ~!」

 

 

延々と独り言、もはや叫び声に近い物を吐き出しながら混乱の坩堝に陥っていく、そしてまじまじとその数字を凝視していき―――意を決したかの様に一つの行動をとりだす。使ってみれば分かるよねと。

 

 

「使えれば本物だよね?大丈夫よね...BANされたりしないよね?されたら私消滅するのかな?」

 

 

恐る恐るリーネが課金の項目に指を持っていく、試す項目はすでに決まっている。

 

 

そう、課金ガチャ、それもペットガチャだ。震える指でボタンを押すと―――

 

 

―――ポンという効果音の元、目の前の画面が切り替わり、球体の箱の中にボールのような物が沢山入った映像が流れだす。

 

 

ボールがコロコロと中で暴れまわり、箱の中から一つボールが、ポトンという風に転げ落ちた、落ちたボールが光を上げ開き―――

 

 

―――【雷の飛竜<ライトニング・ワイバーン>】と書かれた文字と共に、青い肌の飛竜の姿が映し出される。

 

 

このモンスターは騎乗用ペットの一匹で、ユグドラシル金貨を使用しての傭兵モンスターなどでは決して手に入らない、課金専用モンスターだ。

 

 

LVは60で速度が速く、また直線上に超遠距離まで効果を及ぼす雷のブレスを吐く事ができ、非常に強力ではあるが、小回りがかなり悪く騎乗という点で見てしまえば余り使いがっては良くはないであろう。

 

 

正直に言ってしまえば微妙だ、しかし外れかと言われれば少し首を掲げる。一応は当たりなのであろうか?そう、当たりなのであろうか、その言葉が意味する事は。

 

 

「はは...出た...。コインが17万9500コインになってる。はは...。」

 

 

フヒヒヒヒヒと不気味な笑いを起こしながら、リーネはまたボタンを押す。

 

 

すると、モンスターの映像と名前が表示され、課金ガチャクリスタルが出現する。そして再度押す、押していく。指は止まらない。不気味な笑いは止まない、それ所か一層激しく聞こえてくる。

 

 

押す、外れ。押す、外れ。押す、外れ。押す、少し当たり、押す、外れ、ボタンを押す指は留まる事を知らない、徐々に押す速度も増していく。

 

 

それに比例して課金コインも見る見るうちに減少していく、16万、15万、14万。堕ちていく、リーネは堕ちていく、深淵に、底なし沼に、そう―――

 

 

―――課金の沼に。

 

 

そして、一際輝く―――虹色に―――ガチャクリスタルが派手な効果音と共に出現していく、先程までは先に映像と名前が現れていた物だが、今回は少し雰囲気が違う。なんというか思わせぶりな雰囲気である。

 

 

これは来たか?とリーネが思い名前と映像の開示を行うと。

 

 

―――【古竜<ドラゴン>】―――という表示の元周囲が眩いまでの虹色に包まれた。このモンスターはペットガチャの大当たりモンスターでありそのLVは90に迫る、ドラゴンと言う最強種である為に90LVでありながらも破格の戦闘能力を有している。

 

 

大当たりペットの出現にたいしリーネは―――

 

 

「いらないわよぉぉぉぉーーー!!思わせぶりに出てこないでよ!期待したじゃない!私は白虎が欲しいの!トカゲさんはいらないの!」

 

 

目的の白虎が出ずに怒り心頭である、ドラゴンの方が強そうな物だが狙いは白虎だ、哀れなりドラゴン。

 

 

憤慨しながらも再度ボタンを押していく、何度も、何度も、糞運営の思惑に飲まれていく、ガチャと言う名の悪意に―――そして

 

 

「!!?に、虹色だ...。」

 

 

二度目の虹色、開示に躊躇が生じる、指が震える。

 

 

少しの硬直の後、意を決してボタンを押す、そして―――

 

 

―――その直後、パオンという効果音の元、画面が暗転―――ブラックアウトした。

 

 

「わっ!?こ、壊れた!?」

 

 

ボタンの押しすぎか?そう思った次の瞬間、ゆっくりと映像が映し出されていき、地平線の彼方から白い閃光が縦横無尽に駆け巡り、こちらに近づいてくる様が流れてくる。閃光は徐々にこちらに近づいていき、最後に画面にぶつかり再度暗転する。

 

 

また壊れた?そう思っていると、真っ暗な画面に白い文字で【ボタンを押して下さい】と言う文字が突如出現した。

 

 

もう何が何やらという風に投げやりにリーネがボタンを押していく。

 

 

―――ドゥルルン♪―――

 

 

甲高く、それでいて頭に残りそうな、脳内麻薬が分泌されそうな音が鳴り響き。

 

 

―――テレレ、テレレ、テレレ、テレレ、テッテレテッテレッテッテレレー♪―――

 

 

派手過ぎず、しかしどこか虜にされそうな、また聞きたくなる様な音色を奏でながら、画面に、白い体毛をした雄々しい虎が映し出された。

 

 

その神々しい姿の下には、こう文字が綴られている―――【白虎】と。

 

 

四聖の、四体の神の一角―――【GOD】の降臨だ。

 

 

「!!?でたぁぁーーー!」

 

 

歓喜、清々しいまでの歓喜が押し寄せてくる、それを見ながらリーネが大はしゃぎしている、やっと出たと、長かったと。

 

 

「か、カッコイイ...。えっ?これ私のだよね?もう消えないよね?」

 

 

一瞬不安になるが、消える雰囲気はない、そう思い急に安堵が押し寄せてくる。続いて画面のある部分に目を見やる、そこには、7万コインと書かれた文字。

 

 

「11万コイン使っちゃった...ツーヤさんの言う通り確率低すぎだよ、でも楽しかった...あの音もう一回聞きたいな...。」

 

 

虜にされた、音の魔力に、確率の麻薬に、もう後7万コインしかない、特に欲しいペットはいないがもう一度あの音を―――あの感動を味わおうかと悩んでいると。

 

 

「おはようございます。...やはりいたかリーネ、ゲームばかりしてはいけないよ。廃人になってしまうぞ?」

 

 

現れたのはたっち・みー急な出現にリーネは驚くが、続いて不思議にも思う。仕事はどうしたのだろう。

 

 

「あっ、おはようございます、たっちさん。仕事じゃないの?」

 

 

「実は今日は有給を取っていてね。言ってなかったか?」

 

 

聞いてないですよ?と言うリーネ、その事に対してたっちが口を開こうとし、そして気づく、違和感に、周囲に大量に散らばっているアイテムに―――ガチャクリスタルに。

 

 

「...リーネ、クリスタルが散乱しているようだが...それは一体。」

 

 

何かな?そう聞こうとした瞬間、被せ気味に言葉が返ってくる。

 

 

「聞いて下さいよ、たっちさん!やはり運営は糞です!白虎が全然出ないんです!11万コインも使いましたよ!もう!」

 

 

たっちが揺らぐ、発せられた言葉の内容に脳が付いていかない、今コイツは何と言った?信じられない様な、信じたくない様な言葉が聞こえたが、一歩踏みとどまる。

 

 

そう、自分の聞き間違いかもしれない。そう思い再度聞き直す、可愛い妹分に対し、優しく聞いていく。

 

 

「うん?少し聞き取り辛かったな。もう一度言って貰えるかな?」

 

 

「だから11万コインですよ!もう後7万コインしかないんです!指輪拡張や外装ガチャもしたいのに!あんまりです!」

 

 

聞き間違いではなかった、たっちの中で渦巻く言葉、あんまりなのはお前だろう?そして雰囲気が変わる、いつもの兄貴分の雰囲気ではなく、父親の雰囲気に。

 

 

「...よし、片づけは後にして、とりあえず座ろうか。」

 

 

「?」

 

 

そして長い長い説教が始まる、お金の大切さをくどくど説明され、半べそをかきながらも、自分で働いて稼いだお金だと反論しようとしたが、有無を言わせぬ気迫に何も言えなかった。

 

 

結局、課金自体は許して貰えたものの、月に5万までと言う制約を付けられてしまった。

 

 

絶望に飲まれそうになったが、こっそり5万以上課金しようと胸の内に秘める少女の姿がそこにはあった。彼女は余り懲りてはいない様だ...。

 

 

この件によって勝手に無課金同盟を名乗っていたモモンガと一波乱あるのであるが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 




解禁!解禁!課金解禁!


どうもちひろです。

今回は課金解禁の章でした、課金って怖いですね、まぁちひろはガチャとかはよく分かりませんが。

白虎...というか四聖ペット強すぎない?って思うかも知れませんが、アルベドさんがスキルで繰り出すウォーバイコーンも100LVだったし、良いかなって、まぁ、実際はスキルといっても何か特殊な方法で使える様にしているかもしれませんが...タブラさんの事ですし。

なので、課金ガチャ、それも期間限定で超低確率なら100でもありかなって。

白虎さんは、というか四聖は実際はそれ程強くないし、青龍は強いけど、一匹で戦況をひっくり返したりはできません、そしてこいつらはペットであってNPCではないので死んだら蘇生はできません。

そう考えれば、それ程バランスブレイカーでもないし、帳尻はあってるのかなと...

捏造 課金コイン ガチャクリスタル

ユグドラシルの課金方法が良く分からなかったので、課金コイン購入による方法にしました。

ガチャクリスタルは使用したらペットがポンと出てきます、出したらもうクリスタルに収納できません。

最後にドラゴンさんの出番は多分ないでしょう、奴は一生アイテムボックスの肥やしです。

長々と失礼しました。ここまで読んでくれてありがとう。また読んで下さいね。
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