あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
ペ・ヨンサマ「ヨンウォニ~♪」
リーネちゃん、自分の世界でフィジカル無双。
♦
「それでですね、私はまだ初心者だったんです、右も左も分からないのに、私を置いてモモンガさん、一人で先に行っちゃうんです。」
クアゴアもぐらのヨンサマとの出会いから一週間経ち、ユグドラシルに来訪中のリーネが、話相手に懐かしい思い出の愚痴をこぼしている、そして、その言葉に呼応する様に、部屋の中には金属音が鳴り響いていた。
辺りを見渡せば、そこは何時もの留置所の風景ではなく、沢山の作業台や工具、果てには工業用機械までが置かれている。
この部屋―――施設は、鍛冶場と呼ばれる、生産、制作施設であり、多くの生産職のプレイヤーから日々愛用されている場所だ。
その鍛冶場―――ヘルヘイムの―――の大部屋には三人のプレイヤーの姿が見てとれる、リーネと建御雷、そして、あまのまひとつである。
「守ってやる~とか言ってた癖に、私に転移トラップ踏ませるし、散々でしたよ。」
「そりゃ災難だったな、まぁ、モモンガさんでも、ミスぐらいするだろよ。」
建御雷とリーネが、その様な他愛無い会話を楽しんでる最中にも金属音は鳴りやむ気配はない。この音を奏でているのはあまのまひとつであり、昨日掘り起こした金属達を加工している待ち時間に、本人達の希望する装備を制作している最中だ。
希少金属の七色鉱も、大量とはいかないがそれなりには確保できた。なので兼ねてより考えていた高品質の武具を制作し、クランの戦力増強を図る目的で、あまのまに頼みこみ本日この場に集まっている。
「っと、完成したぞ、リーネ。建御雷さんはもう少し待ってて、すぐに取り掛かるからさ。」
「うわ、もうできたの?ありがとう!流石あまのまさん!」
「すまねぇな、あまのまさん、今度、素材優遇するわ。」
「ん~?気にしないでいいよ、二人の装備が充実するって事はクランが強くなるって事だからね、クランの№2と№3のアタッカーなんだからさ。」
№2だなんて照れますよ~とご機嫌になっているリーネに対して、お前が3だからなと鋭くあまのまがツッコミを入れていく。クラスも充実して、プレイヤースキルも格段に上がっているが流石にまだ建御雷の方が上だろう。
そんなツッコミを聞いてもリーネのテンションは下がらない、なぜなら、待ちに待った新武器が完成したからだ、下がる所か益々上昇していく。
「ほらよ、ランクで言えば伝説級って所だ、PK食らって盗られるなよ。」
「PK?最近してませんけど。まぁ、私は食らうのではなく、食らわせる方ですから大丈夫です。」
「いや、あまのまさんが言いたいのは返り討ちに合うなよって事だと思うぞ。お前さん異業種狩りには突っ込んでくだろ。」
浮かれている相手に対しあまのまが釘を刺していく。
リーネは強いが最強ではない、強者は歴然と存在する。LVも未だカンストには至っていない為、手を出した存在がカンストだった場合は下の下プレイヤーであっても返り討ちに会ってしまうだろう。
最近では無意味なPKは鳴りを潜めてきたが、異業種狩りに対する報復は余り変わらない。
(たっちさん達と昔からつるんでる影響かねぇ。ヤバめな奴にかち合わんといいが...コイツならどうにかなるか?)
異業種狩りを行う人間種に対し突っ込んでいく妹分の姿をあまのまが連想していく。それと同時に、まぁそれでも、コイツならどうにか逃げ切れるだろうと言う思いも沸いてくる。この廃課金者なら、課金アイテムラッシュでどうにかなりそうだ。
「しかしあれだな、今回のは、また少し短く頼んできたな。」
「そうですね、やはり私の場合は懐に潜るのが前提になりますんで、アームシールドに戻した今、長いのでは真価を発揮できませんし。」
「確かにな、お前さんのリーチじゃ距離を取られるのは不利だからな、必然的に超接近戦になっちまう、物干し竿みたいな長リーチ武器を使うって選択肢も無い事はないが、その小さい体を生かすなら懐で暴れる方が賢いかもな、折角その盾で左手もフリーになってる事だし。」
「ふ~ん、そういうもんか?俺には分からん、脳筋乙だな。」
前衛二人の熱い語らいにあまのまがチクリと嫌味を吐いていく、それと同時に戦闘者共は大変だなと言う気持ちも沸いてきた、そこまで複雑に物事を考え対処しなければならないのだから。
「脳筋はひでぇなおい、まぁ、でもだ、リーネ、その戦法は同じ前衛職相手、いわゆるPVPを見越しての物だ、ボス戦でのモンスター相手に必ずしも刺さるとは限らん、PVPでも魔法詠唱者とかだとガラリと変わるからな、特化し過ぎんなよ。」
「う~ん、確かにそうですね、せめて武装位は幅を持たした方が良いかもしれませんね、しかし...素材が...ここは課金するしか...。」
「即座に課金に行きつく辺り、だいぶイカれて来てんなおい。」
その言葉はあまのまも同意見だ。素材確保は時間と手間がかかるのは分かるが、もう少し節度は持った方が良いとも思う。即座に課金に行きつくのはイカれてると言われてもしょうがない様に思えた。
「課金ねぇ、俺は課金すんなら装備よりも別の事に使いたいね、高品質の作業器具とかさ、まぁ、置く場所無いんだけどね。ギルド拠点でもあれば話は別だけどな。」
ギルド拠点、ユグドラシルではダンジョンや都市などあらゆる物が拠点用として用意されている。色々な条件を満たさなければならないが、拠点として持つならこれ以上の物はないと思える。
「ギルド拠点ね、確かに魅力的だけどよ、デメリットもデカいからな、維持費が馬鹿にならん。」
「ギルド拠点なら私は3000級が良いです。」
「アホかお前、破産するわ。ていうか九人じゃ攻略は無理だろ。」
建御雷が盛大にツッコミを入れるのを、あまのまが聞きながら、3000とは行かなくても、いつかは拠点で自分の鍛冶場を作るのを想像する。そして一つ溜息を漏らしていく、そろそろ休憩も終わりにしよう、そう心の中で言葉を吐きながら、作業台に向き直る、残った仕事を片付ける為に。
♦
新武器の完成により、ルンルン気分で二人と別れたリーネが向かった先はヘルヘイムのフィールド―――狩場である。
新武器の性能の確認だけでなく、戦闘スタイルとのフィット感も兼ねてのモンスター狩りと言う名の戦闘訓練の実施の最中だ。
「
右手を空間に叩きつけ、それと同時に蜘蛛の巣状に空間にひび割れが起こっていく、そして指定ポイントに三か所ひび割れが点在された。出現したひび割れが薄く発光しながらその場に留まろうとするが、徐々に光は薄くなってきている、効果が切れてきているのであろう。
「ほっ!ととと、えい!」
勢いよく飛び上がり、発光するひび割れに着地する、が直ぐにひび割れの効果が切れる、リーネが慌てて効果中のポイントまで移動を開始し、着地の瞬間、目標に向かって蹴り上げた。
「【竜殺し】」
蹴り上げ進んだ先には標的のモンスター【ヘルヘイム・エインシャント・ドラゴン】が見える。顔面上部辺りまで飛んでいったリーネが、ジークフリートの持つスキルをドラゴンの眉間辺りに炸裂させていった。
【竜殺し】―――ドラゴンに対する超特攻を持つジークフリートのスキルだ。
ジークフリート自体、プレイヤーの範囲内にドラゴンが居るとステータスが上昇すると言う優秀な特性を持っているのだが、持つスキルもドラゴン特攻の物が多い。その中でもこれはそれほど強い部類には入らない、もっと強力なスキルも保有している。
竜殺しを眉間に貰い、クリティカル判定が起きたドラゴンが地に倒れ伏す。先程の攻撃が決め手になったのであろう、光の粒子となり消失していった。
「ん~、難しいな、タイミングが少しずれるわね、消滅がランダムだから発光の度合いで図らなきゃだし、でもそこを注視しすぎると相手への対応が遅れるし。」
たっちの言っていた言葉が染み渡ってくる、それと同時に、この戦法を取るプレイヤーが居ない事もまた理解できてきた。
ジークフリートは強力なクラスだ、ドラゴンの特攻を持つだけでなく、PVP等の対人戦でも有用で強力なスキルすらも保有している。半壊れ性能みたいなクラスに就いている以上、ワンミスが致命的になるような戦法よりも、単純で強力なスキルを主軸にした戦法に足を運ぶのは自明の理であろう。
「...やっぱり、たっちさんは凄いわね...。」
たっちの言葉の意味を理解したリーネがポツリと呟いた。
恐らくたっちはあの一言から、瞬時にメリットとデメリットを洗い出し、リーネに対し忠告を行ってきたのであろう。
自分はこのスキルを使用した事が無いのにだ。
たっち・みーと言う人物の凄さを改めて実感すると共に畏怖の念も同時に押し寄せてくる、武の極地に立つ者とはそれ程までに凄まじいのかと。
そして、それほどの人物と、仲間として肩を並べている事にたいする愉悦も後から沸々と沸き上がってきたが首を振り、己を律する、浮かれては駄目だ、相応しい人物にならねばと。
「あの人も同じような次元の住人なのよね、おばさんは言い過ぎたかな、まっ、挑発する為だったんだけど...いつか会えたら謝んなくっちゃね。」
ベクトルは違うかも知れないが、恐らく、たっち・みーと同じく武の極地に立つ化け物―――盾の女に対しそう言葉を漏らしていると、リーネの視界に少し遠いが見慣れた光景が飛び込んできた。
「ムッ!いじめ発見!これよりたっち・みーの右腕であるこのアンティリーネが正義を執行する~!っとその前に。」
ごそごそと、無限の背負い袋からアイテムを取り出してPK準備を進めていく。
そして、PK準備を終わらせた後に【
「よし、準備は良いわねぇ~ってうぇぇ~、ボコボコにされてる!早く行かなきゃ!正義ィィィィーーー!」
準備も終わり、さぁ今から助けようと思っていたリーネの目の前では一方的に攻撃されている異業種の姿が目に飛び込んでくる。このままでは助ける前にPKされてしまうと思ったリーネが謎の奇声を上げながら慌てて異業種狩りに向け突っ込んで行った。
♦
異業種の巣窟―――ヘルヘイム、陰気な雰囲気が立ち込める場所で、そこには似つかわしくない陽気な声が響いてくる。
「お~れさいきょ~う♪お~れさいきょ~う♪ほんわかぱっぱ、ほんわかぱっぱ♪お~れさいきょ~う♪」
陽気な声と言ったが、恐らくこれは歌であろうか、リズミカルに手と足を弾ませながら、ずんぐりした真っ黒な人物が声高々にそう歌い上げている。
真っ黒と言う言葉通り、その人物の体は全てが黒で埋まっており、唯一別の色が見てとれるのは、吊り上がった大きな目と三日月の様な口から存在を覗かせる歯だけである。
体からは黒い靄が常時沸き上がっており、それがより一層不気味さを際立たせている。
しかし、その人物が身に着けている装備はその不気味さには似つかわしくない、非常に派手で豪華な装備群だ。豪快といってもいいかも知れない。
肩口に付いている鎧の肩当ては非常に大きく、最早翼と見紛うばかりであるし、その後ろ―――背中の部分には自分の体に近い位の大きなドリルが、左右に飛び出しているのが見てとれた。
ずんぐりむっくりした体も立派な鎧で覆われており、手甲も足甲も全てゴツゴツしている。アンバランスさも相まって存在感の塊の様な人物だ。
そして、そのアンバランスな人物の背中の真ん中に一本刺さっている鉄の棒のような物。それは剣の握りの部分にも見える―――が。
握りの先―――鍔の部分から先が無いのだ、刀身が接続されてはいない。
姿形と派手な装備群、そして異質な武器の様な物体を背に担いだアンバランスな存在が上機嫌で歩いていると。
「で~まえじんそく♪らくがき―――おう?何だ何だ?」
何かを発見したのか、ピタリとその人物の足が止まる。疑問の言葉達を口から吐きながら気になる場所を凝視しだす。
視線の先には―――少し遠いが―――、一人の異業種が二人の人間種に襲われている様な光景が見えてきた。そして、その二人の元に全速力で向かうもう一人の人間種の姿も見えてくる。恐らくは加勢に行っているのだろう。
「お~~~い、三人はあんまりじゃろが~い。」
たった一人を相手に、三人でタコ殴りにするなど流石に酷すぎだろうと真っ黒な人物が思う。助けに行ってやろうかと思うが、余程LV差が開いていないと三人など相手どれる訳はない。どうするかと考えるが、即座に答えは出た。
「助けるか!やられてる方が加勢してくれりゃ二対三だろ!それなら...うん!無理かもしれんな!でもいいや助けよ!」
いっそ清々しい程の決断をし、異業種を助ける事に決める。どうやらこの人物は考え方も豪快な様だ。
「よっしゃ~、決めたら即行動だな!派手にかましてやろうか!俺様はアッ!ウェンタ~テイナ~だからな!」
プルルルルルルル~♪と巻き舌で甲高い声を上げながら全力で走り出す―――しかしその人物が向かった先はPK集団の元ではない。目の前には大きな岩が見える、そしてその岩を鼻歌交じりに上り出す。
最早何がしたいのか全く分からず、奇行を繰り返していく人物が岩の頂上までたどり着き―――
「うおっほん!アッ、まてぇぇぇーい!!」
―――そう大きな言葉を叫び、背に刺されていた一本の棒を天に突き上げる。
その瞬間、棒の先端に付いていた鍔の様なものが瞬時に開いた。そして強烈な光が巻き起こり辺り一面を包み込んでいく。
光と共に現れたのは、自分の体の二倍以上はあるのでは?と思わせる程の巨大な刀身。刀身は美しい青色に彩られ、眩く輝いている。
それは正しく剣であった。
♦
(うえぇぇ~!不味い~、流石に二人は無理だったーー!)
異業種狩りを行っていた人物達に突っ込んで行ったリーネだったが現在盛大に後悔をしていた。こう言う所があるから、あまのまも心配して忠告してくるのであろう。
心の中で焦りの言葉を吐くリーネに対して異業種狩りの二人の内、一人がリーネに対し喋り掛けてきた。
「よう!異業種姫、アンタ有名人だぜ!とっ捕まえてキモオタ達の前に放り出してやんよ!」
(異業種姫?キモオタ?なんの事?)
「あっそう、好きにすれば?アンタみたいな雑魚には捕まんないけどね!」
罵声を浴びせられた相手の雰囲気が変わる。雑魚と言う言葉が癇に障ったのか、先程までの軽い雰囲気が掻き消え、憤怒の空気を纏っていく。
怒れ怒れと思いながら、課金アイテムの使用のタイミングを計っていく、怒りで行動が雑になった時がチャンスだ。
そう思っていると。
―――アッ!まてぇぇぇーい!!―――
周囲に非常に大きな声が響き渡ってくる、拡声器でも使っているのかと思う程だ。急な叫び声に戦闘中の三人だけではなく、守られている異業種も声の方向に振り向いた。
その瞬間、眩い光に辺りが包まれる。光の発生源は声の主の方角、そしてその手元からだ。光の柱が天に向かい伸びていた。
そして、その後またもや大きな声が響き渡る。
―――アッ!俺はゲンガー!―――
―――アッ!ゲンガー・ゾンボルトォォォ―――
タァァァーーという掛け声の元、岩の上に陣取っていた人物が四人の前に飛び降りてくる。
飛び降りてくるが。
「くらぇぇぇーーー!一刀両断ーーー!【フライング・ボディプレス】」
戦闘中の三人の目の前―――中央付近に、高々と剣を振り上げたまま、体ごと真っ黒な人物が空中から地面に向けて落下してきた。そしてそのまま地面に激突していく。
激突した際に鳴り響いた轟音と、訳の分からない人物の登場により、その場に居る全員が一様に固まっていく。あっけに取られている四人を他所に謎の人物が倒れたまま何やら数字を数えだす。
「1...2...3...アッ!ダアァァァーー!」
そして奇声と共に立ち上がり、その手に持つ大剣を軽々と頭上で振るいだす。そしてその切っ先を相手に―――異業種狩りに向け、言葉を言い放った。
「元気があれば何でもできる!つってもよぉ、やって良い事と悪い事があんぜ!」
異業種狩りに向けて―――リーネに向けて、そう言い放った。
ポカンという表現が良く似合う様な雰囲気を四人が纏う。急に現れた人物に対する驚愕も無い訳では無いが、その人物の風貌と放たれ続ける言葉達が余りにも意味不明で脳が軽くショートしている。
そんな中、意の一番にリーネが我に返っていき、相手に喋り掛けていく。
「...え?なんで私剣を向けられてるの?」
「嬢ちゃんよぉ、ここはヘルヘイムだぜ?ここで異業種を狩るのは俺が許さねぇ。」
(はぁ!?)
そう心の中で驚愕の言葉を吐く。自分は狩っていたのではなく、狩られていた人物を助けていたのだ。それなのになんでそんな事を言われなければならないのかと怒りが沸き上がってくる。
(何言ってんの!?この真っ黒!?今までの状況見てなかったの!?見てて言ってるならコイツの目は腐ってるわよ!)
怒りの余り相手を睨みつけていると、異業種狩りに合っていた人物が真っ黒な人物、ゲンガーに喋り掛け出した。聞こえてくる言葉は勘違いや助けて貰っていた等の言葉達。
言葉を聞き終わった後にゲンガーがこちらに向き直ってくる。
(何見てんのよ。間違ってたんだから早く謝んなさいよ!)
そう思い睨みつけていると―――衝撃の言葉が聞こえてきた。
「やっぱりかぁ!嬢ちゃん悪そうに見えないもんな!俺は信じてたぜ!」
「絶対嘘でしょ!」
衝撃の余り盛大に叫んでしまった。しかしそれもしょうがないと思える、よりにもよって信じてたぜは無いだろう。リーネがなんでそんなに堂々と嘘が付けるのか驚愕していると。
「おっ、嬢ちゃん中々良いツッコ―――おっと、あぶないぜ!」
会話をしている最中にゲンガーの姿が掻き消えた―――正確には一瞬黒い霧になり、装備事姿を消したのだ。
そして再度姿を表す。現れた場所はリーネの後方だ、背後を取られてしまったのかと自分のミスに歯切りしていると―――金属音が鳴り響いてくる。
急ぎ振り向いて見れば、そこには異業種狩りの人物と鍔迫り合いをしているゲンガーの姿が見えてくる。そこでやっと気づく、自分が不意打ちを食らいそうになっていた事に。
「流石は異業種狩り!やる事成す事卑怯だな!」
「間違ってた奴が良く言う!」
「あれはお前達を油断させる為だ!」
「嘘をつけ!!」
相手のツッコミに対し、リーネも一緒にツッコミそうになったがすんでで堪えていく、基本的に自分はツッコまれる側の人間だ、慣れない事をさせないで欲しいと下らない事を思ってしまう。
「アッ!そーれ♪」
軽い言葉と共にゲンガーから大量の黒い霧が吹き出し辺りを覆っていく、
「一旦後方に離脱しな。」
その言葉の意味を理解し、すぐさま戦闘範囲内から離脱していく。霧が晴れる頃には相手と十分な距離が確保できていた。助かった、これで仕切り直せると、ここは素直にゲンガーに対して感謝の言葉を口にしていく。
「助かりました、ありがと―――」
「これで仕切り直しだな!相棒!」
「―――うござい、はぁ!?相棒!?」
一体いつから相棒になったのか全く分からない。今日初めて会ったのに急に相棒などと呼んでくる人物に対し信じられない物でも見るかのような視線を向ける。
「相棒!?なるほど、お前ら仲間だったのか...異業種姫の取り巻きかなんかか?」
「あぁん?なんだお前ら、今頃気づいたのか?」
「取り巻き?」
相手の二人組も少し混乱している様だったが、会話の後にすぐに臨戦態勢を取ってくる。その場の雰囲気が少しピリ付いたのを感じ取ったリーネが姿勢を正していく。
「へへ、相棒よぉ、俺達二人のタッグなら向かう所敵無しだと思わねぇか?勝てるぜ、この勝負!」
「うるさいわねぇ!今そんな事考えてる暇ないのよ!邪魔な考えは捨てなさいよ!」
「へへ、成程な...”勝ちたいと言う気持ちさえ戦いに置いては邪魔になる”か。カール・ゴッチ見たいな事言いやがるな...いや、お前さん自体がカール・ゴッチって事なのか。」
「んきぃぃぃーーー!!!」
話せば話す程に返ってくる訳の分からない言葉に対し、リーネが奇声を上げながら地団駄を踏みだした。これが現実ならば顔を真っ赤にして怒っている事であろう。妙な言動と意味不明な行動に徐々にリーネが混乱していき、振り回され始めだす。
(誰よそいつ!?知らないわよそんなやつ!...はぁ、落ち着くのよ、私!なんだかんだ、これはチャンスよ!)
訳の分からない状況ではあるが、これは好機とも言えるだろう。なぜなら二対二に持ち込む事が出来たのだから。気持ちを落ち着かせながら眼前で剣を構える二人組に気持ちを集中させていく。
そして、そんなリーネをゲンガーが右手で制した後に、巨大な剣を相手である二人組に向けて付きつけ言葉を発し出した。
「へっ熱いねぇ...最高のタッグマッチの始まりだぜ。おい!お前ら、二対二...条件は一緒とか思ってんじゃねぇか?」
(((?)))
またもや放たれる意味不明な言葉、三人が一様に頭に?マークを浮かべていく。誰がどう考えても条件は一緒の筈だ。ワールド・チャンピオンが居るとかなら分かるが、ここにはそんな人物は居ない。
混乱していく三人を他所にゲンガーの言葉は止まらない。
「お前らは1+1で2かもしれねぇ...だけどな、俺達は1+1で2じゃねぇんだ。」
(いや、2でしょ?は?どういう事?)
止まらない、訳の分からない言葉は止まらない。
「俺達は1+1で...アッ!200だあぁーー!」
ゲンガーが吠える。俺達は200だと、お前達は2だと。訳の分からない言葉を並べていく。最早リーネだけでなく相手の二人組も、そして守られている異業種も、その場の全てがゲンガーに飲まれていく。
ユグドラシルに来てもう一年以上になる。色々な相手も見て来たし、仲間も濃ゆいメンツばかりだ。しかしこの男はなんというか、各が違う気がする。常軌を逸しているのだ、目の前の人物が得体の知れない酷く恐ろしい物に見えだした。
そして、得体の知れない恐怖に支配されつつあるリーネの方角にギュルンと言う効果音が聞こえてきそうな勢いでゲンガーが振り向いてきた。
「何ボケっとしてやがる!そこは10倍だぞ!10倍!だろうがあぁぁぁーーー!!」
「ひゃ!えっ...え?あ、あう。」
100倍じゃないんですか!?と聞き返したかったが言葉が出てこない。代わりに悲鳴が漏れ出した、恐怖に支配されるリーネを見つめながら、ゲンガーから。あぁん?おめぇこのネタ知らないのか?などと言う言葉が聞こえてくる。
「へっ、なるほど、早く殺り合いてぇんだな!”いいんだね?殺っちゃって”ってか?蝶野かよ相棒!よっしゃ!そんじゃ!いくか!相棒!俺達二人で!2000万パワーズだぜ!」
そうゲンガーが叫び、闇の霧に姿を変え二人組の前まで瞬間移動していく。
戦闘が再開されるが、リーネは動かない。というか動けないのだ、脳が完全にショートしてしまっている。そんなリーネの目の前では訳の分からない言葉を叫びながら大暴れしているゲンガーの姿が見える。止まらない、訳の分からない言葉は止まらない。
ゲンガー・ゾンボルトは止まらない。
その光景を静かに見つめながら、現実世界なら間違いなく死んだ目をしているであろうリーネがポツリと言葉を呟く。
「...200って言ったじゃない...何で2000万なの...?」
♦
「アッ!ドリィルゥーブーストォー...アッ!ナッポォー!」
その叫び声と共に背中に装着されていた二対のドリルが甲高い音を立てながら空中を駆け巡っていく。そしてそのドリルはまるでホーミングでもするかの様に相手の二人組を各個追いかけて行っていた。
その状況を死んだ目で見つめていたリーネだが、その光景を見て目の輝きを取り戻していく。不規則に動きながら追従していくドリルに対し二人共翻弄されている。目に映る相手の動きをリーネが凝視し続ける。そしてこう思う―――隙だらけだと。
「アッ!斬艦刀ーー!稲妻重力落としーー!!」
その言葉と共に複数の刃が二人組を襲っていく。
ドリルに翻弄されていた二人組は回避できずにその刃に切り刻まれ行った。
(上手い!ドリルに気を取られている内に範囲内まで誘導されていたのね...ていうかレイザーエッジじゃない!稲妻も重力も関係ないじゃん!)
ケンセイのクラスのスキルである、レイザーエッジが炸裂していく、続いて一刀両断と言う言葉と共にゲンガーが両手を突き上げていく。そしてその行動の後に周囲に負の衝撃が起きた。
【
空中に吹き飛んだ二人組をドリルが蹴散らして行っている、そして吹き飛んだ先にはゲンガーが構えを取って待ち構えていて―――斬艦刀!乱れ斬り!という言葉と共に横薙ぎに大剣を振るっている。全く乱れてはいないが。
(~~~――強い!!)
初めは呆然と見つめていたリーネの目つきが徐々に真剣身を帯びてきた。この男は強い、領域の確保が絶妙だ。そして、その最もたる要因はあのドリルだろう。
精密な動きに非常に高い吹き飛ばしの効果―――ノックバックが付与されている。故に威力は低いだろう、データ量が限られている以上、全てを高い水準に持っていくなどできはしないのだから。
ドリルでかく乱し、自分の領域―――間合いまで吸い寄せる様に誘導している。そしてその間合いは相手よりも遥かに広い、故に反撃の一手に移るのが困難なのだろう。
ゲンガーの間合いはあの大剣―――斬艦刀の間合いだ。つまりはその範囲は非常に広い、それを覆す方法はかなり限定的になってくるだろう。
「~~~――!糞が!舐めんなよ!」
二人組の一人がスキルを発動させようとしている。そう、それが正解だとリーネは思う、そしてそれは誰しもが考える事―――安直と言うやつだ。
「アッ!フラッシュ!」
その言葉と共に上段に構えられていた斬艦刀から眩い光が発せられる。その光に包まれスキルを発動させようとしていた人物の動きが一瞬止まる。視界を遮られ相手を見失ったのだろう。そして目が慣れる暇もなくその男の元に黒い斬撃が一直線に飛んでき斬りつけていった。
初めからゲンガーはこれを放つつもりで上段に構えていたのだろう。ドリルでの吹き飛ばしを待ち構えている振りをしていた。痺れを切らした相手の次の一手を把握して。
―――分かりやすすぎるのよ、お嬢ちゃん―――
リーネの脳裏に盾の女の言葉が蘇る。百聞は一見に如かずとは良く言った物だ、これと同じ事を自分は盾の女にされていたのだろう。そして―――
「アッ!もういっちょ~うアッ!フラッシュ!」
―――と言う言葉と共にゲンガーが斬艦刀を上段に振り上げる。
その言葉を聞き身構えた二人が、後方からぶつかってきたドリルに盛大に吹き飛ばされていく。ゲンガーの前方に。
そして再度、
その光景を見つめながら哀れだとリーネは思う。フラッシュの脅威を刷り込まれている、その一瞬の硬直がドリルの餌食だとも分からずに。
最早疑う余地はないだろう、ゲンガーは強い、自分の長所を最大限生かせる戦い方を行っている、そしてそこに迷いは一切ない、だから強いのだ。行動の繋ぎが流れる様に進んでいく。
もし自分がゲンガーに相対したとしたら、あのふざけた言動と行動に翻弄され、気づいたら負けている姿が容易に想像できた。そう、あの行動と言葉もゲンガーの武器の一つ―――いや、最大の武器だ。
(滅茶苦茶ね、この人...でも、戦い方は凄く勉強になる。どんな攻撃も間合いに入らなければ打てないのが道理、戦士として、空間の把握は武器やスキルよりも重きものだ。だったっけ?たっちさんが言ってたわね。もっと見せなさい!ゲンガー!その技術、ぶん捕ってやるわよ!)
そう考えるリーネの目の前では、斬艦刀を頭上で振り回しながら、アッ!だぁ~いしゃり~ん!と叫んでいるゲンガーが見える。その周囲には巨大な竜巻が発生していて、二人組がその渦の中で斬撃に切り刻まれていた。
(いや、それレイザーストームじゃん、だいしゃりんってなによ。あれは真似したくないなぁ。)
いくら強くなる為だとしてもあの行動は真似したくないな、とリーネが思っていると。竜巻に切り刻まれながらも相手が斬撃をゲンガーに向け放っていく。
悪あがきだ、そんな直線的な攻撃があの男に当たる筈もない―――当たる筈もないのだが、なぜかゲンガーは回避行動を取らずにその斬撃を正面から食らっていった。
(ちょちょちょ...なんで避けないの!?)
明らかに回避できた筈の攻撃を回避しなかったゲンガーに対し混乱が頭の中で渦を巻いていく。放った相手ですら、えっ?当たった?と言っているくらいだ。
「へっ、不思議か?それはなぁ...プロレスラーはなぁ!相手の攻撃を受けきるモンだからさぁ!!」
(どういう事!?それになんの意味があるの!?なんか分からないけど...なんか凄い。)
レスラーとしての教示を見せつけられていったリーネの中に混乱と同時に少しの感動が芽生えていく。これがプロレスラー、なんか凄いと。
無垢な少女が徐々にプロレスに洗脳されて行く。沸々と熱い物が滾ってくる。
「ああ、そうかよ!ならこれも避けんなよ!」
その言葉と共に再度斬撃が放たれて行き―――
「アッ!よっこらせぃ☆」
―――ひょいっと躱されて行く。
「なんで避けんのよぉぉーーー!!」
「おっ、相棒、復活したな!まぁ、たまには避けるさ!」
「あんたブレブレじゃないのぉーーー!私の感動返せぇ!」
沸々と滾っていた熱い物が瞬時に冷めていった。しかしこれは結果オーライと言えるかも知れない。なぜなら、洗脳は解かれたからだ。
「だっはっは!まぁ、そう言うな!さっきの一撃で首がちぃと痛くてよぉ。」
「首無いじゃないのよぉーーー!どこにあるのよぉ!首なんて!」
「へへへ、やめろよぉ、相棒。鼻がムズムズすらぁな。」
「鼻もなぁぁい!」
瞬時に冷めていった熱い物が別のベクトルで沸き上がっていく。ああ言えばこう言う相手に対してリーネの怒りの沸点がレッドゾーンを突き抜けていく。そんな怒り狂うリーネにゲンガーが、その怒りをまるで意に返さないかのように軽い口調で言葉を投げ掛けていく。
「だっはっは、完全復活だな相棒!そんじゃ時間いっぱいだぜぇ、相棒!タッグマッチと行こうじゃねぇか!」
「はあ?たっぐまっち?時間いっぱい?次から次へとぉ...ふぅ...そうね、何か分かんないけど、相手もやる気見たいだしね。あなたから学んだ事じっくり試してやるわよ。」
言われた言葉の意味を少し考えるが、すぐに辞めた。どうせくだらない事だろうと言う確信が生まれたからだ。
前方ではポーションをがぶ飲みしている二人組の姿が目に入ってくる。回復されてしまったのは痛いがこの人物となら間違いなく勝利できると踏んだリーネが戦闘態勢に入ろうとした―――その瞬間、隣から酷く鈍い音が鳴り響いてくる。
不思議に思ったリーネが隣に振り向くと、大剣を地面に突き刺して両の指をコキコキ鳴らすゲンガーの姿が目に入ってきた。まぁ、ゲームなので音は鳴らないが。
「は?何してんの?」
「あ?そりゃあお前、ここからはクリーンな戦いだからよ。凶器はお預けといこうじゃねぇか!」
「拾いなさいよぉぉぉーーー!!あぁーーー!もう!訳分かんなぁい!」
「おっ?何だ何だ相棒、キレキャラか?それも悪くは無いと思うけどよぉ、今からのマッチには合わないと思うぞ♪」
ブチ切れるリーネに対して良くもまぁそんな事が言えると少し感心してしまいそうになる言葉をゲンガーが言う。最早こんな馬鹿を相手にしている暇などないとリーネは思い、戦闘態勢に移り、相手の懐に潜ろうと行動を開始した。
「
スキルの発動と共に空間のひび割れが周囲に点在していく。それを瞬時に蹴り上げ、不規則な動きで相手の懐に潜ろうとした―――が。
「馬鹿やろぉーーー!!」
ひび割れを完璧なタイミングで蹴り上げた次の瞬間、その言葉と共にリーネにゲンガーの
(...あ~あ、意味わか~んない...もう帰りたい。)
ドチャリと地面に墜落したリーネに向けて、ゲンガーが叫びながら指を突き付けていく。
「お前は俺から学んだと言ったな!一体何を学んだんだぁ!くらぁぁーーー!」
ゲンガーからリーネが問われる、何を学んだんだと、ゆっくり起き上がりながらそれに対し答えようとしたが。
「アッ!わどうした!アッ!わ!アッ!が大事なんだよぉ!アッ!エアリアル・ブレイカーだろうが!お前にエンターテイナーとしての自覚はないのかぁーーー!」
「......は?......」
言っている意味が全くと言っていいくらい分からない。衝撃が強すぎて最早感情を振り切ってしまった。そこにあったのは完全な無だ。
リーネがユグドラシルに来て早一年。これほどの衝撃に出会ったのは初めてだ、盾の女の衝撃など遥かに凌駕している。
先程までのやる気が一瞬で削がれていった。最早虚しさ以外押し寄せてこない、前方に目を向ければ硬直している二人組の姿が目に映る。
ゆっくりと起き上がり、その後、幽鬼の様にリーネが二人組の前まで歩いて行っている、そして二人の前に向き合った。
「...もうやめましょう...何なんですか?これ?私は虐められてる異業種の人を助けたかっただけなのに...。」
「あ、あぁ、そうだな...滅茶苦茶しらけちまったもんな...あ~、悪い、俺達も今度からは異業種狩りはやめるわ...悪かったな、プリンセス。」
相手の二人がそう約束し、剣を絞まっていく。何かまた聞きなれない言葉が聞こえてきたが今はそんな事はどうでも良い。このハチャメチャがやっと終わるとリーネが安堵していると―――その姿を眺めていたゲンガーが後ろから喋っている声が聞こえてきた。
「へっ、俺達プロレスラーはよ、やり合った後には友情が芽生えちまうもんなのさ。流石だな、相棒。」
その言葉が耳に入ってきた瞬間、先程まで無であったリーネの心に再度怒りの炎が灯っていく。轟音を立てながら燃え上がる炎に比例するかの様に体がプルプル震えだした。
そして、ゲンガーの方向に振り向き、ゆっくり歩み寄っていく。ゲンガーの目の前まで辿り着いたリーネがピタリと歩を止め言葉を発していく。
ゲームなので分からないが、現実なら般若の様な顔をリーネはしているだろう。
「ねぇ...少し黙ってくれない?
「おっ!怖ぇな!ん?おぉん、成程!何だ何だ
♦
「だははは!面白かったな!相棒!」
「面白くない...頭痛がするわよ、全く。」
熱いタッグマッチの末に更に深い友情が芽生えた二人が、夕日を見ながら語らいあっていた―――などと言う訳では無く、ゲンガーと言う男の奇行に振り回され、疲れ果てたリーネが尚も話相手を務めてあげているだけだ。
相手の二人組はもういない、とっくの昔に別れた後だ。向こうも非常に疲れていた様子だった、本当にお疲れ様だ。
「はぁ、疲れた、本当に。」
狩られていた異業種を助けていただけなのに、なぜこんな事になってしまったのかと思う。その異業種も気づけばいなくなっていたし、恐らく戦闘の最中にどさくさに紛れて帰ったのだろう。この男に巻き込まれたくは無かっただろうから。
疲れ果てた自分の目の前では、ゲッゲッゲッゲンガーと言いながら高笑いしている姿が見えてくる。さっきまでは、だはははって言ってたじゃないか、本当に意味の分からない男だ。
「しかし、悪かったな、相棒。最初間違えてよぉ、途中から気づいたが、相棒あれだろ?PKプリンセスだろ?」
「ほら、間違えてたんじゃ―――え?何ですかそれ?」
「おぉん?有名だぜ?ヘルヘイムの恐怖!異業種達のお姫様!一日一殺の殺戮姫ってな!出会えば死ぬ事が確定し、確実に殺される様から、誰が呼んだか”絶死絶命”ってなぁ!流石は俺の相棒だな!」
「言い過ぎでしょぉーーー!そこまで酷い事してないわよぉーーー!誰が言いだしたのよぉ!
悲鳴に近い叫びを上げたリーネであったが、その異名は間違いなく自分の行いの所為である。しかしそれでも、そこまで言わなくてもいいじゃないのよ、という思いもあるのも事実だ。
「ゲッゲッゲッゲンガ~♪相棒はヴィジュアル凝ってるからな、コンテンツにするには打ってつけだろ?最近ではまだ小さいがファン倶楽部もできつつあるらしいぜ?PKプリンセスに殺され隊ってな♪」
「えぇ...気持ち悪い...。」
その言葉を聞き、ゾッゾッゾンボルト~と言いながらゲンガーが笑っている。しかし、急に笑い声は止み、何やら真剣な雰囲気を纏いだす。
ずっとそれでいてくれない?と思うが、そのままの雰囲気でゲンガーが語り出した。
「でだな、そこまで話題になってきてんのはここ最近からだ、急にだ。元々相棒はそれなりの知名度はあったんだろうが、異名にファン倶楽部、明らかに異常だろ?情報を垂れ流してる奴が居んのさ、そして、只垂れ流すだけじゃここまではならねぇ、都合の良い様に捻じ曲げてやがる、そして、それができるって事はそれなりの影響力を持つ奴だろうよ、つまりは大物ってこった。」
軽い雰囲気で聞いていたリーネの雰囲気が重い物に変わっていく。確かにこの状況を作り出せる人物が居るのであればそれは大物だろう。大きなネットワークを構築し、更には信憑性を持たせ、情報をコントロールする事もできる人物。
しかし同時に疑問も沸いてくる、そこまでする必要があるのだろうかと。なぜ自分なのだろうかと。確かに自分はPK三昧してたが、自分よりも悪いやり方や、一方的なPKをする有名な奴なんてユグドラシルにはゴロゴロいるのだ。
自分如きにここまでする理由が良く分からない。それ程の人物だ、潰そうと思えば自分如き軽く捻れそうな物だが。ヴィジュアルというが自分よりも綺麗なアバターの人だって沢山いる、盾の女がいい例だ。考えすぎなのではなかろうかと思う。
「まぁ、理由は分からんけどな。相棒をユグドラシルの一つのコンテンツに仕立て上げてもっと盛り上げようとしてるのかも知れねぇし、潰しにかかってきてるのかも知れねぇ、有名になれば敵も増えるからな、悪名なら猶更だ。大元を探ってもいいが、多分尻尾はつかめないぜ?まぁ、あれだな、深く考えすぎるのもなんだが、警戒はしといた方が良いかもな。」
腕を組みリーネが深い思考の海に沈んで行く。その際、ゲンガーと言う男からは想像もできない様な小さな声で、まぁ、そいつの目星はなんとなく付くけどな、と言う言葉を吐いたが、それはリーネには聞こえなかった、深く思案している。
その姿を他所に、いつもの軽い口調に戻ったゲンガーがリーネに対して喋り掛けてきた。
「あぁ、そうだ相棒、忘れてたわ、”フレンド登録”しようぜ。」
「...ん?...え?...フレンド?」
「へへへ、俺達もう、タッグ組んじまったレスラーだからよ...ダチだろ...俺達。」
その言葉の意味を考えていく、先程よりも深く考えているのでは?と思わせる程だ、ゲッゲッゲッ言わせんなよな、と言う言葉も聞こえてくるが無視して考えていく、そして、その意味を完全に理解し―――
―――リーネの頭の中に満開のお花畑が出来上がった。
フレンド―――それは友達である。自分の友達である。まるで天から光が刺したかの様な姿を連想する程の高揚感がそこにはあった。
クランの仲間達も確かに大事な仲間であり、友達ではあるが、逆にリーネはそれ以外の友人はいないのだ。クランのメンツはこちらの世界での家族に近い存在達だ、このような、いつも一緒に居る様な当たり前の存在ではなく、たまに会える気の合う友達は存在しなかった。
友達、友人、あぁ、なんと甘美な言葉だろうか、歓喜、歓喜、歓喜、清々しいまでの歓喜。この薄暗いヘルヘイムが、ゴッドゼウスの住まうオリンポス山の楽園に見えてきた程だ。
まぁ、自分はカインアベル一筋なのだが。
「しょしょしょ、しょうがないですねぇええ、な、なってあげても...い、いいですよぉ。」
「ゲッゲッゲッ♪流石は俺の相棒だ♪話が早いぜ!俺達でユグドラシルを熱いプロレス団体に変えてやろうぜ!」
「あ、いや、それは一人でやって下さい。」
相も変わらず訳の分からん事をゲンガー喋りながらリーネとフレンド登録を行っていく、途中に、フヒっという変な言葉が出てしまったが、最早気にならない、嬉しさの方が強いからだ。
そしてフレンド登録を終えた後、何やらゲンガーがごそごそ何かを取り出し出した、それをリーネが不思議そうに見つめていると。
「うし!相棒!これやるよ!俺二つあるしな!」
「?なんです―――うえぇ!転移アイテム!良いんですか!?」
「当たり前田のクラッカーだぜ!ゲートまで使用できる高級品だ!これでいつでも
友達まで出来て高級品まで貰えるとは、なんて日だと思ってしまう。先程の疲れなど全て吹き飛んでいった、そして感謝の気持ちを伝えようと喋り掛けていく。
「ありがとうございます!ゲンガーさん!」
「チチチ、違うぜ、相棒、俺の事はボスと呼べ、俺のロールキャラはボスって呼ばれてたからな!それと敬語禁止だ!俺達はダチだ!二人で一つ!いや!二人で二百だからな!」
その言葉を聞き、あっ、それロールだったんだとリーネが思う。そのボスと呼ばれるキャラクターは、プロレスという剣術を使う者なのだろうとやっと理解できた。
ロールプレイヤー恐るべしと思うが、敬語無しならそっちの方が良い、そっちの方が友達らしいと思い、喋り掛けていく。
「うん!分かったわ!ボス!ありがと!」
その言葉を聞き、ゲンガーからだはははと高笑いが起きていく。ゲッゲッゲッはどうしたの?と思っていると。
「なぁ、相棒!ユグドラシルはゲームだ、それも最高のゲームだ!辛い現実を忘れて自分をさらけ出せる最高の場所なんだよ!楽しまなきゃ損なのさ、楽しんだ者勝ちだ!所詮ゲームだし、只の浮世の夢かも知れねぇ、儚い人生と一緒さ!でもなこんな夢の無い時代だろ?だから夢見んのさ!だからよぉ、これからも一緒に、大笑いしていこうぜ!」
相変わらずの煩さ、相変わらずの暑苦しさ、しかしそこには眩いまでの自由があった、その光景を見ながら、ほんの少しだけ、ゲンガーと言う男が理解できたような気がした。
その光景をリーネが見つめていると、そんでよ~相棒、と言いながらゲンガーが近づいてくる。そしてリーネにあれよこれよと説明しだす。
そして。
「よし!いくぜ!相棒!バシッと決めようや!」
「えぇ~、私嫌なんだけど...やらなきゃ駄目なの?これ。」
「俺達はエンターテイナーだぜぇ!最高のポージングを決めるぜぇ!せーの!」
「えっ?えっ?あぁもう!分かったわよぉ~!」
「「レアアイテム!GETだぜ!イーーーヤァッ!」」
最高の掛け声で行われた、最高のポージング。
それは。
それはそれは見事な、プロレスLOVEポーズだったと言う。
ちょっとした話
ゲンガー「このキャラは色々混ざってんだよ、昔のゲームとアニメとか漫画な!後は俺の愛するプロレスだ。」
リーネ「アニメ?漫画?たまに聞くわよ、それ。」
ゲンガー「かぁ~相棒勿体ねぇぜ、このサイト教えてやるからよ!コンソールから繋げるぜ!昔のアニメや漫画、はたまた実写までなんでも見れるからよ!見て見な!あっ、後レトロゲーもできるぜ!」
リーネ「わぁーい、ボスありがとー。」
最高の娯楽を手に入れた。
どうもちひろです
今回の話は知っている人が少ないだろう名言が多く
混乱した方もいらっしゃるのでは?と思います。
1+1は200とかはググればすぐに出てくるので
気になった方は調べて貰えればなと思います。
きっとプロレスが好きになりますよ!
長く続いた第ニ章ですが次で終わりかな?多分。
話数的には少ないですが文字数は余裕でこちらの方が上です。
七日以内に一話と言う謎の縛りを続けていた
ちひろですが次回はちょっと無理かもですね。
理由はすぐ分かります。
・オリキャラ
・ゲンガー・ゾンボルト
ポケ〇ンのゲンガーの姿にスパ〇ボのスレード・ゲルミルというロボットの武装をし、キャラはスパ〇ボのゼンガー=ゾンボルトさん、そしてプロレスをこよなく愛する人物です。
実際のゲンガーは黒じゃなくて紫だったんですね、白黒のイメージが強かったので黒くなってしまいました。なんか体から常時黒い靄とか出してる人です。あれは課金エフェクトの筈です。
パロディ特盛というタグがあるので許して下さい。
個人的にはこう言う、存在自体が意味不明なキャラは好きです。もはや愛しています。
最後まで読んでくれてありがとう。また読んで下さいね。