あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
あれはあれで味があっていいなと思いました。 (唐突に始まるどうでもいい感想
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「ハーフエルフ...か。」
「あまり聞かない種族ですね。」
二人がアンティリーネのコンソール上の文字を読み取っていると名前の横の”種族名”に目が行く、次いで沸いてくるのが困惑だ。このような種族は果たしてあったのだろうか?っと。多種多様な種族を選択できるユグドラシルの中に置いて”人間種”というのは最もポピュラーで人気の種族だ。”エルフ”も括りで言えば人間種であり人気の種族であるのだが”ハーフエルフ”という種族はモモンガも聞いた事がない種族だ。
「そうなの?あっ、ですか?」
「あぁ、少なくとも俺の記憶にはないな。あと無理に敬語は使わなくてもいい、もっと気楽に話して構わないぞ。こっちもそうさせてもらってるからな。」
そ...そう?ふふ、ありがとう。と目の前の少女、アンティリーネから強張っていた空気が和らいだのを感じる。怖い思いをした後だ、相当に緊張していたのだろう。
軽い雰囲気を作りながらモモンガが軽い言葉のやり取りを行っていると一つ気になる部分が目に入ってきた。
「?12だと?これは...。」
「モモンガさんも気になりましたか?私もです。」
「?うん、そうだよ。私今12歳。」
モモンガとたっちが二人で疑問について話し合っていた所、アンティリーネが自分の年齢を喋り掛けてくる。モモンガとたっちの話している内容は違うのであるが。どうやらなにか勘違いしているようである。
「ん?あぁ違うぞ、年齢の事では無くてな。えっ?12歳?」
「それは...プレイ年齢的にギリギリじゃないのか?幼いとは思っていたが...。」
ぷれい?12歳じゃ悪いのかな?などとアンティリーネがもはや今日何回目かも分からぬ疑問に頭を悩ませている。目の前では二人が、えっ?ちょっと、この絵面大丈夫ですか?や、大丈夫ですモモンガさんが間違いを起こしたなら私が責任を持って逮捕します。などと喋りあっている。間違いってなんだろ?
「んもぉう!ひどいなたっちさんは。すまないなアンティリーネ、話が脱線してしまった。俺達が気になったのは”年齢”の事ではないんだ。」
「君の名前の横に”LV”という文字があるはずだ。それは”レベル”といってね。私たちが気になったのはそれなんだよ。」
アンティリーネがコンソール上の自分の名前の横に目をやる。そこには”アンティリーネ””LV12”と書かれているのが見てとれる。自分的にはそれよりもなぜフルネームじゃないのか気になるが、二人が気にしているのはこの”れべる”という物らしい。
「コンソールの開き方も分からなかったのにどうやってLVアップしたんだ?」
「LV12というと戦闘のチュートリアルは確実に終わっていますね。」
チュートリアルは大抵のゲームにおいて大体は実装されているであろう操作方法や進め方などの練習である。ほとんどのゲームは一通りの事を追って順に行っていくのだが、このユグドラシルは違う。自由度が非常に高く、行える事の幅が圧倒的に広いからこそチュートリアルもそれぞれによって分けられているのだ。その都度チュートリアルを個別に消化していかなくてはならない。このLVならば確実に戦闘は終了しているだろう。
スキップした?いや、それでも彼女がコンソールを知らない事の説明がつかない、バグで表示されなかったか?などとモモンガが思考の海に沈んでいると―――
「考えすぎですよ、モモンガさん。それはあなたの良い所ですが、悪い所でもある。アンティリーネLVの詳細を見せて貰ってもいいかな?職業が気になるのでね。」
「えっ?いいけど...どうやるんだろ?」
これを...こうしてだね...っとたっちが優しく教えてあげている。先程のモモンガの時とは明らかに彼女の雰囲気が違う。くそ、このリア充のイケメンが...いやイケ虫が...などとモモンガが少しの嫉妬に狩られていると―――
「ファイターLV12か...アンティリーネは剣士なんだな。」
「えっ!?う、うんそうです。」
自分が剣士だと言い当てられた事に彼女は驚きを隠せない。そんな事まで分かってしまう物なのか。
「まぁ、間違いなく魔法詠唱者ではないとは思っていたが。服装も剣士の”旅立ちの装い”だしな。」
嫉妬の渦から戻ったモモンガが二人の会話に加わってくる。旅立ちの装いは確か人間種の剣士系の職業で始めたプレイヤーが初めから装備している防具アイテムであったはずだ。
旅立ちの装いという言葉を聞いたアンティリーネがなんのことだろう?っと頭の中に?マークを浮かべながら自身の体を見る―――そして
(えっ!?なっ、何これ!?)
驚愕がアンティリーネを襲う。自身の目に映るのは就寝する前に来ていた寝間着姿ではなく―――非常に質素なそれでいて動きやすそうな服装をしている。
(いつから?もしかして起きた時からずっと?ビックリする事が多すぎて全然気づかなかったよ!)
寝て起きたら自分の知らない場所に一人置き去りにされ、あまつさえ殺されかけたのだ。気づかなかったのも致し方ない。驚愕に彩られたアンティリーネをよそにモモンガが言葉を続ける。
「剣士であるならアンティリーネ、君は運がいい。ここにいるたっちさんはユグドラシル最強の剣士の一角だからな。学ぶ事は非常に多いと思うぞ。」
”ワールドチャンピオン”という職業がこのユグドラシルには存在する。ユグドラシルに存在する九つのワールドマップにおいて最強を決める公式の大会が開かれた事があった。その大会で優勝しその世界において最強の称号を得た者だけに贈られる。それがワールドチャンピオンであり、たっち・みーはその一人【ワールドチャンピオン・アルフヘイム】である。
世界で一番つよいんだぞ~っとモモンガが自分の仲間をべた褒めしている。世界で...一番?このおじさんはそんなに凄い人だったんだ。
「そこまでにして下さい、モモンガさん。流石に恥ずかしい。しかしモモンガさんの言うとうりだ、剣士であるならば私が教えてあげられる事は多いと思う。」
その言葉を聞きアンティリーネの心のなかに喜びと恐怖の二つの感情が顔をのぞかせる。世界最強の剣士から教えを乞う事ができるそれはいったいどれほど凄い事なのかと、もしかしたら自分も今より強くなれ、母に認めてもらえるようになれるかもしれないという喜びの感情と、それでも強くなれずに母から今以上の失望を買ってしまうのではないか?という恐怖とが彼女の心の中で渦を巻きせめぎあっている。―――少しの沈黙の後せめぎあいが終わり彼女は言葉を吐いた...
「たっち...さん、私、強くなりたいんです。だから...戦い方を教えてください。」
その言葉は震えていた...悲痛な叫びにも聞こえなくはない。しかしその声音とは裏腹にその中には一つの、そう―――覚悟のような物が垣間見えた気がしたのだ
そう語りかけてきた少女にたっち・みーは答える―――あぁ、もちろんさ。強くなろう、一緒に...っと
♦
「話は纏まったようですね。そうなれば善は急げです。とりあえずはその装備では色々と頼りない、店売りでもいいのである程度装備を整えましょう。」
二人の会話が終わるや否やモモンガが口を開く。時間も勿体ないし動くなら早い方がいいだろう。アンティリーネの装備は非常に頼りない、そんな装備で戦闘させてもし死なれでもしたら―――ゲームなのでなんの問題もないのだが―――ちょっと心苦しい、折角彼女がゲームを真剣に楽しもうとしているのだ。やる気を出している時にそんな事になってしまえば水を差す結果に繋がりかねない。
「えっ?お店ですか?お、お金なんて私持ってません。」
店売りと聞いてアンティリーネが慌てて口を出す。買い物ができるようなお金など持ってはいない。
「あぁ構わないよ。それぐらいは私が払おう。初心者に見繕うくらいなら大した金額にならないしね。」
で、でも...っと申し訳なさそうな態度をとるアンティリーネにたいしモモンガが助け船をだす。
「子供が気を使うんじゃないよ。しかし心苦しい気持ちも分からないでもない。ならばこうしよう、装備は貸しとしモンスターを倒した際のドロップ金貨や見合うデータクリスタルの提供で順次返していく。そうすれば戦闘訓練しながらでも問題ないはずだ。」
どろっぷ?でーたくりすたる?あぁもういいや、それで、だってわかんないもん。
もはや投げやりだ。それで大丈夫ならそれでいいだろ。多分。少女が了解の意を返した。
「よし!決まりだな!それでは改めてよろしくアンティリーネ。」
「私もよろしくだ。アンティリーネ。それではモモンガさんよろしくお願いします。」
たっちがそう言い。モモンガが分かりました。たっちさん。と了解の意を示す。―――そして...【転移門<ゲート>】最高位の転移魔法が唱えられ三人の目の前に時空間の狭間のような大きな穴が現れた。ふぁっ!!?っとアンティリーネが驚きの悲鳴を上げる。
「それでは、行きましょうか、たっちさん、アンティリーネ。」
「えぇ、場所は...やはり我々のホームである”ヘルヘイム”へと向かった方がいいでしょ。顔見知りも多いし、何より我々にとってはあそこが一番安全だ。」
モモンガもたっち・みーも異業種であり敵は非常に多い。二人だけならばなんとか切り抜けられなくもないが、彼女―――アンティリーネを守りながらだと非常に不安が残る。故に”ヘルヘイム”である。ヘルヘイムは異業種にとって有利に運ぶフィールドが多いマップであり、またその事から多くの異業種プレイヤーがホームにして居座っている。そんな中で異業種狩りをしようなどという人間種プレイヤーは少ない。もしそんな事をすれば他の異業種プレイヤーから袋叩きに合うだろう。そのような条件を加味した結果、場所はヘルヘイムが最適と言える。
「?どうした、アンティリーネ早く行こう。時間が惜しい。」
「...うん...はは、そうだね、モモンガさんの言うとうりだね。」
アンティリーネがモモンガに対して言葉を返す。そこにはもはや全てを諦め達観したかのような少女の姿があった。もしこれがゲームではなく現実の世界であったならその姿を見た全ての人間が一様に口を揃えてこう言うだろう。”目が死んでいる”と。
とぼとぼという風にアンティリーネが【転移門<ゲート>】に向かって歩み寄り二人に連れられヘルヘイムに向かっていった。モモンガと共に【転移門<ゲート>】に入っていくその様はさながら生前罪を犯し、死神に地獄に連れていかれるような光景を連想させた。
♦
ガヤガヤと人の歩く音や喋り声が耳に入ってくる。その光景だけみれば活気のある大都市といった感じを持たせるこの場所はヘルヘイムの端に位置するプレイヤー達の交流都市である。ただ一つ普通と違っているのは―――その全てが異業種という事だろうか。見渡す限りの異業種。その中に人間種の姿は一つもなく地獄に迷い込んだのでは?っと錯覚してしまう程だ。この都市は異業種に人気の高い場所でありまた、人間種が立ち入る事は殆どない。いつもは迫害されている異業種のプレイヤー達がなにも怖がる事無くのびのびとゲームを満喫している。そう、ここは異業種たちにとっての楽園なのだ。
そんな中ゆっくりと歩を進める三人の集団の姿があった。モモンガ達である。ハーフエルフの少女を連れ悠々と歩く姿は、人間を捉え連行していく地獄の死者の様にも見えなくはない。
「あっ...あわわわわ。」
その三人の内の一人アンティリーネが余りの光景に言葉にならない悲鳴を上げていた。
「ははは。大丈夫だぞアンティリーネ。皆プレイヤーだ怖くないぞ。」
「皆こんな身なりだが怖くはないさ。優しい人達ばかりだ。」
「そ...そうなの?でも...流石にこの光景はビックリしちゃうよ。」
空間の穴を抜けてきたかと思えばその先に見えたのが地獄の軍団が集っているこの光景だ。本当に地獄に連れてこられたのかと錯覚してしまった程である。そんな会話を続け歩き続けている内に目の前に立派な建物が見えてきた。
「おっと。話していたら着きましたね。」
モモンガが着いたと言っている。ここが例のお店なのだろう。
「いつ見ても立派ですねこのグラフィックは、凝ってるな。流石はユグドラシル、最先端だ。」
モモンガとたっちが他愛無い会話をしながら店の扉を開けた。途端ギギ、ギギィっと不気味な音が聞こえてくる。流石!音も凝ってるな!ヘルヘイムっぽいなどとたっちがはしゃいでいる。これ入っても大丈夫なんだよね?大丈夫だよね?
店の中に入ると中には多種多様な武器―――剣だけではなく、盾や鎧、ローブやワンドまで様々な物が置かれていた。部屋の奥に人影が見える。人間の女性の様だ。―――しかしよくよく見るとその存在は人間ではない。人間に限りなく近い容姿をしているがその顔に見える血のような赤い瞳、青白い肌、唇から少し覗かせる牙が彼女が人間ではないと強調している...そう、その存在は。
「ヴァ?ヴァンパイア?」
アンティリーネでも知っている数少ない、それでいて非常に有名なモンスターである。しかし聞いた事があるヴァンパイアは非常に悍ましい姿をしているはずだ。しかし目の前にいる存在は真逆であり見目麗しい美女である。同性であるアンティリーネですら目を奪われてしまう程だ。
「なんだ?ヴァンパイアは知っているのか?彼女はこの店の店長で”NPC”だな。店長アイテムが見たい一覧を表示してくれ。」
「畏まりましたお客様。グラフィックはどう致しますか?」
「あぁ、それも頼む。」
モモンガが店の店長と話をしている。知らない言葉ばかりだが彼女はもう気にならないどうせ分からないのだ。後はモモンガに任せておくのが正解だろう。そんな事を考えていた時彼女がある一つの事象に気づいた。明らかに違和感を持つそれは...。
「あれ?モモンガさん、このお姉さん口が動いてないよ?」
これが違和感の正体である。先程から会話を見ていて気付き最初は目を疑ったが幻覚ではなかった。目の前の美女は喋っている。しかし口が動いていない。明らかに異常だ、ヴァンパイアとはこの様な生物―――アンデッドであるが―――なのだろうか?モモンガに疑問を投げかけたアンティリーネであるが、モモンガから帰ってきた言葉はとんでもない物であった。
「ん?そりゃあゲームなんだ、動かないだろ。アンティリーネだって動いていないじゃないか?」
一瞬の沈黙―――そして
「はっ?えっ?私も?えっ?」
訪れる大混乱―――モモンガから信じられない言葉が返ってきてアンティリーネの脳内はパニックに陥る。この訳の分からない状況に陥ってから一番の衝撃かもしれない。
「モモンガさんの言う通りだよ。見てごらんほら。」
静かに聞き入っていたたっちがアンティリーネにたいして鏡を取り出し正面に向ける。目の前に映っているのは見慣れた自分の顔だ。特に変わった様子は見られない。だが―――
「...私はアンティリーネです。」
鏡に向かい言葉を発する。そして―――口が動く事はなかった
「う...うそ?なんで?...どういう事なの?」
信じられない光景にアンティリーネが混乱しているとモモンガが優しい口調で説明をしてきた。
「アンティリーネ、ユグドラシルはDMMO-RPGの中でも最先端のサイバー技術とナノテクノロジーを元に作成されている。脳内コンピューター網...いわゆるニューロンナノインターフェイスと呼ばれるシステムとユグドラシル内の専用コンソールとを連結させる事によって脳内で考えたアクションを即座にゲーム内アバターに電子信号として送り込みあたかも現実で動いたかのような動きを実現させる―――」
濁流の様に押し寄せる言葉は留まる事をしらない―――
「つまりそれだけ多くの情報量が脳内コンピューター網を通しゲーム内に送り込まれる事となるその量は膨大だ。それだけでも処理するのは大変だろう?だから口や耳を動かすなどの細かい部分は極力カットされている。処理に時間が掛かるからね。しかし戦闘などで使用される手や指、足などは他の部分よりもより細かく柔軟に動かせるよう設定されているんだ。だから口を動かすなどの無駄な部分は削られざるを得ない。分かってくれるね?」
分っかんねぇよ!!なんだそれ!!魔法の詠唱か!!?などと幼女にあるまじき切れ方をしそうになったアンティリーネだが、寸前の所で堪える。モモンガに悪気はないのだ。親切に教えてくれようとしているのだろう。しかしもっと分かるようにならないものかっとアンティリーネは思う。長いし、なんか早口だ。
「...すぅー...ふぅ...。」
アンティリーネが大きな深呼吸―――口は動かないが―――を行い何かを探す動作をする。何事だ?っとたっちとモモンガが見守っていると―――長い間時間をかけやがてやりたい事が終わったのかアンティリーネが正面を向き―――そのすぐ後に”だらん”と手をたらし下にうつむく...すると
”ピコン”という風にアンティリーネの頭上に”分からん”といった風なとぼけた顔をしたアイコンが現れその上には?のマークが浮かんでいた―――モモンガ達は一瞬沈黙し、その後...ドッという風に笑い声が上がった。
♦
「それではぼちぼち始めるとしましょうか。」
ここはヘルヘイムのとある街道の外れ、初心者専用の地帯であり出没するモンスターも非常に非力な物ばかりが集まる。その場所で二人の異業種と一人の人間種とが円を囲む様に立ちすくんでいた。
「はい。お願いします。たっちさん。」
たっちにたいし気合十分という風にアンティリーネが声を出す。最初に着ていた初心者装備を変更し少し上質な―――それでもランクは低いが―――装備を身に纏っている。軽戦士を思わせる服装にショートソードを手に持ち相手―――たっちに相対している
「気合十分だな。よし、それじゃあまずはモンスター狩りの前に君の動きを見てみたい。訓練システムを作動させているからLVは君と同じになっているからね。構えてごらん。」
「はい!」
気合の入った叫び声を上げアンティリーネが剣を構える。母との訓練を通して学んだ構えだ。後ろからモモンガががんばれ~っと軽い声で応援してくる。そんな軽いモモンガとは裏腹にたっちの胸中に渦巻いていたのは全くの別の感想であった。
(堂にはいっている...。この子は初心者ではなかったのか?)
剣を持つ腕、相手に構える姿勢、次の行動に移るための足幅。明らかに素人の構えではない。もしかしなくてもこの子は”現実世界”でなにかの武術をたしなんでいるであろう。そう確信させる物がそこにはあった。
「いい構えだ。それでは、私も。」
スッ...たっちが構えをとる。しかしその構えはアンティリーネが予想していた物とはまるで違う。もっと”異質”なものだ。
「...たっちさん。なんですかそれ?なんで”剣”を”持たない”んですか?」
そうアンティリーネが少々不機嫌な声音で相対する男、たっちに喋り掛ける。眼前に立つ男の姿勢に対して思う所があるような口ぶりだ。
―――それは異質だった。たっちの左手が体の正面に突き出した状態を保ち。腕はL字に折れ中心線をなぞるかの様にそびえたつ。そしてその左手には小柄な盾が取り付けられている。足はその盾の構えにふさわしい様にどっしりと構え体は綺麗な垂直を保っている。
「言っただろ?君の動きを見たいと。これは悪ふざけでやっているわけではない。そう見えたなら謝るさ。さぁ、来なさい。」
ふざけられている訳ではない事に若干の安心をしながら気を引き締める。ならば一心不乱に打ち込むまでだ。
「分かりました。それでは...はっ!!」
足を踏み込む。―――瞬間、爆発的に加速したっちに斬りかかる。正面は盾で覆われている、狙うならば下段。腰から下だ。
ズズ...。思考が狙いを定めたその瞬間加速中にも関わらずアンティリーネの体が前傾に低く落ちる。小さな体が更に小さくなり前方に突起したその様は鋭利な刃物を思わせる。たっちの前方―――右斜め下から繰り出される”横薙ぎ”がたっちの右足を切りつけようとした―――その時
ガン...アンティリーネの右腕が上方に弾け飛ぶ。一瞬思考が停止し―――その後思考が回転しだす”何が起きた?”っと考え、前方を向いたその時―――目の前には盾が迫って来ていた。
(!!!?まずい!避けなきゃ!)
純銀の盾が眼前に迫る、このままではまずいっとアンティリーネが後方に―――バックステップを用いて後退しようとした...っが体がある一つを残し後退を拒否した。その理由は...
(右足が動かない!)
アンティリーネが見つめたその先―――自分の右足、そこに覆いかぶさる純銀の足甲がめに入り...
ガッ!!純銀の盾がアンティリーネの胸元付近に接触する。それに追従するかの様にたっちの体も覆いかぶさってくる。ぶちかましの要領で当てられアンティリーネがそのまま地面に叩き伏せられた。
(~~~~―――!!!)
地面に伏し声にならない悲鳴をアンティリーネは上げる目線の先には純銀の盾、それが胸の上から喉元付近までを圧迫している。
(抜け出さなきゃ...でもなんで”腕”が動かない)
喉元に押し付けられた盾、それがアンティリーネの両の肩の関節を同時に圧迫している、関節の機動力を奪われた今、彼女の動かす事の出来る部分は両腕前腕部のみ...そしてここからの脱出は非常に困難であろう。
二人の死闘のその端...片隅で見守っていたモモンガは一人戦慄していた。”ここまでする”とは思っていなかったのである。たっちが動きを見たいと言った時は軽く当たって終わりかと思っていたが始まったのはモモンガが予想していた物の遥か斜め上をいく物であった。アンティリーネの想像以上の動きに初心者だと思っていたモモンガは面を食らっていた。そして―――それ以上にたっちの動きに...
(嘘だろ?斬りつけてきた腕を蹴り飛ばしたぞ...)
そうアンティリーネが受けた謎の衝撃それはたっちが剣を持つ”腕”をつま先で蹴り飛ばしたのだ。それも手首を正確に射抜いて。それは紛れもなく神技であった。
【逮捕術】という武術がこの日本には存在する歴史を紐解いていけば室町時代にはその武術の存在は確認され体制が確立されたのは昭和後半あたりだろうか。
「突き」「蹴り」「投げ」はては「締め」「固め」までを収めるその姿は総合格闘技を思わせる...がそれとは少し異なる点が存在する。”警棒”の存在である。逮捕術は肉体による近接格闘の他にも武器を持っての戦闘も想定された武術であり総合格闘技とは一線を画す。
「詰み...かな?アンティリーネ。想像以上だったよ。」
そう言い放ちたっちが力を抜く、押し付けられた盾が胸から離れていく。
「...ここまでされるとは思いませんでした。」
これは本音だ。ここまでの事をされるとは思っていなかった。しかし逆を言えば手を抜く事無く相対してくれたという事に少しの喜びが沸いてくる。
「あぁ、ごめん。ここまでする気はなかったんだが。先程も言った様に想像以上だったからな...手を抜くのは失礼だと思ったのさ。」
「あっいや謝らないで下さい。でもすごいな、あんな風な戦い方は初めて見ました。盾であんな事が出来るんだ。」
「どんな物でも使い方しだいさ。特に盾は”仕事上”使うからね。」
たっち・みーのリアル世界での職業は警官である。日本で唯一盾―――実際はこれよりも大きくライオット・シールドという―――を用いる職業であり逮捕術もその一環だ。
たっち・みーにとって盾は守る為だけの物にあらず、”殴打””押し付け””ぶちかまし”攻撃の一部であり繋ぎの一つだ。
「すごいな...本当に凄い。私にもあんな戦い方ができますか?」
アンティリーネが子供特有の素直な気持ちを表現してくる。裏表のないその言葉にたっちは少々の恥ずかしさと照れくささを感じてしまう。
「特訓しだいだな...っと言いたい所だが君の体では少々不向きかもしれない。この戦法は体の大きさも重要になってくるからね。固執せず自分のスタイルを確立させるべきだ。」
そうかぁ~っと明らかに落胆の声を上げるアンティリーネにたっちは、まぁでも体が小さくても有用な戦法も存在するが...っと言葉を続ける。その途端目を輝かせながら、あるんですか!?っと聞いてくるアンティリーネにたっちはこう答えた。
「殴るのさ。」
♦
「はっ!!」
「ギギャア!」
大きな断末魔をあげながらモンスターが地に伏せる。先程の攻撃が決定打となったのかモンスターは倒れた後に少し動いた後”光の粒子”になり消えていく。その後に金貨が遅れてチャランチャランという効果音をたてて出現した。
「だいぶ慣れてきたみたいですね。」
「えぇ、最初の戸惑いが嘘の様です。迷いがなくなってからの動きは私が見ても素晴らしいと思います。」
モモンガの言葉を聞きたっちが自身の感想を述べる。相手にしているモンスターは最底辺の”ゴブリン”であるが全く相手になってはいない。斬りつける際の姿勢、その後の足運び、たっちからみても素晴らしいと思えるものだ。
二人で会話をしていると前方から戦闘を終えたアンティリーネがトコトコと走って来ているのが見えた。
「たっちさん、勝ちましたよ私!」
「あぁ、お疲れ様。しかし君のLVと装備ならば”勝てる”のは当たり前だ。重要な事はそこではない”過程”が重要なんだ。」
「過程?」
「あぁ、その過程を踏まえても今回の戦闘は合格点をあげてもいい。」
やった~っとアンティリーネが万歳しながら喜んでいる。その隣でモモンガも一緒にやった~っと言いながら万歳し飛び跳ねている。二人でやった、やったと言いながら飛び跳ねる様はひどい絵面だ。主にモモンガのせいであるが。
「モモンガさん、アンティリーネ一旦落ち着いて。後一匹くらいゴブリンを討伐して今日はもう切り上げませんか?時間も結構経っていますし。」
「あぁ、そうですね。ついはしゃいでしまいました。アンティリーネ、ラス一頑張って行って見ようか。」
「えっ?う、うん。」
歯切れの悪い言葉を少女は吐く、毎日特訓ばかりで友達とろくに遊んだことも無い、遊ぶ友達もいなかった。この楽しい時間が終わりを迎えようとしている事...その事に悲しい気持ちが押し寄せてくる。
「あぁ、それと...うん、そうだな。アンティリーネ最後なんだお試しで使ってみようか。ふふ喜べ私の”二軍”ちゃんを貸してあげよう。」
(にぐん?なにそれ?人の名前かな?にぐん...ニグン?...ちゃん?ニグンちゃんを貸す?...はっ!もしかして”奴隷”の事!?)
アンティリーネに戦慄が走る、まさかたっち程の誠実な男が奴隷を扱っているとは思わなかった。いや、世界最強の男なのだ逆に持っているくらい普通なのかという思いも沸くがそれでも、しかし...―――
「た、たっちさん!奴隷は駄目です!私使えません!」
「「はぁ!!??」」
急に奴隷と言いだしたアンティリーネの言葉に今度はたっちが戦慄する。隣に立っていたモモンガもそれを聞き同じように驚いていた。
「ど...奴隷?どうしたらそうなるんだ?」
「アンティリーネ私は君に盾を貸してあげようかと思っていただけだ、興味を持っていたからね...その盾は昔私が愛用していたもので、今でも性能的には二軍に位置する所にある。という意味だよ?」
「えっ...?そうなんですか?すっすみません。私てっきり人の名前かと...。」
人の名前に聞こえますかね?っとたっちがモモンガに顔を向け問いかけている。自分の国では普通にいそうな名前だがこの辺りでは違うのだろうか?
「とっ、とにかく一度お試しで使ってみないか?形状も今私が使っている物よりもコンパクトで使いやすいと思う。」
「!!はい!使ってみたいです!」
「いい返事だ。しかし...奴隷か。その言葉を聞くと憂鬱になるな、私達も”社会”の奴隷みたいな物ですしね、モモンガさん。」
たっちとの戦闘を経てアンティリーネの中で盾の価値観がガラリと変わった。盾とは”守る為の物”という固定観念が吹き飛んだ気がしたのだ。使わせてくれるというなら渡りに船であろう。隣ではたっちに問いかけられたモモンガが、奴隷...?違うな...俺は社畜だ...などと言っている。社畜?なにか今自分はモモンガの”闇”を垣間見ているような気がする。
「モ、モモンガさん?ふぅ、まぁいい。アンティリーネこれがその盾だ、使ってごらん。」
そうたっちが言い右手が空間に吸い込まれる。この光景は前にも見た。この辺りの人達にとっては普通の事なのだろう。そう頭の中で思っていると空間から一目で高価だと分かる立派な盾が出てきた。色は純銀で枠に薄い青色の線がはいっている。たっちの言うとうり形状は非常に小さい、これならば自分でも振り回されずに戦えるだろう。
「すっ...すごい。これを使っていいんですか?」
「あぁ、もちろんさ。さぁ、装備してみようか。」
そう言われアンティリーネが手を動かし何かの動作を行っている。コンソールを開いているのであろう、今身に着けている物を装備した手順を踏み、そのすぐ後に”シュン”という風に盾がアンティリーネの左腕に現れた。そして装備された盾を左手を動かしながら確認している。しかし妙だ、自分の思い描いていた物と少し違う気がする。
「気づいたかアンティリーネ。それは盾とは言っているがどちらかと言うと”手甲”の一種だ。左手がフリーになっているだろう?」
それこそが違和感の正体であった。この盾には”持ち手”が無い、その代わりに二つのリングのような物が付いている手首よりもさらに上、前腕部の真ん中あたりにキッチリと固定されていて、盾が前腕部を多い隠すようになっている。そして手首から先―――左手は完全にフリーだ。
「普通は盾は手で握りどっしりと構えるのが一般的だ。それが基礎でありセオリーともいえる。だが、私はそれが完全にいい事だとは思わない左手を潰してしまう以上行動の選択肢を一つ減らしてしまう。指や手は人が最も良く使う部分の一つだ、人体において繊細な動きを可能としている部分でもあり、そこにあるだけで”攻撃”または”防御”の一助になりうる。」
アンティリーネは思案する。たっちの言っている事は筋は通っている様に思える。だが果たしてそんなに簡単にできる物だろうか?と、行動の選択肢が増えるという事は”思考”の幅も増えるという事。この盾を使用する以上左手で行える行動が”一つ”から”二つ”に増える。複数の選択肢を浮かべる思考にたいし体はついていくのだろうか?自身と同格の相手との戦闘の場合その一瞬の思考の”間”が綻びとなり、致命打となりそうな...そんな予感を覚えてしまう。
「流石だな...本当に流石だ、君は。君の考えている事はおおむね分かる。この盾は”一長一短”だ、メリットの中に同じくらい...いや、それ以上のデメリットも隠されている。しかし使いこなせれば相手にとっては大きな脅威になりうる。君の小さな体を生かす為には行動の選択肢が増えるという意味は大きい。」
「...分かりました。やってみます。」
覚悟は決まった。使いこなして見せる。沸々と闘志がアンティリーネの中に沸いてきたこれが”強く”なる為の第一歩なのだ。しかしたっちの言っている事は非常に分かりやすい説明は長いが理解ができる。説明量的には同じなのにモモンガの言っている事はさっぱりだ。なにが違うのだろうか?
チラリとモモンガの方をアンティリーネは見る。モモンガも少し考えている。モモンガもこの盾の役割について思う所があるのであろう。目に見えるメリット以上に潜むデメリットが大きい。二つを天秤にかけあっているのであろう。流石だ、たっちさん程の人物とコンビを組んでいるだけの事はある...っとアンティリーネが頭の中で思っている際、当のモモンガは...
(わっからな~い。何を言ってるのこの人達。これだから脳筋どもは。)
全く理解できてはいなかった...―――
初めはたっちの話を聞いて、凄いなその発想!たっちさんはやはり凄い!などと思っていたのだが急にアンティリーネが悩みだし、それを見たたっちが流石だ。とか言いだす始末だ。メリットとか潜むデメリットとか何なの?きちんと説明してよ。何二人で通じ合ってんの?と言いたくなる。
モモンガが一人のけ者にされふてくされていると。コッコッ...っと小さな足音が聞こえてくる。どうやらモンスターがポップしたようだ。三人が一様に振り向きその姿を確認する―――そして現れたのは...
「ゴブリンソルジャーか...」
ゴブリンソルジャー。そのLVは15...前衛型のモンスターであり現状アンティリーネよりは格上だ。
「どうします?たっちさん?明らかに格上ですよ?」
「そうですね...アンティリーネ。」
たっちに声をかけられる―――そして
「戦ってみるんだ。全力で。」
たっちさん!?っとモモンガが驚きをあらわにする。しかしそのモモンガとは対照的にアンティリーネから発せられた言葉は了解の意であった。
「はい!全力で戦ってみます!」
その言葉を皮切りに本日最後の戦いの幕が切って落とされた。
♦
戦いは熾烈を極めた、アンティリーネの剣線が煌めき、ゴブリンソルジャーの盾がそれを弾く、弾かれた剣は後方に下がり、ゴブリンソルジャーのスキルが炸裂する、アンティリーネが左方に飛びのきそれを回避する。”一進一退””激戦”であった。
いつまでも続くかと思われた戦いだがやがて―――決着の時が訪れた。
「!!そこだ!」
ゴブリンソルジャーの体勢が崩れ隙が生まれた。好機とみたアンティリーネが剣を両の手に持ち突進する。放つは露出した顔面への”横薙ぎ”―――だがゴブリンの崩れた体勢が瞬時に戻り即座に盾を構える。防御の構えだ。
「!!まずいですよ、たっちさん!」
「...。」
たっちは黙して語らない。このままでは弾かれその隙をつき逆に決定打を貰ってしまうだろう。アンティリーネは体ごと行っている止まる事はできない。そしてモモンガの目に映る横薙ぎ、それがゴブリンソルジャーの盾に接触しアンティリーネの剣が弾かれる―――かに思われた。
スッ...剣が盾の前方をかすめる。空振りしたのか?っと見守るモモンガが思う―――がアンティリーネの勢いは止まらない。
ギュルン...アンティリーネの体が右からの横薙ぎの勢いに乗って左に加速する。右足を軸に体が回転し速度が更に増す。”遠心力によって”―――
アンティリーネの頭の中に一つの言葉が思い出される。そう...一つの、自分にもできるだろうと言われた一つの言葉が...―――殴るのさ―――...
「...あぁ...。」
この戦闘中たっちが初めて口を開く。
「くぅらぁええぇぇぇーー!!」
アンティリーネの怒号が響く
「...素晴らしい。」
”ガゴン”左腕の盾がゴブリンソルジャーの盾に接触し鈍い音を放つ。全身の力と遠心力の乗った盾が裏拳の要領でぶつかり―――ゴブリンソルジャーの盾を弾き飛ばした。
ゴブリンソルジャーの腕が後方にはじけ飛ぶ、が即座に再度防御の体勢に入ろうとする―――だが目の前には両手で剣を握り上段に剣を構えるハーフエルフの姿があった。
「はぁぁーー!!」
上段からの”叩きつけ”これが決定打となり、ゴブリンソルジャーが断末魔をあげ光の粒子になり消えていく...そして―――激闘は幕を閉じた
♦
「お疲れ様アンティリーネ。」
「えぇ、本当に...疲れましたよ。」
クタクタですぅ~っとベッドに寝ころびながらアンティリーネが喋っている。ここは先程の都市のプレイヤー待機室の一つ。ログアウトするプレイヤー達が使用している安全地帯の一つだ。
激戦は幕を閉じ、時間も迫ってきた...そう―――ログアウトの時間が
「ここにいれば誰かに襲われる事もない。ログアウトする際はここを使うといい。」
ろぐあうとが分からないんだけどねーなどと頭の中で考える。たっち達はそれを行うのだろうか?...つまりは―――これでさよならだ。
「それと...アンティリーネ...君さえよければ...その。」
たっちにしては歯切れが悪い。アンティリーネの心に?のマークが浮かぶ。
「いや、何でもない。」
そうたっちが言葉をこぼした。しかしすぐにモモンガが言葉を被せてくる。
「たっちさん。いいですよ、俺は...気に入ったんでしょ?この子を。」
「!!...モモンガさん...ですが...それでは。」
自分たちの作りたい”物”とは違う。そう返そうとたっちが口を開こうとした―――しかしモモンガもそれを予期していたのか先に言葉を放つ。
「いいじゃないですか?想像していた物と少し違うくらい。漫画でもよくあるでしょう?最初の設定と後半の設定がおかしくなる事くらい。それと一緒ですよ。」
「モモンガさん...それは...少々違う...いやだいぶ違うような。」
「あぁ~...もう!細かい事は良いって事ですよ!これはゲームなんです!縛られてしたくないじゃないですか。」
なるほど...っとたっちは思う。どうやら気を使ってくれているようだ。
「まぁ、全てはアンティリーネ次第ですが...アンティリーネ。」
二人の会話を静かに聞いていたアンティリーネが自分に対して飛んできた言葉に驚き、うっうん、何?っと言葉返す。自分を置き去りにどうやら重要な話が進んでいた様だ。
「君さえ良ければ、俺達と一緒にこのゲームを遊ばないか?そう...俺達の”三人目”の仲間になってくれないか?」
「私からも頼む。君がどこまでいけるのか見てみたくなったんだ。」
「い、いいの?私なんかが、二人の仲間になっても?」
その言葉を聞き、二人が一瞬沈黙し―――そして、もちろんさ...っと言葉が返ってきた。
「ありがと...モモンガさん。凄くうれしいよ。」
「そうか?それは良かった俺達もうれしいからな。それと...一つ提案なんだが、あだ名で呼んでもいいかな?アンティリーネは少し長くてね。どうだ?」
「あだ名?」
「あぁ、愛称みたいなものかな。」
ピシャーっとアンティリーネの背中に雷のような物が落ちた気がした。愛称、それは友達や家族などが名前を簡略し呼び合うものだと聞いた事がある。友達はいない、親からはこれ、名前すら満足に呼んでもらえなかったアンティリーネに降って沸いた真のコミュニケーションネーム...。余りの嬉しさに、ふひ、ふひひっと声が出てしまいそうだ。
「いいよ!是非!是非おねがいします!!」
「うぉ!急にどうした。そんなに嬉しいか?ならば...ん~どうするか~。」
あっだな、あっだなっと一人テンション爆上げ中のアンティリーネ、その目の前には必死に考え事をするモモンガ...そして、それを見ているたっち・みーはというと...
(まずい!まずいぞ!これはまずい!)
一人焦っていた。モモンガに名前を決めさせるのは非常にまずい、間違いなく碌な名前にならない、仲間になったばかりの二人の関係が崩れてしまう恐れがある。とめなければ、しかしどうやって?っとたっちが考え込み意を決して口を開こうとした―――その時
「よし!!決まったぞ!!」
オワッタ...たっち・みーが絶望に打ちひしがれる。目の前にはホント!っと今にも飛び跳ねそうな少女の姿がある。今から自分はこの無邪気な少女の落胆する姿を見なければならないのだと、覚悟を決めた―――すると
「リーネ。」
うん?っとたっち・みーの頭の中で?マークが浮かぶ、どうやら今日は疲れているようだ幻聴が聞こえてくる。
「お前の愛称は今日からリーネだ!よろしくなリーネ!」
幻聴ではなかった―――
「りーね...うん、アンティリーネだからリーネだね!ありがとモモンガさん!」
リーネが喜びの声を上げている。たっちは余りの事態に固まっていた。まさか...そんな...まとも...だと...。
「どうしたんですか?たっちさん?」
リーネがこちらを心配そうに見て声をかけてきた。いいや、なんでもないよ。良い名前だねっと言って上げる。それを聞いてリーネが更にはしゃぐ微笑ましい姿を横目にたっちは自分を恥じた。間違っていたと、モモンガを侮っていたっと。
「ふふふ。うれしいか?実は他にも候補があったのだがこれが一番短かったからな。」
えっ?そうなの?他のも聞かせてとリーネが言いそれを聞いたモモンガが―――
「あぁ、いいぞ。”みみなが”と”しろくろ”だ!」
―――間違っていなかった。とたっちは自分への自信を取り戻したのであった...
♦
「それじゃあリーネお疲れ様だ。ログアウトの仕方はさっき教えたとうりだ、また明日な。」
「うん。ばいばいモモンガさん」
瞬間”フッ”っとモモンガの姿が消えるどうやらこれが例のログアウトらしい。たっち・みーの姿はもうない、先にログアウトしたようだ―――
「疲れた。本当に。」
一日で余りに多くの事が起きた。心身共にくたくただ。就寝しようとベッドに横になろうとし―――その前にコンソールを開いた
(これかな?)
リーネは教えられた場所に指を持っていきその”箇所”を押してみる―――が何も起きない
「ログアウトってこういう字なの?これ...字なの?ぐちゃぐちゃじゃん。」
押した指先のその先には文字化けしぐちゃぐちゃになっている文字がならんでいた―――
リーネは”ボフッ”っとベッドに飛び込み、そして寝転がる。これ以上やっても無意味だ、今日はもう寝よう。
(お母さん、心配してるかな?して...くれて...る...よ...ね。)
リーネは眠りについた。母への希望の言葉を胸に―――
たっち「おらー!働け働けニグンちゃーんー。」
リーネ「やめて!ニグンちゃんのHPは0よ!」
ニグンちゃん「ウリィィィィィィ」
ちひろです。なんか無茶苦茶長くなってしまい申し訳ありません。何度か複数話に分けようかと考えたのですが分けると分けるで退屈になってしまいそうでできませんでした。
5000~6000字くらいで終わらせる気でしたが無理でしたすみません。力不足です。
今回も「捏造」「原作改変」オンパレードでしたね。ここまで変えて怒られないかが心配です。
捏造、原作改変
①まずたっちさんとモモンガさんが二人しかいない時点で意味が分からないと思います。たしか、ちひろの記憶が正しければモモンガさんは五人目だか六人目のメンバーであって二人で三人目を探している事自体ありえません。完全に改変です。
理由としては多分その時点である程度のクランの目安といいますか方針が決まっていたと思うんですよね。だから人間種であるリーネを受け入れさせる為にこのような形になりました。これでも結構無理やりですね。
②NPCが喋る はいこれも「うん?」っとなったでしょう。ちひろも一瞬うん?っとなりました。一応声を入れて自動処理できると原作ではありますが。会話自体は不可能なんですよね。まぁこれもあの状況を作る為に仕方なくといいますか・・・お許しを。
③ 指などの繊細な部分の動き とんでもない捏造だと思います。とりあえずはこの設定ないと進めれる気がしなかったので。
他にもいやいや、や、くぅくぅずが~となるような穴が沢山散見されると思います。訓練システムなんて意味わかんないですもん。
しかしちひろの実力ではこうでもしないと進めていける気がしません。申し訳ありませんが広い心で読んでいただけたらなっと思います。
次回からは3000~5000字で終わらせられるように頑張ります。それでは。