あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
前回のあらすじ
モモンガパーティー、遂に地下墳墓内に侵入する。
♦
光に包まれたその瞬間、目の前に現れた場所は先程いた場所とは別の空間だった。転移は問題なく済んだ様だ、モモンガは安寧の息を漏らしていく。
モモンガが一息ついたのもつかの間、辺りから声が聞こえてくる。
まるでタイミングを見計らっていたように―――いや、恐らくは転移が条件で発動していくプログラムが組まれていたのだろう。
男の声が聞こえてくる。
『このナザリック地下墳墓に足を踏み入れたな、欲深き愚か者どもよ。』
男の声に続いたのは女性の声。
『あるいは勇敢なる者達よ。』
女性の声に続くのはまた男性の声だ。しかし先程の男の声とは違う。しがわれた声が聞こえてくる。
『愚か者か、勇敢な者か、それはこれから分かるであろう。お前達の前に現れたるはこの墳墓の支配者。』
そのしがわれた声を聴いた時、ある人物が言葉を発していく。
「あ、社長だ。」
『この地を欲する者よ、我を倒しその力を示せ。』
その言葉を最後に声は聞こえなくなった。
静寂に包まれた墳墓内に―――
「「「「「「城主ーーー!!」」」」」」
―――モモンガチームの笑い声が響き渡る。
「城主さん多忙すぎでしょ!今度はこの墳墓まで出張?恐れ入りますわぁ~。」
「おいおい、ちんちく、そういうツッコミはやめてさしあげろ。城主さんが沢山出演してくれるお陰で費用は安く収まってるんだぜ?考えても見ろ、声優さん沢山雇ったからお前の大好きなガチャの確率下げました~とかなりかねねぇんだぞ?」
「うえぇ!?それは困る!城主さんありがとう!大好きだよ!」
唐突なヘルヘイムの城主のサプライズ出演に沸き上がっていくモモンガチーム。張り過ぎていた空気が少し和らいだ気がし、モモンガは心の中で城主に礼を言っていく。道中は恐らくだが長い、常に気を張り続けていれば疲労してしまい、ここぞと言う時に集中力が保てなくなる可能性がある。
「それでは皆さん、先に進みましょう、このままお喋りを続けてビリでボス戦なんてのは嫌ですからね。」
モモンガの言葉に五人が頷いていく。その後、弐式炎雷が先頭に立ち警戒を始めていく。残りの五人もちょっとした雑談を交えつつ進む、無論警戒は怠らずに。
「ていうかやまちゃん、さっきの城主さんの言葉どう思う?この地を欲する者って言ってたよね?それってさ…ここって
「う~ん、多分…ていうか絶対そうだよね、その言い方だと。」
リーネの疑問にやまいこが答えていく。
ギルドホーム系ダンジョンとはその名の通り、攻略する事でギルドホーム―――拠点にする事ができるダンジョンであり、ある意味
通常ダンジョン攻略をした際は、大なり小なり必ずアイテムが貰える。それはデータクリスタルやアーティファクトまで様々だ。ただし、ギルドホームとして所有する事の出来るダンジョンは、ほぼ確実と言ってもいい程、
「ウルさんはこんな辺鄙な所にギルドホーム持つ気ある?」
「
ウルベルトの言う規模とは、NPC制作ポイントの事だ。基本的にギルドホーム系ダンジョンの格はこのポイントで決まると言ってもいい。
ポイントが多ければ多い程、拠点内に配置できるNPCの数は増えていく。数は力と言う様に、NPCの総数はギルドの力に直結していく。
公表されている最高ポイントは三千ポイントであり、通称三千LV拠点と言われる。ちなみに三千LV拠点は各世界に一つずつの計九個しか存在はしない。
「規模が大きければいいって物でも無くない?お金かかるよ~、要はバランスが大事なんじゃないかと私は思うな。」
ぶくぶく茶釜の言葉にはモモンガも同意だ。ギルドホームは大きく成れば大きくなる程に金貨が―――出費がかさんでいく。
代表的な物を例に挙げるなら、それはPOP破産と呼ばれる物だ。ギルド拠点にPOPする三十LV以下のモンスター達にはそれぞれ既定の維持費が発生していく。アンデッドならばその維持費はタダだが、生物、それも大きく成れば大きくなる程に出費がかさんでいく。
このPOPの費用に、拠点内の罠や、傭兵モンスター等の費用を加味しなければならない。仮に敵対ギルドから攻撃を受け、急激に出費がかさんだ際に、このPOP費用が追い打ちをかけてくる。そして費用を払えなくなったギルドに待っているのは―――破産だ。これがいわゆるPOP破産と言われる物だ。
(破産は嫌だな~、ゲームでまで金に苦しめられたくないよ。まぁ、別に現実でも困ってる訳ではないんだけどな。)
モモンガが自らの心にツッコミを入れていく。実際モモンガの言う様に、生きて行く為に必死に仕事を頑張り、金を稼いでいくのと、ギルドの為に必死にモンスターを倒し金貨を稼いでいくのとはなんとなく似ている。現実を思い出す様で嫌になるのもしょうがないだろう。
「でもさぁ、そろそろ本格的なホームを皆持ちたくない?目いっぱい弄れるやつ。」
やまいこの言葉に、チームメンバーからは確かにと言う言葉が漏れた。
「弄れるやつかぁ~、私部屋にバイク飾りたいな。」
「は?バイク?ちんちくお前バイク持ってんの?」
「持ってるよ、最近遊技場でのバイクレーシングにハマってるの。レンタルも何だし課金して買っちゃった。自分でチューニングして”ボス”と一緒に別の遊技場にアクセスして乱入するんだ…あ、勿論、身バレ防止処置はとってるけどね。」
「ボス?あぁ、たまに話に出てくる頭のいかれた奴か。」
「そうそう、その頭のいかれた奴よ。この間乱入した所凄くてね。実況までいたんだよ…まぁ結局ゴール出来ないんだけどね、プロレスするし。」
「そいつもいかれてるけどお前も結構ないかれ具合だよな。」
リーネとウルベルトの会話を聞いていたモモンガが、こいつ、バイクとか持ってたのかと思うと同時に、当たり前に課金とか言っている事に驚き、その事に対して何もツッコまないウルベルトも中々のいかれ具合だと思っていく。
「後は~、アニメ好きだからシアター作りたいな!いや、絶対作る!」
「リーネは古いのしか見ないからな~、新しいのなら私出てるのに。まぁ、声優とか興味ないか。」
「そうでもないよ?最近観たアニメの声優さんの演技凄かったもの、メールで過去を変えていくアニメなんだけど、失敗した!失敗した!って凄い迫力だったよ!確か~、確か名前は…たむら…たむらゆか―――」
「おい、話の最中悪いが―――アンデッド反応だ。総員警戒しろ!」
雑談の最中に響くモモンガの言葉で瞬時に警戒態勢に入って行くチームメンバー達。先程の軽い雰囲気は吹き飛び、瞬時に気持ちを切り替えていく。
チームメンバーの意識が切り替わっていったのを確認したモモンガが一つの魔法を発動させていく。魔法の発動と共に、反応は共有され、全員の視界に赤い点―――アンデッドの反応が表示されていく。
反応は全部で四つ。メンバー達の目の前には大きな石の扉が見え、その扉の先に四つのアンデッドの反応が表示されている。
「四体ね…取りあえずは私の出番かな。」
すたすたとぶくぶく茶釜が先陣を切るかのように進んで行く。この魔法はアンデッドの反応までは分かるが、種類、LVなどは表示されはしない。敵は未知数、だからこそのタンクである自分の出番だ。取りあえずはヘイトを稼ぎ、ヤバそうであるなら後衛に作戦を練ってもらう必要がある。
「弐式さん罠は?」
「間違いなくないぜ、茶釜の姉さん。後、隠し扉とかもなさそうだな。あの扉が正規ルートで間違いなさそうだ。」
「そ、ありがと。」
弐式にお礼を言いながら、茶釜が扉まで進んで行く。まるで散歩でもするかのような軽い足並みで進んで行く。そこには未知のダンジョンで待ち受ける敵に対する恐怖など微塵もない。
未知のダンジョン、未知の敵、それがどうした、そんな物は幾度も乗り越えて来た。どんな敵が現れようとも、ヘイトを稼ぎ捌き切る、自分の役割を全うし、仲間の一手に繋げるのみだ。
そこにあったのは自分の技術に対する確かな自信と―――仲間への信頼。
「そんじゃ開けるね。一旦中まで誘い込むから、ヤバそうなら後衛さん達支援よろ。」
茶釜が扉を開いていく。重く鈍い音が鳴り響き扉が開き切った。その直後―――雪崩を打ったように四体のアンデッドが踏み込んできた。
四体のアンデッドは茶釜を敵と認識したのか、即座に攻撃を始めていく。アンデッドの斬撃と殴打が茶釜を襲っていく―――が、茶釜は怯まない。
弾き、いなし、その体で持って防いでいく。四体を相手にしながらも、徐々に部屋の中へ―――戦いやすい場所へ後退していく。目を見張るのはヘイト管理だ。四体を相手取りながら、完全にヘイトを自分から切らさない。ヘイトを集める様な特殊なスキルを使用している訳でもなく、プレイヤースキルのみで敵を釘付けにしていく様は最早驚愕に値する。
―――<
茶釜の後方で、モモンガは冷静に魔法を発動させていく。この魔法は知識に偏ったクラスを得ていないと上手くは発動しないのだが、モモンガはアンデッドだけには特別な識別能力を有している為、問題ない。
「皆さん!敵は八十三LV!四体共です!」
「了解!後衛、支援は無しでそのまま警戒しつつ待機!仮に私達が打ち漏らしたら各々の判断で行動お願い!ニシやんいくわよ!」
「りょ!」
リーネの言葉と共に弐式が影縫いを使用しながら距離を詰めていく。奮闘する茶釜の上空に到着した弐式が一つのスキルを発動させていった。
―――<影縛り>―――
四体のアンデッド達の影が形を変え、アンデッド達に巻き付いていき、行動を阻害していく。このスキルはある一定の距離まで近づかなければ発動する事は出来ず、隠密である弐式にはリスクの高いスキルではあるが、その分、リスクに見合った束縛力がある。回数の制限もない為、ボス戦前に無駄にリソースを割きたくない今には好都合なスキルだ。
動きを封じられたアンデッドがもがき続ける中、リーネがアンデッド達に飛び込んでいく。
「ニシやん最高…さぁ、ここからは私の領分よ。」
その言葉と共に、一体のアンデッドの顔面が
音の根源―――リーネの手に握られていたのは、剣ではない。斬撃に耐性のあるアンデッドを撲殺する為に、リーネが特注で作った武器が握られていた。
その手に握られていたのは”大槌”だ。
リーネはアニメが好きだ。しかし、アニメに負けないくらいにゲームも好きだ。今の時代、著作権の切れた古いゲームは無料でいつでも遊ぶことができる。
これはそんな、古いゲーム―――死にゲーと呼ばれ、数々のゲーマー達を虜にしたゲームのキャラクターが使用していた武器に憧れたリーネが再現しようと制作し、ついでにおませな魔改造まで取り入れた、凶悪な打撃武器。
四騎士と呼ばれ、竜狩りと共にゲーマー達を苦しめた、処刑者の愛用していた武器―――大槌。
「アノールロンドまで吹き飛ばしてやるわよ!」
一体のアンデッドの顔面を前方に弾き飛ばしたリーネは返す刀で大槌の持ち手―――柄の部分で別のアンデッドの腹部を突く。突かれたアンデッドの体はくの字に曲がり、突き出される形になった顔面を即座に大槌でかち上げる。
耳を覆いたくなる様な鈍い音が響く。しかし、リーネの猛撃は続く、上段からの打ち下ろし、顔面へのかち上げ、体部への横薙ぎ、柄での下部への払い。流れる様な連撃が続いていく。
四体のアンデッドが大槌により吹き飛んで行く。その際、二体のアンデッドが光の粒子となり、空中で消滅していった。
残すは二体。リーネの視線の先では吹き飛ばされたアンデッドの一体が即座に立ち上がってきているのが目に入る。
少し距離がある。そう思ったリーネは大槌の持ち手の先端―――柄部付近を握り。
「ほっ!」
可愛らしい掛け声と共に、一気に
じゃらじゃら。明らかに大槌からは似合わない金属音が鳴り響く。引き抜かれて姿を表したのは鎖だ。長尺の鎖がじゃらじゃらと言う音を立てながら持ち手の下部から現れる。
「ほっ!」
またもや可愛らしい掛け声と共に大槌の柄部がアンデッドに向け投げつけられていく。これこそがリーネのおませな魔改造の結果、誕生した迷武器、鎖鎌ならぬ―――鎖槌である。
勢いよく投げつけられた柄部が立ち上がったアンデッドの額に見事にヒットしていく。それが決め手になったのだろう、アンデッドは消滅していく。
残るは一体。視線の先では最後に残ったアンデッドが立ち上がっているのが見える。自分の思い描いていた通りに事が進む事に若干の嬉しさを感じながら、リーネは右手に持つ鎖をぐっと引っ張っていく。
その瞬間、鎖の―――柄の軌道が変わる。空中で舞う様に浮かんでいた柄部が円を描きながらアンデッドに向け振り落とされる。そのままアンデッドの頭蓋を叩き割る―――かに思われたが、柄部はアンデッドの頭蓋を叩き割る事は無かった。その代わりに、足に巻き付いていく。
「ほっ!」
またまた可愛らしい掛け声と共に背負い投げの要領で鎖を引き抜く。足に巻き付いた鎖に引っ張られ、アンデッドは空中に投げ出され―――壁に激突していく。
「ほっ!ほっ!ほっ!」
可愛らしい掛け声がリズミカルに聞こえてくる。その度に鎖は引かれ、アンデッドが壁から床へ、床から壁へ、何度も打ち付けられていく。
ギャグ的な言い方をすれば、びたーん、びたーん、びたーん。と言う様な音が聞こえてきそうだが、実際はそんな可愛い音は聞こえてこない。鈍い音がリズミカルに鳴り響いていく。
「はい、終了。」
そう言い放ったリーネは、渾身の力でアンデッドを床に叩きつけていった。今までで一番の轟音を響かせ、最後のアンデッドも消滅する。
戦闘がひと段落したのもつかの間、リーネは扉の先に視線を移す。ぬるい、ぬるすぎる。罠もなく、襲撃してきたアンデッドも雑魚四体。この程度の筈がないと、警戒心を更に引き上げていく。
「ちょっと簡単すぎるよね…油断させようって腹?小癪ね。皆、警戒して先にすすも―――え?どうしたの?」
ダンジョンを進む為に仲間に声を掛けていくが返事がない。何やら五人共木偶の棒の様に突っ立ったままだ。何か精神系の魔法か罠でも発動したのかと勘ぐっていると、ウルベルトが口を開いていく。
「引いてんだよ!引いてんの!!お前のえぐいやり方に皆引いてんの!!」
「はえ?」
余りにも容赦のない攻撃に、仲間の五人は盛大にドン引きしていた様だ。ゲームとは言え、一方的に壁に叩きつけていく様は見ていて恐怖すら感じた程だ。表情が動かないのも相まって、正に鬼畜の所業にすら思える。モモンガなど同じアンデッドとして同情すらしていた。
「ふぅ…お前は相変わらずぶっ飛んでるな。皆さん、経緯はどうあれ、敵は殲滅されました、リーネの言う様に先に進むとしましょう。」
そう言ったモモンガは二つの魔法を発動させていく。
魔法の発動により、指先くらいの小さな妖精と三本足の鳥が姿を表していく。
三本足の鳥はダンジョン内を最短距離で案内してくれ、妖精は危険度の少ないルートを案内してくれる。モモンガがこの二つの魔法を発動させたという事は、本格的にダンジョンを深部に向け進むつもりだと言う事に他ならない。
「それでは皆さん、気を引き締め、深部まで進みましょう。弐式さん、最大限の警戒をお願いします。」
「あいよ。そんじゃ行きますかね。」
そう言いながら弐式は影と同化していき、姿を消していく。その光景を見つめた五人も少し遅れて、ダンジョン内部に向け進んで行った。
♦
ジュっと言う音が聞こえてきそうな程の熱波が吹き荒れ、視界の全てを白く染め上げていく。太陽が地表に顕現したかのような、超高温の熱波が周囲に吹き荒れ、全てを貪りつくしていく。
その後、金属音が鳴り響く。金属音に続き、更に爆発音も。甲高い音や鈍い音。様々な音が混じり合い鳴り響く。その音は周囲の壁に反響し、山彦の様に戻ってくる。高い高い壁が聳え立ち、ドームを思わせるその空間で―――円形闘技場を思わせる空間で凄まじき戦いが繰り広げられていく。
「ウルベルトさん!魔法で弾幕を!やまいこさん、今の内に回復とバフの掛け直しをお願いします!」
モモンガの叫び声に近い指示が聞こえ、ウルベルトが魔法を発動させていく。ウルベルトの魔法が発動されたのを確認したモモンガが、即座に左腕に付けている
位階の上昇化を受けた
雨あられと降り注ぐ
身の丈は五メートル近く、六本の腕を持った”阿修羅”の様な外見をした敵―――レイドボスが
阿修羅が六本の腕を振り乱しながら前進を始めていく。その六本の腕には、炎を纏った剣、冷気を纏った斧、雷を纏った槍、酸を纏ったこん棒が握られ、残る二つの手に弓と矢を握っている。
「野郎に目を奪われてんじゃないよ、ここに―――いい女がいんだろ!!」
ぺちんと可愛らしい音が聞こえてくる。この音は茶釜が阿修羅を手に持つ盾で殴打していった音だ。茶釜は防御に特化を重ねた尖りに尖った最強のタンクだ。当然、彼女には攻撃力と言う概念が無いに等しい。この音がその証だ。ダメージなど欠片も入ってはいない。
ぺちぺちぺち。茶釜の殴打が続き―――阿修羅のヘイトが瞬時に切り替わっていく。
ぺち―――<シールドアタック>―――
ぺち―――<シールドスタン>―――
ぺち―――<メガインパクト>―――
ヘイトが急上昇するスキルの三連コンボが炸裂していき、阿修羅のヘイトが完全に茶釜に向く。
「そうそう、私だけを―――見てねん☆」
急に可愛い声に変わった茶釜が駄目押しのスキルを発動させていく。
―――<ナイト・チャレンジ>―――
ナイト・チャレンジの発動によって急激に膨れ上がった、阿修羅の茶釜へのヘイト。最早、阿修羅には茶釜以外は見えてはいない。剣、斧、槍、こん棒、様々な武器で茶釜を攻撃していく、そしてバックステップを駆使しながら、茶釜はその攻撃を見事な盾さばきで捌いていく。
様々な武器で攻撃していた阿修羅の行動が少し変わる。炎を纏った剣を茶釜に突きつけたその瞬間、茶釜の足元を中心に真紅の円が浮かび上がる。
「いやん、怖い☆助けてぇ~モモンガお兄ちゃん―――なんてね、いいよ、
―――<太陽爆発>―――
「<イージス>!!!」
太陽爆発、茶釜の視界にそう文字が表示された瞬間に茶釜は防御力が上昇するスキルを使用していく。
茶釜を中心に炎が吹き荒れ、円形闘技場の天井に届くのではと思わせる程の火柱が登っていく。その範囲は非常に広い―――が、茶釜以外はその範囲には入ってはいない。
茶釜は只単に阿修羅の攻撃を捌いていたのではない、円形闘技場を回り込む様に動きながら、阿修羅の攻撃が自分以外の誰にも当たらない様に動いていた。
―――<
炎の効果が切れた瞬間に、弐式の短刀が阿修羅の後頭部付近に突き刺さる。阿修羅のHPゲージが見る見るうちに減少していく。その減少度合いは目を見開く程だ。攻撃力と速度に全てを振り切った忍びの一撃が阿修羅に突き刺さる。
そしてヘイトは切り替わる、ダメージを与え過ぎたが為、阿修羅のヘイトが茶釜から弐式に切り替わり、阿修羅が
―――<月の剣>―――
四本の武器から放たれた斬撃が荒れ狂い、上空に浮かぶ弐式を襲っていく。その範囲は非常に広い、空中全てを覆う程だ。弐式に逃げ場はない、そして弐式の紙装甲では一発食らうだけでゲームオーバーだろう。
斬撃が荒れ狂い襲い掛かっていく、斬撃の向かうその先には―――茶釜がいた。
―――<位置交換>―――
弐式と茶釜の位置が瞬時に入れ替わる、荒れ狂う斬撃を、茶釜は<イージス>を駆使しながら防いでいく。
「浮気すんじゃねぇーーー!」
ぺちぺちぺち。<シールドアタック><シールドスタン><メガインパクト>。再度三連コンボが炸裂していく。
(流石は茶釜さんだ、本当に頼りになる。)
茶釜が奮闘している間に、バフの掛け直しと回復をしていたモモンガ達後衛であったが、ふとモモンガの視界にメッセージが飛び込んできた。
(なんだ?メッセージ…これはぷにっとさんからか。)
メッセージを送ってきたのはぷにっと萌えだ。この状況でやめてくれと思いながらもモモンガはメッセージに応答していく。
『ごめんなさい、モモンガさん、戦闘中に―――』
「えぇ、だからメッセージは後で―――」
『あとどれくらい時間かかりますか!?』
分かるかそんなもん!!そう怒鳴りたくなる気持ちをぐっと堪えていく。それと同時に妙な事にも気づいていく、ぷにっとの声には、何やら焦りがある様に思えた。
「まだまだですよ…いまで半分くらいですか。」
『半分!?急いでモモンガさん!既にモモンガさん達以外の四チームがボスを倒して第六階層に転移したんだけど―――』
ボスを倒したと言う言葉を聞いて、一瞬だけ嬉しくなったモモンガだが、その気持ちはすぐに消え失せる。嫌な予感がしたからだ。
『この六階層、モンスターが無限沸きしてる!多分全員がボスを倒さないとこれは治まらない!』
ふざけるな!モモンガは心で毒づいていく。毒を吐いていった相手は勿論、運営だ。糞制作と糞運営は意地でも初見で攻略をさせないつもりらしい。
『頼んだよ、モモンガさん!』
その言葉と共にぷにっとからのメッセージは切れていく。
少しの間思考したモモンガが、全員に向け叫んでいく。
「短期決戦!!」
即座に決着を付けねばならない、モモンガはそう決心する。
♦
―――<頭殺し><腕殺し><足殺し>―――
弐式のスキルが阿修羅を拘束していく。
―――<羅刹><四方八方><神切>―――
拘束された阿修羅にリーネのスキルが襲い掛かる。阿修羅のHPが見る見るうちに減少していく。特大のダメージを受けながらも、阿修羅がその手に持つ、冷気を纏う斧を頭上に振り上げた。
―――<海王星の光乱>―――
斧から零れ落ちる冷気が青白い球体になっていく。その青白い球体から、レーザーがばらまかれた様に乱れ飛んできた。
冷気のレーザーがモモンガ達に向け降り注いでいく。
「まずい!<ウォールズ・オブ・ジェリコ>!」
茶釜の全体防御のスキルが壁となり仲間を守っていく。それでも全てを防ぎきる事は叶わず、被弾した仲間にはそれなりのダメージが入って行く。
「やまちゃん!」
「うん!<
やまいこがリーネに対し防御魔法を掛けていく中、目の前で阿修羅の武器が手から離れ、空中をぐるぐる回転しながら阿修羅の周りを飛び回る。
ついに来たか。全員の心に浮かんだ言葉は同じだった。これ程のダンジョンのボスである。HPがある割合に達すれば、大技が来るのは間違いないと、全員が経験から感じ取っていたからだ。
これほど特殊なエフェクトだ、放たれる技は間違いなく大技であろう。
五つの武器が五芒星の頂点を指し示す様に地面に突き刺ささっていく、そして―――そこには絶望が待ち受けていた。
「…冗談…勘弁してよ。」
<
八十七LV
八十七LV
八十七LV
八十七LV
九十LV
五体の精霊の頂点がそこに生れ落ちた。
阿修羅を合わせて計六体の強敵がモモンガ達の目の前に現れる。
「はは…。」
モモンガからは笑いが零れる。乾いた笑いが。まさかここまでとはという気持ちが沸いてくる。糞運営め、どこまでも阻んでくれると。
「ふ~ん、ふんふん♪」
戦慄するモモンガとは裏腹に、鼻歌交じりで歩を進めていく人物がいた。おおよそこの場には似合わしくない陽気な雰囲気で、その人物はスキップをしながら進んで行く。
「おうおう、俺様に打ってつけの状況だな。よう、ちんちく…俺様が一発ぶっぱなしてやっからよ…それまで捌いてみせろよ。」
その人物はウルベルトだ。ウルベルトがリーネに対しそう言い放つ。
「…上等!」
ウルベルトの言い放った言葉はリーネの気持ちを滾らせていく。
「私達は一+一でニじゃない!私達は一+一で…二百だぁぁぁ!」
十倍だぞ!十倍!そう叫びながら、ウルベルトが切り札を切るまでの時間を稼ぐべく、弾かれた様に五大精霊と阿修羅へ向かっていった。
「…いや、二だろ。」
「ウルベルトさん!!」
「へ?…あ、うおっほん!唸れ!我が秘儀―――」
一瞬呆けたウルベルトだがモモンガの言葉により我にかえる。そして詠唱が始まっていく―――する意味のない詠唱が。
「―――降りよ!究極の災厄!絶望と憎悪の涙を溢せ!」
その技―――魔法は、ウルベルト・アレイン・オードルと言う男の切り札であり、ワールド・ディザスターと言う最強の魔法職を最高LVまで修める事で得られていく。最大MPの60%を使う大技にして、超位魔法をも凌ぐ究極の魔法。
―――<
円形闘技場を破壊の渦が覆いつくす。体力が満タンだった筈の精霊達が一瞬で消滅し、同時に阿修羅のHPもゴリゴリ削られて行く。精霊達諸共阿修羅を葬り去るつもりだったウルベルトの視界には、微量に残った阿修羅のHPゲージが見える。
「ちぇ…美味しいとこ持ってかれちまったな。まぁいい…テメェの我儘から始まったダンジョン攻略だ、ケリはテメェでつけな。」
ウルベルトの―――仲間達の視線の先には、阿修羅に向け一刀の構えをとっている人物の姿がある。
このダンジョン攻略を決定づけた張本人であるリーネが阿修羅に向け、とどめの一撃を見舞っていく。
「チェストォォォ!!」
阿修羅の胴体を一刀の元に切り伏せる。阿修羅は絶叫をあげ、体の内から光を漏らしながら、消滅していった。
♦
「終わった…終わったぁぁぁ!!」
モモンガのその叫び声と共に、全員から歓声が上がっていく。
ウルベルトが、弐式が、茶釜が、やまいこが―――リーネが歓喜の叫び声を上げていく。
「おらぁちんちく!やったじゃねぇか!」
「へへ…やっちゃった。」
「リーネカッコよかったよ!」
四人がバシバシリーネを叩きながら、勝利の余韻に浸る中、モモンガはその場にへたり込んでいく。極度に張っていた緊張が途切れてしまったのだろう。へにゃへにゃとへたり込み、チームメンバーを見つめていく。
強敵だった、このメンバーでなくては勝算は無かっただろう。他のチームのボスもこれ程強かったのだろうかと考えて行き、即座に首を振る。それはない、もしそうなら他のチームはボスを倒せてはいないだろう。
完全にハズレを引いていった自分の引き運に毒を吐きたくなるが、このチームでなくてはあのボスは倒せなかった事を考えて行くと、ある意味引きが良いのかもしれない。
張った緊張が途切れた事により、どうでも良い事が脳内に溢れていく。そしてふと思う、転移はまだかと、やけに時間がかかるなと。
モモンガがそう考えていた時。
ごぽごぽ―――気持ちの悪い音が聞こえて来た。
それは、唐突に現れた。
まるで、地の底から這い上がるかのように。
悪意、憎悪、恐怖、その全てを具現化したかのように。
身を震わせそうな不気味な音を鳴り響かせながら。
それは、現れた。
それの名は―――
―――墳墓の主”ナザリック”―――
どうもちひろです。
唐突に現れたオリボス”ナザリック”、こっちもアンティリーネさんが増えてるんです、こっちだけ強化は理不尽ですよね。
レイドボスを倒してまたボス戦、運営糞過ぎで、モモンガさん笑えない。
それでは!シュバ!