あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 四章入りました!
 イベント盛りだくさんの四章です!
 オーバーロードに詳しい方なら、そろそろあの辺の話来るか?あれっていつくんだ?みたいに思うかも知れません。
 優しい目で見てやって下さい。
 できる限りイベントは回収できる様頑張ります。


4章 あの時から…ここから…
あっちっち!?燃え盛る草原!?


 

 

 

 

 

 

 

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 ナザリック地下大墳墓―――ギルド、アインズ・ウール・ゴウンの拠点にして、非公式魔王城と呼ばれる大型のホームダンジョンの名前だ。墳墓なのに城なの?と言う疑問をよく聞くが、大抵のプレイヤーはこう言う、細かい事は良いんだよ。

 

 クラン、ナインズ・オウン・ゴールが、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンへと変わってから二年の月日が流れた。

 

 たった二年、しかしされど二年。やって来た事と言えば、ひたすらに―――悪行。

 

 略奪上等、PK三昧、資源の独占に続き、潰してきたギルドは数知れず。そんな数々の悪行を積み重ねて来たアインズ・ウール・ゴウンに付けられた異名は”魔王軍”。

 

 そう、魔王軍だ、魔王”モモンガ”率いる魔王軍が、この二年、ユグドラシルで盛大に大暴れしていた。

 

 そんな極悪ギルドの拠点である、ナザリック地下大墳墓の内部―――全十階層にもなる墳墓の最下層の一歩手前である、第九階層”ロイヤルスイート”と名付けられた区域の”四十二”個ある部屋の一室には、現在一人のギルドメンバーが暇を持て余していた。

 

 「…なぜ今日は誰も来ない…。」

 

 その暇を持て余しているギルドメンバーとは、この極悪ギルドの中でも五本の指に入る程の知名度を持つ人物。

 

 ヘルヘイムの恐怖の象徴にして異形種達のお姫様、泣く子も黙る、アンティリーネである。

 

 広い部屋の中央に置かれた豪華なベットの上に大の字に寝転んだアンティリーネ―――リーネがぼそりとそう独り言を呟く。

 

 今日は平日で、現在の時刻はお昼の一時、社会人で構成されたギルドであるアインズ・ウール・ゴウンのギルメン達がINできなくてもしょうが無いようにも思えるが、それでも四十一人――リーネを除いて――もいれば、意外と時間ができてINしてくるものなのだが、意外にも今日はまだ誰もINしてきてはいない。

 

 「うんしょ…うんしょ…。」

 

 リーネが寝転んだまま、ベットの端に手を伸ばしていく。その手の先にあるのは漫画だ、いつからあるのかは分からないが、無造作に放られた様に、ベットの端には漫画が置かれていた。三つも、四つも、散らばるかのように漫画が置かれている。よくよく見て見れば、それはベットだけに限った事ではない、部屋中に散らばる、漫画、ゲーム、ラジコン、バイクの部品などまで散乱している。

 

 「うぅ~ん…もう少し…。」

 

 あと少しで漫画に手が届きそうになり、精一杯手を伸ばしていく。少し起き上がれば良いだけなのであるが、それすら面倒なのであろう。その姿は正に怠惰の極みだ。

 

 「おっ、とれたとれた。」

 

 ようやく漫画を手に取る事ができたリーネが、寝転んだままパラパラと手に取った漫画をめくっていく、そして―――盛大に投げ捨てた。

 

 「今読みたいのこれじゃな~い!!」

 

 投げ捨てられた漫画がバサバサと空中を舞いながら部屋の床に落ちていく―――かに思われたが、何かにこつんとぶつかり、その後床にバサリと落ちていく。

 

 うん?と一つ間の抜けた声を出したリーネがその場所―――漫画がぶつかった場所に視線を移す。そこには綺麗な女性が一人立っていた。

 

 金髪の長いストレートが特徴の綺麗な女性だ。その綺麗な金髪にはちょこんと可愛らしいブリムが被られている。服装に目をやれば、それはメイド服と呼ばれる物だ。

 

 メイド服を着た綺麗な女性が、ベットの横で可愛らしく立っている。その姿はまるで仕えているかの様に見えた。

 

 「あちゃ~、”シクスス”ごめんね。」

 

 メイド服を着た女性―――シクススはリーネのその謝罪の言葉になんの反応も示さない。それもその筈だ、シクススはNPCと呼ばれる作られた存在であり、データ上の存在だ、そこに意志などある筈もなく、入力されたコマンドや、状況に応じてプログラムされた行動しかとる事は出来ない。なので当然言葉など返って来る筈もない。

 

 返事の返ってこないシクススをしばし見つめるリーネであったが、何かを思い付いたのだろう、寝返りを打ち、ベットの上をまるで芋虫の様にもぞもぞと進んで行く。

 

 そしてベットの横に立つシクススの近くまでもぞもぞ進んだリーネがシクススに喋り掛けていく。

 

 その視線はスカートに向けられていた。

 

 「うへへへ、パンツ見ちゃうぞ~。いいのかな~、めくっちゃうぞ~。」

 

 変態オヤジの様な台詞を吐きながら、両手をわちゃわちゃさせていく。ここに第三者が居たら間違いなくこう思うだろう、遂に頭が逝ったかと。

 

 「今日は何色かな~?白かな?ピンクかな?それとも~…情熱の赤かな?」

 

 そのセクハラ染みた行為にもシクススは当然ながら無反応だ。なぜなら彼女はNPCなのだから。

 

 スカートをめくるぞと言ってはいるが、実際にはその様な事はこのユグドラシルではできはしない。NPCにお触りは原則禁止だ、ある特殊な条件を除く限りは。しばし両手をわちゃわちゃさせていたリーネだが、その動きがピタリと止まる。そして大きな溜息をついていった。

 

 虚しい、虚しすぎる。いくら暇だからといってNPCにセクハラするのはどうなんだと我に返っていく。

 

 「なぁ~にやってんだか…。」

 

 そしてもう一度大きな溜息をついた後に、軽く背伸びをしたリーネはベットから降りていく。それから足の踏み場の無い部屋の中を上手い具合に進んで行き、ある物に手をかけていく。

 

 「ちょっとこれで墳墓内の散歩にでも行こうかな。」

 

 リーネが手をかけたある物とはバイクだ。

 

 GPZ400と言われるバイクに颯爽と跨ったリーネがバイクのエンジンをかけていく。

 

 ブオン…ブオン…。マフラーから排気音と共に煙が噴き出していく。部屋の中でバイク乗んなよと思わないでもないが、ここはゲームの空間である為汚れもしないし、排気ガスも臭いもしない上に体に害もない。

 

 バイクに跨ったリーネが前髪を掻き上げる様な仕草を取っていく。

 

 「行こうか地獄へよ…。」

 

 なにやら妙にカッコつけながら地獄とか言っているが、それはこのバイク―――GPZ400が原因だ。

 

 GPZ400―――かつて”地獄の軍団”を率いたカリスマ”総長”の愛車であり、リーネの現在の愛車でもある。

 

 「ポチッとな。」

 

 リーネが何やらバイクのタンクに指を近づけると、コンソールの様な物が浮かび上がっていく。それをなれた手つきでポチポチ押していくと―――バイクが変形していく。

 

 ガシャコーン、ガシャコーンと言う様な効果音が聞こえてきそうな変形をバイクがし出す。タイヤが横になり、その下から魔方陣が展開されたバイクがそのまま宙に浮かんでいく。これこそが、二年ほど前バイクレーシングにハマったリーネが課金までして買った挙句、貴重な素材や希少金属まで使用し、おまけに更に追い課金してまで制作したバイクであり、愛車―――HELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)である。

 

 非常に派手なエフェクトを展開したバイクのアクセルをもう一度吹かしたリーネが妙なサングラスをかけ、シクススにサムズアップしていく。

 

 「ちょいと”第七階層”の溶岩の海までドライブしてくるぜ、レディ。」

 

 そうキザな台詞を吐いたリーネが大きくアクセルを回す。ブオン、ブオンと盛大にエンジン音を鳴らしたその瞬間―――転移して消えていった。

 

 誰もいなくなった部屋の中で、シクススは只一人立ち尽くす。もし仮にシクススに意志があったのであったなら、恐らくはこう言っただろう―――走らないんですかと。

 

 

 

 

 

 

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 ―――ブオン、ブオン。

 

 排気音をまき散らしながら、HELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)と共に墳墓内で風を切っていく。仰々しい音を立ててはいるが、タイヤは回転してはいない。空飛ぶバイクが空中を疾走している様はなんともシュールだ。

 

 現在ドライブしている階層は”第一階層”、ナザリック地下大墳墓と言うギルド拠点の入り口を入ってすぐの階層だ。この階層は主にアンデッド系統のモンスター達で守られている。辺りを見渡せば、ガスト、ゾンビ、スケルトンなどのアンデッドがわんさか見えてくる。

 

 キィィッと言うブレーキ音と共にバイクが止まる。

 

 「よう…異常はないかい、坊や達。」

 

 くいっと妙なサングラスを指で持ち上げたリーネがアンデッド達―――POPモンスター達に異常の有無を問う。

 

 そして当然返答は無かった。

 

 「そうかい…ご苦労さん。」

 

 何も言ってませんけど?そう言いたくなるが自分の世界に浸っているのだろう。自分に酔ったリーネがまたもやサングラスをくいっと持ち上げる。持ち上げた人差し指にはめられた指輪がきらりと光った。

 

 この指輪は”リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”という名の指輪で、墳墓内の転移を可能にする事のできる指輪だ。ナザリック地下大墳墓内は基本的に転移はできず規制されている。この転移規制がこの拠点を難攻不落にさせている一つの要因でもあるのだが、実際転移ができないとなるとそれはそれで不便が生じる。主にギルメン達がだが、その不便を解消させる為のアイテムがこの指輪の役割だ。先程の転移も、HELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)に指輪の効果を接続させていったからに過ぎない。

 

 ―――ブオン、ブオン。

 

 アクセルを吹かしたリーネがまた墳墓内を疾走しだした、一階層を抜け、二階層へと降りていく。辺りを見渡せば、そこには先程と同じようにアンデッドの姿が見えてくる。少し違う事と言えば、POPモンスターの格が上がったと言う所か。先程の低級アンデッド達とは違い、二階層には”スケルトン・ウォリアー”や”エルダー・リッチ”の姿が見える。

 

 こんどは止まらずに二階層を疾走していく。その際、アンデッド達に向け、二本指をこめかみに当て、キザったらしく、ピッと振っていく。

 

 更に下の階層―――第三階層まで降りて行ったリーネであったが、四階層に続く入り口は目指さず、ある場所までバイクを走らせていく。

 

 その場所に近づけば近づく程にPOPモンスター達の質が変わっていく。変わっていく質は強さではなく、見た目だ。見目麗しい女性モンスターである”ヴァンパイア・ブライト”達が沢山配置されていた。

 

 「着いた。」

 

 バイクが止まり、ボボボボとエンジン音だけが鳴り響く。視線の先には大きな建物―――屋敷が見える。

 

 赤と黒を基調とした、非常にゴシックな屋敷だ。屋敷の周囲には先程までのPOPモンスター達とは違うアンデッドの”傭兵モンスター”、それも八十LV以上という高LVモンスター達が屋敷を守護するかのように配置されていた。それもわんさかと。

 

 バイクから降りたリーネが屋敷まで進み、扉のドアノブに手をかけていく。ボボボボとエンジン音を鳴り響かせるバイクを一瞥した後に、ゆっくりとドアを開けていく。

 

 「邪魔するぜぇ~。」

 

 ギィ―――鈍い音を立てながら扉が開いていく。中々に不気味な音だ、屋敷の雰囲気に非常にマッチしている。

 

 開いた扉の先―――屋敷の中には一人の少女が立っていた。

 

 漆黒のボールガウンを纏った赤い瞳の少女―――ナザリック地下大墳墓を守護する階層守護者たるNPC”シャルティア・ブラッドフォールン”が大勢のヴァンパイア・ブライト達に囲まれ、優雅に屋敷の中で立ち尽くしている。

 

 「今日もマブいな、お嬢。」

 

 いつの時代の人間なんだお前は、その様な言葉が飛んできそうな台詞をキメポーズと共に吐いていく。当然返事など帰って来る筈もなく、しばしシャルティアに口説き文句を言ってから、リーネは屋敷から出ていく。屋敷をでれば、ボボボボとエンジン音を響かせるバイクが目に入り―――颯爽と跨っていった。

 

 「お前さん達…お嬢を頼んだぜ。」

 

 傭兵モンスター達に一声かけ―――HELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)と共に第四階層まで疾走していった。

 

 

 

 

 

 

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 ナザリック地下大墳墓、第四階層―――”地底湖”と名の付くその階層の大部分は広大な湖で占められている。その広さは階層の中央から、七割程を占める程だ。

 

 湖の周囲を、口笛を吹かしながら意気揚々と疾走していく。湖の周囲をバイクで走る姿は正しくドライブと言えよう。空中にさえ浮いていなければ。

 

 しばらく走ると第五階層に続く入り口が目に入ってくる―――が、リーネは入り口付近の少し大きな岩場にバイクを止め、降りていく。

 

 ボボボボとエンジン音を背に受けながら、コンソールを開いたリーネが何やら操作を始めていった。

 

 「ポチッとな。」

 

 最後のボタンを押した途端、湖の中央から水しぶきを上げ、巨大な物体―――ゴーレムが姿を表していく。

 

 ゴーレムは湖の中央からのっしのっしと歩き――非常に遅い――リーネの元まで近づいてくる。

 

 陸に上がり、その姿を完全にさらけ出したゴーレムは、その場にちょこんとしゃがみ込んで行った。

 

 「こんチュアァァァ~~~!ガルガンチュアァァァ~~~!ボボン…チュアァァァ~~~!!」

 

 巨大ゴーレム―――”ガルガンチュア”に元気な挨拶をしていく。

 

 第四階層守護者、ガルガンチュア。第四階層、地底湖の守護者である。このガルガンチュアは先程の守護者、シャルティア・ブラッドフォールンとは違い、NPCではない。ガルガンチュアは”戦略級攻城用ゴーレム”と呼ばれる、いわばユグドラシルにおける純粋な兵器である。

 

 その戦闘能力は非常に高いのであるが、このゴーレムは攻城用と銘打たれているだけあって、”相手ギルド”の攻略戦でしか使用はできない。

 

 使う頻度も少なく、また巨体であるが故に置き場所に困ったアインズ・ウール・ゴウンにギルメン達が地底湖の底に沈め保管しているのである。階層守護者と名を貰っているが、実際は只のハリボテに等しい。

 

 リーネがコンソールをいじり、何やらガルガンチュアに命令を出していく。戦闘では使えないだけで、この様に操作は可能だ。

 

 命令を受けたガルガンチュアがその場に座り込む。湖を見つめながら体操座りをしていった。

 

 湖を見つめながら体操座りをしていくガルガンチュアを見つめたリーネがガルガンチュアの元まで歩み寄る。湖を見つめ、哀愁漂うその姿を見たならば、そうする事は一つしかないだろう。ガルガンチュアの隣に行き、ちょこんと座り込む―――体操座りで。

 

 「ねぇ…どうしたの?何かあった?」

 

 湖を見つめながら、ガルガンチュアに悩み事を聞く。当然返事は無い、と言うか悩み事すらないだろう。

 

 しかし。

 

 「そうなんだ…人生ままならないものね。」

 

 なにやらガルガンチュアの悩み事を脳内で作り上げ、一生懸命人生相談に乗ってあげている。しばらく人生相談を続けた後、激励の言葉を残し、バイクに跨っていく。

 

 「またね、頑張りなさい、ガルガンチュア。」

 

 ―――ブオン、ブオン。

 

 第五階層に向け疾走していく。

 

 その後ろでは、ガルガンチュアはいつまでも湖を見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

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 視界一面に広がる銀世界。

 

 真っ白な雪と、鈍く輝く氷山の如き氷で覆われた氷結の世界。

 

 見るだけでガチガチと歯を鳴らしてしまいそうになりそうな程の風景に、吹きすさぶは吹雪、鳴り響くは突風の音。

 

 まるで氷河期を思わせる様なその場所で、二人の人物が相対していた。

 

 「これで良し…っと。」

 

 リーネがコンソールを弄り、何やら独り言を呟く。その独り言のすぐ後に、ピンポーンとアナウンスが聞こえてくる。

 

 ##PVEモードが解禁されました##

 

 その瞬間に、フシュウと言う効果音と共に、相対している人物の口から吐息の様に真っ白な冷気が漏れ出す。

 

 ブルーメタッリックの甲殻に、四本の腕を持つ、人型の昆虫―――”コキュートス”が口元をカチカチとさせながら、戦闘体勢に入って行く。

 

 第五階層”氷河”の階層守護者”コキュートス”。

 

 ”ヴァーミンロード”と言う異形種のNPCであり、そのLVはナザリックNPCの中でも数少ない、最高値の百LVを誇る。

 

 コキュートスが白い吐息を吐きながら、四本の腕を広げ、構えていく。本来ならこの四本の腕にはそれぞれ武器が握られているのだが、今は武器は無い。先程弄ったコンソールで出した命令は、武器無しのステゴロのプログラムが組まれているからだ。

 

 ―――パチン。

 

 リーネが大きく両の手のひらを打ち付け―――大きくしこを踏んでいく。

 

 「はっけよーい…てやつよ、コキュートス…。」

 

 獰猛な笑みを浮かべ――実際は動いてはいない――コキュートスに突進していく。

 

 両者の体が触れ合った瞬間、破裂音の様な大きな音が氷河に鳴り響いた。

 

 NPCへのお触りは御法度。普通はそうなのであるが、”PVEモード”は別だ。これは戦闘扱いとなる為、NPCに振れていく事ができる。

 

 先手を打ち、その小さな体をコキュートスに叩きつけていったリーネの体がピタリと止まる。理由は簡単だ、押し返されているからだ、コキュートスに。

 

 「――~~~!!」

 

 リーネの体がズルズルと後方まで押し返されていく。同じ百LV、同じ戦士職――正確にはコキュートスは魔法戦士だが――にもかかわらず、完全に力負けしている。

 

 それはなぜか―――コキュートスが”異形種”だからだ。同じLV、同じ系統職で構成されているのならば、力と言う一点で見てしまえば異形種に大きく軍配が上がる。これを覆すには、余程特化したクラス構成か、特殊なクラスに就くしかないだろう。

 

 ズルズル―――後退は止まらない、フィジカルではどう足掻いても勝ち目はないだろう。

 

 押し返されるリーネが更に強い力でコキュートスを押し返そうと踏ん張った瞬間、更に強い力でコキュートスが押し返してきた、そして―――コキュートスが投げ飛ばされていく。

 

 理合(りあい)と言う言葉がある、そうなる理由であり、道理とも呼ぶ。

 

 強い力で押されたリーネが、更に強い力でコキュートスを()()()()()()()()、それに対しコキュートスは、()()()()()()()()押し返してくる。()()()()()()()()()()()()からだ。

 

 コキュートスはNPCであり、データ上の存在、プログラミングされた行動に基づいて行動しているだけだ、PVPの様に心理戦など存在しはしないのだが、この行為は心理戦などと言う高尚な物ではない、NPCだからこそ、単純な行動には単純な行動で返していく。これがPVP―――対人戦などになれば、もう少し複雑な物になっていくだろう。

 

 押し返そうと強く力をかけていったコキュートスの力を流すかのように、力をかけられた方向にいなし、足をはたいていく。

 

 ”事理一致”、”事”とは”技”であり、”理”とは”術”、()()とが混じり合い、技術()へと昇華されていく。

 

 事理の(ことわり)、それが―――理合だ。

 

 投げ飛ばされたコキュートスがぎゅらぎゅらと回転しながら、その巨体を地面に伏せていく―――”武”が炸裂していく。

 

 「勝負あったわね、コキュートス。」

 

 ##PVEモードが終了しました##

 

 アナウンスの音と共に、ゆっくりとコキュートスがその巨体を起き上がらせる。

 

 「…これでよし…、持ち場に戻りなさい。」

 

 コンソールを弄り、コキュートスに自らの持ち場に戻る様命令をする。振り向き、持ち場に戻るコキュートスの後ろ姿を見つめながら、リーネはコキュートスに声を掛けていく。

 

 「また()ろうね、コキュートス!」

 

 その言葉に対して当然ながら返答などない、少し寂しい気持ちになりながらも、バイクに跨り、第五階層を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

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 第六階層”ジャングル”。

 

 鬱蒼とお生い茂る大森林の中央付近には、巨大な闘技場が建造されている。

 

 第五階層、氷河に続く入り口から、その闘技場に向かって、ジャングルの木々達をまるで縫うかの様に進む、二つの影が見える。

 

 「はは!流石!やるじゃない、”らいおん”!!」

 

 二つの影の一つ、HELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)を運転するリーネが、自らの後方を走る影―――白虎の”らいおん”に向け、そう言葉を放った。

 

 アクセルを吹かし、ハンドルを切る。ブレーキの甲高い音はそこには無く、響き続けるのはエンブレの低い音。ジャングルのお生い茂る木々の中を、縫うようにして疾走していく。

 

 そしてその後を追いかける様にして、らいおんもまた、ジャングルの中を縫う様に走り続ける。行動した際に起きる鮮やかな光のエフェクトが、らいおんが白虎と言う神獣―――四聖の一体である事を強烈にアピールしてくる。

 

 らいおんの通った後の鮮やかな軌跡はまるで幻想を思わせる様だ。

 

 追従命令を受けたらいおんがまるで追いかけっこでもするかのように走る。HELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)も相当な速度が出ているのであるがその最高速に難なくらいおんは追従していく。

 

 らいおんは超が三つつくくらいの激レア課金ペットモンスターだ。そのLVは百LVであり、持つ能力は究極の速度と機動力。速度向上系のバフまで掛けて行けば軽いボス級に匹敵する程である。

 

 長年連れ添った相棒と共に、六階層の中央にある闘技場まで猛スピードで疾走していく。

 

 ―――キィィ、エンブレの低い音ではなく、ブレーキの高い音が鳴り響いた。タイヤ回ってないのに意味分からんと言う言葉が聞こえてきそうだが、ユグドラシルクオリティ、その言葉で全て丸く収まっていく。

 

 HELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)から颯爽と飛び降りたリーネの周囲は既にジャングルではない、闘技場の内部へと到着し、目的の人物―――NPCを探していく。

 

 「お!いたいた。」

 

 長い耳に褐色の肌―――”ダークエルフ”の子供が二人、闘技場の隅で立ち尽くしている。

 

 この二人の子供こそ、第六階層”ジャングル”の階層守護者”アウラ・ベラ・フィオーラ”と”マーレ・ベロ・フィオーレ”である。

 

 目的のNPCを見つけたリーネがてくてくと近づき、アウラとマーレに向けて喋り掛ける。

 

 「お揃い♪」

 

 自らの目を指さしそう言い放ったリーネの目はオッドアイ。そしてまた、二人のNPC―――アウラとマーレもオッドアイだ。

 

 返事のないNPCを横目に、コンソールを開き何やら操作を始めた。横目でちらちら見ながら、あ~でもない、こ~でもないとブツブツ呟きながら、コンソールを弄っていく。

 

 そして何やら考えが纏まったのか、よし!と言う言葉と共に、ボタンをポチッと押していくと―――パッとアウラとマーレの”衣装”が変わっていく。先程ぶつぶつ言っていたのはこの衣装選びに頭を悩ませていたのだろう。アウラとマーレの衣装が可愛いドレスへと変わっていった。

 

 「ぬっふ…ぬっふ。」

 

 気持ちの悪い笑い声をあげながら、カメラを取り出したリーネがアウラとマーレの姿を写真に収めていく。ぬふぬふ言いながらカメラを構える姿は非常に気持ち悪い。

 

 「ふぅ…今度”かぜっち”にも見せてあげよ。」

 

 写真撮影も一通り終わったのか、満足したリーネはカメラを収納し闘技場を後にしていく。

 

 疾走していくリーネを、ドレス姿のアウラとマーレ、そして、らいおんが見送るかのように見つめ続けていく。

 

 次は第七階層―――目的の溶岩の海まで後少しだ。

 

 

 

 

 

 

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 地獄の業火を思わせる灼熱の溶岩が周囲を覆いつくしている。ゴッポゴッポと不気味な音を立てながら、溶岩が膨れ―――そして弾けていく。

 

 そんな生きとし生けるもの全てが死滅してしまいそうな凶悪な世界の中、そこには全く不釣り合いな機械音が鳴り響く。

 

 「へっ…いつ見ても綺麗だな、溶岩の海ってやつはよ…。」

 

 ロマンチックに夜の海辺を愛車でドライブするかのように、溶岩の海を眺めながら、風を切っていく。実際は地獄の様な場所なのであるが、その様な雰囲気は微塵も感じさせる事は無く、鼻歌交じりに進んで行く。

 

 進むその先には、白い柱が乱立した廃墟の様な建造物が目に見える。その風貌は神殿だろうか、破壊痕が目立つが、恐らくはそうだと思える。

 

 神殿に向けアクセルを吹かして進んでいると、足元のマグマが盛り上がってくる。ゴポゴポと不気味な音を立てながら、紅蓮の粘体が姿を表していく。

 

 その姿を見て、バイクは動きを止めていく。

 

 「おぉ~、”紅蓮”じゃん。こんな所にいたんだ。」

 

 溶岩の中から姿を表したのは、NPCの”紅蓮”。奈落(アビサル)スライムと言う炎属性のモンスターが、にゅにゅにゅと灼熱の溶岩の中から出て来た。

 

 紅蓮がその粘体の体を大きくしたり、小さくしたりしている。この行動は何を表現しているのかと言えば、それは”歓迎”だ。この第七階層”溶岩”にやって来たリーネを歓迎してくれている。

 

 普通はNPCはこの様な行動は起こさない。意志など持たず、プログラムされた行動しかとれないが為だ。つまりは、これはプログラムされた行動と言う事になる。ある限られた人物―――ギルメンに対して。

 

 この第七階層に配置されているNPCの全ては、限られたギルメン―――アンティリーネに対しては、ある程度の範囲に入った場合、”歓迎”や”喜び”の行動、”エモーション”を取っていく。

 

 その理由は、この階層を守護する、階層守護者を制作した人物であり、この階層の全権を任されているギルメンと、一番仲が良い人物であるという証明の為だ。

 

 複雑な行動のプログラムの中に、そのギルメンが無理をいってプログラマーのギルメンに組み込んで貰ったのだ。

 

 喜び飛び跳ねる紅蓮に挨拶をした後に、リーネはアクセルを吹かしていく、颯爽と風を切り進む場所は勿論、先程の神殿―――”赤熱神殿”だ。

 

 神殿内部に到着したリーネを迎えたのは、スーツを着た悪魔だった。悪魔は気品漂わせる優雅な礼をリーネに対し行っていく。

 

 「おっは~、”デミちゃん”、ちんちくだよ~。」

 

 このデミちゃんと呼ばれたスーツの悪魔こそ、第七階層”溶岩”の階層守護者”デミウルゴス”だ。

 

 デミウルゴスは優雅な礼をやめ、姿勢を正していく。

 

 ジロジロと嘗め回す様にデミウルゴスをリーネは見つめていく。最高にイカした野郎だ、文句の付けようがないビジュアルに感心していく。そしてそれに加え、デミウルゴスには更にイカした特性を持ち合わせているのだ。

 

 「私は後…二回の変身を残しています…ってか。んもぉう、カッコイイ!デミちゃんカッコイイ!浪漫じゃん!マジで浪漫じゃん!ちんちくお胸きゅんきゅんしちゃうわよ!」

 

 このデミウルゴスは、形態変化を可能とするNPCであり、この人間形態とは別に、後二回姿形を変える事ができる。

 

 変身、それは正に浪漫、強さなど関係ない、変身する事に意味があるのだ。

 

 「ねぇ、デミちゃん知ってる?アンタの変身には私もかかわってるのよ?あの人、第二形態もうんとカッコよくしそうだったから私が止めたんだからね。だからこう言ってあげたのよ…”セル”も”フリーザ”も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよって…落差があるからこそ良いのよ!分かるでしょ?」

 

 デミウルゴスの第二形態は第一形態とは違い、非常に不細工で醜悪だ、最終形態はそれとは真逆に、非常にカッコよく、イカしたフォルムをしている。敢えて第二形態に外しを入れる事で、最終形態のインパクトを際立たせようという、リーネの熱い粋な計らいがそこにはあった。

 

 デミウルゴスからは返答はない、それでも一生懸命浪漫に付いて語っていく。

 

 ##ウルベルト・アレイン・オードルさんがINしました##

 

 「―――お?」

 

 アナウンスが流れた。このアナウンスはギルメンがINして来たお知らせである。ちょうど今喋り掛けていたNPCの制作者である、ウルベルトがこのナザリック地下大墳墓にINして来た。

 

 リーネはあるアイテムを即座に発動させる。メッセージを飛ばす為に。

 

 「おっは~!」

 

 『うるせぇよ…デカい声で喋んな、耳がきーんってなるわ!』

 

 大きな声であいさつをしていったら怒られてしまった。声が大きすぎたのだ。今いる場所をウルベルトに伝えれば、すぐに来るという返事を貰い、リーネは大喜びする。

 

 それ程時間もかからず、仕度を整えたウルベルトが、リーネの居る場所―――赤熱神殿まで指輪を用い転移してきた。

 

 「お前いつも居んな…ゲーマーの鏡だな…。」

 

 「魔王城を守る為に一生懸命働いてるんッスよ、兄貴!」

 

 「誰が兄貴だ、誰が。」

 

 会話を続けながら、ウルベルトは三つの豪華な椅子と一つの大きなテーブルを出現させていく。ドカリと椅子に持たれ掛かったウルベルトに続き、リーネも同じく椅子に持たれ掛かる。そしてすぐにコンソールを弄り、デミウルゴスに命令を出していく。椅子に座る様に命令されたデミウルゴスが、気品溢れる仕草で椅子に座っていった。

 

 アイテムボックスから紅茶を取り出し、楽しく談笑を二人は続けていく、やがて話すのも飽きて来たのか、この後の予定を二人で話し合いだした。

 

 「この後どうすんよ?ドロップ品でも漁りにいくか?」

 

 「そうねぇ…ヨトゥンヘイムの黄金種のドラゴンでも狩りに行く?お金がっぽがっぽ貰えるわよ?」

 

 「ヨトゥンヘイムは無しだな、二人で行けば速攻で袋叩きに合うぞ?俺ら恨まれてんだからな。候補はヘルヘイムかムスペルヘイムだな。ホームのヘルヘイムが良いっちゃあ良いんだが…意外と風当たりの弱いムスペルヘイムでも良いぜ?」

 

 「それなら、ムスペルヘイムの”幻獣草原”にしようよ。”麒麟”でも狩りにいかない?」

 

 「麒麟か…”空のデータクリスタル”も欲しいし…いっちょ”麒麟の角”でも狙いに行こうかね。」

 

 話は纏まり、二人が準備を始め出す。準備が整い、二人はムスペルヘイムの幻獣草原に転移しようと指輪の効果を発動させようとする。

 

 「行ってくるね、デミウルゴス!」

 

 「なにNPCに喋り掛けてんのお前?痛い奴みたいだぞ。」

 

 いいのいいの。そう言いながら、二人の姿が消えていった。

 

 二人が居なくなった赤熱神殿で、デミウルゴスは静かに椅子に座っていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 ―――<羅刹>―――

 

 麒麟の体に剣が斬り込まれていく。断末魔を上げながら、のたうち回る麒麟に、追撃の魔法が放たれて行った。

 

 ―――<魔法最強化(マキシマイズ・マジック)内部爆散(インプロ―ジョン)>―――

 

 麒麟の体に仄かな光が浮かび上がってくる。その光景を見たリーネはくるりと振り返り、麒麟に背を向けていった。

 

 「お前はもう…死んでいる。」

 

 その言葉と共に、魔法が発動し、麒麟が体の内部から爆散し、光の粒子となり消滅していった。

 

 ―――カラン。

 

 消滅した麒麟の居た場所から甲高い音が聞こえてくる。続いてジャラジャラと言う金属音も。麒麟討伐の報酬であるユグドラシル金貨と、データクリスタルがドロップしていった音だ。

 

 「アンティリーネ神拳に敗北はない…。」

 

 「くだらんこと言ってないで早く回収しろや。」

 

 キリっとキメポーズを取っていた所、ウルベルトに怒られてしまった。渋々ドロップ品を回収していく。

 

 「角でないね~、やっぱレアだ、あれ。」

 

 「まぁ、そう簡単にはいかんわな。金貨回収だけでも良しとしようや…金かかるもんな…あの拠点。」

 

 お目当ての角はどうやらまだドロップはしていないらしい。散らばった金貨を回収していくウルベルトがそう言葉を吐いていった。

 

 拠点維持の為には何かとお金―――ユグドラシル金貨がかさむ。拠点は大きければ大きい程に、維持する為の出費が増えるのである。ナザリック地下大墳墓は、三千レベルに迫る規模の大拠点、かかる費用も莫大なうえに、課金を使用しての拠点の拡張、及びトラップ等のギミックの設置など、ギルメン達が大幅に改造してしまったが為に、初期費用の倍以上もの出費がかかる。唯一良い点としては、POPモンスターがアンデッド系統であるという所か、食事などの費用が一切かからない為、その分は出費が浮いていくが、それでもその辺のギルド拠点よりは遥かにコストがかかる。それをたった四十二人のギルメン達で賄っているのだから、金貨はいくらあっても良い。

 

 「もう少し”上位種”を狙ってみる?もうこんな所まで来ちゃったし。」

 

 ほら。そう言い指を指していった先には大きな塔が建っている。麒麟はあの塔に近づけば近づく程、上位の種族が沸き、また沸く数も増えてくる。

 

 「だな~、ちょっくら言ってもいいな。」

 

 「くっそ~、バイク持ってくればよかったな。ウルさんとドライブがてら、狩りに行けたのに。」

 

 先程まで乗っていた愛車のHELL'S GONDA(ヘルズ・ゴンダ)を赤熱神殿に置き忘れて来た事を悔やむ。折角なら誰かと一緒に乗った方が楽しかったはずなのに。後で赤熱神殿に取りに戻らねば、そう思っているとウルベルトの声が聞こえてくる。

 

 「おぉ、あのバイクか。あれ良いよなぁ~、課金アイテムだろ?いくらしたんだ?俺も買おうかな。」

 

 昔は無課金同盟を組んでいたウルベルトも、今では課金勢の仲間入りを果たしていた。廃課金と言う程でもないが、このゲームに今では少なからずお金を落としている。課金バイクの値段を聞いていったウルベルトに、リーネから衝撃の言葉が聞こえて来た。

 

 「あぁ、あれ?あれ限定品の最高級ランクだったからちょっと普通のやつより高かったな~…一万くらいだったかな?」

 

 「はぁ!?一万!?嘘だろ!?」

 

 衝撃の値段にウルベルトが声を上げた。

 

 「そうそう、改造にも課金アイテム使ってるから~…総額二万って所かな。」

 

 固まるウルベルト、開いた口が塞がらないとは正にこの事だろう。いくらなんでもその値段は自分には出せそうもないと、バイクの件は諦めて行った。

 

 そうこうしていると、リーネがポンっと拳で手のひらを叩いていく。何か思いついたのだろうか、コンソールを開き、ポチポチと弄り出した。

 

 「なにやってんの、お前?」

 

 「こぉ~れでぇ~…よしっと。」

 

 疑問を口にしたウルベルトに向き直ったリーネが笑顔のアイコンをウルベルトに向け表示した。そして今弄ったコンソールの内容を説明しだす。

 

 「課金完了よ、ウルさん!今から()()()()、うちの()()()()()()()()()()、得られる金貨が”五倍”!ドロップ品の数が”五倍”!レアドロップ率”五倍”よ!」

 

 「…マジかよ…。」

 

 乾いた声が漏れた。効率が悪いなら課金すればいいじゃない。そう言わんがばかりの清々しい程の物言いだ。これには運営もにっこりだろう。

 

 続いてウルベルトは考える、コイツは今”五倍”と言った、それはこのゲームの上昇率の二番目に高い数字の筈だ。確か一番高かったのは”十倍”だったはず、その上昇率をギルメン全員に与えた―――それが意味する事は。

 

 「あ、あの~…ちなみに”おいくら”かかった?」

 

 「え?五倍だから”五千円”だよ?金貨五倍、ドロップ品の数五倍、レアドロップ率五倍で計一万五千かな。ギルメン全員に指定したから、+三千円の計一万八千なのだ!」

 

 「……。」

 

 無言、最早無言。金銭感覚のイカレた人物を無言で見つめていく。

 

 しばし無言で見つめていたウルベルトが両手をすりすり擦り出した。

 

 「いやぁ~、アンティリーネさん、すみませんねぇ~…あ、肩凝ってません?肩揉みますよ~、へへへ。」

 

 「おぉ、苦しゅうない、苦しゅうない。」

 

 腕を組んだリーネの肩をウルベルトが揉んでいく。後でたっちの奴に怒られるぞと思わないでもないが、そんな事は口には出さない。課金してしまった物はもう仕方がない、取り消す事も出来ないので、どうにかこれで気分くらいは良くなって貰いたい物だ。

 

 あぁ、そこそこと言いながら、ウルベルトに肩を揉んで貰っていた―――その時、()()()()()()()()()()()

 

 「ん?」

 

 「あん?なんだ?」

 

 周囲の―――草原の風景が徐々に変貌していく、次第に風景は()()()()()()いき、()()()()()いく。

 

 ()()()()()()()()て行った。

 

 「はぁ!?なにこれ!?こんなギミック知らないわよ!?」

 

 「敵の攻撃か?いや、んなわきゃねぇな!草原…()()()()()()()()()()()()これ?」

 

 慌てるリーネとは裏腹に、ウルベルトはどこ吹く風だ。なぜならウルベルトは、現在炎に対する完全耐性を装備で付与しているからだ。意表を突かれたこのギミックだが、動ずることは無いと、そう思っていたウルベルトだが、その声音は徐々に焦りを帯びていく。

 

 「…はぁ?いや…ちょっと待て…おいおいおいおい!嘘だろ!?ダメージ入ってんぞこれ!?」

 

 視界モニターに映し出される自らのHPゲージが急激に減少しているのに気づいたウルベルトが叫び声を上げていく。リーネも一緒だ、凄まじい速度で減少していくHPゲージに驚きを隠せない。

 

 「やばいって、やばいって…はぁ!?ポーション効かないんですけど!?」

 

 「ちんちく!最高級のポーションならいけんぞ!って、はぁ!?効果が半分以下になってんぞ!?どうなってやがる!」

 

 「なんか見た事ない”バッドステータス”ついてんですけど!?”大火傷(おおやけど)”ってなによ!?」

 

 「おぉぉい!どんなアイテム使ってもこのバッドステータス消えねぇんだけどぉぉぉ!?」

 

 草原が燃え盛る、炎は未だ消えはしない。どうにかHPの減少を止めようと、二人で試行錯誤していくが、それでも、付与されたバッドステータスは消えない、炎は治まらない、HPの減少は止まらない。

 

 「「ギャァァァァァ!!!」」

 

 喉が張り裂けんばかりの叫び声を上げた二人が、炎に耐え切れず、そのまま消滅していった。

 

 二人が先程までいた場所には、二人の装備だけが落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「「なんじゃありゃぁぁぁ!!?」」

 

 ナザリック地下大墳墓の第九階層、ロイヤルスイートにある、”円卓の間”に二人の叫び声が響き渡る。

 

 巨大な円卓の周囲には四十二個の椅子が並べられており、ここでギルド会議などが行われていく。

 

 円卓の間が揺れるのではと思わせる程の叫び声を二人はあげる。糞運営、糞制作、糞ギミック、罵詈雑言がまき散らされていた。

 

 そうこうしていると、アナウンスが鳴っていく。

 

 ##モモンガさんがINしました## 

 

 ##たっち・みーさんがINしました##

 

 アナウンスの声の後、二人の姿が出現していく。

 

 「お?ウルベルトさんもいたんですね。」

 

 モモンガの言葉に、ウルベルトが返答していく。返答を聞いたモモンガが、談笑交じりで、たっちと共に、円卓の椅子に腰かけていった。

 

 「あ、そう言えば、ウルベルトさんにリーネ、INする前にたっちさんと連絡を取り合っていたんですけど、今日は空のデータクリスタルを漁りに、幻獣平原までちょっと狩りに行きませんか?」

 

 「「やめろぉぉぉ!!」」

 

 モモンガの言葉を聞き終わった瞬間、二人が盛大に叫ぶ。

 

 様子のおかしい二人の姿に、モモンガとたっちは顔を見合わせ、首を傾げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 





 モモンガ「もう、なにも起きませんでしたよ?これ二人の装備です、落ちてましたよ。」
 リーネ・ウルベルト「えぇ!?」
 たっち「…リーネ、ちょっと向こうで話そうか。」

 どうもちひろです。

 ギルドが出来て二年経ちました。
 ある程度はもう完成してるんじゃないですかね。
 原作に近い位には出来上がってます。
 ギルメンも42人で打ち止めされました。
 燃え上がる三眼の所為ですね。
 NPCも出来上がっています。
 装備は…まだ完全じゃないかも知れませんね。
 アルベドだけはきちんとした装備をさせたいな…。
 データクリスタルの内容は、次の番外編で細かく書きます。
 色々と原作より弄ってるので…。
 個人的にはこっちの方が、自由度が上がる代わりに難易度が上がるんじゃないかと思うので…。
 上手くバランスを取れたらいいなと思います。
 あんてぃりーねのだいぼうけん、まだまだ続きます…長い…。

 読んでくれてありがとう。
 次回もユグドラシルでしかできない尖った話を書きます。
 次回も読んでくださいね。
 それでは!シュバ!
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