あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 ちひろ「ただいま。」

 

 前回のあらすじ

 ワールド・チャンピオン・ムスペルヘイムが、世界級アイテムの力でワールド・エネミーになって、もうそれはそれは、暴れ回る暴れ回る。
 倒される際に「我は滅びる!しかし、我の魂はまた別の世界に集まり蘇る!そしていつの日か必ず、この世界に帰って来るぞ!」とかなんとか、ほざきまくっていたそうです。
 なんかやり過ぎてしまった所為で、運営様から「いやいやwwwお前もうホント…は~い、BANwww」ってされてしまった。
 運営様は神様でした。滅茶苦茶強かったみたいです。まぁ、彼の魂は別の世界に集まり蘇るらしいので大丈夫でしょう、自分でそう言ってますし。
 そんなこんなで、ユグドラシルの九つの最強が一人欠けてしまった…。
 その欠けた最強の座に座る為に、ヘルヘイム最凶の女、アンティリーネが公式大会へと出場するのであった。



最強の男VS最凶の女

 

 

 

 

 

 

 

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 ”二代目”ワールド・チャンピオン・ムスペルヘイムを決める、ユグドラシル公式が開いた世界最強の戦士を決める大会。

 

 この大会で求められるのは、純粋なる強さである。

 

 ユグドラシルに置ける、様々なスキルや特殊効果を秘めた装備でけではなく、修めたクラスのスキル等、それら全てを封印し、純粋なる強さ―――つまりは、技術戦が求められていく。

 

 唯一、剣と盾だけは持参した物を装備する事は可能だが、前期の通り、特殊な効果や、秘められた魔法の発動などは固く禁じられている。

 

 初見殺しや、毒や麻痺、呪い等の特殊効果で、逃げの戦法を取る事を禁じる為だ。

 

 その理由は何故かと聞かれれば、答えは非常に簡単な物である、それは―――盛り下がるからだ。

 

 ユグドラシルはゲームであり、興行だ。観戦している者達を楽しませる為の配慮がそこにはある。

 

 観戦している者達が求めているのは、力と力、技術と技術のぶつかり合いなのだから。

 

 そこに、エンターテインメントがある。

 

 ムスペルヘイムに公式から、この大会の為だけに期間限定で建設された巨大なドーム、その名も―――”ユグドラシルドーム”。

 

 大会の開催は目前に迫っている。ドームの内部には、様々な種族のプレイヤー達が賑わいを見せながら集まっていた。

 

 ユグドラシルドームの収容人数はおよそ六万人。

 

 その収容人数は、あの東京ドームに匹敵する程の数だ。

 

 そのドームの中央に見える、円形の闘技場。誰が見ても一目両全だ、ここで参加した戦士達―――闘技者達が死闘を繰り広げるのだろう。

 

 数々のモニターがドーム内に設置されており、どこからでも戦いを観戦する事が出来る様になっているこのユグドラシルドームの内部―――観戦席に”四十一人”の異形種のプレイヤー達の姿が見える。

 

 アインズ・ウール・ゴウンの全てのギルメン達が、大会に出場しているリーネの勇姿を観戦する為に、観戦席に集っていた。

 

 「うわぁ~、めっちゃ見られてるね。」

 

 「しょうがないですよ、それだけの事やってますし。」

 

 茶釜の言葉に、モモンガがそう返していく。

 

 アインズ・ウール・ゴウンは悪のギルドだ、恨みは山ほど買っている。この様な公の場に姿を表せば、睨まれて当然だ。

 

 「どうせ手は出せないんだ、好きにさせときゃいいんですよ。」

 

 そう言ったのはウルベルトだ。

 

 このドーム内は戦闘禁止区域であり、なにをしようとダメージは通らない。それでもいちゃもんくらいはつける事は出来るが、余り目に余る様なら、運営から制裁が加えられてしまう。ここは公式が開いた会場であり、観戦者には節度ある行動が求められていく。

 

 「お、出て来たぜ。」

 

 ギルメン達に聞こえる様に、建御雷がそう言葉を吐き、中央の闘技場を指さしていく。

 

 目を凝らせば、そこには、悠々と歩を進める女性プレイヤーの姿が見えてくる―――アインズ・ウール・ゴウンが誇る異形種姫、アンティリーネの姿があった。

 

 ##それでは!トーナメント第一回戦を開始します!##

 

 実況の声が会場中に鳴り響いた。

 

 この大会はトーナメント制になっている。前日に予選を突破したプレイヤー達によるトーナメントが、本日の午前から午後までにかけて開始される。

 

 本日分のトーナメントは準決勝までが行われ一旦終了し、日を跨ぎ、翌日の午後から、決勝戦―――最強を決める戦いが始まる。

 

 予選を軽々と突破したリーネが、悠々と第一回戦の試合に歩を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 ##トーナメント第一回戦!まず入場するのは、異形蔓延るヘルヘイムの恐怖の象徴にして、ユグドラシル最凶の女!異形種姫―――アンティリーネ!##

 

 綺麗な女性実況者の声に会場が沸いていく。そんな中、リーネはゆっくりと闘技場まで歩を進める。その姿は非常に落ち着いている、自らが負けるなど欠片も思ってはいない、その様な姿にも見えた。

 

 ##次に入場していくのは、この大会のダークホースに成りえるのかぁ!?笑いの伝道師ぃ―――だいだろすちひろ!!##

 

 「どうもぉー!どうもぉー!ちひろだよー!」 

 

 リーネの目の前で、おちゃらけた人物が会場中に手を振っている。だいだろすって何だと少し気になるが、その思いはすぐに脳裏から消し去っていく。

 

 今は目の前の敵との戦いだけに集中するべきだ。

 

 「ど、ど、ど、ど、どうも!ちひろだよ!」

 

 集中を切らさず、相対したリーネに対し、ちひろと言う人物がおちゃらけながら挨拶をしてくる。

 

 はぁ、と一つ溜息を吐き、リーネは手に持つ剣を突きつけた。

 

 「あら、お笑いしたいなら他所でやってくれる?ここは戦士達の祭典、芸人は不要なの…おわかり?」

 

 そう言い剣を突きつけた途端―――ちひろの雰囲気が一変していく。

 

 「…そげんゆうなちゃ、異形種姫。ちゅうかお前、ここに来る前にちゃんと写真撮って来たんか?」

 

 「写真?」

 

 そう問いかけられ、疑問符を浮かべた時、突きつけたリーネの剣を、ちひろはゆっくりと右手で払っていく。

 

 「これからそのプリチーな顔の原型がなくなるくらい、ボッコンボッコンにしちゃるき…やき、誰だか分からんくなる前に証明写真撮っとかな…。」

 

 聞きなれない方言と共に、獰猛な雰囲気を纏う。

 

 そして、開始の火ぶたが切って落とされて行った。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「お疲れさんだな相棒!」

 

 「まだまだ疲れてないわよ、ボス!」

 

 会場の控室に訪ねて来たゲンガーに元気にそう言葉を返していく。

 

 ちょうど今一回戦が終わり、二回戦まで休憩中だ。

 

 「一方的だったな、流石だぜ相棒!」

 

 一回戦を観戦したゲンガーがそう言葉を吐いた。

 

 一回戦でリーネが見せた姿は、正に闘神の如し。まるで相手になっていない相手に対し観戦者からは同情の言葉が聞こえて来た程だ。正にボッコンボッコンと言う言葉が相応しい程の一方的な戦いがそこにはあった。これが現実なら、相手の顔面は見るも無残な事になっていただろう。間違いなく証明写真がいる程に。やられる際、「あ、あひる~」と言いながら倒れた時は少し笑いそうになったものだ。

 

 「中々のエンターテイナーだったわよ―――」

 

 流石は笑いの伝道師などと異名が付いている程の人物だ、敗北する時ですら笑わしてくるとは、何ともまぁ恐れ入る―――が。

 

 「―――まっ実力が伴ってなかったけどね。」 

 

 「…ゲッゲッゲッ…そうか。」

 

 ―――そんな訳はない。

 

 曲がりなりにも予選を突破してきたのだ、敵も然る者な筈である。

 

 (気合入ってんな…強いぜ、今日の相棒はよ。)

 

 「よう…相棒…当たって砕けろよ。」

 

 未だかつてない程の強さを見せるリーネに、ゲンガーが拳を突きつける。

 

 一瞬きょとんするリーネだが、少し間を置き、笑いだした。

 

 どうしたの?()()()()()()()()()()()そんな事を言いながらも、その突きつけられた拳に、リーネは拳をこつんとぶつける。

 

 「…あ、あぁ…?そうか?…ゲッゲッゲッ!残りの試合も頑張りやがれ!テラの字と応援してるからな!」

 

 「…んもぉう…あ!ふふ…そうね…()()()()()()()()()()()()()…うん。残りも勝つからね。」

 

 「お、おおう…??」

 

 体の内に闘志を滾らせ、リーネは決意の言葉を吐いていった。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 ユグドラシルドームに多くのプレイヤー達の言葉が混じり合う。その言葉の数は―――観戦者の数は先日よりも多い。

 

 それもその筈だ、今日は決勝戦、つまりはムスペルヘイム最強が決定していくのだから。

 

 賑わうユグドラシルドームの内部―――控室に四十一人の異形の者達が、一人の人間を取り囲む様にして集っている。

 

 「いよいよ決勝か…うわぁ~緊張するな。」

 

 「いやいや、モモンガさんが緊張してどうすんっスか。」

 

 「下馬評通りって感じだな、なぁ、ちんちく。」

 

 アインズ・ウール・ゴウンのギルメン達が、決勝にコマを進めたリーネに激励の言葉を送っていく。

 

 言葉を掛ける者、肩を叩く者など様々だ。

 

 各人が激励しているそのさなか、控室にアナウンスが鳴り響く。試合準備を告げるアナウンスが。

 

 首を二度ほど、コキコキと振ったリーネが立ち上がり、集ったギルメン達を見渡していく。

 

 「行ってくるわね、皆。帰ってきたらワールド・チャンピオンが一人増えるからね。」

 

 強気な言葉を聞いたギルメン達が皆こくりと頷く。信じて送り出すしかない、皆がその様な雰囲気を纏っている。

 

 そんな中、ある一人のギルメンが、リーネの元まで歩いてくる。

 

 「アンティリーネちゃん、相手はムスペルヘイム最強と呼ばれる程の人物です。もしかしたらアンティリーネちゃんよりも強いかも知れない…いや、事実強いでしょう。」

 

 歩を止めたギルメン―――ヘロヘロが決勝に向かうリーネに語り掛けていく。

 

 「しかし、”強い者が必ずしも勝つとは限らない”。僕の師がよく言っていた言葉です。勝負は最後までどうなるか分かりません。心に刻み、集中を切らさないように。」

 

 そう言い、ヘロヘロは拳を突きだした。その拳にリーネも拳を突きつける。

 

 「あんがと、”天才さん”。」

 

 「”凡才”ですよ。」

 

 ヘロヘロの―――ギルメン全員の思いは受け取った。

 

 後は勝つだけだ。

 

 アナウンスに導かれ、リーネは控室を後にしていく、その姿をギルメン全員が見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「お~い、皆ここ空いてるからここで見ようよ。」

 

 「んあん、結構いい所だな。良く見つけたな。」

 

 「このアラフが褒めて使わすぞ、スルシャーナ。」

 

 「あんたさぁ…何様よ。」

 

 仲の良い雰囲気で、観戦席に集まる六人のプレイヤー達、それはスルシャーナ率いるお馬鹿クランの六人だ。

 

 本日ここで最強の戦士が誕生する、その瞬間を肉眼で見たいと思うのは当然だろう。時間をどうにかこうにか作った六人が、談笑しながら、観戦席にて試合の開始を待ち続ける。

 

 「ていうか、ねこにゃんエントリーしなかったんだね。」

 

 「んあん?するつもりだったぞ、けどな気づいたらエントリー期間が終了してたんだ、これがな。」

 

 「かぁ~、バッカ野郎!ワンチャンあったのによぉ、クッソ!」

 

 「あるわけねぇだろ。」

 

 クラン最強の戦士ねこにゃんが大会に出場していれば、もしかしたらと言う思いが沸くアラフに、ルビアスの鋭利な言葉が返って来る。

 

 当初ねこにゃんは大会に出場するつもりではあったのだが、そこはねこにゃんだ。盛大に忘れ、気づいた時にはもう遅かった。

 

 「いやいや、お前な、こいつ強いんだぞ?対人戦だと死ぬほど強いんだぞ?ふざけなけりゃな。」

 

 「んあん、そうだぞ、俺は強いんだぞ。」

 

 「嘘つけ。ていうかさ、ねこ…あんた、年々馬鹿っぽくなってきてない?」

 

 「ねこにゃんはこんなもんじゃないかなぁ?あ…皆、扉が開くよ。」

 

 スルシャーナが指を指した場所には闘技場が見える。そしてその闘技場に続いている二つの道の先に大きな扉が見えた。

 

 向かい合わせの大きな扉が開き、二人のプレイヤーが扉の中から姿を表す。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 闘技場を見つめ、立ち尽くす一人の女性プレイヤーがいた。金髪の綺麗な女性だ。身長は非常に高く、180㌢程はあるのではなかろうか。

 

 腕を組み、闘技場を悠々と見据えるその女性プレイヤーの元に、一人の男性プレイヤーが近づいて行く。

 

 近づいた男性プレイヤーは女性プレイヤーの近くで、ピタリと歩を止めた。

 

 「お初にお目にかかる”ステラ”殿。」

 

 ステラと呼ばれた女性プレイヤーが、言葉を掛けてきた男性プレイヤー―――ギルバートに視線を移す。

 

 「あら、どちら様?」

 

 「忍、忍、拙者ギルバート・リーと申すでござるよ。」

 

 「…へぇ。」

 

 ステラの雰囲気が少し変わる。少々驚いた様な雰囲気だ。

 

 「大物ね、私になんのようかしら?」

 

 「忍、忍、用と言う程の者は無いでござるよ。只の挨拶にござるよ―――盾の忍者殿。」

 

 

 

 

 

 

 「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 盾の忍者?誰の事を言っているのだと、ステラは周囲を見渡すが、それらしい者はいない。もしやと思い、自らを指さす。

 

 「…もしかして私の事かしら?」

 

 「忍、忍。他におらぬでござろう。」

 

 自分に向かい盾の忍者と呼ぶ相手に少し混乱するが、ふと思い出す。ギルバートはまともに会話にならないと聞いた事を。それを思い出し、少し冷静になっていく。

 

 「やはり気になるでござるか?アンティリーネ殿の事が…いや―――自分を打ち負かした相手の事が。」

 

 「…何でも知ってるのね。勿論気になるわ、お嬢ちゃんの活躍を聞くといつも嬉しくなるもの。私ね、お嬢ちゃんの熱烈なファンなの…あの時からね。」

 

 嬉しそうにステラはギルバートに語る。あの時から、ステラはリーネの活躍を聞くと嬉しくなる、まぁ、殆どが悪行だが。

 

 「貴女に聞きたい、()()()()()()()()()()に…強いのはどちら…勝つのはどちらだと思うでござるか。」

 

 「さぁ、そんな事を聞かれても分からないわ。」

 

 即答だった。迷いなく返された言葉にギルバートは少し戸惑う。具体的な言葉が返って来ると思っていたからだ。

 

 戸惑うギルバートを見ながら、してやったりと言う様な雰囲気を醸し出し、ステラは笑う。

 

 「”強い者が必ずしも勝つとは限らない”私の師が良く言ってたわ。勝負は終わるまで分かりはしないのよ?答えなんて出せないわ。只一つ言える事は、この試合、どちらが勝ったとしても―――ワールド・チャンピオンたるに相応しい実力の持ち主と言う事ね。」

 

 「ほう…素晴らしい言葉でござるな…貴女程の者にも師がいたでござるか。」

 

 「あたり前でしょ、私を何だと思ってるの?」

 

 呆れた様に「はぁ」と溜息を吐いたステラが、ギルバートに語る。言い聞かせるように。

 

 「一人で至れる極地など有りはしない。”偉大な師”そして”誇れる兄弟子”、沢山の人がいたから、今の私があるの…だから、私は皆の事が今でも大好き…皆は私の事が嫌いだったみたいだけど…。」

 

 語る言葉は徐々に小さくなっていく。戸惑うギルバートの耳に、実況の声が聞こえてくる。

 

 それが意味する事は、一つしかない。

 

 「…始まるわね。」

 

 「…そうでござるな。」

 

 重厚な音を奏でながら、大きな二つの扉が開いていく。その中から、歩いてくる―――二人のプレイヤーが。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 ##皆さま長らくお待たせしました!これより決勝戦を開始致します!##

 

 実況の男性の声が耳に届いてくる。非常に良い声で、それでいて聞き取りやすい。

 

 会場内に響き渡る実況の声を聞きながら、目の前に見える闘技場までの道を、リーネはゆっくりと進む。

 

 そしてそんな中訪れるのは―――懐かしいあの感覚だ。

 

 (懐かしいわね、この感覚。これ程…か。)

 

 危険センサーが鳴り響く。ギュルン、ギュルンと鳴り響く。忘れもしない、この感覚はあの時―――盾の女と相対した時に感じた感覚だ。

 

 本能が叫ぶ―――逃げろと。

 

 必死で叫ぶ本能の警告を、鼻で一つ笑った後に、正面を見据え、ゆっくり進んで行く。

 

 見据えた先には、自らの本能に警告を出させている人物の姿があった。

 

 両者がゆっくりと歩を進め―――相対する。

 

 ##龍虎相まみえるぅ!実況はわたくし館古郎一(たちふるろういち)、レフェリーは信田角明(のぶたかくあき)でお送りいたします!##

 

 実況の声を聞き、いよいよかと言う気持ちが沸いていく。

 

 そうしていると、目の前の人物から―――決勝を戦う相手である、アロービーチから声を掛けられる。

 

 「初めましてだな、異形種姫。」

 

 「そうね、初めましてね―――ムスペルヘイム最強の男。」

 

 決勝の相手であるアロービーチが、挨拶がてら話してきたと思えば、何やら指で自らのこめかみをトントンと叩く。

 

 「想像以上だなお前…あぁ、なんつーの?危険センサーとでも言うのか?それがな、ギュルンギュルン鳴るんだよ、コイツはやべえってな、逃げろ…ってな。この感覚はお前で”二人目”だ。」

 

 「あら、奇遇ね、私もアンタで”二人目”よ。」

 

 「はは、そうか、そりゃ確かに奇遇だ。ここまで勝ち上がってきてもらって何だが、お前の命運はここで尽きる…勝つのは俺だ。」

 

 「はん…命運?くだらない。」

 

 滾る闘志を隠しもせず、リーネは言い放つ、獰猛に。

 

 「今から戦うのはあんたと私、そんなもの(命運)が入り込む隙なんてありはしないわ。」

 

 一瞬呆けた様な雰囲気を出したアロービーチだが、雰囲気が一変する。返された言葉の熱に当てられたのだろう。感情が熱を帯び高ぶっていく。

 

 今すぐにでも試合を始められそうな二人の間に、レフェリーである信田が近づく。

 

 「アンティリーネ、アロービーチ、俺はレフェリーの信田だ。反則等があれば即座に試合は止める、いいな。」

 

 静かに頷く二人を見て、こくりと頷いた後に、信田は二人に語る。

 

 「俺は九人全てのワールド・チャンピオンの決勝をジャッジした。そんな俺だからこそ、確信に似た勘がある…この試合は、他の九人の試合を超える…お前達こそが”ベストバウト”だ!」

 

 「当たり前だろ…ハードルが低いんだよ、もっと上げても良いんだぜ?」

 

 「同感ね…時間よ、試合を開始して。」

 

 堂々と言い放つ二人にニヤリと笑った後に―――信田が叫ぶ。

 

 「準備はいいな!!」

 

 「当然だ。」

 

 「準備は!いいんだなぁ!!」

 

 「いいわ、始めて。」

 

 二人の返答を聞いた信田が大きく海老反る、そしてその右手を―――一直線に振り切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは試合開始を意味する合図、信田の叫び声と共に、試合の火ぶたは切られていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 たっち「おぉ、信田さんがレフェリーですか、懐かしいですね。」
 
 モモンガ「たっちさんの時もあの人だったんですか?」
 
 たっち「そうですよ―――数々の決闘を見てきたが、そんな俺だからこそ確信を持って言える…お前達こそが”ベストバウト”だ!って言ってましたね、いやぁ懐かしいですね。」
 
 モモンガ「へぇ、凄いですね、流石たっちさんだ。」


 
      ―――AOGニュース―――
         ―緊急速報― 


 パトカーさん「ファンファン。」

 アンティリーネ「スタジオの方々、聞こえますでしょうか!?こちら現場のアンティリーネです!逃亡を続けていたちひろ容疑者が、今朝方逮捕されました―――あ!出てきました!」

 ―――ぞろぞろ、ぞろぞろ。

 アンティリーネ「項垂れています!ちひろ容疑者は項垂れています!約半年以上にも及ぶ逃亡生活にも、これで幕が下り―――あっとちひろ容疑者が地面に!?」

 ―――ごりゅごりゅ、ごりゅごりゅ。

 アンティリーネ「擦り付けています!頭を地面に擦り付けております!これは謝罪の意味が込められているのでしょうか―――あぁ!泣いています!容疑者は涙を流しながら、頭を地面に擦り付けています!現場からは以上です!!」

 
      ―――AOGスタジオ―――



 モモンガ「いやぁ、現場は騒然としていましたねぇ。」

 たっち「半年以上逃亡を続けていましたからねぇ、捕まって本当に心から良かったと思います、はい。」

 ヘロヘロ「容疑者のあの涙は本物と思いたい所ですが、容疑者は以前にも同じ様に逃亡していますからね、中々狡猾な人物だと私は思いますね、はい。」

 モモンガ「はい…痛ましいですね。ちひろ容疑者には、読者の方々を裏切った事を深く反省して貰い、読者の気持ちをもっと理解してもらいたいと私は思いますね…はい、それでは、次はパンダのニュースです。」




 どうもちひろです!

 帰ってきました!
 また書かせてください!

 それでは!シュバ!
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