あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
前回のあらすじ
自称優勝候補のプレイヤー、だいだろすちひろがまさかの敗北をきす。
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「…なんだあれは?」
観客席にて観戦しているモモンガが、闘技場を見据えていく。そこには、決勝を争う二人、”リーネ”と”アロービーチ”の姿が見える。
両者が構えていく姿を見据えていた時に、モモンガは強烈な違和感を感じていく。
―――剣が短い。
もともとショートソードをいつも好んで使用していたが、今手に持っている剣はいつもの物よりも更に短い。
「みじけぇな…。」
「えぇ…あんなのでまともに戦えるのか?」
腕を組んだウルベルトが、いつもより少し低い声を出す。どう言う意図があるのか測りかねているからだ。ウルベルトの声音に含まれた感情を理解し、同意の言葉をモモンガも吐く。自らもまだ理解が及ばないからだ。
「…剣だけではありません。」
二人の会話に割り込む形で、たっちがそう言葉を吐いた。
確かに持つ剣は短く、いつもと違っている。そこに目が行きがちだが、ギルメン達ならば分かるであろう構えの違いがそこにはあった。
足のスタンスがいつもより若干だが広い。リーネは自らの小さな体を駆使し、かく乱をするかのように細かく動くのが得意だ。故にスタンスは余り広くはない、現在のスタンスも別にそこまで広くはないのだが、それでも何時ものスタンスよりは若干広めに見えた。
姿勢もそうだ、前傾に構える姿勢は変わらない様に思えるが、いつもより姿勢が高い、目線が高いとも取れるかもしれない。
たっちが自らの感じた違和感を二人に語った後に、少し間を空ける。
スタンスの広さ、姿勢の高さ―――そして、最も違う所は。
「”片手剣”か…ちんちくのあんな持ち方初めて見たぞ。」
たっちの言葉を待つよりも早く、ウルベルトが口を開いた。先に言われた事に対して、お前が言うのかよと言わんが如く、チラリとウルベルトを一瞥した後に、たっちが自らの頭をポリポリと掻いていく。
その仕草を見た後に、ふんっと鼻で笑ったウルベルトの視線の先には、右手のみで剣を握るリーネの姿があった。
アームシールドを装備している際は、要所要所で片手のみで剣を振るう姿は見た事はある―――が、あのように、姿勢の段階から片手で持っている姿は見た事はない。
残った左手は斜めに折られ、胸の付近に置かれている。恐らくは正中線をカバーしているのだろう、抜け目のない事だ。
あれが短い剣を使いこなす為の姿勢なのかと、その意図を考えていた際。
「対してアロービーチは”刀”、それも…。」
やまいこがそう言いながら、ゆっくりと横に振り向いていく。
そこに居たのは―――建御雷だ。
「ああ、俺のと同じ―――”野太刀”だ。」
対してアロービーチの獲物は長刀―――野太刀。
建御雷の言う、俺のと同じと言う言葉は、彼の愛刀である”斬神刀皇”もまた、野太刀だからだ。
斬神刀皇の全長は200㌢を超える、そして、アロービーチの持つ刀もまた、同じ程の長さだ。リーネの持つ短剣と比べた時、リーチの長さは倍では利かない。
「”正反対”ってわけだね☆”野太刀”と”短剣”…”天敵同士”ってわけだ☆」
おちゃらけた口調で、るし☆ふぁーがこ踊りしながら、ギルメン達全員に聞こえる様にそう言う。
「「??」」
その言葉を聞いたモモンガとウルベルトが顔を見合わせ、両手をおどける様に上げていく。なんのこっちゃと言う意味だろう。
そんな二人を置き去りにするかのように、たっちが口を開いた。
「…るし☆ふぁーさんの言う通りです。この勝負、相手の
重い口調でそう言い、たっちが両手を組んでいく。
―――さぁ、お手並み拝見といこうか。
♦
両者が構え、向かい合う。
変則的なリーネの構えとは対照的に、アロービーチは両手で野太刀をがっしり掴み、スタンスを広く取っていく。
非常にオーソドックスな構えだ。長物を扱うに適した姿勢であり、基本に忠実な姿勢だ、そして―――故に完成された姿勢。そこには、隙など微塵もない。
下手に動けば、すぐにでも食われてしまう。そう思わせるだけの迫力がそこにはあった。
実況の声に混じるかのように、観客の声が飛び交っていく。
会場が興奮の坩堝に沸き―――レフェリーの手が振り下ろされていく。
試合の火蓋が切って落とされた。
先に動いたのは―――アロービーチ。
がっしりと掴んだ野太刀を振り上げ、一直線に振り下ろしてくる。そこには下手な小細工は一切ない。いっそ清々しい程の直線的な攻撃だ。
迫る野太刀の刀身を視界に収めながら、複数の選択肢が脳裏に過る。上段からの振り下ろしに対し、自分の取れる手段が。
バックステップでの回避―――否、距離が増える。
野太刀に対し、これ以上の距離は譲れない。
片手剣を使い、上段で受け止める―――否、受けを弾かれる。
野太刀は長さ以上に重厚である、故に受けるのは不可能に近い。
左右どちらかに避け、同時に、そのまま距離を詰めていく―――これが現状最適に思える。
思考を即時に選択し、左斜めに駆け抜けていく。見ようによってはタックルに見える程、姿勢を尖らせながら進んで行った時、頭部を野太刀がかすめた―――その後に、鈍い音を立て、闘技場の床に野太刀が叩きつけられていく。
―――好機。
振り下ろされた野太刀に飛び込む形になりながらも、すんでの所で回避に成功していった。野太刀の持つ重厚さがマジマジと現れている音が耳に飛び込んでくる。それは距離を詰めるチャンスが巡ってきた事を知らせる音だ。
巡ってきた好機に対し、右足に力が入る。力強く踏み込もうとした―――その時。
―――ギュルン、ギュルン。
危険センサーが鳴り響く。
理由は分からない、只、このまま進むのは非常に危険だと感じた。踏み込もうとした右足にストップを掛けていく。次の瞬間―――鼻先を野太刀の切っ先がかすめていった。
上段からの振り下ろしの後、即座に切り返しが襲ってきた。逆袈裟斬りが眼前を通り過ぎ、額から冷汗が一粒流れる様な感覚に陥る。
野太刀はリーチが長く、それでいて重厚。距離と言う優位を保ちながら、相手に受けると言う選択肢さえ失くさせてしまう凶悪な刀だ。
非常に優れた武器であると言えるが、野太刀はその長さ故の小回りの利かなさに加え、重心による扱い辛さが挙げられる。一は柄元重心である為、先重心の一般の刀よりは振るいやすくはなってはいるが、それでも扱いの難しい類の武器ではあるだろう。
故に体幹が物を言う。重心を上手く扱うのも大事だが、次の一手に移る為の体の軸を崩さない事が大前提になっていくという事だ。
しかしここはユグドラシルであり、ゲーム空間だ。現実ではない―――が、実は重さや重心はシステム上には存在していて、下手な動きをしていると現実と同じように、ふらついたりなどのペナルティが発生してしまう。武器作成の際に詳細機能で説明は入っているのだが、先程も言った様に、ここは現実ではなく、ユグドラシル―――ゲーム空間だ。感覚を得る事ができないゲーム空間では、野太刀の扱い辛さは現実のそれを越えていく。
リーネの目の前で、逆袈裟斬りにより下から振り上げられた野太刀が、またもや上段で動きを止めていく。
どこまでも自然体に、それが当然だと言わんばかりに、野太刀は上段構えに収まっていく。
重心も、体幹も、ユグドラシルの中で感じ取っていくのは困難極まる。そんな中、そこにあったのは姿勢だ。次の一手に繋げる為の、無駄のない姿勢。そこから続く、どこまでも研鑽され、鍛え抜かれた動きがそこにはあった。
上段構えに収まった野太刀が流れる様に動き始める。それはオープニングアタックと同じ―――上段からの振り下ろしだ。
鈍い音が再度鳴り響く。野太刀が闘技場の床に叩きつけられた音だ。その音が意味する事は、被弾は避けられたという事。
叩きつけられた野太刀の遥か先にリーネの姿はあった。追撃が脳裏に過る。即座に後方にバックステップで退避していき、難を逃れていく―――が。
―――距離がまた、開いた。
詰める前より開いた距離の先で、アロービーチはまた姿勢を正す。野太刀をがっしりと掴み、スタンスを広げていく。
―――追撃は来ない。
アロービーチは急がない。
勝負を急がず、こちらを見据えている。
切っ先をこちらに突きつけ、距離と正中を測っていく。
野太刀の有利な間合いを確保する為に。
ユグドラシルでは表情は動かない、能面だ。しかしそれでも、ジロリとした視線をリーネは感じとる。
どう動くか、どう思考を取るか、見定め、見極めようとしている。
堅実だ―――堅実故に強い。
♦
(唐竹割り…厄介ね。袈裟斬りや横薙ぎよりも速度が速く、威力も高い。)
見に入っているアロービーチを視界に収めながら、目まぐるしく思考は回転を始めていく。現状有利なのは向こうだ。距離を詰めるのに失敗し、更に距離を空けられてしまった事により、次はもっと深く詰めなければならない羽目になってしまったからだ。
この現状を打破する為に思考を費やす。無論、警戒は怠らずに。
(唐竹割りを受けきるのは不可能、かといって下がればジリ貧、左右に避けても切り返しがやって来るか…単純なだけにハマれば強いわね。)
一つ息を吸い―――そして吐く。
覚悟は決まったと言わんばかりに、右手に持つ片手剣に力を込めていく。するとアロービーチもまた、少し深く腰を落とした。苦笑いが零れそうになる、完全に見透かされているからだ。それしかないよな―――そう声が聞こえてきそうだ。
これ以上”待ち”に入らせるのは悪手だ。待ちの凶悪さは自分も良く知っている、現状有利な相手を、更に有利にさせる訳にはいかないと、右足に力を込め―――駆ける。
―――同時に、野太刀が振り上げられた。
美しさすら纏う姿勢から、淀みなく振り上げまで派生していく。極限まで予備動作を削り取る事によって、モーションがまるでないかの様な錯覚にすら陥る程だ。
真に完成された姿勢から繰り出される動きは、例え視界に収めたとしても相対者の思考を置き去りにしていく。脳が理解を終えた頃には、既に行動は終了している。
低い姿勢を維持しながら、一直線にアロービーチまで駆けていく。集中力を極限まで研ぎ澄まし、野太刀の間合いに入り込み―――一閃、野太刀が振り下ろされた。
左頭部の頭上を野太刀が霞めていく。これが現実なら髪の先端は切断され、空中に舞い散っていた事だろう。斜め右まで駆け抜けた後に、重厚な音が鳴り響いた。
―――間一髪、またもやと言う言葉が続くが、今回も回避に成功していく。
しかしこれで終わりではない、切り返しがやって来る。
チャキッと言う高い効果音を耳が拾っていく。床に打ち付けられた野太刀の刀身の向きが変わった音だ。捻る様に向きを変えられた野太刀が迫るのを視界が捉え―――
―――ギャリ。
聞きなれない音が周囲に響く。
それはそれは小さな音だ。観客の歓声が響く中、レフェリーにすらその音は聞こえなかった。
―――二人を覗いては。
(―――!?)
アロービーチが異常に気づく。小さな異音が聞こえたその刹那、野太刀の起動が若干だがズレる。
それは本当に少しのズレだ、普通の相手なら誤差の範囲に収まるだろう―――だが、今回の相手は普通ではない。
リーネの左のこめかみを野太刀の切っ先が斬りつける。しかし直撃ではなく、ダメージ判定も軽い物で済む。これが現実なら、痛みによって次の行動に支障が出るだけでなく、出血によって視界も悪くなる所だが、ユグドラシルには、そこまでの繊細なシステムは無い。
普通の相手なら直撃させれる程の微弱なズレを、軽傷で済ませていった相手にアロービーチが戦慄したのもつかの間―――スルリと淀みない動きで、懐に潜り込む相手の姿が視界に飛び込んできた。
潜り込んで行く―――野太刀の間合いが潰されていく。
唐竹割り、逆袈裟斬り、迫りくる猛撃を掻い潜り、リーネは自らの獲物、片手剣の間合いまで入り込んでいく。
片手剣の間合い、そこは―――野太刀の最も不得意な間合いだ。
野太刀にとって、距離を詰められるのは最も嫌な事。そして、片手剣―――短剣にとっては、距離を空けられるのは最も嫌な事だ。
お互いの長所がお互いの弱点になりえる。
天敵は天敵に成りえるのだ。
リーネは懐に潜り込んだ、自らの最も得意な間合いである、”至近距離”に―――否、更に深く。
―――ピトリ。
可愛らしい効果音が聞こえてきそうな程、深く潜り込む。体と体が密着する程に。片手剣を右手に構え、左半身をアロービーチの体にくっつけていく。
端から見れば、上目遣いで男に寄り添う女性にすら見える程だ。このまま、チュッと一つキスでもしそうに見えるが、残念だがこの女はその様に優しい女ではない、ユグドラシルに置いて最も凶悪な女が、下から睨みつけ―――獰猛に笑った。
それは至近距離と言うには近すぎる。
リーネの得意な
―――
片手剣と野太刀の長さを考えるちひろ。
頭の中のイメージを思い浮かべます。
とりあえずはリーネさんの片手剣を想像します。
どんなものだろう?
こんなもんか?
そう思い考えるちひろ。
悩ましい。
そう思います。
120㌢くらいか?
そう思います。
そんな時、部屋の片隅にある物が目に見えてきます。
ちひろは”エッグキャスト(釣り竿)”を手にとります。
ちひろ「これで110㌢くらいかぁ…110㌢!?」
120㌢は思ったより長かったです。
次は野太刀の長さを考えます。
どれくらいだろう?
180㌢くらいか?
そう考えます。
続いてもう一本の釣り竿”炎月”を手に取ります。
「これで210㌢くらいかぁ…210㌢!?」
180㌢は思ったより短かったです。
なので、片手剣はエッグキャストより短く(持ち手込みで)野太刀は炎月くらい(持ち手込みで)になりましたとさ…。
お~わり。
どうもちひろです。
両方の釣竿を持っている人はいますか?
持っていたら並べて見てみるといいかもです。
この二本くらいのリーチ差で相対していると考えれば、中々に極端な戦いになると思いますよ。
ちなみに野太刀は持ち手だけでも五十㌢は軽く越えるでしょう。
それでは!シュバ!