あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 前回のあらすじ

 懐に潜り込んだアンティリーネ。
 超至近距離(ゼロレンジ)の攻防が始まる。


超至近距離

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「ぬうぅ!懐に潜られたでござる!アロービーチ殿相手にああも易々と…アンティリーネ殿、正に女傑ぅぅぅ!」

 

 観客席にてギルバートが驚愕を露わにしていた。アロービーチは自身の仲間だ、その強さは誰よりも知っている、だからこその、この言葉だ。明らかに自らの不利な状況から、一転して有利な状況まで持っていった人物に賞賛の言葉を送っていく。

 

 そして、騒ぐギルバートの隣には、腕を組み、悠々と闘技場を見下ろすもう一人の女傑の姿があった―――ステラだ。

 

 騒ぐギルバートに対し、何一つ言葉を返す事はしない。依然、悠々と見下ろしていく。

 

 (入り込んだわね、お嬢ちゃん。野太刀は長く、そして重厚、片手剣で出来る事は必然限られていく。)

 

 「女傑忍者ぁぁぁ!女帝忍者ぁぁぁ!アマゾネスゥゥゥ…あっ!忍者ぁぁぁ!やはり貴女にはスターの素質がある!なぜならばぁぁぁ、拙者をここまで滾らせているのだからな!ステラ殿ぉぉぉ、聞いておられるのかぁぁぁ!?」

 

 やかましくも騒ぐギルバートに返答を迫られるが、言葉は返さない。努めて無視をしていく。

 

 (行動が限られるという事は、行動に制限を掛けられるという事。故に”先”を取られる。”坊や”の動きは確かに洗練されている、しかしそれだけではない、次の行動が絞り込まれれば、反応速度は更に増し、予備動作は更に削られていく…気づいているかしら?お嬢ちゃん。)

 

 「ステラ殿ぉぉぉ!ステラ殿ぉぉぉ!聞いておられるかぁぁぁ!?拙者は今…猛烈にニィィィンでござるぞぉぉぉ!!」

 

 (あれからどれだけの研鑽を重ねてきたのかしら?少しはマシな動きになった物ね。あの不利な状況を打破できた事は褒めてあげる。それがお嬢ちゃんの新しい武器…そして―――()()()()()()()と見て良いのかしら?)

 

 「ステラ殿ぉぉぉ!ここからの展開は見逃し厳禁でござるぞぉぉぉ!うわっひゃぁぁぁ!ニィィィン!!」

 

 騒ぎ続ける―――というか、最早暴れ回っているギルバートにチラリと視線を移す。ユグドラシルなので表情は分からないが、これが現実なら非常に鬱陶しそうな表情をしている事だろう。

 

 ―――ここからの展開?

 

 分かりきっている事で騒ぐな。そう思いながら、プイっと闘技場に視線を戻す。「今見たでござろう!?無視していたのでござるな!」と何やら喚き声が聞こえてくるが、努めて無視をする。

 

 喚き声を一身に受けながらも、ステラは悠々と闘技場を見下ろしていく。

 

 密着した二人を見下ろす。これからの展開など分かりきっている。もし見逃し厳禁だと言うならば、それはその展開がいつまで続いていくのかと言う所だろう。

 

 (お嬢ちゃん、確かにそれはお嬢ちゃんにぴったりの武器ね。()()()()()()か知らないけど、そいつ、中々良いセンスしてるわね、褒めてあげようかしら。けどねお嬢ちゃん、その坊やは普通じゃなくってよ―――その()()()()いつまで続くかしら?)

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 ピッタリと張り付きアロービーチの出方を伺っていく。左手肘から手の甲にかけてを腹部に押し当て、フリーの右手を即座に動かせる様、軽い脱力を行う。ここが現実なら睾丸を握り潰し、隙を作る所だが、ゲームでは不可能、限られた手立ての中で最善の行動を取るべく、全神経を集中させていく。

 

 ―――どう動く?

 

 軸である左手に神経を研ぎ澄ましていた際、ふっと左手の密着が解けていく。隙間が開いたのだ、それはすなわち、相手が動きを開始した合図。

 

 バックステップで距離を取ろうとされるが、即座に追いつく。再度張り付き、先程と同じ体勢で身構えた瞬間、柄が下方から迫る。

 

 野太刀はこの距離では振るう事は出来ない、持ち手である柄を振り上げ、殴打により距離を取ろうとしているのだ。相手が最も欲しているのは距離だ、それも非常に広い、野太刀の間合いを。

 

 ピッタリと張り付くリーネを弾き飛ばそうとして迫る野太刀の柄がピタリと止まる。避けられたのでも、防がれたのでもなく、止まる。

 

 (!!)

 

 一瞬の間が起きる。それは本当に些細な間だった、常人なら気にも留めない程の間、しかし―――達人同士では致命的な間だ。

 

 アロービーチの左半身に一直線に刃が走っていく。短剣が下方から振り上げられ、その身を襲う。現実なら肉が切り裂かれ、血しぶきが舞い散っている事だろう。

 

 クリティカル判定と共に表示されたダメージ数値を視界に収めながらも、アロービーチは冷静さを欠きはしない。

 

 この距離は不味い。そう思い、再度バックステップで後方に飛び上がろうとする―――が。

 

 ―――ガクン。

 

 体勢が崩れる、後方に退避できない。理由は即座に判明していく―――左足が踏み付けられているからだ。

 

 崩れた体勢に短剣が襲い掛かる。顔面まで迫る短剣を何とか躱すが、左肩が盛大に斬りつけられていく。斬りつけられながらも、右肘を使い、回転するようにこの距離から脱出を図ろうとしていく―――が、それは叶わない。

 

 右肘が撃ち込まれる前に、ピタリと動きを止める。先程と同じだ、そしてその一瞬の間に、左の腹部が斬りつけられる。

 

 ここに来てアロービーチは気づく―――”先”を取られていると。そしてその理由も検討が付く。

 

 それは左手だ、ピタリと自らの腹部に密着させられた左手―――正確には左の肘が、自らの行動を読む”触角”の役割を果たしている。

 

 左肘が密着しているのは腹部の中央―――正中だ。

 

 肘を起点に、正中線を測り、ズレによって左右の動きを察知している。隙間が空けば後方への退避の察知と、肘と相手の姿を見比べ、遠近感で距離を測っている。恐らくその精度はかなり高い、瞬時に開いた距離を計算し、どれくらいの歩幅で何歩で密着できるかまで割り出しているのだろう。

 

 後方だけでなく、左右の動きも制限されたアロービーチが次に取る行動とは―――前方しかない、つまりは正面突破という事になる。離脱―――回避が無理ならば、攻撃に打って出ようとするしかない。

 

 ―――その動きさえも静止されていく。

 

 (――~~~!)

 

 前方に掛かった力を、正中を抑えた肘が力で押し返していく。

 

 正中とは正中線。正中線とは体の軸だ。体を動かす際、力が必ず通っていく場所―――軸を抑えていく。

 

 前方に動こうとする力に対し、力で押し返し、軸と言う力の通り道を抑え込む。

 

 正に”事理一致”―――”理合”が炸裂していく。

 

 先を取られる事により、アロービーチは行動に移る事が出来ない―――

 

 下方からの切り上げ―――被弾。

 返す刀の右上部からの振り下ろし―――被弾。

 流れる様にして繰り出されていく、腹部への刺突が迫る、そして、これも―――被弾。

 

 ―――三度斬りつけられた。

 

 自らのHPゲージだけが無情にも減少を続ける中、それでも冷静に現状を把握していく。そうしてある一つの答えに行きついていく、自らの行動を束縛していく起因になっている物を―――相手のもう一つの武器の存在を。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「なんか動きが鈍くなったな。」

 

 観客席にて観戦を続けるギルメン達の中で、モモンガが自らの率直な感想を漏らす。始まりと比べて明らかに動きの鈍くなったアロービーチの姿―――いや、攻めあぐねているとでも言おうか。モモンガは現状を把握し、色々と思考を回すが、思ったような答えには行きつかない。

 

 わざとぼそりと呟き、周りを伺っていく。自らのこの発言に対し、どれだけのギルメンが反応するのか、その後どの様な発言が飛び出すのかと、周囲に耳を澄ませていく。

 

 少しのざわめきがギルメン内で起きていく。モモンガの言葉に同意を漏らす声や、違う感想を持った声がちらほら聞こえてくる。様々な憶測が飛び交う中で、それらの言葉のパズルを組み合わせながら、答えに辿り着こうとしていれば―――答えが唐突に姿を表した。

 

 「鈍いと感じるのも当然かもしれませんね、打ち出しを抑えられているのですから。」

 

 そう言葉を吐いた人物―――ヘロヘロにギルメン達の視線が突き刺さっていく。その視線を送る者達は皆一緒だ、”打ち出しを抑える”と言う言葉の意味を理解できてはいない、もしくはその答えに行きついていなかった者達だ。モモンガもその内の一人に入る、この場で、ヘロヘロに視線を送らなかったギルメンはたったの三人しかいない。

 

 「ふぅ~ん、やっぱそうなん。動こうとはしてるもんなアイツ。」

 

 三人の内の一人―――ぺロロンチーノがくちばしの上の方、鼻をほじりながらそう言う。

 

 意外な人物に思われるかもしれないが、ぺロロンチーノは狙撃手であり、その眼力は脅威の一言だ。相手の細部の動きさえも見極め、”先を取り”狙撃を成功させる程の技量さえ持つ人物なのだから。

 

 エロゲでロリの体の隅々までを血眼になり見つめた結果得たその眼力が、相対する二人の動きの微妙な違和感に気づいていく。

 

 「そうです、動こうとはしてるが動けない。振り上げようとした柄は、動く前に抑えられた、前方に動こうとしても、押し返された―――打ち出しを抑えられているんです。」

 

 「それは分かる…しかしだヘロヘロさん、言うのは簡単な事だが、並大抵の事じゃねぇぜ…どこにカラクリがありやがる。」

 

 振り向かなかったもう一人―――建御雷がヘロヘロに疑問の言葉を投げ掛ける。理屈は分かる、しかしそれを行えるだけの何かがある筈だと。

 

 建御雷程の人物ですら気づく事が出来ない何かがある。その何かを説明できる者は、このユグドラシルドームの観戦者の中で、たったの四人だけだ―――その内の一人が口を開いた。

 

 「…肘か。」

 

 腕を組み、悠々と闘技場を見下ろす人物―――たっち・みーが重々しく口を開く。

 

 視線が集まる中、たっちはそこから先は語らない。鋭い視線を闘技場の二人に向け続けていく。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「肘…かい?」

 

 「んあん、そうだ、肘だ…これがな。」

 

 観戦していたスルシャーナの疑問にねこにゃんが答えを告げていく。しかし答えを聞いてもなんのこっちゃだ、スルシャーナ、アラフ、炎火、ガンジョウの四人は顔を見合わせ頭にクエスチョンのアイコンを出していく。

 

 そんな中、唯一アイコンを出していないルビアスが疑問を口にした。

 

 「肘でそんな事できるわけ?所詮肘じゃないの。」

 

 そう疑問を口にしたルビアスに対し―――

 

 「んあん、肘なめんなよ、ボケ。」

 

 ―――唐突な暴言が襲い掛かる。

 

 「ああん!?誰がボケじゃぁぁぁ!」

 

 地団太を踏み憤慨するルビアスを横目に、ねこにゃんは残りのメンバーにも聞こえる様に語り出す。

 

 「こと戦いに置いて、大まかに分けると”四つ”の動きの型があんだ、これがな。」

 

 そう言ってねこにゃんは自分の体―――胸の辺りを右手でポンと叩いていく。

 

 「一つはこれ”体”だな。これは”(めん)”って呼ばれてる。最も大きな個所で全ての攻撃はこの面に到達していく。この面を大きく使った攻撃は”投””極””絞”なんかで呼ばれる訳だ。」

 

 お次は右手を握り拳を作る。それもまた、ポンと叩く。

 

 「二つ目はこれだな。投、極、絞ときたら、最後は”打”だ。こいつは、言うなれば打撃だな、これがな。こいつは”(てん)”って言われる。嬢ちゃんの使う肘も、この点になっていく。」

 

 そして腰に据える剣を叩く、ポンっと。

 

 「三つ目はこれ”斬”だな。これが”(せん)”だ。武術の世界では、振り切った先が線へと至るんだが、ことこの戦いに置いて、剣撃が線と呼べんだろうな。」

 

 最後にねこにゃんは、変なポーズを取っていく。なにやらズコーっとズッコケていくかの様なポーズだ。

 

 「最後はこれ”崩し”だな、これは”(ほう)”って言われる。体勢を崩すって事だ。」

 

 変なポーズから姿勢を正し、ねこにゃんは自らの腹部を親指で指していく―――正中線をだ。

 

 「アロービーチは嬢ちゃんに点を抑えられてる。ここで言う点は打撃の点じゃねぇ、力の点…いわゆる力点ってやつだ、点を点で抑えられてんだ、これがな。」

 

 右から左へと顔を動かし、仲間達を見渡していく。理解できたか?そう言わんがばかりに。

 

 「正中線は動きの要だ、全ての力はそこを通っていくからな。(せい)を把握し、(めん)を見据え、(てん)を繰り出す、(てん)(めん)を捉え、(ほう)へと至り―――(せん)を成すんだ。これが全ての武術、剣術…いや、俺達近接戦闘者の全てであり、基礎…そして―――極意だ、これがな。」

 

 「じゃあ異形種姫はその極意って奴を体得してるって事で良いのかい?」

 

 スルシャーナの疑問に、ふるふるとねこにゃんは首を振る。

 

 「体得できてる奴なんていねぇさ、これは只の理想論であって完璧にこなせる奴なんていねぇ、その場その場で状況が変わる中で、その全てを綺麗に合致させるなんて出来やしねぇさ、だから極意なんだ。嬢ちゃんも流れにはそってるが、かなりちぐはぐだからな…高いレベルにはいるとは思うが…。」

 

 疑問に答えたねこにゃんが、次は肘について説明を始めていく。「肘を武器に戦う武術があんだけど―――」そう言っていると、何やらアラフの様子がおかしい事に気づく。

 

 「―――んあん?アラフどうしたんだ?」

 

 「うぅん…点…点?」

 

 「嘘でしょ、あんた…そっからなの…?」

 

 どうやらアラフは全く理解が出来てはいない様だ。結構分かりやすかったぞと、ルビアスが思っていると。

 

 「点…天…テンテンくん!」

 

 ―――ポン。

 

 アラフが良い声で手を叩く。それはすなわち、アラフは考えるのをやめたという事だ。

 

 「…信じらんないコイツ…。」

 

 「んあん!それ知ってっぞ!面白れぇよな!」

 

 アラフの言葉を聞き、ねこにゃんは説明そっちのけで、そのテンテンくんの話をアラフと楽しそうに始めていく。

 

 パチンとルビアスが額を叩く。そうだ、いつもと違う雰囲気に騙されていたが、コイツはこういう奴だ―――馬鹿だった。

 

 まるで頭痛にでも襲われたかのように、額に手を乗せ俯くルビアスの視界の外―――闘技場では、相対する二人が次のフェーズに移ろうとしていた。

 

 頭を抱え俯くルビアスには、その姿は見えない。「はぁ」と溜息を付き項垂れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合開始から六分―――優勢はアンティリーネ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ステラ「誰の入れ知恵か知らないけど、褒めてあげるわ、おほほほ。」ドヤァ

 ヘロヘロ「はい、凡才の私です。」

 ステラ「はうあ!?せ、先輩!?」

 ヘロヘロ「愛理沙(ありさ)…そう言う所が嫌われるんですよ…。」

 愛理沙(ありさ)「えぇ!?ち、違うんです、先輩!私は別にそういうつもりじゃ…。」

 ヘロヘロ「ええ、ええ。悪気がないんですよね、そうですよね。愛理沙(ありさ)…そっちの方が質が悪いんですよ。」

 愛理沙(ありさ)「…」

 ―――バタン。
 
 愛理沙(ステラ)は気絶した。


 どうもちひろです。
 
 ゲームでの戦闘って考えたら難しいですね。
 スキルも魔法もアイテムの効果も全部無し。
 地味だなぁ~。
 読み返したちひろはそう思いました。
 これが異世界なら、この条件でも派手にできそうですけどね。
 実際、異世界でこの二人がこんな戦いしたら大変な事になりそうですね。
 ツアーパトカーがファンファン言いながら来ますよ。

 それでは!明日も投稿します!シュバ!
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