あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 前回のあらすじ

 ステラさん、ゆぐどらしるだいぼうけんの解説役に成り下がる。


究極の突

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 ##―――まさかの展開!ムスペルヘイムの雄がヘルヘイムの恐怖にその身を蝕まれております!誰が予想したでしょう!これ程一方的な戦いになるなどと言う事を!##

 

 ―――実況の声が鳴り響く。

 

 それに続いて歓声の声が幾多の野次と交わり闘技場に飛来する。

 

 騒々しくもやかましく響く喧騒の中に置いて、その身を密着させる二人の耳にはその音達は届かない。

 

 ―――お互いの視線から火花が舞い散っていく。

 

 続く膠着を打ち破ったのはアロービーチ。前後左右、全ての方向の動きに対応されている中で、アロービーチが取った行動は―――後方への退避。

 

 幾度も阻まれているその行動は、当然の如く反応されていく。

 

 (―――中幅で三歩。)

 

 ―――瞬時に駆け出していく。

 

 トトトっと淀みなく歩は進み、肘が正中を捉えようとしたその刹那―――野太刀の柄が視界に入る。

 

 この一瞬で取れる距離は限られていく、必然刀身を振るう事は出来ない。それは最初の攻防の時を見ても明らかだ。この場での柄の殴打は想定内、少し最初の時と違うのは、この殴打が後方への退避中―――つまりは移動中に行われ、下方から振り上げられているのではなく、頭上から振り下ろされていると言う所か。

 

 若干の違いはあるが、それでも想定内だ。行動を制限し、攻撃を絞り込む事により、格段に上昇した反応速度で、振り下ろされた柄をスルリと()()()いく。

 

 柄が無情にも空を斬る。攻撃を()()()()()()()()、アロービーチの眉が少し顰められる。ゲームなので表情は変わらない、しかしここがもし現実ならば、ピクリと眉が一つ動いた事だろう。

 

 攻撃を躱し再度密着を果たす。肘で正中を捉えた瞬間、正中がズレていく―――左に、それはすなわち、相手が軸を左に動かす行動を取ったという事。

 

 右の膝蹴りが自らに迫ってくる。

 

 ―――ガッ。

 

 迫る右の膝蹴りが動く最中に止められていく。打ち出しを抑えられたのだ。見ればリーネの左肘がアロービーチの右膝を押さえつけているのが見える。

 

 ―――アロービーチの眉が、また動いた。

 

 ()を捉え、()で抑える。

 体勢は崩れ()、右上部から斬り()つけられていく。

 

 しかし今度はこれで終わりではない、体を斬りつけられながらも、アロービーチは右上部から柄をリーネに向かい振り下ろしていく―――が、それも()()()()()()()()

 

 ―――アロービーチの眉が動く、目が細間っていく。

 

 攻撃を躱し、ピトリとまたもや肘で腹部を抑え密着していく。その後、「ふぅ」と息を一つ漏らす。額からつぅーっと汗が一つ滴る様な感覚に襲われる。アロービーチのあの攻撃は、一見悪あがきの様にも見えるが、その実反応速度が少しずつだが上がって言っている様に感じられたからだ。余り時間を掛け過ぎれば、突破されてしまいそうな予感さえ覚えていく。それゆえの一息だ。

 

 全集中力を目の前の相手に対して注いでいく中で、ここがゲームで良かったと心底思う。もし現実なら、僅かな表情の変化でこちらの内心が見透かされてしまっていたかもしれない。こちらとて一杯一杯だ、余力などない。だからこそ心底このゲームの仕様に感謝していく。

 

 そう、()()()()()()

 

 リーネは―――()()()()()()()()()()()

 

 もしここが現実で、表情が分かるのなら、リーネは気づけていただろう。先程の三度の攻防の中、アロービーチの眉が都度動いていた事に。

 

 ゲームの使用上動かない表情の中、密着する相手を見下ろしながら―――アロービーチが獰猛に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「厄介な肘だ…あれは貴方の入れ知恵ですか―――ヘロヘロさん。」

 

 闘技場を見据えるたっちが、本日初めてヘロヘロに振り向く。

 

 「えぇ、そうですよ、あれは―――”シラット”と言う武術です…まぁ、その技術のほんの一部ですが。」

 

 「シラット…聞いた事はありますね。詳しくは知りませんが、確かアジアの武術だったはず。」

 

 シラット―――東南アジアに普及する武術であり、その特徴的な肘の動きは攻撃と守備両方に用いる事が出来る。数々の流派が存在し、格闘術だけでなく、武器術にも精通する武術だ。

 

 「技術のほんの一部…もしかしなくても、それがあの肘の動きなのですね。抑え、弾き、そして恐らく攻撃に用いれば、回転力が大幅に増す…油断すれば手数で圧倒されるぞ。」

 

 闘技場に視線を戻しながら、たっちが自らの考えをヘロヘロに語る。その姿に対しヘロヘロの視線は鋭い物に変わっていく。

 

 

 

 

 

 ―――怪物め。

 

 

 

 

 

 その言葉が脳裏を過る。たったあれだけの攻防を見ただけで、未知の武術の詳細を暴き、危険性を把握していく人物に対し戦慄していく。

 

 たっちの言っている事はおおむね合っている。シラットの長所は肘の動きから派生する回転力にある。攻守どちらにも用いる事ができ、流れるかのように連撃に繋げていく事が可能だ。手数こそシラットの本領。だからこそ、たっちの言っている事はおおむね合っている、そう―――おおむねだ。

 

 なぜおおむねか、それは、たっちのその言葉が、シラットを使いこなしている人物に対する言葉だからだ。

 

 (攻撃に用いる事は()()()()…そして弾く事も未だ()()()()()()()()()()()…アンティリーネちゃんはまだ()()()()()()()。)

 

 技術は一日にしてならず、シラットの特訓を開始してから二年の月日が流れるが、未だ使いこなす事は叶わない。どうにか実践で投入できる域には達してはいるが、逆を言えば()()()()という事になる。

 

 正を把握し、面を捉えていく事はどうにか出来ているが、線を捉えていく事には未だ難色を示している。特に上部に対しては対応が辛い様だ。距離感があり過ぎるのだろう。現状の攻防を見ればそれは明らかだ、上部の攻撃に対しては、弾くでも抑えるでもなく、避けに回っている。

 

 (だからこそ最初の逆袈裟斬りを弾けたのは大きい。あそこが()()()()()でした…賭けに勝ちましたねアンティリーネちゃん。刀身を肘で弾いたと言う事実が、()()()()()()()()()、下手に動けず、行動は更に絞られていく)

 

 チラリとヘロヘロはたっちを伺う。この人物もまた()()()()()()()()だ―――いや、この会場内の()()()()()()がその事には気づけてはいないだろう、相対するアロービーチも含めて。気づいているのは事情を知っている自分だけだろう、あの肘が、所詮()()()()に過ぎないという事を。

 

 (決着を急げば隙が生まれます、しかし、うかうかしていられないのも事実…ジレンマですね。)

 

 敵も然る者、ここから先の戦いに思いを馳せながら、ヘロヘロはリーネの勝利を願う。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 視線がぶつかり合う。再度火花がバチバチと舞い散っていく。

 

 相手のHPはかなり削った、それに対し自分のHPはほぼ満タンに近い。一見途轍もない優位に見えるが、実の所、それは紙一重だ、一歩間違えば逆の立場に成り得る。

 

 天敵と天敵の戦いだ、極端な戦いになるのは目に見えていた事、現状もつ自らの優位を崩さぬよう、更に集中力を高めていった―――その時。

 

 ―――ふっと肘との間に隙間が空いていく。

 

 後方へ動いた。瞬時に距離を測り追走を始めていき、迫るであろう攻撃に構える。そして想像通りに頭上から柄が振り下ろされる。飽きもせずにと思うだろうが、これは行動を制限されている以上、仕方のない事だ。

 

 絞り込んだ攻撃を視界に捉え、回避の為に身を動かそうとした時―――ピタリと柄が静止していく。

 

 回避寸前に突如訪れた異常、それは寸止めと呼ばれる物だ。フェイントとも呼べるかもしれない。

 

 対応の難しい上部の攻撃に意識を集中していた際に突如訪れた一瞬の間―――思考が停止していく。

 

 リーネは気づけなかった、アロービーチが自らの弱点に気づいている事を。最も自らが集中する部分をピンポイントで狙われた―――(きょ)を突かれていく。

 

 突かれた虚の後に、訪れるのは一瞬の間、虚無が訪れていく―――(うつろ)が姿を表した。

 

 ―――ガツン。

 

 鈍い音と共に傾く視界、それに伴い一瞬の朦朧が訪れる。

 

 ―――何が起きた?

 

 自らを急に襲った異常事態を解明する為に、思考がフル回転していく。視界が傾き、崩れ落ちるかのように斜めに体が倒れていくその時に、偶然だがその答えを視界が捉えていった。

 

 アロービーチの左手が振り抜かれている。掌底を貰った、それもモロに。しかし分からない、なぜ気づけなかった。

 

 寸止めによる意識の誘導、危険視している攻撃だからこそ、その効果は露骨に現れていく。意識を釘づけにされたその後に、待っているのは虚無であり、そこにすかさず、意識外から掌底が振り抜かれて行った。

 

 リーネの視認範囲外から―――視覚(しかく)死角(しかく)から。

 

 倒れそうになる体をなんとか踏みとどまらせ、敵を見据えるべく顔を上げていく。その際に思い出すのだ、かつて()()()()()()()()()()()()()()()()と、現実世界で、()()()()()()()()に似ていると。

 

 そして顔をあげ、見据えたその先には、野太刀を構えるアロービーチの姿が見る。

 

 不味い―――距離を取られた。

 

 その事実を認識した瞬間、脳内で警報が鳴り響く、ギュルンギュルンと危険センサーが鳴り響く。

 

 がっしりと構えられる野太刀が振り上げられるその前に、体勢を立て直そうと左肘を上げた―――その時。

 

 ―――ゴッ。

 

 肩口に刀身が突き刺さり、勢いよくリーネは後方に吹き飛んで行った。

 

 ギュラギュラ、ギュラギュラと回転しながら闘技場を転がっていくが、即座に立ち上がる。立ち上がった際に視界に映るのは絶望的に削られた自らのHPゲージである。クリティカル判定を貰った、首ならば今の一撃で終わっていたかもしれない。

 

 ギリッと歯軋りしながら見据えた正面には、野太刀を突き出したまま立っているアロービーチの姿があった。

 

 貰った攻撃は”突き”だ。なんの変哲もない只の突き、しかしながら、自らが反応すらできない程の。

 

 

 

 

 

 それはシャイニング・アロービーチ最強の技。

 

 剣術を収める者が、幾度も素振りをする様に、只々黙々と鍛錬し続けた。

 

 只々黙々と、長い年月をかけ、鍛え上げ、練り上げて来た動作―――突きである。

 

 鍛え上げて来た時間は―――修練に費やした月日は決して裏切らない。

 

 数千、数万と突かれたその突きは奥義へとその身を昇華させていく―――究極の(とつ)の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 突きだした野太刀をゆっくりと戻し、両手で掴んでいく。その際、この戦いの中に置いて初めてアロービーチの声がリーネに届く。

 

 「…仲間がよぉ、期待して送り出してくれたんだわ…でっけぇ花火打ち上げてやるって約束もした…カッコイイとこ見せなきゃ嘘ってもんだろ。」

 

 グッとアロービーチの足に力が入る。攻勢に入る準備は整った、そう言っている様だった。

 

 「これでもムスペルヘイム最強って呼ばれてんだ、負けらんねぇんだわ、打ち負かしてきた連中に申し訳が立たねぇからな―――」

 

 

 

 

 

 ―――こいよ、ヘルヘイム最凶(アンティリーネ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合開始十分―――決着の時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 
 おまけ ~神々の言葉~

 

 ファーインママ「そういえば、(うつろ)って(ホロウ)とも言うみたいよ?風の神である『輝煌天使様』と光の神である『アーラ様』の由緒あるお言葉だとか。」

 ナズルババア「ほう、そうなのですか。これは良い事を聞きましたな。」

 

 どうもちひろです。

 昨日、愛車で会社から帰宅するちひろ。
 疲れた、帰ってだらだらしよう。
 そう思います。
 世の中休日かぁ…いいなぁ。
 そう思います。
 信号待ちで停車するちひろ。
 そろそろゴールデン・ウィークかぁ…いいなぁ。
 そう思います。
 ちひろはゴールデン・ウィーク返上で仕事です。
 ブラックめ…。
 そう思います。
 赤信号が長い、早く帰りたいのに。
 そう思います。
 そんな時、隣の車が目に入ります。
 運転手は、スマホを固定し、なにやらアニメを見ています。
 凄い時代になったもんだ。
 そう思います。
 こっそりちひろはスマホの映像を覗きます。
 すると、何やら見た事ある映像が流れてます。
 運転手は『オーバーロード』のアニメを見ていました。
 ソリュシャンがザックを丸飲みにしてました。
 赤信号から、青信号に変わります。
 ちひろは帰宅します。
 ゆぐどらしるだいぼうけん書こう。
 そう思いました。

 お~わり。

 それでは!明日も投稿します!シュバ!

 
 ※誤字修正しました。
  使用→仕様。
 ありがとうございました(ΦωΦ)
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