あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 前回のあらすじ

 この道を行けばどうなるものか
 危ぶむことなかれ
 危ぶめば道はなし
 踏み出せば
 その一歩が道となり
 その人足が道となる
 迷わず行けよ
 行けばわかるさ
 馬鹿野郎!!


視覚の死角

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 究極の突により、吹き飛ばされたリーネの眼前には、絶望的な程の距離が映る。

 

 ―――遠い。

 

 只々そう思う。

 

 次に削れたHPゲージに目を向ける―――余り余力はない。

 

 ―――もう一度クリティカルを貰えば。

 

 その言葉が脳裏を支配する。

 

 野太刀と短剣。天敵同士であるこの二つの違いは、長さと威力。

 

 野太刀は重量武器であり、短剣とは威力の桁が違う。武人建御雷が持つ斬神刀皇が高火力であるのと同じで、アロービーチのこの野太刀もまた、斬神刀皇に比肩する程の火力がある。

 

 短剣で築いたアドバンテージを、一撃でひっくり返された。

 

 冷たい物が頬を流れる様な感覚に侵される。

 

 もう一度入り込むのは至難の技だ―――が、そうしなくては勝機はない。しかし、足が進む事を拒む。

 

 自分の置かれた状況を冷静に分析したからこそ、逆に足が進むのを拒む、失敗すればなし崩しに勝負は決まってしまうだろう。

 

 それが理由の一つである。そしてもう一つは、アロービーチの纏う雰囲気が変わった。気迫が変わったと言えば良いのだろうか。試合開始時よりも、ひしひしと伝わってくるプレッシャーに、リーネは飲まれそうになる。

 

 ―――負けらんねぇんだ。

 

 そう言い放った瞬間から、有無を言わさぬプレッシャーが押し寄せてくる。

 

 仲間の為に―――奴はそう言った。なるほど、奴もまた、背負ってきているという事だ。

 

 しかし、それは自分も同じだ。負けられないのは自分とて同じ事。期待して送り出してくれた41人の仲間達と2人の友達の為に、自分とて負けられない。

 

 もう一度入り込む、そう思った瞬間―――アロービーチが踏み込んでくる。

 

 (―――!?)

 

 圧倒的有利の筈のアロービーチが距離を詰めてくる。衝撃がリーネを襲う、予想だにしていなかったからだ。

 

 野太刀が上段から振り下ろされる。ひらりと身を躱したリーネは反撃の一撃をお見舞いする―――が。

 

 ―――ガキン。

 

 甲高い音が響く。

 

 リーネの反撃をアロービーチが野太刀で受けていった音だ。

 

 見れば、野太刀の刀身を左手で抑えたアロービーチが、短剣を静止しているのが見える。

 

 「―――がっ!?」

 

 リーネの腹部に強烈な衝撃が襲う。

 

 蹴り飛ばされた。後方へ退いたリーネに二の矢が迫る。野太刀の切っ先が目の前に迫って来ている。

 

 追撃が速すぎる。そう思った時、視界に入ってきたのは、片手で野太刀を横薙ぎに振るうアロービーチの姿だった。

 

 腹部に前蹴りを見舞ったとほぼ同時に、握り変えずにそのまま横薙ぎに振るってきた野太刀の切っ先が迫る―――が。

 

 ―――ガキン。

 

 また甲高い音が響く。

 

 今度は片手剣でリーネが野太刀を受けていった音だ。

 

 先程のアロービーチの時と同じように、剣身――平べったい部分――を手のひらで抑え野太刀を受ける。

 

 野太刀は重厚である。片手剣で受ける事などできはしない。それは今までの攻防を見ても明らかだ。ならば、なぜリーネは片手剣で受けれた?それは、アロービーチが片手で振るったからだ。野太刀を受ける事は出来ない、しかし、それはきちんとした姿勢で、きちんとした持ち方で振るった場合に限る。

 

 (野太刀は片手で振るう物じゃないでしょう!!勝負を急いだわね!!)

 

 野太刀を押し返す。そうすれば、押し返されたアロービーチの体勢が揺らいだ。勝機を見たリーネは即座に接近する。

 

 刺突がアロービーチに突き刺さり、返す刀で体を斬りつける。更に体勢が揺らいだアロービーチを見据えたリーネは更に踏み込む―――懐に潜り込もうとする。

 

 ―――ギュルンギュルン。

 

 鳴り響く危険センサー。なぜだ?なぜこの状況下で、自分の勘が騒ぐ?逃げろと騒ぐ?疑問が浮かぶが―――答えは即座に姿を表した。

 

 ―――ガン。

 

 リーネの顔面が上方に弾け飛ぶ。

 

 掌底だ、掌底を受けた―――まただ。

 

 傾く視界―――嵌められた。

 

 そう脳が結論付けた。

 

 余りにも雑な攻撃、今までのアロービーチからは考えられない様な攻撃だった。この状況下だからこそ―――勝負を急いだと思える状況下だからこそ、その効果は絶大だった。

 

 ―――視覚を誘導された。

 

 リーネのしたい事は、アロービーチ所か、この会場の観戦者の全てが分かるだろう。懐に潜り込む―――超接近戦をしかける事だ。

 

 だからこそ、アロービーチには向かう先が分かる。リーネの目が見据えている場所も良く分かる。

 

 誘導され、ピンポイントに直視された視覚の端にある物、それは―――死角。

 

 目に見えない攻撃が襲い掛かる。

 

 視覚の死角から、顎をかち上げられた。

 

 傾く視界にノイズが走る。朦朧が襲い掛かってくる。不味い、この状態でのこの距離は不味すぎる。ふらつきながら正面を見据えた時に見えてきたのは、上段に野太刀を構えたアロービーチの姿だ。掌底と同時に野太刀を右手で振りかぶっている。今回も片手で握っている―――が、先程とは状況が全く違う。今度は受ける事は叶わない。

 

 退避を―――そう思いバックステップを踏んだリーネだが、朦朧により足がもつれ、前方へと倒れ込んで行く。

 

 自らの後方から鈍い音が聞こえた。野太刀が地面と接触した音だろう。奇しくも足がもつれた事により難を逃れていく。

 

 追撃が来る―――そう思ったが、逆にアロービーチの方が後方へバックステップを踏み、距離を確保していった。

 

 「―――チッ!!」

 

 リーネが舌を打った。

 

 その舌打ちが耳に入ったのか、今度はアロービーチの声が聞こえてくる。

 

 「おうおう…怖い女だな、おい…足を取ろうとしやがったな。」

 

 また一つ舌を打つ。アロービーチの言う通りだからだ。予期せぬ転倒、だが逆にこれは好機だった。野太刀を避け、アロービーチが自らの手の届く範囲に入っていたからだ。あのまま行けば足を掴み取り、そのまま押し倒す所だったのだが。どうやら、相手は未だ冷静な様だ。

 

 (この状況下で…自分が圧倒的有利な状況下で…普通なら勝負を急ぐものだけど…百戦錬磨は伊達じゃないって事ね!クソ!!)

 

 リーネは即座に立ち上がり大勢を立て直す。

 

 朦朧は消えた、足も手も問題なく動く。

 

 仕切り直しだ―――と言いたい所だが、余りにも不利な自分の現状に、その様なポジティブな考えも消し飛んで行く。

 

 リーネはグッと足に力を入れ、動こうとする―――が先に動いたのはアロービーチだ。

 

 驚く程あっさりと距離を詰められていく。余りにも見事な運足だ。あのリーネが、反応を遅らせる程の見事な。電光石火の如く、野太刀の間合いに侵入したアロービーチは即座に上段から野太刀を振り下ろす。

 

 間一髪、これは回避する。続く二の矢の下方の切り返し、これも回避していく。回避すると同時にアロービーチ目掛け接近を試みる―――が、同時にアロービーチもこちらに飛び込む様に進んで来ていた。

 

 鈍い音が炸裂音の様に鳴る。タックルの要領で体当たりを食らっていったリーネが吹き飛ぶと同時に繰り出される―――片手での横薙ぎ。

 

 これは回避する事は叶わず、即座に剣身を抑え、片手剣で受け止めていく―――が。

 

 ―――メシリ。

 

 左わき腹に衝撃が襲い来る。見ればアロービーチの右足のつま先部が突き刺さっている。

 

 三日月蹴りが突き刺さる―――まただ、見えなかった。

 

 しかし、ダメージは大したものではない。朦朧などの状態異常も起きてはいない。ゲームであるが故に、痛覚もない以上、三日月蹴りは意味をなさない―――が、体勢が揺らぐ。

 

 両手で野太刀を握り締め、アロービーチは左上部から斜めに振り下ろしていく。

 

 「―――やば!」

 

 体勢を崩しながらも、どうにか後方へと回避に成功していく。しかし、ホッとしたのもつかの間だった。

 

 空振りに終わった筈の袈裟斬りは止まらない。自分の体を軸にしてそのまま回転したアロービーチが、とんっと跳ねていく。

 

 音は可愛らしいが、跳躍力はその限りではない。ゲームならではの跳躍力で、高く舞い上がったアロービーチは、遠心力を乗せたまま―――野太刀を上段から振り下ろした。

 

 今日一番の轟音が響く。野太刀は地面に直撃した、つまりはリーネは回避に成功したという事だ―――間一髪と言う言葉が続くが。

 

 「―――はは…アルトリウスじゃないんだから…。」

 

 乾いた笑みと共に、その様な言葉が漏れる。

 

 マヌスの深淵に囚われた最強の騎士の如き姿に驚愕しながら、鼓動が速くなっていくのを感じていく。危なかった、あれを貰えば、間違いなくやられていた。

 

 そう思った時―――気づく。

 

 地面に野太刀を叩きつけた状態のアロービーチを見て気づく。

 

 ―――ギュルン。

 

 危険センサーが鳴った。

 

 ―――不味い。

 

 前傾に倒れ込む様な姿勢のアロービーチを見て気づく。

 

 ―――ギュルン、ギュルン。

 

 危険センサーが鳴り響く―――今日一番の音が鳴り響く。

 

 ―――不味い、不味すぎる。

 

 アロービーチの顔が正面を向いた。リーネを見据えた顔は、獰猛に笑っている様に見えた。

 

 (不味い!間に合え―――)

 

 

 

 

 

 ―――究極の突。

 

 

 

 

 

 

 一閃―――正に一閃。

 

 アロービーチの突きがリーネに突き刺さった―――かに思われたが、間一髪片手剣の剣身で受けていく。

 

 ギュラギュラとリーネは吹き飛び、闘技場を転がっていく。

 

 転がり終えてすぐに立ち上がり、体勢を整え、追撃に身構える。

 

 追撃はない。それもその筈、突きの後に即座に追いかける事は出来ないからだ。

 

 続いてHPゲージに目をやる―――削られた。

 

 無論、直撃はしていない―――が、それでも無傷で凌ぐことはできなかった様だ。

 

 (いや…これで済んで御の字ね…間一髪だった。)

 

 ―――チャキ。

 

 アロービーチが構える音が耳に届く。

 

 回避させ、受けさせ、三日月蹴りで体勢を崩した後に放たれた大技に集中させられ過ぎた。あれは囮だった、本当の大技である突きに繋げる為の。

 

 リーネの中である言葉が思い起こされた。

 

 かつて戦った、ある人物が言っていた言葉だ。その人物は強かった、勝てたのが奇跡だと思える程に。リーネが戦ってきた中で、恐らくは一番―――あのたっち・みーよりも強いかも知れないと思える程の人物が言っていた言葉だ。

 

 ―――どんなに強力な技でも、発動までの過程が重要なのよ?

 

 正にその通りだ。アロービーチは、様々な過程を踏み、あの突きを最大限生かせる状況を作りあげている。

 

 ―――強い。

 

 只々純粋なその言葉が浮かんできた。

 

 「…アルトリウス?そんな名前のプレイヤーがいんのか?そりゃあ、手合わせ願いたいもんだな。」

 

 少し遠くから聞こえてくる、アロービーチの声。どうやらアルトリウスに興味津々の様だ―――まぁ、ユグドラシルプレイヤーではないのだが。

 

 「そうね、今度紹介してあげる…泣いても知らないわよ?」

 

 「そうかい、そりゃあ楽しみだ―――お?」

 

 つかの間の会話を挟む両者の耳に聞こえてくる、大歓声。

 

 アンティリーネ!!アンティリーネ!!アンティリーネ!!

 アンティリーネ!!アンティリーネ!!アンティリーネ!!

 アンティリーネ!!アンティリーネ!!アンティリーネ!!

 

 アロービーチ!!アロービーチ!!アロービーチ!!

 アロービーチ!!アロービーチ!!アロービーチ!!

 アロービーチ!!アロービーチ!!アロービーチ!!

 

 両者の名前が飛び交う―――会場が揺れる。

 

 「はは…なぁ、アンティリーネ。」

 

 「…なに?」

 

 「いいゲームだよな…ユグドラシルは。」

 

 「そうね…最高のゲームよ。」

 

 ―――チャキ。

 

 アロービーチが深く構えていく。

 

 ―――スッ。

 

 リーネがスタンスを広くとる。

 

 両者のHPはもうそれ程の猶予は無い。次の一当たりが、恐らく最後の攻防になるだろう。そう確信めいた勘が二人にはあった。

 

 

 

 

 

 

 ―――いざ。

 

 

 

 

 

 

 「行くぜ―――勝つのは俺だ!」

 

 

 

 

 

 

 ―――尋常に。

 

 

 

 

 

 

 「私は負けない―――負けたくない!」

 

 

 

 

 

 

 ―――勝負!!

 

 

 

 

 

 

 試合開始十五分―――最後の攻防が始まる。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 割れんばかりの歓声の中、アインズ・ウール・ゴウンのメンバー達は、闘技場を見据える。

 

 「あんな単純な攻撃が何で当たるんだい…相手はリーネだぞ。」

 

 「確かに、そこは私も疑問だね。タブラくんはどう思う?」

 

 「ぷにっとさんと朱雀さんと同じさ…私にもさっぱりさ。」

 

 「リーネェェェ…もういいよ…そんなバケモンに勝てっこねぇよ…。」

 

 「ベルリバー!縁起でもねぇこと言うんじゃねぇ!」

 

 疑問を感じるぷにっと、朱雀、タブラの三人、そしておろおろしているベルリバーを叱るあまのまの姿がそこにはあった。

 

 三人の疑問は、殆どのギルメン達の気持ちの代弁だ。あんな単純な攻撃が―――なぜ。

 

 「リネちん…見えてねぇのか?」

 

 「はぁ!?あんたそれどういうこと!?見えてない訳ないでしょうが!」

 

 「いや!?ちょ、ちょっと待てってアネキ!」

 

 適当な事言うなと、茶釜がぺロロンチーノの頭をがすがす殴っていると。

 

 「視覚の死角か。」

 

 ある人物がそう言葉を放つ。

 

 「おい…そりゃどう言う事だよ、たっちさん。」

 

 たっちの言葉に建御雷が回答を迫る。

 

 「そのままの意味ですよ、目で捉えられる範囲外から攻撃を受けている。」

 

 「付け加えるならば、攻撃に注目させ、死角を増やしている…と言っておきましょうか。」

 

 たっちの言葉に続き、ヘロヘロがそう言った。ギルドメンバーが騒然とする、そんな事が可能なのかと。

 

 「リーネ、目に見える物にしか対応できない者は二流だ…越えて見せろ。」

 

 「右に同じ…ですね。」

 

 腕を組み、闘技場を見据えるたっちの言葉に、ヘロヘロは同意を示していく。

 

 その時、リーネにアロービーチの突きが激突し、吹き飛んで行く。

 

 ギルドメンバーからは悲鳴が漏れていく。間一髪、リーネは受けるのを成功したようだが、防戦一方だ、それは誰の目に見ても明らかだった。

 

 「もう肘も意味を成さないか…いや、元より通用する相手ではなかったという事か…アロービーチ…強い、これ程か…地力が違い過ぎる。」

 

 「それがどうしたと言うんです!」

 

 ヘロヘロの叫びに、ギルドメンバー全員の視線が集まる。ヘロヘロがこれ程、感情を剥き出しにするのは珍しい、皆が驚き戸惑っている。

 

 「強い方が勝つとは限らない!臆せず進みなさい!アンティリーネ!!」

 

 割れんばかりの歓声の中に、ヘロヘロの叫びは響き渡っていく。

 

 ギルドメンバー達は願う、自分達の妹分の勝利を。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「視覚の死角…でござりゅ…か。」

 

 「そう。なんてことはない、単純な物でしょう?」

 

 「ぬぅぅぅ」と唸るギルバートをほほ笑みながらステラは見つめる。噛んだことに少々突っ込みたくなるが、取りあえずは聞かなかったことにしておいてあげた。

 

 「目に見える物にしか対応できない者は三流よ、お嬢ちゃん。あの付け焼刃も、もう通用しない―――どうするのかしら?」

 

 その言葉とほぼ同時に、アロービーチの突きにより、リーネが吹き飛んで行く。

 

 「ヌゥイィィィン!!?」とギルバートが頭を抱えて身悶えているのを見ていると、優勢なのは身内だろ?お前はどっちの味方なんだ?と思ってしまう。

 

 (坊や、随分とマシな動きになったわね。五十点くらいあげてもいいかしら?ふふ、私ってば、結構甘いわよね。)

 

 クスクス笑いながら、闘技場を見据える。視界の先には、突きを受け止め、立ち上がるリーネの姿が見える。

 

 「…やはり、アロービーチ殿の方が強いのでござろうか?」

 

 「何を言っているの?そんなの最初から分かっていた事じゃない?」

 

 「なっ!?ステラ殿ぉぉぉ!分からぬと言ったではありませんかぁぁぁ!?拙者を騙したのでござるなぁぁぁ!激おこ忍忍丸でござるよ!ニィィィン!!」

 

 「人聞きが悪い事を言わないでちょうだい?どっちが勝つかと聞かれたから分からないと言ったのよ?どっちが強いかなんて聞かれてないわ。」

 

 「強いのはどっち?とも聞いたでござるよ!」

 

 「あらぁ~、そうだったかしら?覚えてないわね、ふふ。」

 

 「この嘘つき忍者!!」

 

 ぷんぷん怒るギルバートを見たステラがしてやったりとクスクス笑う。お次はうるさいぞと言わんばかりに、両手で自分の耳を抑えてやれば「なんでござるかぁ!その態度はぁ!」と更に怒り出す。

 

 中々可愛い奴だと思い「き~こ~え~な~い」と言ってやれば、更にプンスカ怒り出し、ステラもまた、クスクス笑った。

 

 「まぁ、冗談はさておき…最後の攻防が始まるわよ、刮目してみなさい。」

 

 「―――最後…でござるか?」

 

 こくりとステラは頷く。

 

 次の攻防が、あの二人の最後の攻防になるだろう。両者のHPの余力は少ない、間違いなくそうなる。

 

 「…強い方が勝つとは限らない…臆せず進みなさい、お嬢ちゃん。」

 

 「貴女の師の言葉でござるな。」

 

 「…いえ、これはちょっと違うわね。これは私の…偉大な兄弟子の言葉。試合の前には、よく道場の子達に言っていたわ…まぁ、私は言われたことがないのだけれど。」

 

 ステラの声音に乗るは、寂しさだろうか、はたまた悲しさか。

 

 哀愁漂うステラを見つめながら、ギルバートは思うのだ。「いや、それ、お前には言う必要ないからじゃね?」と。「それ、負けそうな方に掛ける言葉だからな?」と、そう思いながら、嫌われてるのが原因でその言葉を掛けてもらえなかったと思い込んでいるステラを、可哀そうな物を見るような目で、ギルバートは見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 「視覚の死角…厄介なもんだ…これがな。」

 

 「そんな事が可能なのかい?ねこにゃん。」

 

 「そうよ、見えてなくたって、なんとなく動いてるのはわかるでしょうに…動作はある訳だし。」

 

 明らかに単純な攻撃に、異形種姫ともあろう者が対応できないのは、なにかからくりがある筈だと思ったスルシャーナがねこにゃんに問いかければ、返ってきた言葉は、「見えてない」だった。

 

 「ルビアスの言う事も最もだな、だからこそ、アロービーチの野郎は、攻撃に注目させて、意識をそこに向けさせている。お前らだって経験あんだろ?集中し過ぎる余り、周りが見えなくなることがよ?動作は巧妙に隠されている…アロービーチの振るう野太刀にはそれだけインパクトがあるって事だ…嬢ちゃんは過剰に警戒する余り、他の部分に意識が向かなくなってんだ、これがな。」

 

 「そう言う事…中々に、うあっつい事してるって訳ね、アロビは。」

 

 「お前なら防げんのか?」

 

 「んあん?当たり前だろアラフ、俺を舐めんなよ?目に見える物にしか対応できない奴は二流っつうんだ、これがな。」

 

 「はいはい、ワロスワロス。」

 

 「いやいや、だからな、こいつ強いんだぞ?マジで滅茶苦茶強いんだぞ?」

 

 「んあん、そうだぞ、俺は強いんだぞ。」

 

 「兄ちゃん達…なんか二人の雰囲気変わったぞ!」

 

 ガンジョウが闘技場を指さしていく。

 

 構える両雄の間に、まるで火花でも散っているかの様な錯覚に陥る。

 

 「お互い次で決めるつもりだな…どっちが勝つか見届けようぜ。」

 

 ねこにゃんのその言葉に、五人はこくりと頷く。

 

 会場が声援で揺れ動く。

 

 相対する二人の熱に当てられて。

 

 

 

 

 

 舞台は今、クライマックスを迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





 どうもちひろです!

 次回!決着!!

 それでは!明日も更新します!シュバ!!
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