あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 前回のあらすじ

 リーネが大会で優勝したからギルメン達は喜んだ!
 リーネが大会で罵声飛ばされまくったからギルメン達は怒った!
 アインズ・ウール・ゴウンはぶちぎれた!
 結果、大暴れしちゃった☆


一難去ってまた一難

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 ―――うんしょうんしょ。

 

 両手を組み高く高く伸ばす。背筋をピーンっと張っていく。

 

 ―――うんしょうんしょ。

 

 組んだ手を離し、次は両肩をグイグイ回していく。肩甲骨を滑らかにほぐしていく。

 

 ―――すぅー。

 

 最後に両手を広げ胸を張る。そして大きく息を吸い。

 

 ―――はぁー。

 

 大きく吸った息を大きく吐いた。

 

 「よぉ~し!やるぞぉ!」

 

 アゼルリシア山脈の頂に大きな声が響く。ラフな格好をしたリーネが気合十分と言わんが如く、その言葉と共にグッと拳を力強く握った。

 

 「かなめ、防音と対衝撃アイテムは問題なく作動してる?」

 

 「はい、問題ないですね。きちんと作動してます。隠蔽用の幻術アイテムも問題ありませんよ主様。」

 

 かなめの言葉にグッとサムズアップしていく。

 

 アゼルリシア山脈の頂全域を覆う幻術での隠蔽、それに加え、音が漏れないように防音のアイテムと、今から始める実験の為の衝撃を吸収するアイテムが問題なく作動している事に対するガッツポーズの意味合いを持つ。

 

 「何をする気かは知らんが…それよりも…。」

 

 ぼそりと呟いたのはオラサーダルクだ。体に似合わない小さな声を出した後に、その長い首をある場所に傾ける。

 

 「おじちゃん…あれすごいね~、おじちゃんよりおっきいよ。」

 

 アオの言葉を聞き、オラサーダルクがこくりと頷く。現在この場にいるのは、リーネを筆頭に―――

 

 オラサーダルク

 アオイ 

 ヨンサマ

 ハムスケ

 あけみ

 かなめ

 ともえ

 グラギオス

 

 ―――の軍団勢揃い。

 

 そんな軍団のメンツの中で最も大きな体躯を持つオラサーダルクよりも遥かに大きな者―――いや、兵器がそこにはあった。

 

 「ゴーレムと言う奴かの…しかし、あんなゴーレムがこの世に存在するとは…流石は儂の友じゃ、ぬしとおると飽きんわい、知識欲が沸いてくるのぉ。」

 

 そう語るグラギオスの目の前―――軍団の目の前には巨大なゴーレムが、この山脈の頂に立ち尽くし、強烈な存在感を放ち続けていた。

 

 戦略級攻城用ゴーレム―――『ごりらいも』が。

 

 「ごめんね、ごりらいも。ちゃんとテラさんの所にまで帰してあげるから、ちょっと特訓に付き合って。」

 

 ごりらいもからは返答はない。現実世界に来たとて、兵器である以上、心はやはりないのだろう。唯一変わっている所は『制約』だ。このゴーレムは基本的にはギルド拠点襲撃の際にしか動かす事は出来ない。しかし、現実になった事によりその制約から解き放たれている。

 

 つまりは、現実に来た事により、制限なく使用する事が出来る超兵器へと変貌を遂げたと言う事だ。

 

 これはリーネの思った通りだ。現実とゲームでは色々な差異が見られている。この最強兵器も、現実に持ってくる事によってなんの制約もなく、自由に使用できるのでは?と考えてはいた。

 

 しかし、なぜ今まで現実に持ってこなかったのかと言うと、それは強すぎるからだ。もし制御が効かず、只々暴れ回る殺戮マシーンに変貌を遂げてしまえば、自分一人では対処ができない。だからこそ、今まで使用を控えていたのだが、ワールド・チャンピオンになった事で状況は変わった。今の自分ならば、もし制御が効かなくなっても破壊は可能だ。

 

 まぁ、その際にこの山脈が軽く崩壊する事になるのだが、そこまでは考えてはいない。流石はリーネ、詰めの甘い事だ。

 

 ごりらいもまでゆっくりと歩を進めていく。目の前で立ち止まったリーネが、ごりらいもの右足に右の拳を向けていく。くっつくのではと言う程近く拳を近づけていく。

 

 その瞬間―――山脈が揺れた。

 

 鳴り響く轟音と共に凄まじい衝撃波が軍団のメンツを襲う。

 

 「ぬぅぅ!こ、これは!」

 

 「おじちゃーん!おっきい人飛んでったよ!」

 

 「何と言う事じゃ!これ程か!」

 

 「リーネェーーー!やべぇってそれぇ!」

 

 「あぎゃぁー!お姉ちゃん助けてー!」

 

 「あぁーもう!よしよし、怖くない怖くない…主様これはやりすぎでは!?」

 

 「むきゅうーーー!死んだふり…でござる。」

 

 吹き飛ぶごりらいもを視界に収めたオラサーダルクが唸り声をあげ、アオが驚きの言葉を口にしていく。

 

 グラギオスとヨンサマも同じだ、想像を超えた現象に目を見開く。

 

 そして涙目になったともえが、姉であるかなめに必死にしがみつく。そんなともえの頭を優しく撫でながらも、かなめは視線をそらさない、吹き飛ぶごりらいもを見つめ、目が点になっている。

 

 ハムスケは野生の性か、恐怖の余り死んだふりをしながら、仰向けに寝そべっていった。

 

 皆が驚愕する中、只一人、腕を組みながら、微動だにせずその光景を見つめる者がそこにはいた。

 

 眉一つ動かさず、その人物―――あけみが静かに言葉を吐いた。

 

 「…見事です、主様。」

 

 ―――ドォン。

 

 あけみの言葉と共に、ごりらいもは地面に落下していく。落下した音に続き、軽い衝撃が再度辺りを襲った。

 

 吹き飛んだごりらいもの直線状で、吹き飛ばした人物であるリーネは、未だ拳を正面に向け、静かに立ち尽くしている。

 

 

 

 

 寸勁と言う技がある。中国武術では発勁に類する技であり、『ワンインチパンチ』とも呼ばれる技だ。その名前の通り、僅か拳一つ分の隙間さえあれば繰り出す事ができる。視覚で捉えられぬ程の奥義であり、中国では『無影』と呼ばれている程の技だ。

 

 

 

 

 ワールド・チャンピオンが繰り出す寸勁とはかくも恐ろしき物―――と思うだろうが、いかにワールド・チャンピオンと言えども寸勁一発でこれ程の威力を出せる筈もない。リーネはモンクではなく戦士だ、この寸勁も理論に基づきなぞっているだけの只の技術だ、スキルの様に一つの完成された技とは違う。本職の威力には程遠いだろう。

 

 ならばなぜ、これ程の威力が出せるのか。

 

 「いやぁ~、やっぱり難しいわね、『武技と武術の融合』は…。今のは良い具合に決まったけど、戦闘中にはまだ無理ね、動いてる相手は難しいかな。」

 

 頭をポリポリ掻きながら、リーネが軍団のメンツの元にまで歩いてくる。その顔には苦笑いが見てとれる。

 

 先程言った、なぜこれ程の威力が出せるのかと言う問いの答えは、この寸勁が、武技を上乗せして放った寸勁だからだ。

 

 寸勁と言う武術を繰り出すその一瞬、力が一点に集約し、伝わっていくインパクトの瞬間に、武技『超強打』を発動させていった。

 

 元より強力なワールド・チャンピオンの力が一点に集約され、何倍にも膨れ上がった瞬間に、超強打が更に力を倍増させていく。

 

 その結果は、ごりらいもがその身で体現してくれている。ごりらいもの損傷度合いを見るに、恐らくはHPが四割以上、もしかすれば五割に届くかも知れないくらいには減少しているだろう。それが意味する事は、カンストプレイヤーですら―――それも神器級(ゴッズ)でフル装備したプレイヤーですら、この一撃で瀕死に近いダメージを負うと言う事に他ならない。

 

 (次元断絶(ワールド・ブレイク)に匹敵するか…もしくはそれ以上?自分で繰り出しといてなんだけど反則技ねこれ。)

 

 究極の攻撃スキル<次元断絶(ワールド・ブレイク)>すら凌ぐのでは?と思う程の強力な一撃。まだ全くと言っていい程使いこなせてはいないが、使いこなせる様になれば世界が一変するだろう。

 

 中~長距離までをカバーできる次元断絶(ワールド・ブレイク)に至近距離~超至近距離までもをカバーできる寸勁。おまけに世界級(ワールド)アイテムの効果すら弾ける究極の防御スキル<次元断層>までもが加わっていく。

 

 次元断絶(ワールド・ブレイク)より動きが小さく隙も少ない上に、発動までの時間も短い事を考えれば、こちらの方が強力なのでは?と思う程だ。

 

 (流水加速を組み合わせれば、回避と同時に打ち込める…?疾風超走破で一気に間合いを詰めて打ち込む…?いや、それは無し…かな?詰める位なら次元断絶(ワールド・ブレイク)の方が良い…?)

 

 強力な技を得た事により幅が大きく広がっていく。そしてその技をどう生かすか、どうすれば最も効率が良いかを頭の中で組み立てていく。げに恐ろしきは寸勁などではない、この娘の飽くなき『想像力』と『創造力』だ。

 

 あーでもない、こーでもないと考えていると、こちらを見つめる視線に気づく。あけみと目が合う。

 

 「へへ…どう、あけみ?及第点かな?」

 

 「…素晴らしい…素晴らしいです、主様。このあけみ、より一層の忠義を捧げましょう。」

 

 「重いからやめろ」―――そう言えればどれ程良いだろうか。昔はよくこう言う事を言われると、顔がにゅにゅっとなっていた物だが、今はそうはならない。何年も一緒にいるのだ、こういう時に、どう言う対応を取れば良いのかなどだいたい把握している。

 

 「…ふふ。」

 

 とりあえず笑っておけばいいのだ。

 

 「ふっふっふっふ」と、気持ちの悪い笑いを死んだ様な目で続けていると。

 

 「すげぇなリーネ。なんて技なんだそれ?」

 

 話しかけてきたのはヨンサマだ。成体になり、体のあちこちから『オレンジ色』の体毛が生えているのが見える、見方によっては黄金にも見えなくはない。

 

 クアゴアの上位種に『ブルークアゴア』や『レッドクアゴア』がいるが、そのどれとも違う。幼いころにアダマンタイトを超える金属鉱石を食した事により、クアゴアの最上位種へと成長したのだろう。

 

 分かりやすく言えば『クアゴア(ロード)』、そう呼べるかもしれない。

 

 色々と他のクアゴアと違う点が見られるが、最も違うのはその体つきだろうか。

 

 腕も足も他のクアゴアの比にならない程に大きく太い、首など太すぎて一直線になっているかの様にも見える。

 

 プロレスにその身を捧げたクアゴアの姿がそこにはあった。

 

 昔と比べ厳つくなったその顔をこちらに向ける。口からは大きな牙が剥き出しになり、喋るたびにその存在をアピールしてくる。そんな厳つい顔を見ても、リーネは何とも思わない。リーネにとっては、今も昔もなんら変わらない、優しい顔にしか見えないのだから。

 

 「流石ヨンサマね、よくぞ聞いてくれたわ!この技の名は―――『破壊拳』!!」

 

 「なんだその馬鹿みたいな名前は。」

 

 「ダッサいの~。」

 

 技の名前を叫んだ途端に被せるかの様にして、オラサーダルクとグラギオスの言葉が飛んでくる。

 

 ―――イラり。

 

 少しイラっとくる。じゃあお前らこれ以上の名前を考えれんのか?と思いながら、二人に対してガンを飛ばしていると。

 

 「主様、よもやこの技が()()()()()()などと、考えてはおらぬのでしょう?」

 

 あけみの言葉を聞き、顔をあけみに向けていく。そして、ニヤリと笑った。

 

 「当然。まだまだ()()()()()()()()()()()()()()よ…この技の先もそう…超の先もそう…やる事が多すぎて飽きないわね。」

 

 その言葉を聞き、あけみが瞳を閉じた。その口元は嬉しそうに上がっている。

 

 「しかし、なんじゃの、武技とは肉体攻撃でも発動できる物なのじゃな?」

 

 「できるわよ。ただ、そう言う武技は基本ないかな、戦士が殴る必要もない訳だし。」

 

 「ふむ、その通りじゃの、武器を通した方が効率が良かろうて。」

 

 「そうそう、だから作ったの。打撃用の超強打を、破壊拳の為に。」

 

 「ほっほ…簡単にいうのぉ~。」

 

 グラギオスが、乾いた笑いと共にそう言う。本当にコイツは、常軌を逸している。

 

 「そう?私からしたら、グラ爺が新しい魔法作ったって言ってるのも、簡単に言うなぁ~…って思うわよ?専門職が違うんだし、グラ爺がやってる事とあんま変わんないと思うけど?」

 

 「うぅん…?ふむ、そう言われればそうなのかもしれんな。たまには的を得た事を言うではないか、友よ。」

 

 「おい、さりげなくディスってんじゃねぇぞ、このジジイ。」

 

 褒めている様で褒めていないその言葉に若干イラりとする。

 

 しばし間を置いた後に、リーネはパンっと手を叩く。今日集まったのは新しい技のお披露目もあるが、それ以外の意味もある。

 

 いつも仲良くしてくれている仲間達に、ありがとうの意味を込めた―――『プレゼント』を渡す為に集まったのだから。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「うわぁ~…厳つ~。」

 

 仲間に贈るプレゼントの一発目はオラサーダルクから始まった。贈られたプレゼントは『竜機神装備』と言われるドラゴン専用のSF装備だ。

 

 お宝大好きなオラサーダルクが盛大に喜んだ後に、その装備を身に纏っていった。先程の言葉は、その姿を見たリーネの言葉だ。

 

 元々細身のフロスト・ドラゴンは迫力に少し欠ける、それはオラサーダルクも一緒だ。線の細い体はドラゴンと言うインパクトを少し薄めている。ただし、これはリーネの自論であって、他の者達はその限りではない。他の者達―――特に人間などは、ドラゴンと言うネームバリューの所為で、その細い体が実物よりも大きく見えている事だろう。

 

 そんな、リーネ論では少し迫力に欠けるオラサーダルクであるが、竜機神装備を身に纏えばまるで別物に変貌を遂げていた。

 

 厳つい、只々厳つい。全身をごついメカニック装備で覆い、白虎の『蒼き閃光装備』と同じくレーザーウイングなどの様々な兵器が搭載されている。

 

 誰が見てもこう言うだろう―――『コイツ強い』と。 

 

 「いや…もう…一つ首のメカキングギドラじゃんアンタ。」

 

 「おじちゃんカッコイイ!」

 

 リーネの言葉などまるで聞こえてはいないかのように、オラサーダルクが自らが身に纏っている装備を体を動かしながら隅々まで観察していく。

 

 青白いカラーリングに、白く神々しい光がまるでオーラの様に発光し覆っている。これは竜機神装備がオラサーダルクの特徴である冷気属性に対応し、装備の特徴を変化させ冷気に特化させていったからだ。

 

 ドラゴンと一くくりに言っても、それは様々である。それはユグドラシルでも同じだ。雷竜、炎竜、冷竜、地竜、毒竜、はたまた暗黒の力を持った闇竜や天の力を持つ光竜、アンデッドの死竜まで様々な種類がいる。

 

 この竜機神装備は()()()()()()()()、つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()。様々な種類のドラゴンがいる中で、装備したドラゴンの種類や属性に特化した能力へと『スペックチェンジ』する事が可能だ。

 

 チッと、リーネが一つ舌を打つ。流石はドラゴン贔屓の糞運営だ、力の入れ具合が他と比べまるで違う。もっと他の種族―――主に白虎に力を入れんかいと思いながら、複雑な気持ちでオラサーダルクを見つめる。

 

 そうやって見つめていると、ある部分に目が行く。そこはオラサーダルクの胸元辺り、竜機神装備にぽっかりと『穴が開いている』のが見える。

 

 この穴は、白虎の蒼き閃光装備にもあった穴だ。これ程力の入った装備に、意味もなくこの様な穴が開いている筈もない。

 

 (ぜ~ったいなんかあるよねこれ…。まぁ、想像は付くけどね。はぁ、今度は一体いくら使えばいいのかな…。)

 

 リーネの考える事は恐らく当たっているだろう。これは間違いなく、なにか別のアイテムをはめ込んでいく穴だ。そしてそのアイテムは、通常の方法では手に入れる事は出来はしないだろう―――間違いなく、『追いガチャ』が来る。

 

 お次はこの穴に組み込むアイテムを餌に、更に凶悪なガチャが実装されていく様が容易に予想できた。

 

 リーネは頭が痛くなる。次は一体いくら使えば良いのかと。ちなみに、ガチャをしないと言う選択肢は彼女には全くない様だ。

 

 心の中で運営に対し戦々恐々している―――と、アオが喋り掛けてきた。

 

 「ねぇねぇママ、これアオも着れるかな?」

 

 「…ん?あぁ、着れるんじゃない?多分ドラゴンなら皆着れると思うわよ。」

 

 オラサーダルクが装備できたという事は、この世界のドラゴンにも問題なく装備は出来るという事になる。流石にオラサーダルクだけが特別という事はないだろう。そう考えれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事だ。

 

 「…ふむ、不思議な感覚だ。このアイテムの使い方…全ての能力の詳細が頭に全て流れ込んでくる…元々知っているかの様な感覚だ。」

 

 「へぇ~、そうなんだ、そんな感覚になるんだそれ。」

 

 「みたいだな、中々にヤバめな代物だぞ、このアイテムは…コイツ一つ取ってもとんでもない。」

 

 コンコンと自らの顎の部分を指で二度叩く。そこには発射口の様な細長い筒が見える。その筒が両サイドに装着されている。これはブレスを超強化する装備だ。吐き出されたブレスをまるでレーザーの様に変換していく。その威力も、範囲も、通常ブレスとは桁が違う、そして使用回数の制限も当然ながらない。ブレスを吐けなくなるまで、常に変換され続ける。

 

 流石は極上の課金アイテムだ。他のアイテムとは一線を画している。レアリティは一応は【神器級(ゴッズ)】アイテムだが、その性能は、間違いなく【神器級(ゴッズ)】を上回っているだろう。

 

 【神器級(ゴッズ)】を上回り―――【世界級(ワールド)】に比肩しうる程の性能がある。

 

 最初は大喜びしていたオラサーダルクだが、次第に表情が険しくなっていく。

 

 「ふぅん。凄いんなら良かったね、これでアンタが竜王じゃん、おめでとさん。」

 

 ―――馬鹿が。

 

 オラサーダルクの脳裏にその言葉が浮かぶ。

 

 このアイテムの力は強すぎる、頭に流れ込んできた情報が正しければ、このアイテムは装備者の『持つ力(レベル)』に比例し、効果を増大させていく。

 

 自分の持つ力(レベル)は、このアイテムの本来の性能をまるで発揮は出来はしないだろう。しかしそれでも、この山脈を本当の意味で氷の世界に変える事くらいなら可能だ。

 

 無造作にこの力を振るい戦えば、この山脈のほとんどの生物がその余波に巻き込まれ死滅していく事になるだろう。

 

 何者も存在しない山脈で、裸の王様になる気など毛頭ない。跪く者達がいるからこその王なのだから。

 

 (山脈を氷漬けにできる…か。『誰か』と一緒だな…。このアイテムの力を使って『お前』と並び立てても嬉しくはない…なぁ―――それは俺らしくはないよな。)

 

 「ふん」と一つ鼻で笑った後に、目の前の馬鹿を見据える。

 

 「この山脈の王になる為に、このアイテムを使う気はない。」

 

 「はぁ?何でよ?使いなさいよ、あげた意味ないじゃない。」

 

 やれやれと言わんが如く、首を左右に振っていく。先程も言った様に、この力を振るえば山脈の至る所が氷に覆われ、生物が死に絶える。故に使う気はない、それが理由の一つだ。

 

 そう一つだ、もう一つの理由がある。この理由が、この装備を使いたくない一番の理由だ。

 

 首を左右に振った時、目に映るは一人のメス―――あけみだ。

 

 オラサーダルクの目が鋭くなる。

 

 「俺は俺だ、俺様だ。俺は自らの力のみでこの山脈の王になる。借り物の力などいらぬ。」

 

 鋭くなった目をリーネに向け、そう言い放った。

 

 ―――ゴクリ。

 

 リーネが一つ息をのむ。気圧されたからだ、オラサーダルクの持つ覚悟に。

 

 リーネの雰囲気が変わったのを感じ取ったオラサーダルクがもう一度あけみに視線を向ける。

 

 あけみ―――力に慢心せず、驕らず、ひたすらにその身を研鑽しているこの女に、鼻で笑われるのだけは我慢ならない。癪に障る所では済まない。

 

 己を磨き、ひたすらに頂を目指し、登り続けているこのメス―――いや、今やこのメスだけではない。

 

 オラサーダルクは周囲を見渡す。そこには、リーネ軍団とか言う馬鹿みたいな名前の元に集った仲間の姿が見える。

 

 あけみだけではない、ここにいる全ての者達が、己が為、仲間の為、そしてあの馬鹿の為に、己を磨き、高みに登ろうとしている。

 

 自分はドラゴン―――竜だ。この世界で最も気高く、そして最も高みにいる存在。誰よりも先に、どの種族よりも高みに登る。それが『竜の定め』であり、『宿命』なのだから。

 

 どれだけ頂が高かろうが、どれほど遠かろうが、竜である自分はどこまでも登っていける。

 

 しかし、借り物の力に慢心し驕った時、やってくるのは堕落だ。登るべき頂を見失い、後は堕ちていくだけ。

 

 自らの頂を見失った竜など竜にあらず。それはもう竜として死んでいるのと一緒だ。

 

 誰よりも高く飛び、誰よりも高みに登る。そして蒼穹の頂に座して、下界の者共を悠然と見下ろし、高笑いを上げるのだ。

 

 それこそが『竜』であり、『己が信じる竜の姿』、オラサーダルクの『竜としての信念』。

 

 己が信念を貫けず、仲間に一笑に付されるのは我慢ならない、それは自分のプライドが許さない。

 

 ふぅと一つ息を吐き、険しい表情がオラサーダルクから抜けていく。そしてまたあけみの顔を見つめていく。

 

 このメスがいなければ自分はどうなっていたのだろうか。慢心し、驕り、頂を見失い、只の愚竜に成り下がっていたかも知れない。いや、このメスだけではないだろう、ここにいる全ての者達が、自らの信念にもう一度火を灯してくれた。

 

 少しは感謝してやろう―――と、偉そうに上から物を考えていると。

 

 「どうしたダルク、このあけみの顔に何かついておるのか?」

 

 「はん…心配するな、いつもの不細工な面構えのままだ…待っていろ、()()()()()()()さ。」

 

 「…そうか。」

 

 あけみは瞳を閉じる。そして口元が上がる、嬉しそうに。

 

 「…貴殿もまた高みに登り続ける者と言う事なのだな。このあけみ、まだまだ青い…故に、貴殿の様な好敵手がいれば、更に高みへと登れよう。」

 

 「ふん」とオラサーダルクが鼻で笑う。しかし、その表情はどこか嬉しそうだ。

 

 そんな二人の世界に入っているあけみとオラサーダルクの近くに、とぼとぼとリーネが歩いてくる。

 

 「ごめんね、ダルク。アンタの覚悟に気づけなかった…他のアイテムあげるね。」

 

 しょぼくれたリーネが申し訳なさそうにそう言い、オラサーダルクの竜機神装備を回収しようと手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 ―――ぺちん。

 

 

 

 

 

 可愛い音が鳴り響いた。

 

 その理由は、伸ばした手をオラサーダルクが尻尾で払っていったからだ。

 

 リーネがきょとんとする。

 

 「…え、えっとぉ…あ、右手嫌だった?じゃあ左手で…。」

 

 

 

 

 

 ―――ぺちん。

 

 

 

 

 

 また可愛い音が鳴り響く。

 

 お次は左手を尻尾で弾かれた。

 

 「なんのつもりだ貴様。使わないと言ったがいらぬとは言ってはいないだろう。これはもう俺様の物だ、返す訳がなかろう、馬鹿が。」

 

 にまぁ~っとオラサーダルクの表情が歪む。中々に下卑た笑いだ。確かにこのアイテムを使う気はない、しかし返すかと言われれば話は違う。こんな極上のアイテムを守銭奴なオラサーダルクが一度貰っておいてみすみす返す訳がない。

 

 げへへへとでも聞こえてきそうな下卑た笑い顔を見ながら、一瞬意味が分からなかったリーネであったが、意味を理解した瞬間憤慨していく。

 

 「はぁ!?何よあんた!クソすぎでしょ!」

 

 「おうおう、クソで結構結構。それとだ、他のアイテムをくれるんだったか?早くよこせ。」

 

 「いや!普通それと交換でしょ!?更に私から巻き上げようっての!?」

 

 くつくつくつとオラサーダルクは笑う。もう何年も一緒にいるのだ、この悪い笑みの意味はだいたい想像がつく。

 

 ―――これは屁理屈を並べる時の笑いだ。

 

 「普通?悪いな、ドラゴンの普通はお前とは違うんだ。親父の遺言では『ドラゴンはあげると言われた物は全て貰うのが礼儀』だと言っていたぞ。」

 

 「どんな遺言よ!何年も付き合ってきて聞いた事ないわよ!ていうか、あんた親の顔知らないでしょ!だから返したら別のあげるって!」

 

 「おやおやぁ~?おかしいな、他のアイテムをあげるとしか言ってなかったぞ?返したらあげるとは一言も聞いていないがなぁ~?もしかして嘘をついたのか?軍団の長ともあろう者が、仲間に嘘をつくのかなぁ~?そんな軍団嫌だよなぁ?なぁ、アンティリーネ、くっくっく。」

 

 ぎゅーんとリーネの怒りのボルテージが上昇していく。「この野郎!」と噴火しそうになったが、すんでで堪える。

 

 目の前では、人差し指をくいくい曲げるオラサーダルクの姿が見える。これは『早く寄こせ』の意味を持つ。

 

 元々賢かったオラサーダルクだが、出会ってからのこの数年で、強さもそうだが頭の方は更に良くなった。特にここ最近はグラギオスと行動を共にする事が多い、魔法の知識もそうだが、様々な常識や、言葉による心理の動かし方が上手くなったように思える。人間の考えを読み、口八丁で丸め込むのも上手くなってきているという事だ。

 

 まぁ、リーネに対しては煽りの言葉が追加されていくが。

 

 「ぐぬぬぬぬぬ!」と拳を握り、歯を食いしばり耐えていく。そんなリーネの姿を他の仲間達は笑いながら見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「…こほん、ええっと…それじゃあ、『皆いつもありがとう、アンティリーネからの感謝のプレゼント会』の続きやっていきま~す。」

 

 にこやかに笑いながら喋るリーネに対し、軍団からパチパチと拍手が送られていく。まぁ、笑ってはいるが、額には青筋が浮かんでいるのだが。

 

 「それじゃあヨンサマには…これ!」

 

 「お?なんだこりゃ?衣服か?」

 

 じょじょん!と掲げられたそのアイテムは、真っ黒な色に、白で文字が刺繍されたブーメランパンツだ。パンツはプロレスラーの命と言っても過言ではない。特に黒は昔から大人気の色だ、流石はリーネ、最高のセンスであった。

 

 黒のブーメランパンツ―――レスラーパンツを受け取ったヨンサマに、プレゼントに選んだ経緯を説明していく。プロレスラーが愛用する物と聞いた時、ヨンサマは凄く嬉しそうに笑っていた。「履いて見てもいいか?」と言うヨンサマに、どうぞと答えれば、ヨンサマは直ぐに別の場所に移動し、レスラーパンツを履き戻ってきた。

 

 うぅ~む、惚れ惚れとする。これはリーネの素直な感想だ。特にイカしているのは、やはりこの刺繍か。

 

 股間の部分に『ヨン』お尻の部分に『サマ』と日本語で刺繍されている。凄まじい程のクオリティだ、自分でなければこの味は出せないと自画自賛していく。

 

 レアリティで言えば【聖遺物級(レリック)】に当たり、上から数えて三番目に位置する程の高いレアリティを誇る。この世界に置いては、一つの国家の秘宝すら軽々と凌ぐほどの高価なアイテムだ。

 

 付与されている効果は、『筋力の底上げ』、只それだけだ。逆を言えば、【聖遺物級(レリック)】と言う高レアリティのアイテムの容量を、それだけに全振りしたと言っても良い。

 

 そしてその上昇率は、パーセンテージではなく、固定上昇だ。【聖遺物級(レリック)】の容量分の上昇―――その上昇率は計り知れない。

 

 ガッツポーズをしながら喜ぶヨンサマを、仲間がにこやかに笑いながら、見つめている―――約一名を覗いては。

 

 (うひゃぁー!ダッサいのー!)

 

 レスラーパンツを見たグラギオスが戦々恐々していく。ぬしら本気で言っとんのか!?と仲間達の挙動に少し心配になる程だ。

 

 ―――ガクガク、ブルブル。

 

 手足が震える。貰ったプレゼントに対していちゃもんを付ける気など全くと言っていい程ない。しかしながら、本気で喜べるかと言えば話は別だ。自分の友が一生懸命腰らえてくれたプレゼントだ、無碍な事はしたくない。しかしそれでも、あれは流石にダサすぎる。

 

 自分の元に来るプレゼントが果たしてどの様な物なのかと、恐怖に打ち震えているグラギオスに―――声が聞こえてくる。

 

 「次は…グラギオスだぁー!」

 

 ―――あ~あ、儂の番きちゃった。

 

 「おぉ!次は爺さんか!爺さんこのプレゼント最高だぞ!体中から力が溢れてくるぜ!」

 

 ヨンサマが力強くダブルバイセップスをかました後に、サイドチェストをしながらグラギオスに喋り掛ける。

 

 丸太の様な太い二の腕に締め上げられた、分厚い胸板が、ビクン、ビクンと二回脈打った。

 

 「最高だぜ!」「このパンツ!」と体が言っているのだろう。筋肉言語(マッスルメッセージ)と言う奴だ。

 

 「…お、おぉ…友よ、儂にもプレゼントがあるとは…うれしいのぉ~。」

 

 「当然!グラ爺にはぁ~…これだぁ!」

 

 取り出したプレゼントを天高く突き上げていく。動かない筈の心臓を高鳴らせ、グラギオスはどぎまぎしながらそのプレゼントを見つめる。

 

 (見たくない!見たくない―――おや?)

 

 突き上げた右手に握られているのは『杖』だ。それもなんの変哲もない、木でできた杖。どんなヘンテコな物が飛び出してくるかと、どぎまぎと身構えていたグラギオスは拍子抜けしていく。

 

 「おじいちゃんには杖だもんね!でも安心して、只の杖じゃないから!【世界樹の神木】を削って作った【ウィザードロッド】よ!見た目はシンプルに決めて見たわ!」

 

 そう言いながら、グラギオスに杖を手渡していく。手渡された杖をギュッと握り締めた時、魔法で能力の詳細を調べていく、そうすれば―――グラギオスが驚愕に彩られて行く。

 

 「…これは…まさか…『位階を上昇』させれるのか…いや、正確には現状使える位階魔法を、『効果や威力だけ更に高い位階に上昇させる』…と言うべきなのじゃろうか?」

 

 「正解!」

 

 ニカっと満面の笑みを作る。未だ驚愕するグラギオスに、リーネはその杖の能力の詳細を詳しく伝えていった。

 

 「その杖はね、『魔法強化系統のスキル』…って言ってもピンと来ないかな~。簡単に言えば、魔法を幅広く活用していく為の特殊な効果を付与した杖なの。」

 

 「そ、それがこの位階の上昇…いや、位階の上昇だけではない…まだある…何という数じゃ。」

 

 「ふふ。グラ爺の言ってるのは【魔法位階上昇化】の事だと思う。例えば第一位階にある【魔法の矢(マジック・アロー)】を、威力だけ【第十位階】まで引き上げたりできるの。

 

 言葉の意味を理解し、グラギオスは絶句する。いや、魔法詠唱者ならば誰もが絶句するだろう。想像を絶するとは、正にこの事だ。

 

 「他にも色々詰め込んでるよ。【魔法最強化(マキシマイズ・マジック)】もそうだし、【魔法三重化(トリプレット・マジック)】、【魔法効果範囲最大化(ワイデン・マジック)】とかね…本当は『単純に位階の高い魔法を発動できる』様な効果を付与したかったんだけど…ごめんね、()()()()()()()()…。」

 

 リーネの顔が申し訳なさそうに暗くなっていく。

 

 ユグドラシルに置いて、位階上昇化は威力や効果を高位階に変換する事が出来るだけで、使えもしない高位階魔法を発動させていったりすることはできない。アイテムに付与された魔法を回数制限で使用する事や、【魔導書】や【魔封じの水晶】などを使用しない限り不可能だ。

 

 それはユグドラシルの一つの『ルール』であるからだ。もしも、そんな事が可能であるならば、それはユグドラシルのルール―――理から外れている事になる。

 

 リーネはまだ知らない、ユグドラシルの理に侵されたこの世界であるが、その理から外れた武技などが存在するこの世界には、【魔法上昇(オーバー・マジック)】と言う魔法が存在する事を。

 

 その存在を彼女が知るのは、今から数十年も先の事だ。その存在を知り、自らの国で行われている暗部を見た時、彼女が一体何を思ったか。それは、今語る事ではないだろう。

 

 「えっと…グラ爺はさ、色んな位階の魔法を研究してるじゃない?だから、そう言う個としての魔法の知識だけじゃなくて、色々な強化や範囲や遅延なんかの特殊な部分も、自分で扱えれば、研究にもっと役立つかなって…イメージの幅も広がるし…インスピもばばばばって沸くよね…?」

 

 グラギオスから返答はない。がっかりさせてしまったかと、暗い気持ちになりそうになった―――その時。

 

 「…友よ…儂は涙がでらん。」

 

 「…え?あ、あぁ、そりゃあ…アンデッドだしね?」

 

 「そうじゃ…しかし、もしアンデッドでも涙が流れるのであれば、儂は今涙を流しておるじゃろう…それはこの杖に対してではない、ぬしへの気持ちだ。取るに足らぬ野良アンデッドだった儂と友になってくれて感謝する…ありがとう。」

 

 グラギオスの誠実な気持ちに、今度はリーネがどぎまぎする。「あはは」、と笑いながら、照れ隠しの為に、何やらまた何か取り出していく。

 

 取り出されたのはユグドラシルで売られている『異形種姫シール』だ。ミニキャラのリーネが悪魔の恰好をしている。吹き出しには「げへへへへ」と言う文字が書かれていた。

 

 「つ、ついでにこれもあげる!ほらほら、杖に貼っときなさい!」

 

 「なんじゃこれは?これはいらんぞ、ダッサいの~。」

 

 「なによぉう!!貰っときなさいよ!!」

 

 普通に拒否られた。怒ったリーネが頬を膨らませプンプンしている。

 

 「友よ、そう脹れるな。本当に感謝を。」

 

 杖を持ったグラギオスが大きく頭を下げていく。気恥ずかしさからポリポリとほっぺを掻きながら、視線をずらす。

 

 視線の先には―――吸血鬼三姉妹がいた。

 

 「お次はあけみだよ!いつもありがとうね!あけみ!」

 

 取り出されたのは『一本の刀』だ。あけみが深く頭を下げていく。その後に持ち手、刀身共に真っ黒な黒刀があけみの手に握られて行った。

 

 まるで深い夜を思わせそうなその黒刀を、あけみは値踏みをするかのように隅々まで観察していく。

 

 「ふむ、美しい刀身ですな、主様。これと言って何か特別な力は感じられませんが。」

 

 「うん、そうよ。特別な能力は何も付与されてないわよ。あけみって自分を鍛えるのが好きじゃない?だから、変にステータス上昇のバフや、強力な能力はつけたくなかったの…修行には邪魔でしょ、そういうの?」

 

 「お心遣い痛み入ります、主様。」

 

 「へへへ、それ程でも…。その代わり、その刀は『切れ味』と『耐久』に振り切ってるから、そう易々と壊れないし、大抵の物は切れるわよ。一応は【聖遺物級(レリック)】だけど、切れ味と耐久力だけなら【伝説級(レジェンド)】の域よ。」

 

 切れ味に特化した刀は脆くなるのが常識である、長期使用には不向きなその欠点を、高耐久の素材を組み合わせる事により補ったのがこの刀だ。おかげで【聖遺物級(レリック)】の容量の全てをその二つにつぎ込む事になってしまった。

 

 普通ならこんな勿体ない作成は誰もしないだろう。脆くても、また修理すればすぐ使用できるのだから、しかしそれは『ユグドラシル基準』での話、ことこの現実世界に置いて、簡単に修理などできる筈もない、耐久力の底上げは必須項目だった。

 

 刀の概要を聞いたあけみが今一度、刀を観察していく。刃こぼれすら簡単には起こさない程の硬度を誇る、鋭利な刀がそこにはあった。特殊な能力こそないが、あけみにはそれで十分だ、この刀をあけみが振るえば、格上のドラゴンの鱗すらバターの様に切り裂いていくだろう。

 

 「まるで夜を思わせるかのような暗き刀身…名のある刀とお見受けしますが、主様…この刀の名は…?」

 

 「…え?」

 

 そんなのないよ。そう言いたいが、言い辛い。珍しくあの能面あけみが嬉しそうにしているのだから。即席でなにか考えねばと思考をフル回転していく。

 

 「…それは…夜―――【ワルプルギスの夜】よ。」

 

 いつも通り適当な事を言っておく。刀の名を聞いたあけみから「ワルプルギスの夜」と言葉が漏れる。取りあえずは納得してくれている様だ、良かった、乗り切ったと思う。

 

 黒刀―――【ワルプルギスの夜】を腰に据えたあけみが、自らの袴をバッとはためかせ、その場に正座をする。そして、両手を地面に据え、深々とその頭を下げていった。

 

 気品あふれる仕草だ、淀みなど一切ない美しいその一挙手一投足に惚れ惚れとする。相変わらず何をしてもカッコイイなコイツは、ズルいと思う。

 

 「主様、このあけみ、己が為、仲間の為、主様の為に、更なる高みへと登る事をここに誓いましょう―――深い感謝を。」

 

 ―――おっふ☆

 

 そこまで感謝されると、照れて口がとんがってしまう。

 

 「つ、つつ…次は、かなめだよ!」

 

 照れを隠す為にかなめにシフトしていく。取り出されたのは『真っ白な弓』だ。この弓もまた、派手な装飾は施されてはいない。非常にシンプルな見た目をしている。

 

 かなめがその弓を両手で受け取り、深く頭を下げていった。

 

 「はいこれ!かなめ、この弓は凄いわよ!この弓ね、『矢がいらない』のよ!」

 

 「へ?矢が…いらないとはどう言う意味ですか?主様。」

 

 くいくいとかなめに対してジェスチャーをする。弓を引いて見ろという事だ。意味を理解したかなめが弓を―――弦を引いていく。

 

 そうすれば、眩い光が集まり、形を形成していく。形成されたのは勿論、矢である。光の矢が出現していく。

 

 「…こ、これは。」

 

 「へへへ、凄いでしょ。矢を補給する手間が省けるから簡単に連射できるのよ、これ。しかもね、『出力の調整』もできて、『広範囲の爆撃も可能』だし、『速度』を上げて単体だけを射抜く事もできるの!

 

 「は、はは…あぁ、その…す、すごいですね。」

 

 にこにこ笑うリーネとは対照的な苦笑いをかなめは浮かべていく。何とも言えない表情だ。

 

 自分は【野伏】―――【レンジャー】だ。言うなれば『斥候』であり、極力派手な行動は控えるべきポジションである。

 

 この光の矢の性能は確かに破格だ。しかし、自分の『求められている立ち回り』を考えた時、果たしてこれが正解なのかと聞かれれば、首を横に振らざるを得ない。光の矢が出現する時の眩い光は、否が応にも目立つ、この弓の色もそうだ、白はいただけない。もっと暗く、目立ちにくい色の方が好ましいからだ。

 

 自らの主が【野伏】に対しての認識が甘い事に、かなめは不機嫌になる―――などという事はなく、逆に少し嬉しくなる。

 

 主とて『万能ではない』という事だ、知らない事も当然あり、この様に間違った方向に進む事もあるという事、つまりは、自らが補佐できる部分が、きちんと存在している、その事実に嬉しさが沸かない訳はない。

 

 これが他の二人―――『あけみ』や『ともえ』ならば、何か考えがあるとか深堀していくのだろうが、かなめはそんな事はしない。良いか悪いかは分からないが、どこまでいっても、かなめの感性は『普通』という事だ。普通の女だからこそ、変に裏を勘ぐったりはしない。

 

 にこにこ笑いながら、リーネは弓の概要をかなめに説明していく。かなめの苦笑いが次第に普通の笑いに変わっていく。自らの為に一生懸命作ってくれたのだろう、(しもべ)として嬉しくない筈はない。

 

 説明の終わったリーネに、かなめはもう一度深く頭を下げていく。

 

 「素晴らしい弓をありがとうございます、主様。ちなみになんですが、この弓の名前は何と言うのですか?」

 

 「…あ、あぁ、名前ね…。」

 

 当然名前など考えてはいない。あかん流れがあけみの所為で出来てしまっている事に、ここで気づく。

 

 どうする、光の矢を放つ弓だ、何かそれらしいのを考えねばと思考をフル回転していく。

 

 「…その弓は…【ガルヴェイラ】よ。」

 

 光の矢と言うフレーズから、ふと思いついた『究極の弓』の名前を口にしてしまった。「へぇ、良い名前ですね」とかなめの声が聞こえてくるが、脳内ではやっちまったと言う言葉が浮かぶ。いくら何でも【聖遺物級(レリック)】如きにつける名前ではない。最早【世界級(ワールド)】でも再現不可能な究極の弓の名前を付けてしまった事を盛大に後悔するが後の祭りだ。名前負けってレベルじゃないぞこれ。

 

 やっちまった事から目を離す様に、プイっと顔を動かせば、そこには三姉妹の『末妹』であるともえが、こちらをキラキラとした瞳で見つめていた。

 

 両手をぐっと握り、キラキラした瞳でこちらを見つめている。お次は自分の番だと思っているのだろう。「お前の分はないよ」と言えばどの様な表情を作るか非常に気になるがそんな事は言わない。絶望して自殺されたら笑えん。

 

 「はい、ともえにはこれだよ。」

 

 手渡したのは、『漆黒のローブ』だ。こちらは他の二人の時とは違い、沢山の宝石や金属が装飾され、非常に派手な見た目になっている。

 

 ともえは『派手な物が大好き』だ。そのともえの性格を知っているからこその、この派手なローブである。

 

 手に取ったローブをギュッと抱きしめ、ともえがにこやかに笑う。凶悪な八重歯がキラリと光ったが、それすらも気にならない程の良い笑顔がそこにはあった。

 

 「ともえが一番悩んだのよね。取りあえずともえの『長所』の『範囲魔法』を更に特化する為に組み込んだのが、【魔法効果範囲最大化(ワイデン・マジック)】と『魔法の威力上昇』の為の【魔法最強化(マキシマイズ・マジック)】、【魔法位階上昇化】、『発動時間省略』の為の【魔法無詠唱化(サイレント・マジック)】よ。この『四つのスキル効果』は組み込んだけど…余った容量は全部『防御』に振ったわ。どうしても後衛は脆いからね、チームで動けば前衛がいるけど、一人の時襲われたら大変だもの。そのローブならダルクの一撃でも受け止めれるわよ。」

 

 魔法詠唱者のローブに付与する能力は、ともえの『長所』を伸ばす『最低限』に抑え、他は『短所』である『打たれ弱さ』を補う為に振っていく。これもまた、ユグドラシルでは『セオリーから外れた組み合わせ』と言えるだろう。

 

 本当はもっと魔法面に力を入れたかったのだが、先程も言った様に、『悩みの種』が一つあったからこの様な仕様になっていった。

 

 目の前ではにこにこ可愛く笑っているが、ともえは非常に『気性が荒い』。気に入らない相手がいれば何も考えずに突っかかっていく。

 

 その辺にいる『モンスター』や、『低級の冒険者』であれば簡単に足らえるが、皆が皆そんな弱い存在ばかりではない。『アダマンタイト級』と呼ばれる『最高峰の冒険者』、『英雄』と呼ばれる『一騎当千の猛者』、その様な存在でも『手に余る』様な強大な力を持ったモンスターも存在する事もまた事実。トブの大森林にその様な存在が姿を表さない保証もないのだ。

 

 ともえの長所は『殲滅力』だ、『多』には強いが、同格の力を持つ『個』には弱い。『消費MPが大きい』からだ、ともえと同格の存在―――主に戦士系統の相手と対峙した時、『長期戦』になれば間違いなく勝てない。

 

 母と仲直りし、周囲の力の情勢を聞くようになってからもう随分と経つ。『難度』をユグドラシルに当てはめ、色々と自分なりに考察していった所、恐らく英雄と呼ばれる者達は『三十.LV』に届くか届かないかくらい、一応は『ピンキリ』と言う言葉が続くが、恐らくそれくらいだ。アダマンタイト級になればもう少し下がるかと言った印象だ、まぁ、これもピンキリだろうが。

 

 ともえは魔法詠唱者だが種族は『吸血鬼』。本来であれば吸血鬼の『真髄』は『魔法』ではない、『肉体派』の吸血鬼は、魔法系統のビルドに振り切ってしまうと『肉体のステータスが低下』するペナルティを受けてしまう、しかしこれは『プレイヤー』と『ノンプレイヤー』キャラのビルド構成時に適応される物であって『モンスターレベル』のみで構成されているともえには適応されない。

 

 特に『初心者救済システム』とも呼ばれる【カインアベルの血晶】で召喚された『ともえ達三姉妹』は、同レベルの吸血鬼と比べて『遥かに強い』。特化したビルドに加えて『真祖級』の吸血鬼が使用してくるような『吸血鬼特有のスキル』まで使用できる程だ。

 

 このように、同レベル帯の吸血鬼を遥かに超えるステータスを持つともえだ、魔法詠唱者と言えども、肉体のスペックは尋常ではない、このローブを纏えば、MPが枯渇しても英雄級の戦士相手に『正面から殴り合う』事も可能になってくる、疲労もしない事も考えれば殴り勝つ事も不可能ではないだろう。

 

 (トブの大森林にそこまでの奴が来るとは思えないけど、一応ね。頭に血がのぼると止まらないからなこの子。)

 

 拠点を建てるのは計画しているが、今はまだない。トブの大森林を一人でうろついている時に厄介な相手と遭遇しないとも限らないだろう。穏便に済ませる事はこの女には不可能だ。

 

 「主様!ありがとうございます!大事にしますね!あと、このローブは何て名前なんですか?」

 

 ―――きたか。

 

 最早三度目だ、なにも準備していない訳はないだろうと不敵な笑みを浮かべていく。

 

 「そのローブは…暗黒の力を纏いし【漆黒のブラック・ノアール・ダークローブ】よ。」

 

 「漆黒の…ブラ…ノ…ノール…ありがとうございます!ともえ大事にします!」

 

 余りにも長い名前に、ともえは考えるのをやめた。

 

 思考を放棄したともえを見つめながら、二度頷き、ハムスケの方に顔を動かす。こちらもキラキラとした瞳で、自分の番を今か今かと待ちわびていた。

 

 「ハムスケ、こっちに来なさい。」

 

 そんなハムスケを自分の元まで呼ぶ。ひょこひょこと可愛く歩いてきたハムスケに手に持つアイテムを見せていく。

 

 「見なさいハムスケ、この『ブラッシング』を!あんたいつも『毛がぼさぼさ』なのよ、これで整えてあげる。」

 

 野生で生きて来たハムスケに毛並みを整えると言う習性はない。基本はぼさぼさであり、汚れも目立つ。しかし、このブラッシングならば、汚れも毛並みも一瞬で解決していく。

 

 シャ、シャ、とハムスケの毛をといていけば、キラキラとした光と共に、ぼさぼさの毛並みも、汚れも、一瞬で綺麗になっていく。

 

 このアイテムは『魔獣のステータス向上系アイテム』であり、ブラッシングでとかれた毛は『硬度』が上がり、また『俊敏性』や『力』などのステータスが、一時的ではあるが大幅にアップしていく。

 

 『フレーバーテキスト』には、毛並みを『綺麗』にし、『汚れ』も落とすと書いてあった事から、現実世界に持ってくればその通りの効果を引き起こすと期待していたが、思った通りだった。

 

 「…すぴー。」

 

 「あ…こいつ寝やがった。」

 

 ブラッシングが気持ちよかったのか、ハムスケは転寝を始めてしまった。ふさふさになった毛並みで丸まり寝ている様は綿あめの様に見えなくもない。

 

 リーネが、ふぅっと鼻で一つ息を吐く。本当にしょうがない奴だ、しかし反応を見るに、このプレゼントはお気に召した様だ。取りあえずは一安心と最後の一人に顔を向けていく。

 

 「最後はアオだね…アオにはこれです!」

 

 じょじょんと取り出されたのは、『沢山の輪っか』である。金色の輪っかがリーネの手には握られていた。

 

 「ママこれなに?」

 

 「これはね~…こう!」

 

 そう言いながら、手に持った沢山の輪っかを頭上に投げ捨てる。そうすれば、輪っかは空中で静止した後に、巨大化していく、そしてふよふよと浮かびながら、辺りを漂いだした。

 

 巨大な輪っかは不規則に動き続ける。これにはアオも?マークを浮かべていく。いや、アオだけでなく、軍団のメンツも皆?マークを頭上に浮かべているかの様な表情だ。

 

 「これは『玩具』です!正確には『飛行系の騎乗モンスターの操作の練習』に使うアイテムなんだけどね。アオもやっと飛べるようになってきたんだし、これでお空を飛ぶ練習をしましょう。」

 

 このアイテムは不規則に動く輪っかの中を、飛行系の騎乗モンスターで潜り抜けていき、操作の練習をしていく際に用いられるアイテムだ。目の前で急に動く事もあり、『急旋回』、『急静動』などの基本操作を覚えるには打ってつけのアイテムだ。難易度も様々で、『イージー』から『ベリーハード』まである。

 

 「なるほど…考えたな。」

 

 そう言葉を吐いたのはオラサーダルクだ。アオは最近やっと飛行できるようになってきた、普通は狩りをしながらゆっくり飛行を覚えていくのだが、このアイテムがあれば話はガラッと変わっていくだろう。ドラゴン特有の飛行能力の向上に、これ程適したアイテムも無いように思えた。

 

 アイテムの説明を細かくアオに伝えていく。すると、アオは理解できたのか、空中の輪っか目掛けて飛行していった。

 

 輪っかを潜り、潜れなかった輪っかにぶつかり、それでもキャッキャッ言いながら楽しそうに遊び始めた。

 

 「危険な物なら突っぱねてやろうと思ったが、あれならば安全にアオの成長を促せるだろう。」

 

 「当たり前でしょ?子供に武器なんか渡せないっての。」

 

 軍団のメンツには、『武器』や『防具』と言うアイテムをプレゼントした――ハムスケは少し違うが――、この世界は非常に『危険』だ、至る所に命を失う危険性をはらんでいる。『身を守る』と言う意味で、武器や防具が一番プレゼントとして『有意義な物』になるとリーネは思ったからだ。

 

 しかしそんな武器や防具も扱い方一つでは危険な物に成り得る。アオはまだ子供だ、そんな危険な物を持たせるつもりは初めから無い。

 

 ―――パン。

 

 リーネが両手を叩けば、軍団のメンツがこちらに振り向く――ハムスケは眠ったままだが――、大切な友達の顔を見渡した後に、リーネはぺこりと頭を下げていった。

 

 「皆、いつも仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくお願いします。」

 

 言葉と共に頭を上げれば、皆が優しい笑顔でこちらを見つめている。ともえだけは良く分からずキョロキョロしているが。

 

 「ふん、馬鹿なお前には俺がついておかんとな…危なっかしくて見てられん。」

 

 「ひでぇ言い草だな旦那…まぁでも、リーネはお人よしだからな、俺達がついてねぇと心配ってのは分かるぜ。」

 

 「ヨンの言う通りじゃな、常識外れな事をしないように頼むぞい、友よ。」

 

 「このあけみ、いつまでも主様と共にありましょうぞ。」

 

 「主様、(しもべ)にも優しい主様が私は大好きです。これからも共にいさせてください。」

 

 「え?え?なに?どう言う流れなんだこれ?」

 

 「すぴー…すぴー。」

 

 「キャッキャッ!難しいねこれー!」

 

 軍団の皆の言葉を聞いたリーネは、今日一番の笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 アインズ・ウール・ゴウンが独占を続ける鉱山で、金属を採掘する音が鳴り響く。

 

 今日も今日とて暇人のリーネが、一生懸命金属を掘り起こしている最中だ。

 

 軍団のプレゼントの為に、それなりの素材を消費していった。【聖遺物級(レリック)】と言えどもそれなりの素材は必要になってくる。消費した金属と、その他諸々の素材にそれを内容した『空のデータクリスタル』は全てリーネの個人資産を使っていった。

 

 消費した資源の回収は勿論の事だが、それ以上に、もっと良質な物を軍団のメンツにはプレゼントしたい、取りあえず今回は【聖遺物級(レリック)】が限界だったが、次はもっと『高い』レアリティのアイテムを作成しプレゼントしようと、頑張って採掘に励んでいる。

 

 「う~ん、皆喜んでくれたから良かったけど…私間違ってないよね?」

 

 間違ってないよね?この言葉はどう言う意味かと言うと、【聖遺物級(レリック)】と言う高レアリティのアイテムの作成の際の『組み合わせ』の事だ。

 

 本来【聖遺物級(レリック)】ともなれば、『低LV』のプレイヤーが装備できる筈もない程のレアリティである。『カンストプレイヤー』ですら――ソロでギルド等に所属していない者達――『主装備』にしている者もいる程だ。

 

 【聖遺物級(レリック)】の『適正レベル』は大体が『八十~九十』付近、先程も言った様にカンストプレイヤーですらそれ以上のレアリティを持てない場合もある。

 

 そんな『高レベル帯』のプレイヤー達が装備するアイテムを、『低レベル帯』の軍団のメンツにプレゼントすると決めた時、どの様な組み合わせでどの様な効果を付与するか非常に迷った。

 

 例えばグラギオスだ。あの杖には、様々な魔法強化系のスキルを発動できる様にデータクリスタルを組み込んで行った。はっきり言ってこれは『無駄以外の何物でもない』、なぜなら、【聖遺物級(レリック)】を作成できる程のレベル帯のプレイヤーならば、その様なスキルや強化の魔法は『既に習得済み』だからだ、内容できるデータ量は『限られている』、これは『無駄な詰め込み』であり、容量を『圧迫』しているだけに過ぎない。普通はもっと別の、魔法の『威力』や『発動速度』の『上昇』などを付与していくのがセオリーである。

 

 ならばそのセオリーに沿った組み合わせの【聖遺物級(レリック)】をグラギオスに渡せば良いのかと言えば、それはまた『話が変わって』くる。なぜならばグラギオスはそのレベル帯の魔法詠唱者が『当たり前』に習得しているスキルや魔法を『習得していない』からだ。アイテムの『レアリティ』と『レベル帯』がマッチしていない為に、非常に『ちぐはぐ』になってしまい、本来のアイテムの『真価』を『発揮はできはしない』だろう。

 

 ユグドラシルは高い自由度を誇る。アイテム一つとっても、非常に『細かく』、『繊細』に作成をしていく事が可能だ。レアリティの高い装備を低レベル帯の者が装備すれば、確かに強くはなるだろうが、『マッチしたレベル帯の者程強くはなれない』。クラス構成も考えて細かく調整された装備ならば尚更だ、極端な話、現実世界の『英雄』と呼ばれる様な人間が、ユグドラシルの高レベル帯のプレイヤーの装備―――【聖遺物級(レリック)】などを装備したとしても、真価は発揮できないという事になる。

 

 そんな中、リーネが考えたのは、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』だ。

 

 魔法の威力の上昇や、効果の上昇、MPの増量などの特殊な効果は全て『切り捨てた』、なぜならばその上昇は『レベルに依存していく』からだ。つまりは『パーセンテージ』での上昇である為に、『低レベル帯』と『高レベル帯』では『大きなひらき』が出来てしまう。『二十レベル帯』のグラギオスと『百レベル帯』の魔法詠唱者では同じパーセンテージも『天と地の差』が開く、結果的に『微増』になってしまうのであれば、そんな物は『必要ない』と思ったからだ。

 

 ヨンサマのレスラーパンツのように、『上昇値を固定』する事によって、『レベルに関係なく』能力を引き上げていく事も出来るには出来る―――が、魔法詠唱者は総合値を求められる。モンクの様に、『一つの能力』を上げるだけでは、『大幅な強化』には至らない。固定上昇は『容量を大幅に食って』いく、『複数』に振り分けてしまえば、結局は微増に終わるだろう。

 

 だからこそ、『()()()()()()()()()()()()()()()()』と考えた。【位階上昇化】や【魔法三重化(トリプレット・マジック)】もそうだ、様々な『グラギオスに出来ない事』を詰め込んだのがあの杖だ。それこそが低レベル帯のグラギオスが『最も強くなれる組み合わせ』だと考えたからだ。MPの消費もそれに伴い多くなるが、それは前者でも同じだ、威力や効果の上昇を付与すれば、同じく燃費は悪くなっていく。

 

 同じ燃費が悪くなるならば、どちらの方が良いかとリーネは『天秤』に掛けていった際、後者に傾いた。『単純な上昇』よりも、『魔法の幅が広がる』事を選んで行ったという事だ。

 

 これがリーネの考えた苦肉の策、『低レベル帯を強くする為の組み合わせ』だ。グラギオスの杖は【聖遺物級(レリック)】ではあるが、『レアリティにマッチングしたレベル帯の者』が装備しても『ゴミ』にしかならない、『グラギオスが装備するからこそ』真価を発揮していく。

 

 【聖遺物級(レリック)】の無駄使いと思われるだろうが、そこまで振り切り、尖らせることが一番グラギオスを強化できるだろう。余った容量は『ノックバック』に全振りしている、実はあの杖は、叩くと相手が『吹き飛んで行く』のだ。

 

 あけみ達三姉妹も同じだ、あの『三姉妹が装備するからこそ』真価を発揮していく。ともえのローブなど『カッチカチ』のローブだ、普通に考えれば訳が分からないだろう。『現実世界の強さの基準』を考え、『そこで使う事を前提』に、長所を底上げし、短所を補う、そして最終的に、ともえの吸血鬼としての肉体のスペックを生かした肉弾戦を『英雄級の相手に対して』行う、たったそれだけの為だけに素材を組み合わせた。あれは()()()()()、『ともえが使う事により真価を発揮する』ローブだ。

 

 「もっとレアリティを上げれば、『容量』も増えていく…もっと細かく『皆に合わせた物を作る』事が出来る。」

 

 目標は【神器級(ゴッズ)】であり、それを『全身に装備』できるようにしてあげたい。『指輪』や『ネックレス』などの『アクセサリー』類も、【神器級(ゴッズ)アーティファクト級】で揃えてあげたい。低レベル帯が装備する事で真価を発揮する、『軍団の皆の為だけ』に細かく作成された【神器級(ゴッズ)】装備が目標だ。気の遠くなりそうな目標であり、実現は『ほぼ不可能』だろう、しかし投げ出したくはない、現実で自分と仲良くしてくれる『大切な仲間達』だからだ。

 

 『金属鉱石』はそれなりに回収できた、次は『空のデータクリスタル』か、はたまたそれに詰め込む『素材』か、どちらにしようか考えていると。

 

 「相変わらず鉱石掘りが好きですな、アンティリーネ殿。」

 

 影が姿を形成していく、現れたのはギルバートだ。

 

 「あんたも相変わらずね、いつまで私の追っかけしてんのよ、ていうかさ、アロビに言っといてよ、飽きないわね、あんたって。」

 

 ワールド・チャンピオンを決める公式の大会以降、アロービーチはナザリックに通い、リーネと『PVP』に明け暮れている。なんでも、『終生のライバル』に自分はなったらしい。

 

 「アロービーチ殿は言っても聞かぬでござるよ、忍忍。それよりもアンティリーネ殿、『一大事』にござるよ。」

 

 一大事?一体どうしたと思うと同時にギルバートの纏う雰囲気がいつもと違う事に気づく、今までこれ程深刻な雰囲気は感じた事はない、『ウロボロス』の時よりも深刻そうだ。

 

 「やりすぎたでござるな、アンティリーネ殿…いや、『アインズ・ウール・ゴウン』と言うべきか…多くのプレイヤー達が()()()()()()()()()()()()()()()()きますぞ。」

 

 「はん」その言葉を聞いたリーネは、鼻で笑っていく。

 

 「あっそう、それって()()()()()()なの?言っておくけど、ナザリックは()()()()()()()()なの、()()()()くらいなら()()()()()()()()わよ。」

 

 自信満々に言い放つリーネに、ギルバートが口を開いた。

 

 「()()…。」

 

 ギルバートが小さな声でそう言った。その小さな声はリーネには非常に大きく聞こえた。

 

 「情報が確かなら、その数は()()()()()()()()…恐らくは()()()程…もしかしたら、()()()()()()()しれんでござるよ。」

 

 「は、はは…冗談でしょ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一難去ってまた一難、そしてこの一難は、今までで最上級の物になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 





 どうもちひろです(ΦωΦ)

 この作品の何が一番ヤバいのかと考えれば、それは異世界とユグドラシルを行き来していることだとちひろは思います
 仮にギルドごと異世界に転移し、たらふく資源を持っていたとしても、その資源はそれ以上増える事はありません。
 減る一方です。
 なので、仮に異世界の人達専用にアイテムを作ろうとなっても、考えている効果を発揮する為の素材やクリスタルがなかったり、あったとしても、もう二度と手に入らない素材を消費していく事には抵抗が生まれると思います。
 アインズ様も、ナザリックの素材を浪費しない様に、現地の素材だけで賄えるように努力していますしね。
 だからこそ、既存のアイテム―――特に自分達には必要は無いが、異世界では十分強力なアイテム達を、貸し与えるなり、最悪あげるなりになると思います。
 ユグドラシルは自由度が凄く高いです。
 装備品や、能力向上系のアクセサリーなんかも、プレイヤー個人に細かく合わせて作成する事ができます。
 そして、このゆぐどらしるだいぼうけんは、原作よりも更に自由度が高く設定されています。
 その代わり、作成難易度は更に高くなっていますが…。
 アイテム一つとっても、こと細かく作成できる分、必要な素材の種類や量が増え、組み合わせもそれに付随して大幅に増えています。
 つまり、素材を集める時間、効果の組み合わせを思考する時間が増えているんです。
 アイテムの実験一つとっても、かなりの労力を費やす様に設定されています。
 なので、個人的にはこれで帳尻合わせはできているんじゃないかな?と思っています。
 そんな、個人に細かく調整されたアイテム達、クラス構成や、自分のスタイルなんかに合わせて作られたアイテム達を別の人に装備させても、真価は発揮できないんじゃないかな?だったら、その人にあったアイテムを作った方が良いんじゃないかな?というのが今回のお話です。
 この内容は、賛否両論あると思います。ただ、ちひろの考えとしてはこうですと言うだけです。
 単純な強化よりも、その人物の特性に合わせた上で、できない事をできるようにして臨機応変さを上げた方が、戦闘の幅も広まりますし、なによりそっちの方が、オーバーロードらしいかな?と思うからです。
 長くなりましたが、今言った話は、現地民を強化する為の話です、プレイヤーではありません。現地民はユグドラシルの『普通』ができません、だからこそ、ユグドラシルの普通を与えるだけで、幅は大幅に増えると思います。
 でも、既存の完成されたアイテム達にはその普通はありません、だって、それはそのレアリティのアイテムを装備する人達にとっては普通なんですから、出来る事に容量をつめる必要もないからです。
 じゃあ、今回の話の様に、お前だけの為に、高レアリティ装備を、貴重なクリスタルや素材を使って、普通を詰め込んだ装備を作ってやるよ!…とはならないと思います。成功する保証もないんですから、もう二度と手に入らない素材を、ユグドラシルの常識なら絶対にやらない様な組み合わせで、なおかつ現地民の為に作成するのは正直嫌だと思います。リスキーすぎます。
 しかし、アンティリーネさんは違います。
 彼女は仲間達の特性をきちんと把握し、必要な素材を考えたのち、ユグドラシルに行って事細かく素材を集め、作成して戻ってきやがるんです。
 正直イカれてます。
 反則やんそれ…って思います。
 しかし、彼女はそれをしやがるんです。
 彼女からしたら、ユグドラシルの素材はいくらでも手に入れられる物で、今回失敗したら、また今度は違う考え方のもとアイテムを作成すればいいやくらいに考えてるんです。
 ここがこの作品の一番ヤバい所だと思います。

 今回のお話は、ゆぐどらしるだいぼうけんのマジでヤバい所がでたお話でしたね。
 彼女は最終的に神器級でそれをやろうと画策してやがります。
 あいつマジでやべぇです。
 そして、やべぇと言えば、アインズ・ウール・ゴウンの置かれてしまった状況も非常にやべぇです。
 アインズ・ウール・ゴウンは大丈夫なのでしょうか?(鼻ほじほじ
 このまま虐殺されてしまうのでしょうか(無表情
 最終防衛ラインの第八階層を突破されてしまえば終わりです!(何かのフラグ
 ナザリックは…陥落してしまうのか!?(どうせ皆しってるんでしょ?的な顔
 それでは!次章予告です!

    ―――BGM・サ〇エさんED―――

 ジャン「ジャンです!
     AOGはやりすぎたねぇ~♪
     やり返されてもしょうがないよ
     やったらやり返されるって
     シャーマンキングでも言ってたしね
     あ~あナザリックボロボロ…ジャン
     あ!だじゃれじゃないよ!
     それとみんなは、ピンガラって
     どう思う?やっぱり
     ピンガラって二つ名ダサいかな~?
     それじゃ、次章は―――
     
     ① ジャンくん、二つ名がダサい
     ② コード・DTD
     ③ シークレット・ソード・ファイナル
    
     ―――の三本です!

     次回  アンティリーネさん
         
          第 4.5 章

        【ナザリック防衛戦】

      次章も見て下さいね!
      ジャン!けん!ぽん!へへへ♪   」
               
 リーネ「(`・ω・´)ジャンくん野球しようぜ!」

 ※こんなタイトルはありませんm(__)m
 
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