あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
なんと今回1万字で纏める事が出来ました!
ちひろは自分の才能が恐ろしいです(錯乱中
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コッ...コッ...コッ...
薄暗い空間に小さな足音が鳴り響く...
コッ...コッ...コッ...
その音は反射し木霊してくる...
―――空間が狭いのだ
コッ...コッ...コッ...
音は鳴りやまない...
「モッ...モモンガさ~ん...どっ...どこ~?」
コッ...コッ...っという足音に続き女性の―――幼い少女の―――怯えの入った震える声が遅れて響いてくる。
―――どこ~?
その震える声も反射し木霊する...―――返事は返ってこない
「うぅぅ...こ...怖い...モモンガさん守ってくれるって言ったじゃん。」
トボトボという風にこの狭い空間―――迷宮のダンジョンの通路を幼いハーフエルフの少女が一人歩いている。
目印となるのは壁に装飾された松明のみ、その少しの明かりを頼りに幼い少女は怯えながらも、一つ...また一つ...と着々と歩を進めていく
コッ...コッ...コッ...
―――歩みは止まらない
「かっ...帰ったらたっちさんに言いつけてやるんだから...。」
出てこないとしらないよ~...少女がそう言葉を発しながら入り組んだ通路を進んで行っている。
恐らくこれは目的の人物を”探す”という事よりは言葉を発する事によって自らの中に渦巻いている”恐怖”を拡散させるのが目的なのであろう。
―――ゴツン...
「イタッ...えっ?な、なに...?」
少女がなにか大きな...そう”何か”にぶつかり動かし続けていた足を止める。
そうして、ゆっくりと―――祈るような表情で―――ゆっくりと顔を正面に向ける...壁に掛けられた松明の明かりが揺らめきを上げ、その”何か”を映し出す。
―――そして
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
「んぎゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
悲鳴が迷宮に木霊する...松明の明かりに映し出されたのは...
―――恐ろしい骸骨の姿であった...
♦
お母さん...お母さん...
―――あぁ...分かる...これは夢だ...
私が嫌いなの?
―――違う...嫌われてはいない...お母さんは不器用なだけだ...
私はいらない子なの?
―――違う...いらないなんて言われた事はない...だから違う...
私を捨てたの?
―――違う...違う...
お母さん...お母さん...おか...
「違う!!!!」
ガバッという大きな音を立てて悪夢に囚われていた少女”アンティリーネ”が目を覚ます。現実に引き戻されたのだ...
「はぁ...はぁ...こ、ここは...?」
狭くもなく広くもない殺風景な空間が目に入ってくる。その光景を目の当たりにしリーネの頭の中に昨日の出来事が鮮明に蘇ってきた。そしてここは、昨日二人と別れた宿の一室であるという事も。
「...怖かった...なんで...こんな...でも。」
リーネは両手を自らの胸に当て”ホッ”っと撫でおろす。
―――夢で良かった...と
「でも...駄目だよ...こんな夢を見ちゃ...お母さんは悪くないのに。」
こんな夢を見る悪い子じゃ”本当に”嫌われてしまう。それだけは嫌だと少女は思い更に悪い子な自分に言い聞かせる―――母はただ”不器用”なだけなんだと...
「でも、やっぱり帰れなかったんだ。ろぐあうと?だっけ?お母さん心配してるだろうな...。」
―――本当にそうなの?
悪い子な自分が囁いてくる。その囁きをリーネは頭をブンブンっといった風に振りながらかき消す。そうに決まっている...お前はもう”黙れ”っと。
リーネが悪い子な自分と戦っていると室内に”ピンポン”―――アナウンスが―――という間の抜けた音が鳴り響いた。何事かとリーネが辺りをキョロキョロ見渡していると続いて声が聞こえてくる。年若い女性の声だ。
―――モモンガさんが”IN”しました。
えっ?何?モモンガさん?などとリーネが混乱している内に件の人物”モモンガ”が目の前に瞬時に出現した―――ログアウトした時と同じように
「おはよ~う。リーネいるか~?」
姿を現したのは恐ろしい異形の姿をした骸骨のアンデッドの姿であった。しかしその見た目とは裏腹に響く声音は優しい。このチグハグな人物が先日仲間に―――友達に―――なった”モモンガ”である。出現するやいなやリーネにたいし挨拶をしてくるモモンガにたいしてリーネも慌てて挨拶を返す。
「お、おはようモモンガさん。」
「おっ、いるじゃないか。随分と早いな。感心だ。」
ん?いや、朝早くから子供がゲームをしてるんだ。感心しては駄目なのか?などとモモンガが一人ブツブツ呟いているが、リーネとしては余り気にならない。なぜなら意味が分からないからだ。
「モモンガさんっていつも一人でぶつぶつ呟いてるね。考えるのが好きなの?」
子供特有の無邪気で残酷な質問がモモンガをぶった斬る。そうゆうのはねぇ見て見ぬ振りをするんだよ。大人はすぐ傷つくんだから。と言いそうになるが頑張って堪える。子供に言う言葉ではない。
「うっ、うぅん。別に好きな訳ではないぞ。なんというかこれはだな、性格というか、なんというか。」
余り答えになっていない答えをモモンガはリーネに吐きかける。質問をしたリーネもふ~ん、そうなんだ~。っと言って納得してくれている。これ以上言葉の刃で切り刻まれるのはまずい、斬撃耐性を有しているモモンガではあるがその耐性は心にまでは行き届いてはいない。剝き出しの心に切り刻まれる刃のなんと痛い事か。
なのでモモンガは兼ねてから計画していた―――といっても昨日の事だが―――計画をリーネに伝える事にした。そう...―――話題を変える為に
「そんな事より、リーネ今日は趣向を変えて”ダンジョン”に潜ってみないか?」
「だんじょん?なぁに?それ?」
そらきた!っとモモンガは勝ち誇る。勝った!これで心を抉られる事も無いと。そしてリーネからしたら当然の疑問にたいしモモンガが説明をしていく。
「そうだな。簡単に言えば”冒険の舞台”といった所か地下に眠る迷宮や山脈に隠された洞窟はては滅びた王城など様々だな。そんな中を仲間達と一緒に攻略していくんだ。色々な隠されたギミックを解いたり強大なボスに立ち向かったりしてな。そして極め付けはダンジョンの奥に眠るお―――」
―――長い...
「宝さ、様々な...えっ?なに?」
「長い長い長い長い長いながーーーい。モモンガさん話なが~い!そんなに一辺に言われても私わかんな~い!しかも早口!わかりづら~い!」
なぜだ...とモモンガは心の中で衝撃を覚える。この話題転換で自分の心は―――ガラスのハートは―――守られるはずだった、なのになぜ...なぜまた自分は傷ついているのだ。
目の前にはベッドの上でまるで玩具を買って貰えない子供のように手足をジタバタさせ大声で叫ぶリーネがいた。
子供の恐ろしさを改めて学んだモモンガは、というかコイツ俺にだけ我儘になってきてないか?っと思ったが、逆を言えばなつかれているという事だっと思い直し”グラスプハート”されそうだった自分の繊細な心臓をどうにか守る。そうだこれはいい傾向だ。うん。そうだ。自分に言い聞かせる。
「あ、あぁ。すまない。分かりづらかったか。つまりは”仲間”と楽しく遊べてついでに”お宝”まで貰える素晴らしい場所という事だ。」
え~すご~い。リーネが理解した素振りを見せる。今の説明でしっかり伝わったようだ。なにやら、そう言えばいいのに~とかホント長いな~とか言う言葉が聞こえてくるが無視だ。グサグサ刺さるからやめろ。
―――モモンガがそうやって自分の心を守っていると
「じゃあ今日はそのだんじょんに行くんだね。楽しみだな~。」
―――リーネの機嫌が見る見るうちに良くなる。子供とは本当に可愛い者だ
「それじゃあ、長話してもなんだ、時間も勿体ないしすぐに準備して行こうか。」
今日は待ちに待った休日だ。時間は沢山あるモモンガだが無駄にはしたくない。休みを充実させる為にも行動は早い方がいいだろう。そんな風に考えていると―――
「えっ?もう行くの?たっちさんは?」
これは当然の疑問だ。モモンガとたっち・みーは二人で行動している。仲間とダンジョンに潜ると聞いた以上リーネがこう思うのは致し方ない事と思える。しかし今日はたっち・みーはいない。
「うん?たっちさんか?今日は用事で来れないらしいぞ。彼は妻帯者だ。休日の方が逆に忙しいのかもな。」
たっち・みーはリアルでは結婚している。奥さんのお腹も大きく近々子供も生まれるらしい。休みといえども簡単にはINできないのである。大人には色々と事情があるのだから。
「えぇ!たっちさん来れないの!?なんで~!?特訓してもらおうと思ったのに。」
リーネの上がっていたテンションが見る見る内に急降下していく。本当に上がり下がりの激しい奴だ。そうモモンガが思っていると―――
―――じゃあいいや”モモンガ”さんだけで...
あぁん?なんだそれ!じゃあってなんだ!じゃあって!
―――モモンガの機嫌が見る見るうちに悪くなる。子供とは本当に可愛くない者だ
「ふ~ん。あっそっ。そういう事言うんだ。じゃあ俺一人でい~こお。」
何とも大人げないものである。しかしある意味ではその突き放すような言葉は子供には最適だったりもする。
「ええぇ!?嘘嘘!嘘だよモモンガさ~ん。」
モモンガの言葉に慌ててリーネが口を開く。ごめんなさ~いっと即座に謝れる所は流石子供といった所か。
その姿を見てモモンガがふっふっふっという風な態度をとる。明らかに機嫌が良くなってきているのが見てとれる。
―――二人共似たり寄ったりであった...
「でもモモンガさん。そのだんじょんって危なくないの?モンスターとかいるんじゃ...」
これも当然の疑問だろう。お宝があるような場所が安全だなんて事は考えずらい。十中八九”何か”が潜んでいるであろう。
疑問の声を上げるリーネにモモンガが伝える
「そりゃあいるさ。当然だろ?何もいなかったらお宝取り放題じゃないか。」
ほら見てみろ!これだよ!っとリーネが心の中で叫ぶ。なんでそんな大切な事を最初に言わないんだ。そんな気持ちが沸々と胸に沸いてくる。
実はモモンガは話の中に”ボス”と言って一応説明はしているのだが”ボス”を知らないリーネにとっては言っていないのも同然だ。
「ほら~いるんだ~。私無理だよ~。」
非難の声がリーネから上がる―――だが
「ふふふ。問題ないぞリーネ、俺がいるからな。」
―――守ってやるぞ!そうモモンガが続ける
「本当?う~んそれなら...行って見ようかな~?」
「よし!決まりだな!それじゃあ準備を整えて出発だ!」
いっくぞ~っとモモンガが右の拳を握り天に突き上げる。それを見てリーネもいっくぞ~と手を突き上げた。
―――他愛もない日常...そしてそれを満喫するかのような...そう”親子”のような姿がそこにはあった
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ヘルヘイムの初心者地帯、そこに位置する沼地の近くに地下へと続く道が―――階段が―――存在していた。こここそが目的地の”初級”ダンジョンの入り口である。
その適正LVは15といった所か。その入り口の前に二つの人影が―――モモンガとリーネー――立っている。
「着いたぞ、リーネ。安心しろこのダンジョンは超初心者ダンジョンだ。チュートリアル並みだぞ。」
モモンガがいつもの分からない言葉を投げかけてくる―――がリーネはそれどころではなかった。
「モ、モモンガさん...帰ろ。」
はっ?なんでだ?モモンガが急にそんな事を呟きだしたリーネに向かい問いかける
「だっ、だってここすごく暗いよ。私怖いもん。」
確かに薄気味悪いが言う程怖いだろうか?とモモンガが首を捻る。子供の持つ恐怖心がいまいちモモンガにはピンとこないらしい。
「せっかくきたんだ入ってみようじゃないか。大丈夫俺がついてるぞ!」
モモンガがサムズアップしている。歯がキラーンとでも光りそうだ。
「モモンガさん自体が怖い見た目してるんじゃん。もういいよ、頑張って入ってみる。」
(やぁあろぉぉ~、やっぱりコイツ俺の扱いが雑になってきてやがる。)
駄目だコイツ早くなんとかしないと。そう心で叫んでいると―――何してんの早く行こ、と急かすリーネの声が耳に入ってきた。
―――言われなくてもいくよ。ふん。
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ダンジョン内部に入るとそこは迷宮だった。ひどく細い道が広がり入り組んでいる。ほの暗い空間を少しの壁掛け松明の火が照らしていて、それが逆に不気味さを増幅させる。コッコッコッっと鳴り響く足音は恐怖心を煽ってきているかのようだ。
「あわわわわ...モモンガさん。ここ怖すぎだよ。帰りたい。」
リーネが怖がっている。子供には不気味すぎるようだ。そんな怖がっているリーネの恐怖を少しでも和らげようと言葉をかけようとする。子供を安心させるのも大人の役目だ。そう思いリーネの肩に手を置き言葉をかけようとした。―――そして
「んぎゃあぁ!!」
「ひゃ!なんだ急に驚かすなよ!!」
―――逆に驚かされてしまった残念な大人の姿がそこにはあった。
「しょうがないじゃん!だってモモンガさん顔怖いんだもん!ビックリするよ!」
「ぬぅわにぃ~!人の身体的特徴をあげつらっちゃ駄目なんだぞ~!」
―――子供にムキになってしまった残念な大人の姿がそこにはあった。
身体的特徴ってなんなの!体の事だ!や、じゃあモモンガさん昨日、私の耳長いって言ったじゃん!や、あぁいえばこう言うな!などやいのやいの言い合う二人―――その時
―――カチャリ
「「!?」」
二人の声に導かれるように、ダンジョンの住人達が姿を表した。
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「はあぁっ!」
バコン、バコンと重低音が鳴り響く―――これはリーネの手に握られている”クラブ”が目の前の相手”スケルトン”を殴打している音だ
このダンジョンにはスケルトン系のモンスターがポップするためモモンガがあらかじめ用意し貸し与えていた物だ
―――一匹、二匹、三匹とリーネがスケルトンを打ち滅ぼしていく
「もう!モモンガさん沢山いすぎ!キリがないよ!」
「俺じゃねぇよ!確かにスケルトン系だけどさ、俺は!」
流石に最下級のスケルトンと一緒にはしないでもらいたい。そう思っていると音が鳴りやんだ―――リーネがスケルトンの軍団を殲滅したのだ
「もう、大変だった。骸骨さん達いすぎ。こんなにいたらモモンガさんも敵にしか見えないよ。」
「あぁ~いいのか~?そんな事言って~。やっちまうぞ~。」
シュッ、シュッっという風にモモンガがファイティングポーズをキメ、左ジャブを放っている。そうじゃれあっていたのもつかの間―――カチャリ
―――スケルトンの軍団が更に押し寄せてきた
「えぇ!まだいたの!?もう!」
そう文句に近い言葉を叫びながらリーネがスケルトンの軍団に飛び込もうとした
―――その時
「火玉<ファイヤーボール>!」
ドガァァァーン!火の玉がスケルトンの軍団に飛んでいき、凄まじい爆発が起きた。何が起きたの!?っとリーネが目を白黒させていると、目の前には一撃で殲滅されてしまったスケルトンの軍団が目に入ってきた
「めんどうだからな。これで先に進め...ちょっ!?リーネどうした。」
進めると言おうとしたモモンガだが固まり自分を凝視するリーネの姿が目に映る―――すると
―――ずるい
「えっ?」
「ずるいよ!モモンガさん!あんなのずるい!一撃じゃん!私はあんなに頑張ったのに!ずるいずるい!モモンガさん魔法禁止!!」
「お前!!それ言ったら俺の存在価値なくなるだろが!!」
魔法詠唱者に魔法禁止という、とちくるった規制をかけてくる目の前の存在に戦慄する。するとリーネが急に地面に膝をつき両手も地面につけうなだれている。恐らくだが信じられない光景に打ちひしがれているのであろう。
「だっ大丈夫かリーネ...」
「...まりだ...。」
何かを喋っているようだが良く聞こえない...モモンガが更に近づく
「リ...リーネさん?」
「あァァァんまりだぁァァァ~~!!」
―――リーネの悲痛な叫びがダンジョンに木霊した
♦
「...リーネ怒るなよ。次はお前に任せるからさ。」
「私はすごく嫌な思いをしました。モモンガさんはひどい人です。」
急に敬語で話してきたリーネを見ながら、こいつ怒ったら敬語になるんだ。などと本人に聞かれたら更に怒られそうな事を考えながらモモンガは足を進める。
そろそろ中間地点も過ぎた頃か、目的地までもう少しだ。そんな風に考えていてふと昔を思い出した。自分も初心者時代このダンジョンに一人で潜ったものだ。中々出れなくなって大変だった...っと懐かしい思い出に浸っていると。
(ん?なんで出れなくなったんだ?そんなに難しい迷宮じゃないはずだが?)
何かが引っかかる...何か”重要”なとても”大事”な事を忘れている気がする。心の引っかかりにモモンガが思考を巡らせていた時
―――カチ
何かが”押された”ような音が後ろから聞こえその後に”シュン”という転移音のような物が聞こえてくる。気になり後ろを振り向き...
―――そこには誰もいなかった
♦
しくじったな...凡ミスだ...
そう言葉を吐きモモンガは自分の愚かしさを噛みしめる。気づかなければならなかった...初心者時代とはいえ一度はこのダンジョンにおもむき攻略しているのだ。
自らの胸の内にじわじわと怒りがこみ上げてくる。二人ではしゃぎながら楽しく攻略していた所になんだか水を差された気がしたのだ。
転移トラップなどはダンジョンではお決まりだ。それも楽しみの一つであってそれに対して怒りを向けるのはお門違いだろう。ならなぜ...なぜこれほど自分は苛立っているいるのか?思い出されるのは、朝放った自分の言葉―――
―――守ってやるぞ
「はぁ...完全に嘘つきだな。またあいつにブーブー言われそうだ...。」
守ってやると言った、だから一緒に行こうと...これはゲームであり、そしてあれは単なる口約束だ。気にするほどではないし、後で笑い話になる程度の...
それでも、モモンガはリーネに守ってやるといった。”大人”が”子供”に”約束”をした...そして”破った”...モモンガにとってそれは耐え難い物なのだ。
「まぁでも、あいつも浮かれすぎだ。だいたい...いや...。」
―――浮かれてたのは俺か
楽しかったんだ...無邪気にはしゃぎ、悪口を叩きあい...そんな他愛ない時間が―――
「うぅん!やめやめ!とりあえずはあいつを探す事が第一だろ。早くしないと本当に”嘘つき”や”馬鹿”など言われかねないからな!」
リーネに会った際言われそうな言葉が頭の中に浮かび上がってくる。そして今まで抱いていたモモンガの暗い気持ちが瞬時に拡散していく。あれれ?なんだかムカついてきたぞ?
「ああぁんのやろ~そこまで言うか?...はっ!いかんいかん、こうしている場合じゃない!」
―――【不可視化<インヴィジリティ>】
モモンガが第二位階にある、自身の存在を不可視にする魔法を発動させる。もっと効果が強く高位の魔法も取得しているのだが、このダンジョンではこれで十分であろう。
モモンガはアンデッド―――最高位のオーバーロード―――であるが故に低位のアンデッド―――スケルトンなどの―――であるならば余程の事が無い限り襲われる事はない。しかしこのダンジョンにはスケルトンの他ゴブリンなどの亜人モンスターもポップする。一々相手をするのも面倒である為この魔法と【飛行<フライ>】―――自信を浮かび上がらせ飛行する魔法―――を駆使し素早くリーネを捜索しようという作戦だ。
「よし。準備完了だな。口の悪いワガママ姫の捜索にでも行こうか。」
♦
ふわふわと効果音が漂ってきそうな―――しかし速度は速い―――飛び方をしながらモモンガが空中を飛んでいる。このダンジョンの通路は横には狭いが天井は意外と高くモンスターの上空を飛び去っていくには十分だ。
(う~ん。いないな?どこまで跳ばされたんだあいつ?)
あれからそれなりの時間が経っているであろう―――しかしお目当ての人物は今だ見つかってはいない
もしかしたら入れ違いになっているのでは?っと頭の中で考えていると―――
―――コッ...コッ...コッ...
非常に小さな―――しかし着実とこちらに向かって響いてくる足音が聞こえてくる。
その後に続く―――モモンガさ~んどこ~?という声も...
(おっ!いたいた!結構跳ばされてたな~。探すの大変だったんだぞ。こんちくしょ~。)
元はといえば目を離し、尚且つ転移トラップという存在を綺麗さっぱり忘れていた自分のせいなのだが。そんな事は既に頭の片隅に追いやっている。―――大人とはずるい生き物いなのだ。
(とりあえずは降りるべきだな。いきなり現れたらビックリするもんな!うん!誰だってそうする。俺だってそうする。)
【飛行<フライ>】を解除しモモンガがリーネの歩いている前方に”ふわ”っという風に降りてくる。やっと見つけたと心の中で思い、喋りかけようとした―――その時
―――ゴツン...
前方を向いていたはずのリーネがモモンガの腹部あたりに顔を激突させた。目の前からはイタッと驚いたリーネの声が聞こえてくる。
どうしたこいつ?そうモモンガが考え、ある一つの魔法を解除し忘れていたのを思い出した。そう―――【不可視化<インヴィジリティ>】である。
あっ。忘れてた。そう思うや否やモモンガは魔法を解除し、それと同時にリーネの顔がこちらを見上げた。モモンガが安寧の息を吐き、言葉をかけようとする―――すると
「悪かったな、リ...」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
「んぎゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
―――恐ろしい悲鳴が迷宮に木霊した
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「私のいなかった日にそんな事があったんですか。」
ここはいつもの宿屋の一室。リーネの安住の地だ。そこに”昨日”のダンジョン攻略に参加できなかった人物―――たっち・みーが事の顛末を聞き苦い声を上げていた。
「えぇ。本当に...大変でしたよ。なっなぁ?リーネ?」
大変でしたね~、本当大変でしたね~、なんででしょうね~...そうぶつぶつ文句とも取れそうな、いや、呪詛のような物を吐き出すハーフエルフの少女の姿があった。
椅子にうなだれモモンガを睨みつける―――表情は変わらないが―――様はやさぐれたおっさんの様にも見えなくはない。
だから怒ったら敬語になるのやめろ。こえぇよ。
「まぁまぁ。機嫌を直しなさい。リーネ。今日はまた別のそう”楽しい”所に行こう。大丈夫だ、今度はキチンと守ってあげるよ。」
私がね!そうたっちがご機嫌取りをし、リーネが明るい声で。ホント!?行く行く!っとはしゃいでいる。
なんなのこの差!?もう!!
「いい返事だ。モモンガさんもほら。仲直りしてください。」
べっ別に喧嘩してないし~と否定を続けるモモンガを連れて三人は宿を出る。
―――”バタン”扉が閉まる...楽しい時間が始まる...
―――ポーション製作の為の材料を集めに行った...
―――リーネの愛盾を作る為のデータクリスタルを集めに行った...
―――初心者専用のボスを討伐しに行った...
―――そしてこの世界にきてあっという間に時間が経った...
♦
「今日もお疲れ様ですリーネ。モモンガさん。」
「えぇ。たっちさんこそお疲れ様です。」
「たっちさん、お疲れ様!」
あぁん?俺にはないのか?などとモモンガがリーネに憎まれ口を叩き、それに対してリーネが、モモンガさんだって私に言ってないじゃん、などと言いじゃれあっている。
そんな光景を目の当たりにしながら、たっちは思う。本当にこの二人は”仲の良い””親子”のようだと...。
「それではお先に失礼します。」
―――”シュン”とたっちの姿が消える。ログアウトしたのだ。
「俺も帰るとするかな。じゃあなリーネ。親御さんも心配する。あんまり遅くまでゲームするんじゃないぞ。」
「えっ?う、うん。」
―――それじゃあな。”また明日”...そう言い残しモモンガの姿も瞬時に消える。
―――そしてリーネだけが残った...。
「...そんな事言われても帰れないんだもん。」
そう言葉を吐くが返事は返ってこない―――誰もいないからだ。
リーネはそそくさとベッドに潜り込む。今日も疲れた。眠たいっと。ベッドに仰向けになり天井を見上げていて、ふと先程の言葉が脳裏をよぎる。
―――親御さんも心配する...
「もう今日で”七日目”この変な所にきて”七日目”だよ。お母さん心配してるだろうな。」
―――本当にそうなの?
悪い子な自分が囁く...この囁きは”久しぶり”だ...。
(!!ふん!心配してるもん!もう寝よう。...ふふふ...”明日”は何をするんだろう?)
―――また明日...キラキラと眩く光を放つその言葉を胸に少女は眠りにつく。楽しい”明日”を夢見て...
―――カチリ
歯車が噛み合うような音がした...
リーネの周囲の空間が歪み波を打つ...
今...”リーネ”は...
―――他世界に”接続”した―――
リネディシ「あァァァんまりだぁァァァ~!」
モモライト「駄目だコイツ...早くなんとかしないと。」
読んでくれている皆さん「いやいや、リーネ一日でなつきすぎじゃね?」
ちひろ「モモンガさんは優しいんです。父性が見えます...そう言う事だ。」
読んでくれている皆さん「なるほど...そういう事ですか。」
ちひろ「...えっ?(どういう事!?)」