あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 前回のあらすじ

 ステラ参戦!!
 侵入者達に唐突な絶望感が襲いくる。


もう一つの決戦兵器

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 地底湖を割り、姿を表したのは、究極の決戦兵器『ダイゲンガー』。

 

 侵入者達の間にざわめきが起き、不安が波紋を作り広がっていく。

 

 見上げる程の巨体、煌めくボディメタルの色は全てが七色鉱の色だ。

 

 誰がどう見てもヤバい―――いや、ヤバすぎる。

 

 『ヴァルキュリアの失墜』のアップデートによって、ファンタジー世界の中に新たに機械が追加された事により、ユグドラシルの自由度は更に大幅に増した。しかし、それを理解してもなお、誰がこれ程の兵器を作成できるなどと思うだろうか。一体どれ程の労力と、どれ程の資源と、どれ程のリアルマネーを投資すればこれ程の兵器が作れる。侵入者達にその思いが渦巻く。そしてそんな兵器を、無造作に戦場に放り出してくるアインズ・ウール・ゴウンに戦慄する。最早、一般ユーザーの常識などこのギルドには通用しないと改めて思い知らされた気分だ。

 

 そんな戦慄する侵入者達の目の前で、ダイゲンガーの右腕が高々と上げられて行った。

 

 「あっ!ゲンガァーパァーンチ!」

 

 響く轟音―――侵入者達が吹き飛んで行く。

 

 「あっ!ゲンガァーキィーック!」

 

 耳をつんざくかのような風切り音―――宙に舞った侵入者達が弾丸の様に吹き飛んで行く。

 

 「ゲッゲッゲ~♪」

 

 癪に障る笑い声が侵入者達の耳に届く。ダイゲンガーを操作しているゲンガーの笑い声だ。

 

 たったの二撃―――たったの二撃で、数十にも及ぶプレイヤーの集団が一蹴されていく。

 

 大きく、重厚で、そして―――速い。

 

 その巨体からは考えられない様な速度で攻撃が繰り出されていく。

 

 「うっひ…やっば…いやいや…え?マジでやっば…。」

 

 その言葉を吐いたのはぺロロンチーノだ。

 

 ドン引き―――声を聞くだけで引いているのが分かる程に、その声音は引きつっていた。

 

 ダイゲンガーを作成したのは自分達アインズ・ウール・ゴウンだ―――が、そのダイゲンガーの戦闘を自分達は目にした事はない。唯一、モモンガから口頭で「いや、あれやばかったよ」と言われたのみだ。

 

 あの時のモモンガの声も随分と引きつっていたが、なるほど、これは引く、いやドン引きだ。いくらなんでもこれは反則だろうと思いながらぺロロンチーノが周囲を見渡せば、他のギルメン達もぺロロンチーノの思いとどうやら同じ様だ、皆が一様にドン引いているのが分かる。

 

 「しゃあぁぁぁ!!おらぁぁぁ!!」

 

 ゲンガーが吠え、ダイゲンガーがサイドチェストを取る。

 

 ―――蹂躙が始まっていく。

 

 「とう!」

 

 ダイゲンガーが勢いよく飛び上り、両手を頭上に掲げ、指を組む。どこかの野菜人の王子が良く取るポーズだ。そこから続く行動は勿論決まっている。叩きつける―――ただそれだけだ。野菜人の王子の得意技『ベジタブル・クラッシュ』が侵入者達に炸裂する。

 

 またもや吹き飛ぶ侵入者達。

 

 湖に吹き飛び、大きな水しぶきが上げる者達。陸地に吹き飛び建造物に突き刺さる者達。神殿まで吹き飛ぶ者達など様々だ。

 

 そして追撃が始まる―――ダイゲンガーが襲い掛かる。

 

 ―――『フライング・ボディプレス』。

 

 建造物諸、共侵入者達はダイゲンガーに押しつぶされていく。押しつぶされた建造物が勢いよく破壊され瓦礫が宙を舞う。

 

 ―――『ドロップ・キック』。

 

 勢いよく立ち上がったダイゲンガーが次に標的にしたのは、神殿まで吹き飛んで行った者達だ。よろめく侵入者達にダイゲンガーのドロップキックが炸裂し、同時に、神秘さを秘めた地底湖の神殿の半分が、耳を塞ぎたくなる様な鈍い音を立て崩壊した。

 

 ―――『駄々っ子ダイゲンガーくん』。

 

 ドロップキックから地面に寝そべっていたダイゲンガーが、両手両足をジタバタし、暴れ出す。「いやいやいやいや!!」と言う奴だ。地響きを建てながら癇癪を起すダイゲンガーの周囲の建造物が轟音を立て崩れ落ち、飛び散った瓦礫と共に侵入者達も吹き飛んで行く。

 

 無双―――正に無双。

 

 ―――ゲンガーは叫ぶ。

 

 「ゲッゲッゲッゲッゲェェェ!!」

 

 ―――侵入者達は叫ぶ。

 

 「ぎゃぁぁぁーーー!助けてぇぇぇ!!」

 

 ―――ぺロロンチーノは叫ぶ。

 

 「やめてくれぇぇぇーーー!!四階層が壊れるぅぅぅーーー!!」

 

 自分達が手塩にかけて作った四階層が無慈悲に崩壊していく。どれだけの時間、どれだけの資源、どれだけのリアルマネーを投資しこの階層を作ったかコイツは分かっているのか。

 

 このままでは、第四階層崩壊待った無しだ。というか、既に半壊しつつある。防衛戦で崩壊するのならともかく、身内に崩壊させられたなどとあってはとてもではないが笑えない。

 

 「ゲンさんやめてくれぇぇぇ!!」ぺロロンチーノは必死に訴え続ける。

 

 そんな必死なぺロロンチーノの姿が目に入ったのか、ゲンガーはぺロロンチーノに振り向き―――グッとサムズアップした。

 

 ―――殺すぞ。

 

 怒りは一周越えると殺意に変わると言うが、どうやらその通りらしい。急に冷静になったぺロロンチーノは拡声器を取り出した。

 

 「ゲンさんぶっ壊れるからやめろっつってんだよ!!」

 

 「おぉん?つってもよ、この大きさで壊さないって難しいぞ?」

 

 「もうちょい慎重にやってくれりゃあいいんだよ!いくらなんでも暴れ過ぎだ!」

 

 その言葉に、腕を組み何かを考える素振りをゲンガーは見せる。

 

 そんなゲンガーに一つの閃きが起きた。

 

 「ん~~~…おっ!じゃあ一発で終わらせるか!!」

 

 「はぁ!?一発…って…。」

 

 ―――ガシャン。

 

 ダイゲンガーの両肩が開き、内蔵されていた球体が露わになる。

 

 同じく腹部―――脇腹の部分も両サイドが開き、同じく球体が露わになっていく。

 

 四つの球体が眩い光を放ったかと思えば、バチバチと電流が迸り、胸に輝く『熱素石(カロリックストーン)』へと集まっていく。

 

 

 

 

 ワールド・チャンピオンを決める公式大会の後に、アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーの一人『博士』こと、『ガーネット』はゲンガーに向けこう言った。

 

 「ダイゲンガーに新しい武装を追加しておくよ」―――と。

 

 四種のゴッズ・アーティファクト―――『魔法球』を内蔵する事によって、熱素石(カロリックストーン)の熱エネルギーを瞬間的に倍化する事に成功する。

 

 この倍化した熱エネルギーをどうするかと言うと、それは『放出』する。

 

 これにより、二十四時間に一度しか使用できない、ダイゲンガーの究極の武装『ゲンガーブラスター』は更なるパワーアップを遂げた。

 

 その名も『スーパー・ゲンガーブラスター』。

 

 その威力は、『世界級(ワールド)』の域を越え『二十』に比肩する。

 

 

 

 

 「あっ!スゥゥゥパァァァ!!あっ!グゥエンガァァァ!!うわん!ブラス―――」

 

 「やめんかぁぁぁ!!四階層が吹き飛ぶぞぉぉぉ!!」

 

 ぺロロンチーノのその叫びにより、バチバチと鳴っていた熱エネルギーの本流が消え去っていく。

 

 「おぉん?なんでだ?これなら一発で終わるぞ?」

 

 「あぁそうだな!!一発で終わるな!!四階層がなッ!!つーか、貫通して三階層まで吹き飛んだらどうしてくれんだ!!」

 

 余りのぺロロンチーノの剣幕に、流石のゲンガーも『スーパー・ゲンガーブラスター』の発動を取りやめていく。

 

 それと同時にゲンガーは考えるのだ、自分は何か間違ったことをしたのかと。

 

 ゲンガーの考えでは、『スーパー・ゲンガーブラスター』によって、四階層が吹き飛ぶ事はない。なぜなら、スーパー・ゲンガーブラスターは熱素石(カロリックストーン)の熱エネルギーを放出するからだ。つまりは、世界級(ワールド)アイテムでの広範囲攻撃という事になる。

 

 この『ナザリック地下大墳墓』は、『諸王の玉座』によって『世界の守り』を得ている。つまりは、世界級(ワールド)アイテムの効果は受け付ける事は無いのだ―――ない筈なのだが。

 

 ぺロロンチーノの憤慨っぷりを見れば、恐らくは自分の考えが間違っていたのだろうとゲンガーは思う。

 

 まぁ、実際の所はと言うと、ゲンガーの考えの方が正しい。スーパー・ゲンガーブラスターを放っても、四階層はその効果を弾き飛ばし、プレイヤー達にだけ効果を発揮していくだろう。

 

 しかし、その事にぺロロンチーノは―――いや、ギルメン達は気づけない、なぜなら、皆テンパってしまっているからだ。ダイゲンガーの余りにも凄まじい傍若無人っぷりは、ギルメン達の冷静さを欠くには十分なモノだった。

 

 結局の所、防衛戦でピリついているギルメン達よりも、ゲンガーの方が冷静だったと言う事だ。

 

 「おぉん…しゃあねぇな、新武装のお披露目はできそうにないか…おっ!じゃあこれだな!!」

 

 ダイゲンガーの右手にあるアイテムが出現する。そう、言わずもがなの『真・斬艦刀』だ。

 

 ダイゲンガーは真・斬艦刀を力強く振るえば、風圧で辺りのプレイヤーと傭兵モンスター達が揺らぐ。

 

 「やっぱこれしかねぇな!!ん?なんかちょっと形変わったか?」

 

 ルンルン気分で斬艦刀を振るえば、細かな違いに気づく。今までは武骨な鉄の塊の様だったのだが、何やら少しスタイリッシュになっている。

 

 大きさや太さは変わってはいないが、刀身には空洞部分があり、その空洞部分は文字の様に見えた。()()()()が刀身に『()()()』彫られている。

 

 ゲンガーのテンションが少しだけ落ちる。自分としては、前のガッチガッチの鉄の塊の方が好きだったのだが、どうしてこうなった。

 

 「おぉん…何だよこりゃぁ、」

 

 少々テンションの下がったゲンガーの視界の端に、この機を逃さないと言うばかりに、こそこそとうろつく侵入者のプレイヤーが数人見えてくる。

 

 「ぐへぇ~…え~い。」

 

 やる気のない掛け声と共に、斬艦刀を叩きつければ、まるで踏み付けられた蟻んこの様に侵入者達がぷっちんと潰されていく―――ついでに建造物も。

 

 「あっ!?」

 

 「おぉい!!だから慎重にやれって!!」

 

 ぺロロンチーノの叫び声と共に、どうすりゃいいんだと言わんが如く、ゲンガーがぺちんと額を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「滅茶苦茶だな…ダイゲンガーは…。」

 

 建御雷がそう呟けば、近くにいた茶釜も同じくと言った風に首を縦に振っていく。

 

 ダイゲンガーの構想段階では、自分も参加はしていたのだが、ここまでの兵器になるとは予想だにしていなかった。いざ完成品を目の前にしてしまえば、なるほど、これは流石にやりすぎだと思ってしまう。

 

 目の前では、斬艦刀を振り回しながら暴れ回るダイゲンガーと、四階層が滅茶苦茶にされている事に怒り狂っているぺロロンチーノの姿が見えてきて、茶釜はクスリと少し笑ってしまう。

 

 そうすれば、建御雷達の前に現れるのは人影―――二人のプレイヤーが姿を表した。

 

 「おうおう、鎧武者。」

 

 「あ?なんだお前?」

 

 「アンティリーネはここにはおらんのか?」

 

 喋り掛けて来たのは軽戦士風の人物―――であるが、何やら手に持つ獲物は随分と物騒な物を持っている。ゴツイ大剣を軽々と持ち歩くその人物は、建御雷にアンティリーネの居場所を聞いてくる。

 

 (お礼参りか?)

 

 アンティリーネも随分と恨みを買っている身だ、こういう輩は吐いて捨てる程いる。

 

 建御雷は一つ鼻で笑った後に、その人物に向け言葉を放つ。

 

 「ここにはいねぇよ、残念だったな。」

 

 「なしか、おらんのか…じゃあここには用ないな、見逃しちゃるきどっか行きぃ、鎧武者。」

 

 偉そうな物言いに、建御雷の眉間がピクリと動く――実際はゲームなので動いていないが――自分は眼中にないという様な物言いに、少々苛立ちを感じてしまう。

 

 「おいおい、俺じゃ不足か?あぁ?」

 

 「あん?キサンなんぞ、どうだっちゃええわい。」

 

 「あ!建ちゃん、こいつあれだ、公式大会の予選でリーネにボコられた奴だ!」

 

 茶釜の言葉が耳に入った建御雷は、記憶を辿っていく。そうすれば思い出す、あぁ、そんな奴居たなと。

 

 建御雷が思い出し、納得していれば、目の前の人物が「はん」と鼻を鳴らす。そして、隣にいるもう一人のプレイヤーに大きな声で叫んだ。

 

 「ボタァァァン…ちひろの強さはあの頃の何倍だぁぁぁ!?」

 

 ボタンと呼ばれたプレイヤーは、ニヤリと笑った様な空気を醸し出し、軽い口調でその問いに答えた。

 

 「『十倍』です―――ちひろさん。」

 

 「そう!!十倍だぁぁぁ!!うあっひゃぁぁぁ!!!」

 

 十倍―――ちひろと呼ばれた人物は、大声で自分の力は、何やらかつての十倍あるとかないとかほざきまくっている。

 

 ―――茶番だ。

 

 建御雷から急激に目の前の人物に対する興味が失せていく。

 

 「プレイヤーの力が十倍になる訳ねぇだろ…もういいよ、お前死んでよし。」

 

 そう言い放った瞬間―――正に瞬間だった。建御雷の獲物である『建御雷八式』がちひろを斬りつけていく。

 

 それは、目にも止まらぬ早業。達人の動作は、目の前で相対し、来ると分かっていても避ける事は叶わないと言われるが、正にその言葉を体現するかの様な『線』がそこにはあった。

 

 『武人建御雷』彼もまた、然る者。アインズ・ウール・ゴウンが誇る強者の一人であり、ヘルヘイム最強の一角なのだから。

 

 一方的に斬りつけられたちひろは、その場から動かない。建御雷八式がぐさりと肩口に叩きつけられている。

 

 そう、叩きつけられている―――その事実に、建御雷は戦慄する。

 

 「―――はぁ?」

 

 吹き飛ぶでも膝を付くでもない、目の前の人物は斬りつけられながらも、まるでそよ風でも吹いたかの様に立っている。

 

 ―――ニヤリ。

 

 目の前の人物が、その様に笑った様に感じられた。

 

 それと同時に、目の前の人物の持つ大剣が振るわれていく。

 

 ゾクリとした感覚が建御雷を襲う。

 

 ヤバい―――何かは分からないが、何かヤバい。

 

 百戦錬磨の建御雷の危険センサーがギュルンギュルンと警報を鳴らした。

 

 ―――<位置交換(トランス・ポジション)

 

 茶釜のスキルが発動すると同時に、茶釜と建御雷の位置が入れ替わる。危険センサーが鳴ったのは建御雷だけではなかったという事だ。ぶくぶく茶釜、彼女もまた言い知れぬ感覚に襲われた。

 

 「ぎゃん!!?」

 

 大剣が茶釜に接触すれば、茶釜が吹き飛んで行く。続いてHPゲージに目をやれば、そこには大幅に削られたゲージが目に入った。

 

 ―――ありえない。

 

 ぶくぶく茶釜―――『不沈』とあだ名される程の、アインズ・ウール・ゴウンきってのタンク職である彼女の耐久力は生半可なモノではない。

 

 あのような、軽く振り切られた大剣の一撃でこれ程の大ダメージを負う程、彼女は柔らかくはない。

 

 (嘘でしょ!?弐式さんの<一突き>よりも威力が上…これ、次元断絶(ワールド・ブレイク)並みよ!?)

 

 驚愕する茶釜の空気が伝わったのか、ちひろは分かりやすくほくそ笑む。

 

 この人物―――『だいだろすちひろ』はこう言った。自分の力は、かつての十倍だと。

 

 現実的に考えて、そんな事はありえる筈はない。これはゲームであり、その様な事が起こってしまえば、それはゲームバランスの崩壊に繋がるからだ。

 

 チートを使えば、それを現実にする事は可能だ―――が、そうすれば運営にBANされるだけだ。

 

 ならば―――合法なチートを使えばどうだろうか?

 

 そんなモノが存在するのか?否―――存在する。

 

 このユグドラシルには存在する。

 

 それは<世界級(ワールド)アイテム>。

 

 公式チートと呼ばれるアイテムだ。

 

 だいだろすちひろの身に着けている<世界級(ワールド)アイテム>の効果は、『全てのダメージを十分の一にする』という物だ。

 

 つまりは、単純にHPが十倍になったと置き換えてもいい。故に十倍強くなったと表現しているのだろう。

 

 それは分かる、しかし、あの異常な攻撃力はどう説明すればいい―――そう思うだろう。

 

 その答えは―――特化させたビルドにある。

 

 HPが十倍になる、つまりは『防御力』に重きを置かなくて済むという事になるからだ、そして、『回避力』―――『速度』も必要ない。

 

 後は只々尖らせるだけだ『攻撃力』に。

 

 だいだろすちひろの行っているのは、『弐式炎雷』のビルドを、速度も捨て、全て攻撃力のみにガン振りしているという事に他ならない。

 

 弐式以下の紙装甲に、魔法詠唱者以下の速度に調整し、その全てを攻撃力のみに振り切っている。

 

 このビルドで何も問題はない、なぜならば、ダメージは全て『十分の一』なのだから。

 

 ジリジリと二人―――建御雷と茶釜が後退していく。

 

 この人物の異常性に気づいたからだ。

 

 からくりは何だ?そう考えた時、答えは思いのほか早く出た―――世界級(ワールド)だ。

 

 それ以外にありえない。そう一早く気づける程に、自分達は世界級(ワールド)の力を良く知っているから。

 

 (特殊な効果を相手に与える系じゃなく、自分のスペックを向上させる系の世界級(ワールド)ってわけね!)

 

 (絡め手系の世界級(ワールド)は厄介だが、こっちはこっちで、純粋に強くなる分手に負えねぇ!)

 

 世界級(ワールド)アイテムと言えども、その効果は様々なモノがある。この様に、装備者のスペックを向上させる類の世界級(ワールド)は、建御雷の言う様に常時強くなっている分、対策を打てなかった場合手に負えなくなる。

 

 相手側に強力な効果を発揮したり、特殊な効果を発揮する類の世界級(ワールド)の様に、一撃で形勢逆転できるような力は持ち合わせてはいないが、継戦能力としてはずば抜けたモノがある。使用回数も、制限時間もないからだ。

 

 唯一の欠点は、ある条件を満たしてしまえば、問題なく対処されてしまうという事だが、残念ながら、建御雷も茶釜も、その条件を満たす事は出来ない。

 

 建御雷と茶釜が構え、相手の次の行動に注視する。まかり間違っても、この人物を次の階層に進ませる訳には行かない。

 

 「あっひゃぁぁぁ!!十倍!!十倍!!なんと甘美な言葉じゃ!!今のちひろはぁぁぁ…ボタァァァン!!」

 

 「かつての十倍です、ちひろさん。」

 

 「あっひゃぁぁぁ!!十倍!!十倍!!ボタァァァン!!」

 

 「十倍です、ちひろさん。」

 

 「あっひゃぁぁぁ!!十倍!!じゅうば―――」

 

 だいだろすちひろは叫ぶ。

 

 自分の力はかつての十倍だと―――素晴らしいと。

 

 だいだろすちひろは酔いしれる。

 

 自らの圧倒的な力に酔いしれる。

 

 そんな時―――頭上に大きな影が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ぷち。

 

 

 

 

 

 

 「お?なんか踏んだぞ?」

 

 大きな影の正体、それはダイゲンガー―――の右足だ。

 

 余り派手な事をして建造物を壊せば、またぺロロンチーノに怒鳴られてしまう為に、ダイゲンガーは慎重にうろついていたのだが、どうやら足元にはだいだろすちひろとボタンが高笑いしていたみたいだ。

 

 <だいだろすちひろさん。ボタンさんをkillしました。>

 

 「おぉん?」

 

 ダイゲンガーの所有者、ゲンガーの視界モニターの頭上にアナウンスの文字が浮かび上がる。これは、相手をkillした時などに浮かび上がる文字だ。

 

 ダイゲンガーの踏み付け。聞けば大した事ではない様に思えるが、そのダメージは桁が違う。カンストプレイヤーを軽々と絶命させる程には強力である。

 

 しかし、だいだろすちひろは世界級(ワールド)の効果により、『ダメージを十分の一にする』と言う能力を付与していた筈、それなのになぜ、かの人物は瞬時に倒されてしまったのだろうか。

 

 その答えは簡単だ、それはダイゲンガーが先程言ったある条件を満たしているからに他ならない。

 

 ダイゲンガーは<世界の守り>を有している。

 

 世界級(ワールド)アイテムの効果は世界級(ワールド)アイテムで打ち消す事ができる。

 

 装備者のスペックを向上させる類の世界級(ワールド)は、<世界の守り>を有している者と相対してしまうと途端に脆くなる。向上したスペックが打ち消されるからだ。

 

 世界級(ワールド)アイテムの効果は世界級(ワールド)アイテムで打ち消す事ができる。だいだろすちひろには、『ゲンガーブラスター』どころか『スーパー・ゲンガーブラスター』も効きはしない、<世界の守り>に弾かれてしまうからだ。しかし、ダイゲンガーの純粋な攻撃は、だいだろすちひろの世界級(ワールド)の効果を弾き、当たり前にダメージを叩きつけてくる。なぜならば、ダイゲンガーの物理攻撃は<熱素石(カロリックストーン)>の純粋な能力ではないからだ。

 

 これが無敵に見えるスペック向上系の世界級(ワールド)の弱点である。例えば、ダイゲンガーでなくとも、ここにモモンガがいればだいだろすちひろは簡単に打ち取られてしまうだろう、モモンガは<モモンガ玉>を常時装備し、常に<世界の守り>の力を得ているからだ。

 

 何度も言うが、世界級(ワールド)アイテムの効果は世界級(ワールド)アイテムで打ち消す事ができる。チートにはチートを、そう言う事だ。

 

 しかし、だからと言って、世界級(ワールド)の力が脅威でないという意味にはならない。世界級(ワールド)アイテムはユグドラシルに二百しかないと言われる究極のアイテムであり、世界級(ワールド)保有者と世界級(ワールド)保有者が相対する事自体が非常に稀な事であるからだ。

 

 だいだろすちひろは強かった。普通なら無双できる程に。かの人物の敗因はたった一つである。それは非常にシンプルなモノだ。相手が『アインズ・ウール・ゴウン』だった。ユグドラシルに置いて、世界級(ワールド)アイテムの最大保有数を誇るギルドに喧嘩を売ってしまった―――それが敗因だ。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「いやぁ~、凄まじいですねダイゲンガーは…ニグレド。」

 

 ニグレドが探知魔法で四階層の侵入者達を洗い出せば、クリスタル・モニターに赤い点として映し出されている。

 

 ダイゲンガーが現れてからそれ程時間は経ってはいない。しかしながら、侵入者達の数の減り方は著しい、驚異の一言だ。

 

 本来であれば、壊滅させる訳では無く、時間稼ぎするつもりであったのだが、このままいけば壊滅も視野に入れれるだろうか。タブラはそう考える。

 

 その様に考えているタブラの隣では、何やら博士ことガーネットがいてもたってもいられないと言うような雰囲気でそわそわそわそわしているのに気づく。

 

 「…博士、駄目ですよ。」

 

 「もう…。」

 

 「え?なに?」

 

 「もう…もう…。」

 

 「もう?牛ですか?」

 

 「もう…我慢できなぁぁぁい!!」

 

 急に発狂したかのように叫び出すガーネットに、タブラがびくりとしたのもつかの間、ガーネットは転移アイテムを起動させ、『あるモノ』を呼び出した。

 

 そのあるモノを目にしたタブラが目を見開く。

 

 「博士!それは駄目だって!!」

 

 「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!!ね!タブラくんも見たいでしょ?()()()()()()姿()を!!」

 

 発狂したかのように叫ぶガーネットが呼び出したモノ、それは『幼い少女』―――いや、『少女の()()()』だった。

 

 軽戦士を思わせるかのような装いの胸元には、赤い光石が、その存在を主張するかのように光り輝いていた。

 

 「博士!不味いってそれは!?()()()()()()()()()()()()んでしょ!?」

 

 「うへへへ…いけるいける…大丈夫大丈夫…起動!!」

 

 「あぁ!!?」

 

 どこからか取り出された起動ボタンをガーネットが押した時、その少女の様な物の胸で光る光石が更に眩い光を上げた時、少女の様な物は、ゆっくりと瞳を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 「…起動します。」

 

 

 

 

 

 

 それは、もう一つの決戦兵器。

 

 ダイゲンガーと同じく『熱素石(カロリックストーン)』を内蔵し、その熱エネルギーを動力源とし稼働する殺戮兵器である。

 

 あどけない少女の姿をした殺戮兵器―――『機械神』が今、ゆっくりとその瞼を開けてていく。

 

 

 

 

 

 

 それは―――『機械神計画(プロジェクト)・ダイゲンガー』の後継機。

 

 

 

 

 

 

    『自立稼働型超高機動人型決戦兵器』 

          『ルべド』

 

 

 

 

 

 

 

 





 ~おまけ~ ~ルベドの声~

 建やん「お?結局ルベド出すんか…つーかボイス付きかよ、凝ってんなおい。」
 茶釜「おっ!建ちゃん、良い所に気づいたね!あのボイスさ、私の事務所の子なのよ!」
 建やん「そうなんか…ん?もしかしてタダで声提供してくれたのか?」
 茶釜「へっへっ!私に任せなさいよ!昔から仲良くしてた同期だからね、頼んだら即OKもらっちゃった♪」
 建やん「芸能畑のネットワークはすげぇなおい。」
 茶釜「あの子もユグドラシルやってるからね!なんかすんごい強い隠しクラス取得してたよ~。」
 建やん「お?マジか?どんなクラスなんだ?」
 茶釜「それは教えられないよ~、隠しクラスは隠してなんぼでしょ?」
 建やん「ん~、それもそうだな。」

 


 どうもちひろです(ΦωΦ)
 
 空を見よ~♪発進、五秒前~♪
 
 ちひろ「ルベド発進!
     いけ~ルベド!ロケットパンチだ!!」

 宇宙~♪スペース♪ナンバ~ワン♪

 ルベドはオバロSSを書くうえで設定が結構難しいと思います。
 全てが謎に包まれてますからね。 
 このSSでは機械―――ロボットです。
 スピネル=鉱石、宝石
 鉱石、宝石=熱素石(カロリックストーン)
 熱素石(カロリックストーン)を内蔵した究極兵器
 とかいう考察をずいぶん昔ですがみた記憶があります。
 この考察は結構好きです。
 このSSでもこんな感じです。
 普通のNPCではありません。

 読んでくれてありがとうございます!
 次話も呼んでくださいね!!
 それでは!シュバ!!



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