あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 前回のあらすじ

 ツーヤさん、45話ぶりに再登場をはたす!!


あれラスボスちゃうん?

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 第三階層―――『墳墓』。

 

 一人の少女が紡いだ絆が集めた強者(つわもの)達が今も尚、激戦を繰り広げる。

 

 「―――破ッ!!」

 

 ヘロヘロの叫びに呼応するかのように、強者(つわもの)達はその力を振るい続ける。

 

 アロービーチとねこにゃんが猛撃をいなし続ける。

 

 龍はヘロヘロとまるで舞踊を舞うかの様に猛り狂い。

 

 山荒が広範囲を爆撃していく。

 

 ウルベルトと朱雀は後方からバフ支援を行い。

 

 フラットが隙を付き暗殺術で各個撃破を続けた。

 

 ここに集うは紛れもなく猛者達―――然る者達だ。

 

 そんな然る者達の中に混じる―――異次元。

 

 「破ァッ!!」

 

 大楯に顔面を殴打されたプレイヤーが吹き飛ぶ。全方位から迫る猛撃を、最短最速で躱していく一人の女性の姿があった。

 

 ステラが無数に迫る猛撃を全て紙一重で躱していく。まるで当たらないのが当然とでも言わんがばかりの光景にすら見えた。

 

 「―――熱くなってきたわね。」

 

 数十のプレイヤーからの猛攻を全て紙一重で躱したステラが一人のプレイヤーの足を軽く払い、揺らいだそのプレイヤーを盾で吹き飛ばした。吹き飛ばされたプレイヤーは、誘導し、一定の場所に固められたプレイヤーの集団に突っ込んで行く。「ぐへぇ」と言う情けない声が聞こえてくる。その声は一つや二つではない、プレイヤー集団から一斉に聞こえてきた。

 

 全てを躱しながら、一定の場所に大量のプレイヤー達を誘導し、最短の手数で一網打尽にしていく。

 

 ―――次元が違う。

 

 ヘロヘロ、アロービーチも含め、集う強者(つわもの)達全てに戦慄が走っていく。

 

 そして強者(つわもの)達の耳に届く言葉と共に、ステラの両の手に握られていた大楯が姿を消していった。

 

 ―――くいくい。

 

 両の指をくっつけ、二度押し付ける。軽いストレッチの様な物だ。盾を消し去り、両手をフリーにしていったステラを見た者達が首を傾げる。なぜにステラは武器を手放した。余裕のつもりか?そう皆が思っていれば、約一名が体を震わせている―――ヘロヘロだ。

 

 「あ―――愛理沙(ありさ)…そこまでしなくてもいいんじゃないかなぁ~?」

 

 「熱くなってきましたよ!先輩!だって先輩が見てるんですから!!」

 

 「う~ん…やめようか、愛理沙(ありさ)…素手は駄目だよ素手は…。」

 

 ―――スゥ。

 

 ステラが淀みなく構えに入る。先程までとは全く違う構えだ。ステラの構えは武闘家の構え―――徒手格闘に切り替えていく。

 

 「あぁ…あぁぁぁ…やめなさい愛理沙(ありさ)…構えちゃ駄目だよ…せめて突っ立っててあげなさい…相手は素人さんなんだよ…やめなさい愛理沙(ありさ)…やめなさ―――」

 

 「先輩!!」

 

 「―――い…え?え?」

 

 「見ていて下さい!先輩!私、あの頃より強くなったんです!」

 

 「え~…ダメだよぉ~…あれ以上強くなっちゃダメだよぉ~…。」

 

 「何を言うんですか!武の頂は高く遠い―――道半ばで止まる訳にはいきません!それは武人にあらず!」

 

 「んもぉ~う…だからもぉ~う…そうやってナチュラルに僕の心を抉るんだから~…悪気のない嫌味ほど心を抉るモノはないんだよ?」

 

 「見ていて下さい先輩!妹弟子の成長を―――押忍!」

 

 「あ―――んもぉう…そういうとこだぞ…悪い癖だぞ、人の話を聞かないのは。」

 

 ―――スッ。

 

 構えたステラが一瞬でプレイヤーまで間合いを詰める。驚くべきはその速度よりも、音が発生しなかった事か。

 

 無音で瞬時に間合いを詰めていく―――究極の『歩』がそこにはあった。

 

 そして、動いた際のモーションもゼロに等しい。対面している相手からは、まるでステラが構えのまま、急に目の前に現れた様な錯覚に陥っている事だろう。

 

 ―――ゴッ。

 

 掌底が相手プレイヤーの顔面を穿った。穿たれたプレイヤーは声にならない叫びを上げながら、顔のある場所を手で押さえ苦しむ。

 

 そのある場所とは―――『目』だ。苦しみながら目を押さえ、前方によろよろとふらついていく。

 

 掌底は拳を握らず開いた状態―――開手を用いて打を打ち込む技だ。ステラはこの掌底の際、人差し指と中指を少し曲げ、相手の両目を穿っていった。いわゆる目つきと言う奴だ。

 

 目つきは協力無比な技である―――が、その実、途方もない技術力を要求される。目は人体の急所の一つだ、最も大切な部分であるからこそ、脳は最大限の警戒信号を送り込み、反射で回避しようとする。そんな部位をピンポイントで狙い撃つのは得策ではない。失敗すれば、自らの指の骨折のリスクを伴う以上、余り実戦的な技とは言えないだろう。

 

 故に掌底との合わせ。目つきは『武』で言う所の『点』、それも指を用いた小さな点撃となる。対して掌底は『面』を穿つ広い点撃である。つまり、非常に命中精度の高い打撃となる。掌底での面の捉えに続き、目つきの点を追加していく。点と面の合わせである。

 

 急に目の前に敵が現れ、訳も分からぬまま顔面に衝撃を受けたかと思えば、視界モニターに異常をきたしたのだ、これでパニックになるなと言う方が無理と言う物。ゲームである為痛みなどはないが、プレイヤーの中身は人間であり、そのほとんどは一般人―――素人だ。両の目を突き刺されると言う行為は、恐怖心を抱くには十分であろう。

 

 ―――ゴジュリ。 

 

 目つきを受け、パニックに陥るプレイヤーを新たな衝撃が襲う。後頭部に衝撃を受け、勢いのまま顔面と地面がキスをした。地面に突っ伏したプレイヤーがぴくぴくと痙攣を起こしているのが見える。

 

 後頭部を―――延髄を打たれた。

 

 ステラの回し蹴りが延髄を穿つ。パニックに陥り、ふらついていた所に、蹴りを止められず、振り抜かれていったのだ、地面とキスをするのは必然であろう。

 

 三階層に静寂が訪れた。余りに容赦のない攻撃に、侵入者達はおろか味方すらも言葉を失っている。

 

 ドン引き―――皆が一様にドン引き。

 

 引いていないのはヘロヘロだけだ。

 

 「…うんうん…そうそう…それが愛理沙(ありさ)だよね。」

 

 ヘロヘロの脳裏に浮かぶ、懐かしい日々の数々。愛理沙(ありさ)はいつもああだった。組み手をすれば、気づかぬ間に間合いに入り、打撃をお見舞いしてくる。掌底はピタリと自分の顔面の前で寸止めされ、二本の指が眼球スレスレで止められているのだ。

 

 恐怖で固まっていれば、回し蹴りが延髄を目掛けて繰り出され、それもピタリと寸止めされていく。そのまま笑顔で「これが決まったら一生寝たきりですね!」とか可愛い声でのたまいだす始末だ。苦笑いを浮かべていれば、膝蹴りが下腹部でピタリと止まる。その場所がどこかなど言うまでもないだろう―――『睾丸』だ。寸止めで金的を繰り出したかと思えば「男の人にはこれですよね!」とかなんとかほざくのだ。ヘロヘロの言っていた『圧倒的な暴力感』とはこのことを指す。

 

 かつて神童とまで呼ばれたヘロヘロを相手にしても、この様に一方的な戦いとなっていた。本人は特に酷い事をしていると思っていないのもまた質が悪い。無邪気な天才はいつしか組み手を組む者もあらわれなくなり、道場で孤立していった。

 

 「うんうん…そりゃあ嫌われるよね~…だってみんな子供だもの、怖いよそりゃあ…こと格闘にかんしては倫理観が重力振り切っちゃってるからな愛理沙(ありさ)は。まぁ、『三島』の生まれだし、しょうがないと言えばしょうがないんだけど。」

 

 三島は日本武術会の頂点に立つ家系だ。

 

 生まれた瞬間から最強を義務付けられ、実戦での動きも叩きこまれる。そんな愛理沙(ありさ)が、自分のやっている事が異常ではなく、普通と思ってしまうのも致し方ないとは思えた。

 

 ヘロヘロの目の前では、数十人のプレイヤーが愛理沙(ありさ)を―――ステラを囲み、攻撃をしているのが目に入ってくる。

 

 そんな状況を見ても、ヘロヘロに動揺はない。ステラが負けるなどあり得ないからだ。ただ一つ、疑問があるとすれば。

 

 (相変わらず凄まじい―――けど、昔から極端に変わったかと思えばそうは思わないんだよな?)

 

 ステラは言った、昔より強くなったと。あそこまで自分に豪語したわりには、昔の域をでていない様に見える。これがゲームではなく、現実ならば、もっと違う感想を持つのだろうかと思う。

 

 群がるプレイヤー達の猛撃を、ステラは全て掻い潜っていく。その光景は凄まじいの一言だ、誰一人として、攻撃をかすらせる事すらできはしない。スキルも―――魔法であっても。

 

 誰一人、まともに相手にもなってはいない。そんな光景を見つめるヘロヘロに突如襲う―――違和感。

 

 おかしい―――何かがおかしい。相手のプレイヤー達の動きがおかしいのだ。攻撃を繰り出すが、なにやらやみくもに攻撃をしているだけの様に見えてくる。まるで、目の前にいるステラを認識できていないかのような感じだ。見失っていると言う言い方もできるかもしれない。

 

 「…あぁ…そうか…そう言う事か。」

 

 ヘロヘロが何かに気づいた。

 

 「愛理沙(ありさ)…君は…そこまで至ってしまったのか。」

 

 剣を斬りつければ、構えもクソもなく、只々振るわれる。スキルも魔法もそうだ、標的とは見当違いの方向に放たれる。ステラはその中を一切の無駄のない動きで掻き乱している。なぜこの様な不思議な状況が起きてしまっているのか。

 

 それは―――『視覚の死角』。

 

 相手の目線―――焦点の外を、ステラは練り動いている。

 

 攻撃が繰り出される瞬間を見極め、一歩下がる。焦点から外れたステラの姿はぼやけていく。場合によっては完全に視界から消え失せるだろう。その状況下で、相手プレイヤーはイチかバチかで攻撃を繰り出しているにしか過ぎない。

 

 一歩下がり、敵の視界から消える。動いた先で、別の敵プレイヤーの死角に回る。攻撃を加え動いた先は、その他のプレイヤーの死角になっていく。

 

 全方位から自分に対して向かい来る攻撃を、視覚の死角を練り動いて迎え撃っているのだ。

 

 ステラの一つの動きは、攻撃を繰り出そうとしている者の死角であり、また一つ動いた先は、また別のプレイヤーの死角になっている。

 

 現在、数十人のプレイヤー達は、攻撃しようとした瞬間、相手が目の前から消えている様な感覚に苛まれている事だろう。

 

 故に連携をとるが、結果は変わらない。全てのプレイヤー達の視覚範囲外を、ステラは練り動く。

 

 もはやヘロヘロからは言葉がでない。戦慄すら起きない、そんな次元ではないからだ。これが現実なら、百歩譲って分かる。相手の目線、筋の動き、呼吸、全てを視覚で捉えているのであれば、なるほど、確かに可能かもしれない―――が、ここはゲームだ。先に挙げた全ては、ここには存在しない。視覚の死角へ回ろうにも、相手の視覚の焦点を割り出す事ができはしない。

 

 あの『アロービーチ』ですら、一対一と言う条件下で、尚且つ自分の攻撃に注視させてしか死角をつく事ができなかった程だ。それを、数十人のプレイヤー相手に、それも練り動くなど正気の沙汰ではない。

 

 なぜこの様な事ができる?そう考えたヘロヘロに浮かぶ答え。

 

 「…誘導しているのですね…視覚を。」

 

 視覚の誘導による、行動の予測―――それが答えだ。

 

 ヘロヘロの目の前で、ステラがあるプレイヤーに対し回避の後に拳を繰り出そうとしている。相手のプレイヤーは迎え撃つべく武器を掲げた―――が、ステラは繰り出そうとした拳をピタリと止め、引っ込める、そして左方に瞬時に動く。掲げた武器は振り下ろされるが空を切る。そしてステラが動いた先には別のプレイヤーの姿がある。そのプレイヤーは警戒し、構えにはいる―――が、ステラは一歩下がった。

 

 ステラは、自分の行動を餌に、相手の視覚を自分の部位に誘導している。自らの拳に焦点が向いていると分かれば、視覚範囲は割り出される。その後、視覚範囲外から離脱している。

 

 そして視覚の誘導のついでに、相手の行動の誘発も同時におこなっていく。自らの拳での攻撃に対し、相手の取る行動を誘発し、その後の行動を予測していく。

 

 アンティリーネが懐に潜り込もうとすれば、相手が距離をとっていくのと同じ事だ。距離を取りたいから、後方へ下がる。そして距離を取った後に、攻撃に移れそうならば、攻撃に移るだろう。その際、相手は最適解を選ぶはずだ。距離が遠ければ、突きを。距離が近ければ斬りつけを。アンティリーネの姿勢が低ければ、上段からの斬りつけへ移っていくだろう。

 

 ステラは自分の行動を餌に、相手が最適解に動くように誘発し、行動の予測を行っている。次の行動が分かれば、相手の視覚範囲が見えてくる―――死角範囲が割り出される。

 

 理屈はこうだ―――が、言うは簡単であり、実行は困難を極めるだろう。それを、数十人のプレイヤーを相手に対し実行している。

 

 よもや人間に至れるような領域ではない。

 

 人間の皮を被った何かが、視覚の死角を練り動く。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「あぁ…あぁ…どこやここ…どう行きゃ抜けれんねん?」

 

 何やら聞いた事のあるような関西弁が聞こえてくる。第一~三階層は迷路状になっている。侵入者を迷わせ、デストラップで始末していくが為だ。

 

 そんな階層で、迷っているプレイヤーは誰かと言えば『テラ』だ。

 

 大量の侵入者に一歩遅れ、助太刀の為にナザリックにやって来たのはいいが、どうやら迷ってしまったらしい。しかし、遅れて来たのはある意味幸運だっただろう。既にデストラップは使い切られ、モンスター達も倒しつくされた後だったからだ。

 

 「まってろやぁ~リネきち~、テラさんが助太刀すんで~。」

 

 右往左往しながら、テラが第三階層を進んで行く。しばし進んだ頃、大きな空間に辿り着いた。その空間に足を踏み入れれば、待っていたのは戦争。

 

 大量のプレイヤー達と、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーとが激戦を繰り広げていた。何やら、知らない連中も侵入者達と戦っているのを見て、テラの頭に?マークが浮かぶ。

 

 「なんやおかしなことなっとんな?」そう言いながら小首を掲げていれば、テラはある人物を見つける、『ウルベルト』だ。ウルベルトの元まで駆け寄ったテラは喋り掛けようとしたが、ある物に目を奪われる。

 

 「…あれぇ~?」

 

 「あん!?なん―――おぉ!テラさんじゃねぇか!来てくれたんか!!」

 

 「…なぁなぁ…。」

 

 「お?どうした?」

 

 ウルベルトの言葉に対し、テラはある場所を指さした。

 

 「…なぁ…なんで『ラスボス』おるん?」

 

 「はぁ?ラスボス?」

 

 テラの指さす場所に目を向ければ、そこにはプレイヤーの群れを一方的にぶちのめしているステラの姿があった。

 

 「あぁ…あれね…ありゃあ確かにバケモンだが、同じプレイヤーだぞ。しかも味方ときたもんだ。」

 

 「…え~?プレイヤ~?あれラスボスちゃうん?」

 

 顎に指を当て、小首を掲げる。あれがプレイヤー?つまりは、あの中身は人間だという事だ。テラは思う、あんな人間がいてたまるかと。

 

 冗談はよし子ちゃんやでと言おうとした時、テラの目の前に何かが勢いよく落ちてきた。ビクゥと肩を浮かしたテラは、落ちてきた物を凝視する。そこには大柄な男の姿があった。

 

 「むぅ…MPが底をついてしまった…。」

 

 大柄な男がムクりと起き上がり、何やらぶつぶつ言っている。テラはその男を見上げる。

 

 デカい―――これでも人間か。

 

 2㍍くらいはありそうな大柄の男が、見下ろすかのようにテラを見つめている。余りのこわもてに、恐怖で体をぶるぶる震わせながら、テラは親指を男に突きつける。

 

 「な―――なななな、なんやお前ェ!!?や、やややや…やんのかぁ!?し…知らんでェ!?ド…ドドドド!ドルアーガで鍛えたこの親指舐めんなよォォォ!!?」

 

 「……。」

 

 大男は―――山荒は無言でテラを見下ろす。

 

 「し―――ししし!知らんでェェェ!?ジ、ジェットブーツとかなぁ!ド、ドドドド…ドラゴンスレイヤーとかなぁ!あんねんでぇ!?知らんでぇ!?や…やんのかぁ…おぉう!?」

 

 震える声で、テラはシュッシュッと親指を突きつける。そんな絶賛威嚇中のテラには何も語らない山荒が、ふいに後ろを振り向いた。

 

 そこにいたのは―――プレイヤー。

 

 山荒が交戦していた一人のプレイヤーが、好機と見るや山荒に斬りかかっていく。

 

 不味い―――ウルベルトがそう思った瞬間だった。

 

 山荒は一歩踏み込んだ。体ごと相手にぶつかった事により相手プレイヤーの体勢が揺らぐ。揺らいだ姿勢の中、体を掴まれたプレイヤーの足が払われていく。

 

 それは――(やわら)の一手。

 

 払われた足と共に、プレイヤーが勢いよく投げられ、地面に叩きつけられて行く。

 

 柔の一手―――『(やま)(あらし)』。

 

 肉が無造作に地面に打ち付けられていく鈍い音が響いた。地面に叩きつけられたプレイヤーはピクピクと痙攣しながら動かない。

 

 唖然とするテラとウルベルトへ、山荒は振り向き、ぽりぽりと頭を掻いた。

 

 「反射的にやってしまった…こう見えても、リアルでは柔道場を開いていてね。」

 

 「おぉぉぉい!何やってんの!?何で投げてんの!?魔法詠唱者が敵投げ飛ばしてんじゃねぇよ!?」

 

 「うぅむ…しかし、MPももうないのでな。」

 

 「いやッ!?だからねッ!俺達魔法詠唱者はMPがきれたら終了なの!もう終わりなの!なんで投げ飛ばしてんのォッ!?ねぇッ!?反則だからな!それ!!」

 

 余りにも常識外れな光景に、ウルベルトが喚き散らす。ウルベルトの言う事ももっともだ、魔法が打てなくなったら、今度は相手を投げ飛ばし出す魔法使いなど理不尽極まりないだろう。反則と言われても致し方ない様に思えた。

 

 「しかし、所詮は魔法詠唱者だ。大したダメージは入ってはいない。」

 

 「いやッ!!だからねッ!!そう言う事じゃなくてだなぁッ!!他の魔法職の連中が経つ瀬ないよねって事言ってんだよッ!!なぁ、テラさんよぉ!!?」

 

 喚くウルベルトに話を振られたテラだが、何やら黙って喋らない。不思議に思うウルベルトが小首を掲げれば、テラの腰が低くなる。

 

 「いやぁ~なんやなんやお強いんですね~。あっ、良いと思いますよ?魔法使いが相手投げてしばき倒しても…いやぁごっついで~。」

 

 「おぉぉぉい!!お前それでいいんかぁ!?さっきまでの勢いどこいった!?」

 

 「やかましい!どんだけ凄んでもな!勝てへんもんは勝てへんねん!何がドルアーガや!アホかァァァ!?」

 

 「おうおう!逆切れかァ!?テメェ!?」

 

 「あぁん!?舐めんなよ!?これでも逆切れのテラって言われてんで!俺から逆切れとったらな―――あぁ?」

 

 凄まじい勢いで捲し立てるテラが、急に黙る。いや、テラだけではない、三階層にいる全ての者が、戦いすら忘れ、上空を見つめていく。

 

 映像が映し出されている。大量のプレイヤー達と、ある三人が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『よくぞここまで辿り着いた―――侵入者達よ。』

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「あっはっはっは~♪ぴゅ~んっとなぁ~―――およ?」

 

 第五階層―――『氷河』を走り回るジャンの笑いがピタリと止む。

 

 足を止めたジャンが見つめるは天井だ。そこには映像が映し出されていた。

 

 『よくぞここまで辿り着いた―――侵入者達よ。』

 

 「…ふぅん。」

 

 響き渡るモモンガの声を聞きながら、ジャンは腕を組んだ。

 

 「ししし…なにこのギルド―――おんもろぉ~☆」

 

 腕を組み、ジャンは映像に見入る。

 

 どうやら、今からとても面白い事が起きる様だ。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 「オ~ウ…炎火~。」

 

 「えぇ…シシォー。」

 

 第七階層―――『溶岩』。

 

 赤々と燃え上がるこの階層の天井にも、同じく映像が流れていく。

 

 『よくぞここまで辿り着いた―――侵入者達よ。』

 

 モモンガの声が響く。

 

 マコトシシォーと炎火が顔を合わせ―――笑った。

 

 「うっ()!うあっついわねぇ!!このギルドは!!」

 

 「オ~ウ…ウェンタ~トゥエイナ~。」

 

 二人はドカリと腰を下ろし、座り込む。

 

 さぁ―――最高のエンタメの始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 第四階層―――『地底湖』

 

 「あぁぁぁいぼぉぉぉう!魅せるじゃあねぇかぁぁぁ!!」

 

 ―――ドーン。

 

 ダイゲンガーが斬艦刀を地面に突き立てる。

 

 地底湖が震えるのではと言うような轟音が響く中、誰もダイゲンガーの方へは振り向かない。

 

 振り向くはずはない―――天井の映像を見てしまえば。

 

 「始まりますね…博士。」

 

 「あぁ…そうだね。」

 

 『よくぞここまで辿り着いた―――侵入者達よ。』

 

 タブラとガーネットの会話の後に響くモモンガの声。

 

 皆が一様に黙り込み、天井を見上げる。

 

 最終決戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…過剰稼働…過剰稼働…Red(レッド)Zone(ゾーン)突入…Red(レッド)Zone(ゾーン)突入…Over(オーバー)Heat(ヒート)の危険あり…強制Cool(クール)Down(ダウン)…推奨…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終決戦が刻一刻と迫る中、ある異変もまた、刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 悲報!ステラさん、ラスボス扱いされる!

 どうもちひろです(ΦωΦ)

 ちひろ「遂に第八階層まで侵入を許してしまった
     アインズ・ウール・ゴウンッ!
     きたる侵入者の数はなんとッ!
     1000人規模ッ!!
     ブロっちまった時の野菜人の王子なら
     むりだ~…みんなころされる~…
     ってなりますが…
     果たしてアインズ・ウール・ゴウン
     はどうなるのでしょうかッ!?     
     そして…不穏な空気も…      」


  次回―――ゆぐどらしるだいぼうけん!
          
          『大虐殺』

 ちひろ「侵入者死す!デュエルスタンバイ!!」

 セバス「次回予告がなってませんな…
     私の方がより熱く語れます。」

 ちひろ「あ…じゃあ次回任せます。」

 セバス(=゚ω゚)ノ「ラジャー」

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