あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
前回のあらすじ
新旧機械神バトル勃発。
♦
「目標捕捉―――ダイゲンガー。」
可愛い声と共に―――
「えい。」
―――轟音が轟く。
ルべドのパンチがダイゲンガーの腹部に炸裂し、即座に二度目の轟音が響く。
一度目はルべドが駆けた際に生じた音―――地面を蹴りあげた時に生じた音だ。二度目は言わずもがなだろう、ダイゲンガーにパンチを見舞った際に生じた音。恐るべきは、音と音の間が殆どなかったという事か、同時と言っても過言ではない程に、二度目の音の発生は速かった。
ダイゲンガーが吹き飛ぶ―――かに思われた。
軋む地底湖の地面―――未だ地に足が付いている。
「ナックルパートは早すぎるぜ―――おちびちゃん。」
『建御雷』『やまいこ』二人を一撃で昏倒させたルべドのパンチ―――否、あのような児戯ではなく、攻撃と言う明確な意思を持ったパンチを、腹部で受け止めた。
殴りつけた姿勢で静止しているルべドの正面にいたダイゲンガーがふわりと宙に浮いた―――もとい飛び上がった。
「くぅらぁあッ!!」
ふわりと浮いた姿勢で、空中で旋回するように体を捻らせたダイゲンガーから繰り出されるは、蹴り―――否、『ソバット』。
鈍い音がまたも響いていく。金属と金属が衝突する、甲高くも重々しい音が。
ソバットはルべドへと直撃し、今度は逆にルべドが吹き飛ばされていった。
まるで銃口から打ち出された弾丸が如く、一直線に飛んだルべドが建造物に直撃し、瓦礫を宙に巻き上げた。
耳を塞ぎたくなる様な破壊音が響く中、大小様々な瓦礫が宙を舞っている。その中に混ざる―――異質。
瓦礫の中に混ざるは赤い物体―――炎を纏った存在。
建造物に直撃し、地面に叩きつけられたルベドだが、即座に飛び上り、空中に舞う瓦礫と共にダイゲンガーを見据える。
見据えたダイゲンガーは、次の行動に移っていた。
「シャッ!!」
『逆水平』―――一閃。
あのような攻撃で決着がつくなど、ゲンガーは、はなっから思ってはいない。行動の予測を立てたゲンガーの、ルベドの『先を取る』一撃が火を噴いた。
またもや弾丸の様に吹き飛んで行くルベド。建造物を突き抜け、瓦礫を宙に舞い上げながら、地面を転がり続けていく。
これが現実なら、地面にはくっきりとわだちができている事だろう―――いや、その前に、巨大なクレーターができる事は想像に難くない。
ダイゲンガー最大出力の逆水平を受けたルベドは、転がり続け、建造物にぶち当たり動きを止めた。
比較的形を保っていた方向の建造物群が、もはや見るも無残な事になっている。まるで怪獣同士が暴れたかの様な惨状が目の前には広がっていた。
ルベドの動きが止まった方向を、ゲンガーは睨みつけるかのように見つめていく。
直撃だ、並のプレイヤーなら跡形もなく爆散する程の威力を持った一撃の直撃。
立てる筈はない―――が。
「ゲッゲッ…流石の俺様も嫌になっちまいそうだぜ…。」
粉々に砕け散った建造物の瓦礫の山を掻き分け、何事も無かったかのようにルべドは立ち上がる。変わらぬ無表情の視線の先にいるのは、勿論ダイゲンガーだ。
「本機のメモリーの情報では、ダイゲンガーがあのレベルの攻撃を防ぐ事は不可能…続く攻撃…行動も…データには無い…ダイゲンガーの能力を上方修正する。」
冷たい声でそう呟けば、ルべドの体が浮遊し上空へと浮かび上がっていく。ダイゲンガーに飛行能力が備わっている様に、当然ルべドにもその能力は備わっている。
「目標捕捉―――ダイゲンガー。」
―――閃光が走った。
ダイゲンガーの腹部に、またルべドのパンチが炸裂する。先程と同じ攻撃であり、同じ個所、しかし衝撃は同じではなかった。
ダイゲンガーの体がくの字に折れる。それはこのパンチが、先程のパンチの威力を遥かに凌駕する事の証明であるだろう。
ダイゲンガーは質量に重きを置いた機体だ。持ちたる持久力、防御力共に、タフネスと言う意味では並ぶ物がない機体である。
そのダイゲンガーの体が―――巨体が揺らぐ。
それは尋常ならざる事態だ。プレイヤーなどと言う、矮小な存在では決して到達する事ができない破壊力が―――暴力がダイゲンガーを襲う。
「嘘だろ!?さっきのが最大出力じゃねぇのか―――よっと!!」
くの字に折れた体の先―――腹部にいるルべドへとダイゲンガーの両腕が迫る。
機動力は遥かにルべドの方が上だ。元より、簡単に捉えられるとも思ってはいない。肉を切らせて骨を断つ、ダイゲンガーの両腕が、ルべドを抱きしめる為に迫る。
目的は―――ベアバック。
ルべドを押しつぶす為に両腕を重ねる―――が。
「―――!?どこいった!?」
しかし、ベアバックは成立せず。ルべドの姿は既にそこにはなかった。
「予想速度を越えて来た…更にダイゲンガーの能力を上方修正する…修正完了…本機の敗北確率を計算…敗北確率…0%…。」
ルべドの声が聞こえてくる。その方向は、ダイゲンガーの頭上。自らの頭上で見下ろすかのように浮かび上がるルべドが見えて来た。
「ヤロォォォウッ!!」
ダイゲンガーが地面に突き刺さった斬艦刀を手に持ち、ルべドを斬りつける―――が、これはスルリと躱された。
やはり、機動力はルべドの方が遥かに上を行っている。分かってはいたが、実際に相対してしまえば、最早絶望的な程の差がそこにはあった。
「
ルべドの右手に巨大なハンマーが出現する。
神話を元に作られた、物理特化の凶悪な<
「
そのハンマーは、ルべドの右手に接続され一体化する。
「えい。」
そのハンマーを、ルべドはダイゲンガーの頭部に叩きつけていった。
「――~~~!?ヌアァァァァ!?!?」
ダイゲンガーをかつてない程の衝撃が襲う。
五十㍍もの巨体を誇るダイゲンガーが、140㌢程の小柄な少女が振るったハンマーの一撃で吹き飛んで行く様は、まるで地獄絵図。
吹き飛んだダイゲンガーは、半壊した神殿に衝突し、神殿は跡形もなく崩壊した。
ガラガラと音を立てながら、瓦礫がダイゲンガーに降り積もり、ダイゲンガーが埋もれていく。
そしてそのまま―――動かなくなった。
ダイゲンガーの動きが止まったのを確認したルベドは右手に接続されたハンマーの接続を解除していく。接続が解除されたハンマーは、そのまま姿を消した。
空中に悠々と浮かび上がったまま、ルべドはきょろきょろと周囲を見渡す。残るのは、なんの脅威もない個体のみだ。
♦
絶望がギルドメンバーを襲う。
当たり前だ。あのダイゲンガーが、まるで手も足も出ずに敗北したのだから。
頼みの綱のダイゲンガーの敗北によって、第四階層を包む空気が悲痛な物に変わっていく。
ルベドが空中から悠々と辺りを見渡す姿を見つめていれば、ガーネットのメッセージを受け取ったギルメン達が続々と転移してくる。
「いっしっし☆なになに?暴走ってなんのことだっちゃ☆」
転移してきた『るし☆ふぁー』が空中をふよふよ浮遊しながらケラケラと笑っている。まだ自分達が置かれている状況が理解できてはいないのだろう。
―――キュイン。
ケラケラ笑う、るし☆ふぁーへと、ルベドの眼球型カメラが向かう。
「…目標捕捉…るし☆ふぁー…脅威度…ゼロ…本機の敗北確立…0%。」
「いっしっし☆…およ?みんな、どしたん―――」
―――ゴッ。
るし☆ふぁーが弾け飛ぶ。殴り飛ばされたるし☆ふぁーが、流星の如く地面に衝突した。地面にめり込む、るし☆ふぁーへと二度目の衝撃が襲う。るし☆ふぁーと同じように流星の如く降下してきたルベドの右拳が、るし☆ふぁーの顔面を打ちつける。これが現実ならば、特大の地震と共に、目を覆うようなクレーターができあがっている事だろう。
顔面がルベドの拳と地面とに挟まれたるし☆ふぁーが消滅していく。
地面を殴った姿勢のまま静止するルベドの後方に瞬時に人影が現れる―――フラット・フットだ。
フラットの小太刀が、ルベドの喉を掻っ切る為に背後から引き抜かれる。
―――ピタ。
小太刀引き抜かれる―――かに思われたが、小太刀は静止する。ルベドが驚異的な反応速度で小太刀を鷲掴みにしていったからだ。
あと少し―――ほんの少し深く入れば、小太刀はルベドの喉元に接触するであろう程の距離まで来ていた。しかし、それはルベドによって静止された。
あり得ない―――フラットの脳裏を駆け巡るはその言葉。
完全なる死角から、虚をついた完璧な一撃だった筈。しかし届かなかった―――なぜだ?そう考えた時、フラットの中で出た答えはたった一つだった。
―――視認してから掴みやがった。
それ以外にないように思えた。つまりは、ルベドは首元に何かがきたから、取りあえず掴んで行ったという事だろう。
それだけ、隔絶した反応速度の差があるという事だ。
―――ゴジュリ。
ルベドが左手を後方へ振り抜いた。見ようによっては裏拳の様に見える。しかし、これはその様な高尚な物ではない。ただ手を振った―――それだけだ。そんな子供の様な稚拙な動きに、フラットは反応できず、顔面を打ちぬかれる。
フラットが―――アインズ・ウール・ゴウンが誇る二大暗殺者の一人が、まるで反応できてはいない。
スペックが違い過ぎる―――途方もない程に。
放たれた弾丸の様に吹き飛んだフラットが建造物に衝突し、消滅していく。
裏拳の状態で静止するルベドが、右手で掴んでいた小太刀を一瞥していく。可愛く小首を掲げたその後に、「こんなのいらない」とばかりに、右手に掴んでいた小太刀を後方へ放り投げていった―――その時だった、ルベドへ向かう、新たなる人影。
『ばりあぶる・たりすまん』『ベルリバー』『エンシェント・ワン』『ブルー・プラネット』『テンパランス』『スーラ―タン』『ぬーぼー』『源次郎』。
群がる様にルベドを襲う。一対一では歯が立たない。ならば、数で押していく―――が。
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ。
一人残らず全方位に吹き飛んで行く。じゃれる子供の様に、手をブンブン振り回したルベドによって。
反応できない。
アインズ・ウール・ゴウンの
無数の轟音が響き、あらゆる建造物に衝突していったメンバーは、その場に倒れ動かなくなる。
あのギルメン達が、なにもできずに戦闘不能にされて行く。
轟音が鳴りやんだその瞬間、ルベドの体を拘束していく、屈強な腕。
それは―――獣王の
「やれぇぇぇぇ!!」
獣王が―――メコン川が叫ぶ。
叫ぶメコン川見つめる上空には、ある男の姿があった。
「絶望と憎悪のォォォ!!涙を溢せェェェ!!」
その男は、最凶最悪の大魔導士―――
『ウルベルト・アレイン・オードル』。
それは―――究極の魔法。
世界から零れ落ちた葉の憎悪によって形作られ
物理的な現象となるまで圧縮された呪詛であり
純然たる破壊エネルギーの顕現。
ワールド・ディザスターと言う
最強の魔法職を最高LVまで修める事で得られ
全てを蹂躙し、破滅へと導く。
超位魔法すらも凌ぐ―――究極の破壊魔法。
その名は―――『
全てを破壊しつくす暗黒のエネルギーが地底湖を包み込む。
その光景を言葉で表すならば―――『暴力』。
バリバリと歪な炸裂音を響かせ、漆黒のエネルギー波が球体上に周囲を覆いつくした。
球体内に吹き荒れる、暗黒の暴風雨。
抗えぬ圧倒的な暴力が、地底湖に吹き荒れる。
―――やったか!?
ウルベルトの脳裏にその言葉が浮かんだ。
漆黒の暴風の如きエフェクトが治まっていき、ウルベルトの目の前に飛び込んできたのは―――赤き球体。
メラメラと炎を揺らしながら、太陽の如き炎の球体が姿を表した。
その姿はさながら―――『炎のバリア』。
そのバリアに覆われていたのは、ルベドとメコン川。
「
ウルベルト・アレイン・オードルの切り札にして、超位魔法すら凌ぐ究極の破壊魔法の直撃。
それでもなお―――『無傷』。
余りの光景に、ウルベルトは愕然としていく。想像を絶しているからだ。
ルベドの周囲を覆う、炎のバリアを見つめるウルベルトは言葉がでない。バリアの内部では、メコン川が今もなお、ルベドを両の手を持ってして拘束している。
そんな拘束されているルベドが、自分を見つめた気がした時、ゾクリとした感覚が押し寄せる。
ヤバい―――何かヤバい。
「
まるで、自らを拘束するメコン川を気にもしていない様に、ルベドが小さな声でそう呟いた。
その瞬間―――バリアが破裂した。
破裂したバリア―――炎の球体が、凶悪な炎となって、全方位に飛散していった。
百戦錬磨のウルベルトが持つ危険センサーが瞬時にその炎の危険度を察知し、全集中力を持って空中を旋回し、回避していく。
荒れ狂う炎―――
いや、意志を持っていると言う言葉は、ある意味正しいのかもしれない、
さながら炎の龍の如く、地を這い、空を駆けていく
空中で旋回しながら、
いや、拘束されたと言う言葉は少し違うかも知れない。先程のルベドの周囲を覆っていた様に、球体になった炎にギルメン達は覆われている―――もとい囚われている。
閉じ込められた―――その言葉が正解だろうか。
閉じ込められたギルメン達が、球体から脱出しようと足掻くが、出る事は叶わない。
そう、これはバリアではなく―――
炎の領域に閉じ込められれば最後、そこから出る事は叶わない。
「愚弟ィィィ!!」
「ちッ!ちくしょぉ!!何なんだよこれは!!?」
閉じ込められた多くのギルメン達の中には、ぺロロンチーノも含まれていた。命からがら炎を回避した茶釜が、閉じ込められたぺロロンチーノへ向け叫ぶ。
吹き飛ばされ、動けなくなったギルメン達。回避に失敗したギルメン達。ぺロロンチーノを含めた多くのギルメン達が、炎の球体ごと空中へ浮かびあげられていく。
四階層に浮かび上がる、無数の炎の球体。この様な戦闘中でなければ、いっそ幻想的に見えるだろうが、今は酷く、恐怖心を煽られる。
「
ルベドが小さな声でそう呟いた。
球体内部―――
熱せられた球体は太陽の様にメラメラと燃え続け、内部を凶悪な炎で滅却していく。
程なくして、球体は瞬間眩く光り、太陽が破裂するかのように弾け、炎は消えていった。
そしてそこには―――何もなかった。
『建御雷』『やまいこ』『ぺロロンチーノ』『ばりあぶる・たりすまん』『ベルリバー』『エンシェント・ワン』『ブルー・プラネット』『テンパランス』『スーラ―タン』『ぬーぼー』『源次郎』『ウィッシュⅢ』『ぷにっと萌え』『チグリス・ユーフラテス』『音改』『ホワイトブリム』『餡ころもっちもち』『死獣天朱雀』『ク・ドゥ・グラース』『あまのまひとつ』『やさ・スィー』―――多くのギルメン達が、一瞬にして燃え尽きていった。
「う…うそだろ…おい。」
その言葉を吐いたのはメコン川だ。ルベドを拘束するメコン川の上空で起きた惨劇に、震える声でその言葉を吐きだしていった。
―――ガシリ。
そんな獣王の屈強な腕を掴む、小さくか細い手。
―――グググ。
拘束するメコン川の手を、取るに足らないモノかの様に、ルベドが引き剥がそうとしている。
「――~~~!?」
獣王メコン川―――ビーストロードと呼ばれる種族を持つ彼のフィジカルは、屈強な猛者が集まるアインズ・ウール・ゴウンの中でも一番だ。
アインズ・ウール・ゴウンが誇る『怪力王』―――そんな肩書など、最早なんの意味も持たない。
メコン川の屈強な腕を、難なく引き剥がしたルベドへと、メコン川の蹴りが炸裂する。
一撃、二撃、三撃―――ルベドはビクともしない。どこ吹く風だ。
一心不乱に蹴り続けるメコン川の顔面を、ルベドが掴む。顔面を鷲掴みにされたメコン川が暴れ回るが、やはりルベドはビクともしない。
「
メコン川の顔面を鷲掴みにしたルベドの手から、
大竜王のブレスすら生易しいと思える程の凶悪な炎が放出され、地底湖の天井まで吹き荒れていった。
炎が治まり、そこにはもうメコン川はいない。焼き尽くされた。
「…わ~い…わ~い…。」
可愛らしい声を上げながら、ルベドが両手を上げ、天を仰いだ。ばんざ~いばんざ~いと無邪気な子供が喜ぶようなその仕草に、残るギルメン達に恐怖の色が浮かんだ。
その瞬間―――上空から黒い線が一直線に降ってきた。
アインズ・ウール・ゴウンに起こる惨劇をその目に収めながらも、歯を食いしばり耐え抜いた忍びの信念が―――
完璧なタイミングだ。最も油断したその瞬間を狙った一撃。
―――ピタリ。
弐式が愕然としていく。あのナザリックですら反応できなかった、弐式渾身の捨て身の一撃を、事も無げに掴んで静止させていく―――その事実に戦慄する。
「ま…まじか…お前…―――ッ!?」
「
ルベドが爆発する―――いや、そう思わせる程の炎が、噴き出してきた。
『
「あぶねぇ!死ぬところだった!!」
鳴り響く危険センサーに従い、
しかし、危険センサーは鳴りやまない。空中へ避難した弐式が、ルベドの次の行動に構える為に視線を下に向けていく。
「―――はぁ?」
―――が、もう既にそこにはルベドの姿は無かった。
どこに行きやがったッ!?そう思った瞬間に、ゾクリとした感覚が後方から襲ってくき、振り向く―――そこにはルベドがいた。
ルベドは既に―――弐式の後方に先回りしている。
「――~~~ッ!?―――ッぴャッ!?!?」
―――影縫い。
即座にその場から影縫いを用いて弐式は脱出していく。余りの驚きに、変な声が出てしまったが、最早その様な事を気にする余裕はなかった。
影縫いで空中を練り歩き、弐式は地面へと降りてくる。自分の速度は、空中では存分に発揮できはしない。地表で迎え撃つ。
地に足を付けた弐式が正面を見つめた―――が、既にそこにはルベドの姿があった。
弐式より先に、地上に降りてきた―――ルベドの姿が。
「――~~~!?!?」
―――黒い線が地表を駆け巡った。
ルベドから逃げるように、弐式が地上を駆け巡る。全力で駆ける弐式の姿は、もはや視認すらできない程だ。黒い線が縦横無尽に地上を走り、それに続くかのように―――赤い線もまた同じように地上を走る。
「…おにごっこ…おにごっこ…。」
「――~~~ッッッ!?―――ッ!?や、やぁぁぁろぉぉぉあぁぁぁ!!!」
地上を駆ける弐式に追従するかのように駆けるルベドがいた。ピタリと後ろにくっつくかのように走りながら、無邪気な台詞を吐く。この事からも分かる様に、これは戦いでも何もない。
遊ばれている―――弐式が。
弐式の最高速を、まるで苦も無くルベドは追いかける。
黒い線と赤い線が地表を駆け巡っていく。例えるなら、レーザーポインタを高速で動かしまくっている様な、その様な光景に見えてくる。
「――~~~!!あ、悪夢だッ!お、俺がッ!こんなぁッ―――がぁッ!?」
―――ガシリ。
追いかけ合いは長く続くかと思われたが、そうはならず、弐式の顔面をルベドが鷲掴みにしていく。
脱出する為に藻掻く弐式だが、力の差は歴然としている。
「
吹き荒れる
「…わ~い…わ~い…。」
「破ッ!!」
無邪気に喜ぶルベドへと向かう一つの拳。
気迫を纏ったヘロヘロの『正拳突き』がルベドの腹部に直撃していく。
弐式を消滅させた際に起きた一瞬の隙―――その隙を天才は見逃さない。
「―――くそ。」
ヘロヘロの渾身の正拳突きを受けたルベドだが、残念な事にビクともしない。
―――キュイン。
ルベドの眼球型カメラの瞳孔が小さくなる。
後方に飛び退いたヘロヘロが構えに入る―――が、追撃はこない。
身構えながら感覚を鋭くしていくヘロヘロの目の前で、ルベドが急に妙な動きを始める。
右手と左手を、上げては下ろす。足を開いては閉じていく。まるでこ踊りでもしているかの様な不思議な動きだ。
そんな不思議な動きだが、徐々に統一されていく。足を程よく広げ、腰を深く下ろし―――拳を構えていった。
「―――な、なんなんですか…君は。」
その構えは―――正拳突きの構え。
ヘロヘロとは比べるべくもない程の稚拙な物だが、紛れもなく正拳突きの構えだ。
先程まで子供の様に暴れ回っていた存在が、急に戦いの姿勢を取った事に困惑していく。
そう、ルベドの本当の恐ろしさは『C・B・M』ではない。
ルベドの『真価』は『進化』にあり。
ヘロヘロの『武』が、洗練された『技術』が、ルベドを進化させた―――いや、させてしまった。
「…受けてたってやる…と言いたい所ですが…凡才の身には少々厳しいかも知れませんね。」
「えい。」
可愛い声と共に、ヘロヘロに正拳突きが繰り出された。
―――『
瞬間、ヘロヘロの姿が消えていく。消えたヘロヘロの代わりに、その場に現れたのは―――『ぶくぶく茶釜』。スキルで防御を強化した茶釜が、ヘロヘロを守る為に割り込んできた。
ぶくぶく茶釜―――ナザリック最高の盾にして、最硬の盾。
攻撃を捨て防御にのみ割り振られたビルドによって
齎された鋼の肉体は、不沈とあだ名される程である。
幾多の激戦を潜り抜けてきた。
幾多の強敵を退けてきた。
経験―――技術。
その二つは混ざり合い、最硬へと昇華される。
攻撃は―――捨てた。
種族すらも―――捨てた。
あらゆる物を捨てさり―――盾としてに拘った。
唯一あるは―――盾としての矜持。
全ては―――仲間を守る為。
決意であり―――誇り。
茶釜が前傾に丸まり、シールドでその身を覆う。
全身全霊を持ってして―――茶釜はルベドを迎え撃つ。
―――メキョリ。
ルベドの正拳突きが、茶釜のシールドを突き抜け、茶釜の腹部に突き刺さっていく。
茶釜を襲うは―――かつてない程の衝撃。
茶釜が―――ナザリック最硬の盾が、拳を受けきる事ができずに吹き飛んでいく。
轟音が幾重にも鳴り響いていく。
幾多の建造物を貫通し、地底湖の壁―――四階層の壁に激突した茶釜が、ズルズルとその場に倒れ伏す。
ナザリック最硬の盾が―――敗れた。
―――経験も。
―――技術も。
―――矜持も。
―――決意も。
―――誇りも。
全てを嘲笑うかの様な、圧倒的な暴力の前に屈していく。
殴った姿勢のまま、しばし動きを止めていたルベドが、ゆっくりと姿勢を正していく。
そして―――無邪気に手を上げる。
「…わ~い…わ~い…。」
暴力の化身が、無邪気に喜ぶ。
ルベドが―――機械神が全てを蹂躙していく。余りにも理不尽なその光景を目の当たりにしてしまえば、この場にいる者達に言葉などでないだろう。
沈黙が地底湖に舞い降りた。
―――どうにもならない。
アインズ・ウール・ゴウンにその様な諦めの言葉が過る。
沈黙は長く続くかに思われた―――が、そうはならなかった。
諦めかけていたアインズ・ウール・ゴウンの目の前に
両モンスターはルベドに襲い掛かる―――が、瞬時に燃やし尽くされていった。
アインズ・ウール・ゴウンは諦めかけた―――しかし、諦めていない者達もいる。
ある者が、ルベドに立ちふさがる―――『野太刀』を突きつけて。
「おいたはそこまでだぜ―――嬢ちゃん。」
千葉セバス「じぃぃぃかいよぉこくぅぅぅッ!!」
BGM―――『〇笑みの爆弾』
~千葉セバスナレーション~
シィィィビィィィエムのォォォッッッ!!
圧倒的な力の前にィィィッ!
成すすべもないッ!アインズ・ウール・ゴウンッ!
ユグドラシルを席巻してきたッ!
あぁぁぁの猛者達がァァァッッッ!!
手も足もッ!出ないッ!
正に…正に…まァァァさにィィィッッッ!!
路傍の石が如くゥゥゥッ!うわッひやァァァッ!!
蔓延る沈黙ッッッ!!
踊り狂う絶望ッッッ!!
全ての希望が絶滅したかに思えたッッッ!!
しかし―――
集うは新たな
この混沌の世紀末にィィィッッッ!!
救世主が舞い降りたァァァッッッ!!
ムスペルヘイム最強の男がァァァッッッ!!
あッぴょォォォッッッ!!
次回
あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆
「待ちわびた距離」
千葉セバス「いつ出てきても強いッッッ!
かませにならないッッッ!
最強のォォォッッッ!!
ラァァァイバルッッッ!!
見よッッッ!!これがッッッ!
究極の突!2000年の歴史ィィィッ!
あッひやァァァァァァァッ!!!」
ちひろ( ゚Д゚)「2000年は言い過ぎでは?」