あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~   作:だいだろすちひろ

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 前回のあらすじ

 暴走ルベド、あらゆる猛者達を叩きのめす。



Tetractys(テトラクテュス)Grammaton(グラマトン)

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 野太刀がルベドの顔面を捉えた。鞘で腹部を突かれ、一瞬動きの止まったルベドへと、野太刀は翻し、顔面を捉えていく。

 

 長尺の野太刀を、片手で巧みに操り、V時の曲線を描くその姿は、かの佐々木小次郎のつばめ返しを彷彿とさせる様な切り返し。

 

 大きな金属音と共に、ルベドの顔面が弾ける。しかしながら、姿勢は依然として整ったままだ。虚をつかれた一撃を受けてなお、揺らぐ事の無いその姿―――正に堅牢。

 

 ―――わずらわしい。

 

 ルベドのAIはその様に考えて行く。鬱陶しい羽虫を殴り飛ばそうと、行動を開始した時だった、ルベドの腹部に起きる衝撃―――野太刀が突き刺さる。

 

 しかし、揺らがない。アロービーチの突きをまともに受けながらも、まるで微動だにしない。

 

 腹部に突きつけられたままの野太刀をルベドの眼球型カメラが捉えた。ルベドは状況を確認し、思考を始める。何も問題ない。でた答えはこれだった。こんな物で自らを押し付けようが、何も問題ない。ルベドは―――AIはそう判断し、野太刀ごと押し返し、殴り飛ばすという判断をする。

 

 ルベドが動こうとした―――が。

 

 ―――ガァン。

 

 後頭部に起きる衝撃。鞘がルベドの後頭部へと直撃していく。前方にいた筈のアロービーチの姿は既にそこには無く、現在はルベドの右横にまで移動している。

 

 瞬間移動―――などでは断じてない。腹部に突き刺した野太刀を起点に、右足の捻りと体軸の捻りを持ってして、最短でルベドの右方に回り込んだ、そしてその行動の着地点は、鞘での後頭部への殴打だ。

 

 鬱陶しいハエが、自分の右へと移動した、高速で振り向くルベドへと突き刺ささっていく―――鞘での突き。

 

 先程と同じ要領で、即座に死角へ回り込み、余った左手での、鞘での返す突き。

 

 ブンブン、ブンブン動き回る鬱陶しいハエを追いかけ回す様に、ルベドは高速でアロービーチを追いかけ回す―――が、悉く攻撃を受け続けていく。

 

 ある一定の空間を、円を描くかのように二人は動き回る。

 

 アロービーチの野太刀に斬りつけられ、鞘で殴打され、突かれていくルベドが、追いかけ回すかのようにアロービーチに振り向くが、そこには既にアロービーチの姿は無い。

 

 野太刀が、鞘が、入れ替わりながら、ルベドを打ち付け、斬りつけていく。

 

 地底湖に響き続ける金属音―――ルベドのボディメタルが打ち付けられている音を聞きながら、ギルメン達も他のメンツもあっけに取られていく。

 

 意味が分からないからだ。何がどうなればこんな事になるのか分からない。ルベドがその気になれば、パンチ一発でアロービーチは終了の筈だ。

 

 今までも全てそうなってきた。しかしなぜだ、なぜそうならない―――なぜルベドは攻撃しない。

 

 「…な…なんだありゃ…バグったんか?」

 

 その言葉を吐いたのはウルベルトだ。この言葉は、見ている全てのギルメン達の代弁でもあるだろう。ぐるぐるぐるぐるアロービーチを追いかけ回すだけのルベドの行動は明らかに異常だ。

 

 そんな異常な行動を見ていたギルメン達の中で、ある一人が戦慄する。

 

 「…ルベドが()()()()()()()()()()()()()()()()()()…なんという男だ…。」

 

 ヘロヘロのその言葉が宙を舞った。

 

 

 

 

 理合(りあい)と言う言葉がある

 そうなる理由であり、道理とも呼ぶ。

 ある者が強い力で押し付けられたとしよう。

 そうすれば、押し付けられた者は

 ()()()()()()()()押し返してくる。

 ()()()()()()()()()()()()からだ。

 鞘で押されれば、ルベドは押し返そうとする。

 前進し殴りつけるなどの行動に出るだろう。

 故に『先を取る』。

 次行動に先回りし

 『嫌なポジション』を『先取り』する。

 そうなれば、次はそのポジションを

 取り返そうとルベドはするだろう。

 だからこそ―――『先を取る』。

 嫌なポジションを取り戻したルベドの

 視線の先には、既に嫌なポジションに

 先回りしているアロービーチがいる。

 ちょろちょろと動き回り、

 自分を大した力でもないのに

 押し付けてくる小バエを突き飛ばし

 殴りつけようとするが

 その時には既に小バエは別の位置にいる。

 そして至近距離からの攻撃に絞る事によって

 心理の誘導を測る。

 目の間でちょろちょろ動き回り、

 自分を叩いてくる奴が居れば

 意趣返しをしてやろうと考えるのは自明の理だろう。

 それはルベドのAIとて同じ事の様だ。

 いや、むしろ優秀なAIだからこそ―――か。

 単純な行動を繰り返されれば

 『単純な行動』でのやり返しを行う。

 人間らしい行動―――『子供らしい行動』だ。

 優秀過ぎるAIが仇となった。

 心理戦が通用する程のAIを搭載されたルベドは

 アロービーチの手のひらの上で暴れている。

 行動の先を取られ―――行動の『束縛』を

 アロービーチにされているのだ。

 攻撃を繰り出される前に『封じ込める』。

 故に『攻撃の封殺』。 

 攻撃を避ける事は叶わない。

 なぜなら『反応できない』から。

 攻撃を受ける事は叶わない。

 なぜなら『受けきる事ができない』から。

 『回避』も『防御』も不可能。

 ならば―――『攻撃をさせない』。

 アロービーチがルベドと戦う事に対して

 出した答えがこれだ。

 

 

 

 斬りつけられ、殴打され―――突き刺される。

 

 そしてこの行動の全ての起因になっているある事がある。

 

 アロービーチは絶えず、交互に野太刀と鞘をルベドの腹部に突き立てている。

 

 これには深い意味がある。

 

 これは、いわば『触覚』の様な物だ。

 

 アンティリーネがアロービーチと戦った際、肘を腹部に突きつけ、正中の間合いを測っていたのと同じ事だ。

 

 アロービーチはこの二つの獲物を、ルベドの正の中心に突き立て、次行動の予測に入り、それを起点に動き回る。

 

 野太刀―――そしてそれを収める鞘、どちらも長尺物であり、非常に扱いずらい物の筈。それを触覚の役割を持たせ、尚も攻撃に巧みに生かしてくる。

 

 ―――『事理一致』。

 

 『事』とは『技』であり、『理』とは『術』。

 

 事理の(ことわり)、それが―――理合。

 

 ()()とが混じり合い、ルベドへと今、技術()が炸裂していく。

 

 地底湖に金属音が鳴り響き続ける。この音は先程も言った、ルベドのボディメタルが打ち付けられている音―――ルベドが滅多打ちにされている。

 

 

 

 

 アロービーチは―――強い。

 それは誰しもが知っている事だ。

 ならば、なぜアロービーチは強いのか?

 それは―――何でもできるから。

 子供の様な答えだろう。

 しかしながら、それ以外に彼の強さを

 形容できるものが無いのも事実なのだ。

 アロービーチは何でもできる―――つまりは『万能』。

 近接戦ならば―――自らの間合いならば

 持ちたる『技術』、それに比例する『経験』

 そう呼ばれる、引き出しを多用に持ち

 最大限に組み合わせて対応してくる。

 それは―――『空間の支配』に等しい。

 経験と言う引き出しから、最適な物を取り出し

 状況に合わせて組み合わせ、相手を圧倒していく。

 それがアロービーチだ。

 そして、現在のアロービーチは

 『小さい者』と戦う事に『慣れている』。

 理由は、自らを打ち負かした、生涯のライバルとの

 無数の戦い―――経験があるからだ。

 この墳墓での数々の戦いが

 彼を小さき者の天敵へと変えてしまった。

 そんなアロービーチは見続けた。

 居合の構えを取りながらも―――見続けた。

 相手の―――ルベドの動きを見続けた。

 仲間がやられながらも

 その凍り付く様な冷静な瞳は

 ルベドの一挙手一投足を凝視し続けていた。

 そして答えは出る。

 相手は―――『子供』。

 技術もへったくれもない子供。

 只々力を振り回すだけの子供。

 ならば、付け入る隙はある。

 

 

 

 

 野太刀と鞘を交互に繰り出すアロービーチの姿がそこにはある。

 

 これぞ―――『鞘二刀流』。

 

 アロービーチのポリシーは、『使える物は何でも使う』だ。

 

 そんなアロービーチを持ってしても、ここまでに至る距離は非常に遠かった。あの場での居合は確実に成功しなかっただろう。放つ前に殴られて終わりだった。仲間達が紡いだこの距離こそが―――待ちわびた距離だ。

 

 居合は只の捨て駒だ。元より、当たるとも思ってはいなかった。居合と言う分かりやすい構えを最初に取る事で、一撃で倒す事が狙いと相手の真相心理に刷り込みを入れての、虚を突く鞘での『突き』。

 

 待ちわびた距離を確保したアロービーチは止まらない。全身全霊を持って迎え撃つ。そんなアロービーチを、どうして子供(ルベド)が止められようか。

 

 滅多打ちにされる―――あのルベドが成すすべもない。

 

 「機械ふぜいが―――十年早いんだよ!!」と、なんちゃらファイターのなんちゃらあきらが言いそうな程の気迫を持って、ルベドを滅多打ちにしていく。

 

 ―――押し切れる!?

 

 ここに来て、ギルメン達の中に希望が浮かぶ。

 

 博士の言葉を信じるならば、現在ルベドには自己修復能力が機能してはいない筈だ。ダメージは着実に蓄積されている。

 

 希望が湧いたギルメン達―――そんなギルメン達とは裏腹に、アロービーチに湧くのは、()()()()()()()

 

 その懸念を振り切るかのように、アロービーチは攻撃を繰り出していく。

 

 ―――ジャリ。

 

 アロービーチの右足が鈍い音を放つ。突きつけた鞘を起点にしたまま、右足を軸に地面をねじり挙げていった音だ。

 

 アロービーチの体が半回し、ポジションを変えてルベドを斬りつけていく―――その時だった。

 

 ―――ガギョォォォン。

 

 轟音―――されど歪な音が地底湖に鳴り響く。

 

 アロービーチの斬りつけと同時に鳴ったその音と共に、野太刀が空を切った。

 

 ルベドの姿が消えた―――否、ルベドがこけた。

 

 度重なるルベドへの攻撃。その際に繰り出されていく、最短を走るかのような動きの移動。繰り返されるその行動をルベドは見続けた事により、ルベドに変化が訪れる。

 

 アロービーチの動きを―――真似した。

 

 自らに迫る野太刀を、アロービーチの様に体を捻じり、ひらりとルベドは躱そうとした―――が、アロービーチ程の猛者の動きを、一朝一夕で真似できる筈もない。

 

 先程の音は、ルベドが右足を捻った際に鳴った音だ。力強く捻じった事により、轟音が響き、捻りの勢いに耐えれなかったルベドはそのまま高速で回転し、勢いよく地面まで倒れてしまった。

 

 ギュラギュラ回転しながら地面を転がるルベドの姿は非常にシュールな物だ。自分の取った回避行動でこの様な無様を晒してしまえば、相手から笑われる事必死であろう。

 

 だが―――アロービーチは笑わない。

 

 アロービーチの懸念が現実の物となったからだ。

 

 成長している、着実に―――物凄い速度で。

 

 転がっていたルベドが即座に立ち上がっていく。そんなルベドに襲う違和感。目の前にはアロービーチの姿があり、動こうとした瞬間、右足に違和感が襲う―――踏み付けられている、アロービーチの右足に。

 

 先程とはまた違う距離にルベドは困惑し、少しの間が空いた、その瞬間に顔面が二度打ち付けられていく。野太刀と鞘で一度ずつだ。打ち付けたアロービーチは即座にバックステップを踏み、飛び上りながらも、鞘で突きを繰り出し、ルベドの腹部に突きつけていく。

 

 アロービーチが地面を踏みしめれば、先程と同じ距離がまた確保されていく。

 

 そしてそこからは同じだ―――滅多打ちにされていく。

 

 これ以上時間をかけるのは不味い―――アロービーチはそう思うが、だからと言って、決めに行ける程の攻撃は持ち合わせてはいない。

 

 焦りで下手な動きをすれば、一瞬でひっくり返される。それだけ隔絶した力の差がそこにはあるからだ。

 

 冷静沈着に物事を分析し、現状自らの出来る事だけを続けていく。これもまた、アロービーチの強さだ。アロービーチが最強と言われるが所以はこの冷静さにもある。

 

 一方的な戦いがまた始まっていく。地底湖に希望が舞い降りた。

 

 それと同時に起こる―――異変。

 

 ―――ピタリ。

 

 ルベドの動きが止まった。

 

 それは完全なる静止。

 

 鞘を腹部に突きつけたまま、アロービーチもまた静止する。

 

 ルベドが動きを止めたならば、こちらも動きを止める。下手に動けはしない。一発で持っていかれるからだ。

 

 「…エネミー…エネミー…エネミー…エネミー…。」

 

 静止したルベドが何やらぶつぶつ喋り出す。

 

 一体何が?そう思ったアロービーチにゾクリとした感覚が襲う。

 

 

 

 ―――ヤバい。

 

 

 

 何かは分からないが、とにかくヤバい。

 

 危険センサーが盛大に警報を上げた瞬間―――ルベドが爆発した。

 

 突如巻き起こるCaloric(カロリック)Blaze(ブレイズ)の噴出。とっさに後方に飛び退いたアロービーチだったが、完全に躱しきる事はできずに、そのまま吹き飛んで行く。

 

 吹き飛び、地面に接触したアロービーチはギュラギュラ回転した後、そのままの勢いで即座に立ち上がり、空中を飛翔するかのように後方へ飛び上がっていく。

 

 その眼差しは、未だ正面を見つめたままだ。敵を見据え続けるアロービーチの野太刀は突きの構えを取っている。追撃がくるのであれば迎え撃つつもりだ―――『究極の(とつ)』を持ってして。

 

 しかしながら、追撃は来ない。

 

 そのまま地面に着地したアロービーチは重心を落とし深く構える。

 

 しかしながら、やはり追撃は来ない。

 

 普通なら追撃が無い事に喜びの感情を持つだろうが。「チッ」アロービーチは一つ舌を打った。

 

 ―――距離が離れた。

 

 追撃があれば、どのような形であれ、もう一度あの距離に戻れる可能性があったのだが、これでその可能性は潰えた。

 

 またあの距離に入るのは至難の業だ―――そう思っていた時だった。

 

 「エネミー…エネミー…エネミー出現…脅威度…『極大』…本機を破壊できる可能性のある個体…出現…エネミー…エネミー…エネミー…本機の敗北確立を計算…敗北確立…『100㌫』…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()CODE(コード)使用の必要…あり…。」

 

 地底湖に響くルベドの声と共に、ルベドの体から炎が更に噴出していく。これは初めに『C・B・M』に移行した時と酷似した現象だ。しかし、噴出している炎の量は桁が違う。地底湖の天井まで吹き上がる炎は、その色を赤から白へと変色させていく。

 

 炎がより『高温』へと至っている―――出力が更に上がる。

 

 「…チッ、なんだありゃ…どうすっかね…。」

 

 アロービーチが舌を打つ。それと同時に出る言葉、この男は未だ戦意を失ってはいない。

 

 そんなアロービーチの耳に届くのは―――ガーネットの声だ。

 

 「…あぁ…あぁ…なんてことだ…。」

 

 「――~~~!?博士!何なんっスかあれ!?どうなってる!?」

 

 喚くタブラがガーネットに詰め寄る。タブラの隣では、NPCである『ニグレド』が、付きそうかの様に隣に立ち、タブラを見つめている。

 

 「…あぁ…どうなってるかって―――おぉい!アロォォォビィチィィィ!!」

 

 「―――はぁ?お、俺?」

 

 「お前ェェェ!強すぎるんだよォォォ!!何てことしてくれたんだ!?」

 

 博士ことガーネットから、唐突に投げつけられていく理不尽な言葉。流石のアロービーチも、この言葉にはギョギョっと驚いていく。

 

 ガーネットが頭を抱え、小さく呟きだす。「もう終わりだ」そう言った。

 

 自己完結するガーネットの胸倉を、タブラが掴む。その姿を無言で見つめるニグレドの姿は妙にシュールで、こんな状況下ではあるが、アロービーチは少し笑ってしまった。仮にニグレドに意志があったとしたら、この状況をどう思うのかなどと、意味のない事を考えてしまうくらいにはツボに入る。

 

 「…あぁ…暴走を甘く見ていた…まさかCODE(コード)まで自分で引っ張り出せるとは…いや、暴走したから…支配権がなくなったからか…?」

 

 「だからァァァ!何スか!そのCODE(コード)って!?」

 

 ふるふるとガーネットは首を振る。

 

 「見ていれば分かるさ…そしてアロービーチ…お前は強すぎたんだ…ルベドを追い込んでしまった…CODE(コード)まで引っ張ってくるくらいに…ね。それが君の…いや、私達の敗因だよ―――()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 そう、アロービーチは強すぎた。

 

 型にはめ、ルベドを圧倒する程に。

 

 AIに感情があるのか?そう言われてしまえば、それは分からない。しかし、現在のルベドの行動を、感情と言う言葉にもし当てはめてしまうならば、現在のルベドを襲う感情は―――『恐怖』だろう。

 

 生まれたばかりのルベドに、突如現れた、自らを殺しうる敵。楽しくギルメン達(おもちゃ)と遊んでいた所に、殺人鬼がやってきて自分をボコボコにしてくるのだ。子供がこれで恐怖を抱かない筈がない。これはゲームだろ?そう思うかも知れないが、ゲーム上の存在であるルベドにとってはユグドラシルこそが世界だ。NPCレベルのAIならばこうはならなかっただろう。高性能すぎるAIが仇となった。

 

 今のルベドは酷く怯えている―――なりふり構わず殲滅にくるだろう。            

 

 成長と言う欲望すら投げ捨てて―――いや、成長するからこそ恐怖を覚えたのかもしれない。

 

 ルベドが高速で空中まで移動する。浮遊したルベドが、そのか細い右手を突き上げた。

 

 ―――ズン。

 

 鈍い音が地底湖に響く。その音の発生した方向へと、全員が振り向いた。

 

 驚愕が全員に押し寄せてくる。そこにあった物を見た時、その音を発生させたある物を見た時―――ガーネットを除く全員が目を疑った。

 

 そのある物が―――地面に突き刺さっていたある物が、ゆっくりと浮遊し、ルベドの頭上に辿り着く。

 

 「Ultimate(アルティメット)Tool(ツール)―――『斬艦刀』。」

 

 ルベドの頭上に浮遊し、天を突くかのように静止している巨大な物体、それは―――『真・斬艦刀』。

 

 「Ultimate(アルティメット)―――Connect(コネクト)。」

 

 そして、斬艦刀とルベドの右手が、接続され『一体化』していく。

 

 

 

 ―――ギャグかよ。

 

 

 

 誰かがそう言った。言い方からしてウルベルトだろうか。確かに、身長140㌢程の少女の右手に60㍍を越える様な巨大な剣が接続されれば、その様な言葉がでても仕方ないだろう。

 

 しかし、誰も笑わない。笑えるはずがないからだ、この様な凶悪な光景を見せつけられて笑える者などいる筈がないだろう。もし、これがギャグならばどれだけ良いだろうか。いっそゲラゲラ笑ってやるから、嘘だったと言って欲しい物だ。

 

 絶望的なこの光景、しかしながら、これはまだ序章に過ぎなかった。

 

 「Caloric(カロリック)Blaze(ブレイズ)―――Connect(コネクト)。」

 

 ―――本当の絶望が襲い来る。

 

 斬艦刀の周囲にメラメラと炎が噴き出した。この炎が何かなど言うまでもないだろう―――Caloric(カロリック)Blaze(ブレイズ)だ。

 

 メラメラ燃える炎が、斬艦刀の刀身のある空洞に向け走り出す。空洞は炎によって熱せられ、その存在を強烈に主張してきた。

 

 存在を主張してくるその空洞は―――『四つの文字』の様にも見えた。

 

 「CODE(コード)―――『Grammaton(グラマトン)』。」

 

 ルベドがそう言えば、より一層炎は強さを増し、四つの文字を照らしあげる。

 

 刀身に浮かび上がる四つの文字。

 

 それは―――『神聖四文字(テトラ・グラマトン)』。

 

 そして、地獄の門が―――

 

 「Ignition(イグニション)。」

 

 ―――開いていく。

 

 Caloric(カロリック)Blaze(ブレイズ)が吹き上がる。斬艦刀の刀身に刻み込まれている、神聖四文字を起点に、地底湖を眩く照らしあげていく。

 

 地底湖にいる全員がその光景を見上げていくが、そこにはもうルベドの姿は見えない。いないのではなく、見えない。なぜなら、そこにあったのは『太陽』だったからだ。

 

 燃え上がる斬艦刀、その姿は正に太陽だった。

 

 「…ったく、なんてもん作りやがんだか、このギルドはよぉ…万事休すって奴か?」

 

 やれやれと言わんがばかりに、アロービーチがそう言いながらおどけた。さしものアロービーチでも、あれはどうしようもならない。スケールが違い過ぎる。

 

 ―――カラン。

 

 剣の落ちる音が響く。それはルビアスの剣だ。太陽を見上げたルビアスが呆然と立ち尽くしている。

 

 「…なによあれ…あんなん…どうしろってのよ…どうにもなんないでしょ…。」

 

 「四階層が…いや―――ナザリックが吹き飛ぶぞ…。」

 

 完全に戦意を失ったルビアスがそう呟けば、続く様にタブラからそう言葉がでていく。

 

 呆然自失と立ち尽くす全員の目の前で、太陽が傾いた。

 

 「Tetractys(テトラクテュス)―――Grammaton(グラマトン)。」

 

 恐怖に支配されたルベドが、一切の容赦なく、地底湖に斬艦刀を振り下ろしていった。

 

 

 

 

 

 

 





 千葉セバス「じぃぃぃかいよぉこくぅぅぅッ!!」

 BGM―――『You (ユー)are(アー)〇lr(〇ール)reaby(レディ)dead(デッド)

 ~千葉セバスナレーション~
 
 むりィィィッッッ!!
 ムリぃぃぃッッッ!!
 無理ィィィッッッ!!
 あァァァッッッ!!
 こんなのこんなのッッッ!!
 MURyyyyyyッッッ!!
 あッひゃァァァッッッ!!
 全てを無に帰す圧倒的な理不尽を前にッ!
 只々立ち尽くすだけの猛者達ッ!
 タブラは折れッッッ!
 ルビアスは枯れッッッ!
 全ての闘志が絶滅したかに思えたァァァッッッ!
 だがァァァッッッ!
 天空に輝く一つの極星ッッッ!
 その星が輝きッ!蒼穹を駆けた時ィィィッッッ!
 んんんんあァァァッッッ!!!
 ポスポスポスポスポスゥゥゥンッッ!!!
 うぅぅぅん…アタタタタタタタッッッ!
 ひやァァァァァァァァァァッッッ!!!
 天空に輝く幾多の星々ィィィッッッ!!
 そして一際輝く『四つの巨星』ッッッ!!
 次の攻防がァァァッッッ!!
 我ら最後の攻防になるだろうッ!!
 天に帰る時がきたァァァッッッ!!!
 狂える暴凶星よォォォッッッ!!



           
           次回

 あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆

      「星が輝き蒼穹を駆けた時―――」




 千葉セバス「ルベドよ…お前が最大の強敵(とも)だった…」

 ちひろ(ΦωΦ)「You're already dead(お前はもう死んでいる)。」

 千葉セバス「…かは…。」

 ちひろ( ゚Д゚)「あれ?もしもし?もしも~し…千葉さ~ん。」

 千葉セバス(失神)「……。」

 ちひろ( ゚Д゚)「し…死んでる…?」

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