あんてぃりーねのゆぐどらしる☆だい☆ぼう☆けん☆ ~泣き虫が伝説になるまで~ 作:だいだろすちひろ
前回のあらすじ
中央大陸救世主伝説始まる。
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―――あれからどれくらいの時間が経っただろうか?
獣人達の玩具にされていた人間達を率いて、ルベドは大陸中央部を旅した。
この世界と、アインズ・ウール・ゴウンの情報を集めながら、人間達の安寧の地を目指し旅を続けた。
軽く考え行動に移したルベドだったが、それなりの大所帯だ、ぶち当たる壁も大きく、順風満帆とはいかなかった。
蔓延る人間軽視の風潮は強く、非常に困難な旅となったのだった。
様々な情報を集めながらのこの旅―――やはり、ここはユグドラシルではなかった。
魔法やアイテムなどに加え、種族やモンスターであってもユグドラシルと酷似しているこの世界―――しかし、ユグドラシルではない。
そんな、ユグドラシルに酷似したこの世界だが、一つだけ全く違うモノもあった。
それは、生物の力だ。
この世界の生物は軒並み弱い。LVと言う概念まであるこの世界だが、軒並み低LVなのだ。
ユグドラシル基準で物事を考えていたルベドは、まずそこの壁にぶつかった。やることなす事が弩級の結果となり「あれ~」とよく小首を掲げたモノだ。
そう言えば、子分にした獣人―――『マダラ』『チャッピー』『ノリーオ』だが、この世界―――中央大陸ではそれなりの猛者だった事には非常に驚いた。
特に、獣人国家間ではかなりの有名人で―――主に悪行でだが、名の知れた連中だった。
ルベドが手を出すまでもなく、絡んできた奴らを、それはそれは豪快に返り討ちにしていったモノだ。
特にマダラの強さは頭一つ抜けていた。『獣槍術』と言う名の武術を巧みに操り、敵を悉く蹴散らして行った。
何でも、獣槍術と言うのは、大陸中央部でも名の知れた猛者であった、ビーストマンの英雄が作りあげ、練り上げた『武術』なのだと言う。
その英雄は、既に加齢により現役から退いているらしく、マダラは『二代目』から、ゴリゴリに絞られたのだと言う。
沢山の弟子達の中でも、抜きんでた才能を発揮していたマダラは、『三代目』筆頭だったそうだ。
そんなマダラは、獣槍術に伝わる『三つの奥義』を継承する試練に挑み、余りの過酷さから、二代目の元を飛び出し、悪党として暴れ回る事になったらしい。
非常に勿体ない事だ。もしかすれば、獣人国家の歴史に名を残す程の偉人になったかもしれないのに。
前にそう言った時は「え?嫌だよ、堅苦しいのはごめんだね」と言っていた。
なんだかんだ、自由気ままに生きて行く方が、マダラの性格にはあっていたのかもしれない。自分の思うがまま、風吹くままに生きる、聞くだけでも悪くはない。まぁ、悪党でなければ―――だが。
ちなみに、マダラは獣槍術の第参奥義まで繰り出しているが、あれはまだ未完成なのだと言う、真に継承し、技を自らの物にする前に逃げ出してきたからだ―――が、未完成と言えども、数多の強敵達を打ち破ってきたのは言うまでもない。いつか、真の奥義をこの目で見て見たいものだ。
そうそう、ついでにあの
あの元親分は、この中央大陸ではかなり名の知れた『豪傑』だった。
奴の名を聞くだけで、大悪党すら震えあがる程であり、獣人国家だけでなく、その他の『亜人の大国家』もかなり手を焼いていたそうだ。
なまじ強いので、迂闊に手を出せなかったそうだ。国家単位で―――だ。故に、奴の悪行を止める事はできず、好き放題していたと言う。
よくよく思い返してみれば、確か奴のLVは『50.LV』に達していた。このLVは、この世界では破格の高さだ。しかもだ、奴は
かつて、亜人国家間に姿を表したドラゴン―――『エインシャント・ドラゴン』をも絞め殺したと言う。人格が人格であれば、正に『大英雄』と呼ばれてもおかしくはないと言うのに。現実とは、まぁ無情な物である。
そんな
ちなみに、あの
話を戻すが、あの三獣士―――自慢の子分達は、旅を経てメキメキと力を付けていった。今では、『二つ名』が風を切って歩く程にまで成長した。
―――『粛清のマダラ』
―――『煉獄のチャッピー』
―――『狂犬のノリーオ』
マダラとチャッピーは、この二つ名で呼ばれればまんざらでもない顔をするのだが、ノリーオはこの二つ名で呼ばれると「俺は犬じゃねぇッ!!」と言いながら、烈火の如く怒り出す。
たまに不意に言いそうになるのを我慢するのが大変だ。全く、子分の癖に気を使わせるじゃないか。
そんな、馬鹿でアンポンタンな子分達だが、可愛い子分でもある。そんな子分達と共に、人間達の集団を引き連れ、大陸を旅した。
人間達は、最初はマダラ達に非常に怯えていた。それはそうだろう、自分達を捕獲し、商品として提供していたのだから。
溝は深かった、それも非常に。恨みつらみが爆発し、憎悪を覗かせる者すらいた。順風満帆ではなかったと言った、それは仲間内でもそうだ。
そんな中、真っ先にマダラ達に順応していった少女がいた。
名前は『サキ』と言う。サキは純粋で、健気だ。サキの純粋さが、湧き上がる憎悪をやわらげ、溝を少しずつだが埋めていったように思える。
まだまだ完全に心を通わせたとは思ってはいない。でも、いつの日か―――時間はかかるだろうが、皆が笑顔で話せる。
そんな日が―――来るかもしれない。
そう言えば、サキは足が非常に速く、自分の事を『疾風のサキ』と言いながら走り回っているのをよく見かける。
余りはしゃいでは駄目だ。こけたら血が出るぞ?
そうして、紆余曲折を経て、安寧の地を見つけ出す。
その安寧の地の名は―――『スルクー3』。
かつては繁栄を極めたが、今では破棄されてしまった都市だ。
なぜ破棄されたのかはよくは知らない。しかし、かつて栄えていただけあり、立地としては非常に良い物だった。
『エナ多種同盟国』と言う国家に属する都市であり、最盛期には、その人口は『四十万』にまで達したと言う。
エナ多種同盟国の首都と言う訳では無いが、周辺の国家を見て見ても、一、二を争う程に大きな都市だ―――いや、都市だった。
周囲に大きな山脈が広がっており、その山脈の名は『ケイテニアス山』と言うのだそうだ。
広く大きな山脈の、最も近くに位置するこのスルクー3だが、なぜか破棄され、現在ではもぬけの殻になっている。
理由は先程も言った様に、よくは知らない―――が、なんとなくだが予想はできた。
それは、ケイテニアス山の周囲に『建国されていた』国家である―――『インべリア』という国が関係していると思う。
ケイテニアス山の周辺と言う様に、スルクー3とインべリアは非常に近い場所に位置している。いわゆる『隣国』と言うもの――スルクー3は都市だが――になるだろう。
インべリアは『魔法大国』とも呼ばれており、その人口は『五百万』を越えたと聞く。また、人口のなんと九割もの数が『
『七色に輝く瞳を持ち』、四大系統の魔法を強化する能力に秀でた種族で、人間と言う、非常に弱い種族の中でも、かなり異彩を放っていた種族だそうだ。
この様に、特殊な人間種が建国したインべリアであるが、この国こそが、スルクー3が破棄された理由なのではないかと考える。
インべリアは人間が種となる国家だ、大してエナ多種同盟国は、亜人達からなる混合種族で構成された国家だ。
人間と亜人は敵対関係にある、インべリアが脅威であるエナ多種同盟国に牙を剥き、打ち滅ぼそうとした―――とは考えない。
先程言った、インべリアは建国されていた―――と。
インべリアは既に滅んでいる、理由は詳しくは知らない。様々な憶測が情報を集めていた際飛び交っていたが、結局は憶測の域を出はしなかった。
この際、インべリアが滅んだ理由はどうでも良い。重要なのは、その『滅び方』にあった。
インべリアは、人口の全てが『アンデッド化』し、滅んでしまったのだ。
つまりは、単純に五百万という数のアンデッドが発生したと置き換えても良いだろう。
五百万だ―――尋常な数ではない。
アンデッドは生者を憎む。つまりは、人間所か、亜人達ですらアンデッドは明確な敵になっていくだろう。
インべリアから流出したアンデッド達は、ケイテニアス山周囲に散開し、徘徊を続けている。
これが、スルクー3が破棄された理由の、答えなのではないかと思う。
インべリアの住人達は、殆どが知性を持たない、低級アンデッドに成り下がった。ゾンビなどがいい例だろう。この様な低級アンデッドは、行動範囲が余り広くない、散開したとは言ったが、遠方の国家まで到達する個体は非常に稀だろう。
そうなればどうなるかと言うと、一番煽りを食らうのは隣接しているスルクー3になっていく。
押し寄せるアンデッドの群れ、低級アンデッドと言えども、数十万、数百万規模が周囲をうろついていると考えれば、都市は疲弊し、いずれ瓦解していくだろう。
故に破棄された―――と考える。
まぁ、これも只の予想であって、確信は無いのであるが。
真実は分からないが、取りあえず言える事は、スルクー3は現在もぬけの殻という事。
使わないのなら、貰ってやろう。マダラのその言葉から、全員が立ち上がり、長く遠い道のりを歩き続けた。
アンデッドの蔓延る危険地帯に、住居を構えるなど正気の沙汰ではないだろう。
確かにそうだ―――普通ならばだ。
ここには、約一名―――普通でない者がいる。
蔓延るは、低級のアンデッド達―――故に『結界』を張ってしまおうと、ルベドは提案していった。
長い旅路で、ある程度の必要な素材は集め終わった。後は、現地におもむき、状況を確認しながら、結界を張る為の『マジック・アイテム』を作成すればいいだけの事。
それなりに煮詰めなければいけない為、すぐにとはいかないだろう―――が、その間の防衛戦くらいは朝飯前だ。
マダラが、チャッピーが、ノリーオが―――ルベドがいるからだ。
長く遠い道のりを、皆が希望を胸に歩き続けた。
そして―――遂についた。
♦
「うわ~…でっかい。」
スルクー3の入り口に立っているルベドが、そう可愛くごちた。
目の前には、巨大な門がドンと構えるかのように立っていたからだ。
「エナ多種同盟国には、
ルベドの隣に立つ、チャッピーがそうルベドに向け言葉を放った。ルベドはチラリとチャッピーの方に視線を移す。
「ほ~う、そうなのか。でも、お前達の元親分は、これじゃ潜れないぞ?」
「あの人は特別でしょ?他の
「ふむ」そう言いながら、ルベドは腕を組み、こくこく頷いていく。
「入るぞ…皆、気を抜くな。」
ルベドがそう言えば、隣に立つチャッピーがこくりと頷き、後ろに控えていた全員が、緊張に表情をこわばらせていった。
ギィ―――巨大な門が開いていく。
ルベドが先頭に立ち、歩を進めていく。すぐ後ろにはチャッピーが槍を手に持ち、警戒しながら進んで行けば、残る仲間達、『人間達』を守る様に、マダラとノリーオが、槍を手に持ち目を光らせ進んで行く。
ピリつく空気の中、ルベドはゆっくりと進んで行く。そこで、ある事に気づく―――いや、やはりなと言う気持ちが湧く。
このスルクー3には―――アンデッドがいない。
ここに来るまで、数々のアンデッドと遭遇してきた。低級のアンデッドばかりではあったが、それなりの数には出会ってきた。
しかし、このスルクー3に近づくにつれて、なぜか、アンデッドの数は減っていったのだ。
最初は気のせいかと考えていたが、近づけば近づく程に、アンデッドはその数を減らしていった。
そしてこのスルクー3―――アンデッドがいない。
―――キュイン。
ルベドの眼球型カメラの瞳孔が狭くなる。これは警戒しているからだ。いくらなんでもおかしい、普通じゃない。
ルベドはアンデッド感知を発動させていく。そうすれば、周囲一帯にルベドのセンサーが張り巡らされて行った。
スッと、ルベドは後方に居るチャッピーに手で合図を行っていく。そうすれば、緊張の糸が切れたように、深いため息をついたチャッピーが、構えていた槍を地面に突き刺していった。続いて、チャッピーは残る者達にも、合図を行う。マダラとノリーオも、チャッピーと同じように、槍を地面に突き刺せば、周囲からは安寧の息の音が響いてきた。
「やはり、アンデッド反応は無いか。」
ルベドがぼそりと呟いていく。それと同時に、周囲を伺えば、緊張の糸が切れたかのように、へたりこむ者達が相当数いた。
気を抜き過ぎだと、昔のルベドなら言っただろう。だが、今のルベドはそんな事は言わない。生物にとって、精神的疲労が肉体的疲労を凌駕する時もあるのだと、この旅を通して分かったからだ。
警戒は自分だけが行っていればいい。取りあえずは、皆に休息を取らせる必要があるだろう。肉体だけでなく、精神的にもだ。
皆に休息を取らせている間、ルベドは軽く周囲を伺う様に視線を動かしていく。
そして、こくこくと、普段のルベドらしからぬ、少々大げさな動作で頷いていった。
この動作は非常に大事だ、わざとらしすぎず、また、確信を持ったように頷く姿を、休息をとっている皆に―――主に人間達に気づかせる意味があるからだ。
周囲に少しのざわめきが起きていく、主に人間達からだ。マダラ達は、普段どおりにこちらを見つめている。
皆の視線が集まったのを感知したルベドは、頃合いかと考え、口を開く。
「うん、この立地なら問題なくアイテムを設置できるだろう。」
このアイテムと言うのは、いわゆる『結界』を張っていく為のアイテムの事だ。
結界とは言うが、別にバリアを張っていくような、仰々しい物ではない。ユグドラシルでは、探索の際に、低級モンスター掃討作業がめんどくさい場合などは、『エンカウント』を下げていく、もしくはしなくなる様な魔法を使用する場合がある。
高.LV帯のモンスターには効果は薄いが、低.LV帯には効果は抜群だ。
種族特化の魔法も中には存在し、ルベドが実験の為に、その魔法を―――アンデッド特化の魔法を発動させれば、周囲のゾンビ達が軒並み嫌がって、逃げていったのを確認している。
ルベドはこの様な、エンカウントに効果を発揮する魔法を込めたアイテムを作成し、既定の位置に設置する事により、アンデッドの侵入を防ごうと考えている。
どうやって作るの?と思わないでもないが、ルベドには『
タブラに
魔法など言わずもがなだろう。誰かに
一番の問題は素材だった。ルベドはユグドラシルからアイテムを一つも所持する事なくこの世界に飛ばされてきた。まぁ、実際ルベドにアイテムなど必要ないのだからしょうがないのだが、ここが非常に困難だったと言える。
全ての生物が軒並み弱いこの世界―――アイテムも同様だったからだ。
素材を集めるのに苦労した。器具を揃えるのに苦労した。少々手間と時間を有したが、どうにか、ゾンビ程度なら寄せ付けない魔法を、長時間発動させていくアイテムを作る環境と素材を手に入れた。
ルベドの言葉に、皆の表情が明るい物になっていく。当たり前だ、この言葉が意味する事は、自分達が暮らせる場所を手に入れたのと同義だからだ。
声を大きく上げ、喜ぶ者。涙を流しながら抱き合い、喜ぶ者。それは様々だった。皆がルベドに向け、大きく頭を下げていくが、ルベドはそれを手で制していく。
後は自分がやっておくから、取りあえずゆっくり休めと言えば、周囲から安寧の声と共にすすり泣く声が響いてくる。
ルベドの言葉が、皆に希望を与えていく、ルベドはそれをよく分かっている。自らの一挙手一投足が、皆の精神をやわらげ、時には疲労させるのだと、この長い旅を通して、よく理解したから。だからこそ、ルベドは自身を持って言わなければならない―――もう安心だと。
皆が心からの安らぎを堪能していれば、一人の女性が、ルベドの元まで歩いてくる。女性はその手に赤ん坊を抱きしめながら、ゆっくりとルベドの元まで歩いてきた。
ルベドの前で止まった女性は、涙で滲み、赤く腫れた瞼を見せながら、ルベドに深く頭を下げた。そして、赤ん坊をあやす様にゆさゆさと揺さぶれば、ゆっくりとルベドに向け赤ん坊の顔を見せてくる。
この子は確か、旅の途中に生まれた子だった筈だ。そう考えれば、随分と長い旅になった物だと、感慨深い気持ちを抱きながら、ルベドは赤ん坊の顔を覗いていく。
中々に愛らしい子だ。ルベドは人差し指で、赤ん坊の頬を二度、つんつん突つく。
赤ん坊が笑った。とてもうれしそうだ。続いて、ルベドは両手を広げ―――
「にゃ~。」
―――と、猫の真似をしていく。
そうすれば―――「ぶふぉッ!!」
笑い声が聞こえてくる。
声のした方向にルベドが振り向けば、そこにいたのはマダラだ。マダラが口元を押さえ、プルプル震えている。
「お前…今笑っただろ。」
「あ、あぁ…?わ、笑ってねぇ…し…。」
顔を背け、プルプルマダラは震える。ジト目でマダラを見つめていれば、キャッキャと笑う赤ん坊の声が聞こえてきた。
ルベドは赤ん坊を一瞥し、マダラの元まで歩いていく。
「じ~。」
「ま、まぁまぁ…待てよ親分…ぶふぉッ!」
「良い度胸だな、お前。」
プルプル震えるマダラを見つめれば、そこまでツボに入ったのかお前と思っていく。ジト目でマダラを見つめていたルベドだったが、ここに来て、ある物に気づいていった。
「うん?おい、マダラ…なんか城があるぞ?」
「くっくっ…あ、あぁ…城ぉ…?お、マジだな。」
ルベドとマダラが見つめる先には、非常に立派な城が見えた。小高い丘の上に建てられ、強固な城壁に守られた城だ。
流石は、かつて四十万もの人口を抱えた大都市だと言った所か、恐らくは、この都市のかつての『領主』の城だろう。
「う~ん…意外と使えそうだな。マダラ、ちょっとあそこまで行ってくる。」
「お?行くか?なら俺も一緒に行くぜ、親分。」
こくりとルベドが頷けば―――割り込んでくる声が一つ。
「私もいくッ!」
一人の少女がフンスと胸を張り、目をキラキラ輝かせながらこちらに向けて走ってきた。
「サキ…危ないかも知れないから駄目だ。」
「え~ッ!?なんでッ!?なんでッ!?いやいやいや~ッ!!」
サキと呼ばれた少女がルベドに抱き着き、駄々をこねていく。
ルベドとマダラは顔を見合わせる。そして、やれやれと言う風に、二人は肩を浮かせていった。
♦
「うわ~ッ!!すっごぉ~いッ!!」
城の最上階から、外を眺めていたサキが、ぴょんぴょん飛び跳ねながらはしゃいでいる。
ルベドとマダラも同じ様に眺めていくが、確かに、この景色は絶景だ。
腕を組み、外を見渡すルベド。この城は、丘の上に建てられているだけあって、都市内を悠然と見下ろしていける。
一しきり都市内を見渡すが、やはりアンデッドの姿は無かった。
どうやら、現状は特別な危機は迫っていないという事に、ルベドは安寧する。それと同時に思う―――やはりこの都市は広い。
自らが想定していたよりも、マジック・アイテムの数を増やさなければいけなくなる可能性が出てきた事により、ルベドの目が少し細まっていった。
「<
ルベドがぼそりとそう呟いた。
しかし、そんなルベドを持ってしても、できない事もまたある。超位魔法は使用できるが、『経験値消費系』の魔法やスキルは、ルベドは使う事はできない。
<
故に、マジック・アイテムでの代用となったわけだが、想像以上に数が必要になりそうだ。
しかし、その様な想定もしていない訳では無かった。一応は、切り札も用意している。
それは、『超位魔法』―――『
岩や土で出来た、天然の城壁をだ。
しかし、地形その物を完全に変えてしまうのはいかがな物かとルベドは考える。これからは自給自足していかなければならない。日当たり等の関係で作物が育たなくなる可能性もあるし、経年劣化で崩れ落ちれば、被害は甚大な物になるだろう。建造物の様に、細かく作られてはいない為、ひとたび崩れてしまえば済し崩しに崩壊していくだろうと考えられた。
どちらにしろ、これは最終手段の様な物である為、基本的には頭の中から除外している。
「う~ん…しかし、雨水をためる為に大きな池を作るのは悪くない気がするな~。水は絶対に必要だしな~。都市が機能していない以上、まずは機能停止している水源を確保するのが最優先だな。」
右手で口元を覆うルベドがそう呟く。
生き物が生きて行くうえで、水は欠かせない物だろう。
「…浄水もしなくてはな…真水で飲ませる訳にもいかないか…地層も弄る必要がある、濾過し綺麗にしなければ、皆が病気になってしまう。」
そう言いながら口元を覆い、考えるルベドが、ふとある事に気づいていく。
口を覆っていた右手で、ルベドは部屋の中にある豪華な机を、軽く撫でていった。
撫でた指には誇りがくっきりと付いている。それを見たルベドは目を細め、更に周囲に視線を移していった。
様々な場所が誇り塗れだ、家具も床も―――足跡一つない。
「…いつからだ?いつからここには誰も入ってはいない?」
この埃の量、一週間、二週間の量ではないだろう。少なく見積もっても年単位だ。それだけの期間、ここには誰も入ってきていない。アンデッド一匹、年単位でこのスルクー3には現れてはいないという事になる。
果たしてそんな事が起こり得るのか?アンデッドが跋扈するこの危険地帯で。
やはり、何かおかしい―――キナ臭い。
腕を組み考えるルベドは、はしゃぐサキに急かされ、窓から外を見下ろしていく。やはり、中々に広い都市だと考えていれば―――ピクリとルベドの眉が動いた。
この都市には、市壁に三つの門がある。そして、その三つの門の一つが、『荒れている』様にルベドには見えた。
その門は―――『ケイテニアス山』に向かって立つ門だ。
「おい、マダラ…なぜあの門だけ壊れている?」
「ん?…確かに…なんであっこだけ壊れてんだ?」
「妙だな。」
「あぁ、確かに妙だ。なんつーか、外からやられたんじゃなく、中から壊された様にも見えるぜ。」
二人は顔を合わせ、こくりと頷く。未だはしゃぐサキを、ひょいっとマダラは抱えた後に、ルベドと共に門まで走っていった。
三人が門まで到着すれば、そこには壊れ、傾いた大きな門があった。経年劣化などという事は断じてないだろう、これは―――人為的に壊されている。
そんな門の前で、ルベドがしゃがみ込み、何かを掴めば、その瞬間―――サキから悲鳴が上がっていく。
ルベドが掴んだもの、それは―――骨だ。
門の前、中、そして、その先へと、踏み砕かれた様な白い骨が無数に散乱しているのが見える。
「おい、親分…これって。」
「あぁ、間違いなく―――この都市の住人だろうな。」
サキがその言葉を聞いた瞬間、両手で口元を覆い、青ざめていく。それとは対照的に、ルベドの目つきは鋭い物へと変わっていき―――キュインと瞳孔が狭くなっていく。
「アンデッドが押し寄せてきたのか?全員で逃げたが、逃げ遅れた連中の残害…てことなんか?」
「本気で言っているのか?ここから先は山脈だぞ?逃げ込むには過酷すぎる場所だと思うが?」
マダラの言葉に、ルベドはそう返していく。
マダラの眉間に皺が寄り、門の向こうを―――ケイテニアス山を睨みつけていく。
「なんかあんのかよ…?この先に…?」
「分からん…ただ、このスルクー3の異常の答えが、もしかすればあの先にあるかも知れない。」
ゆっくりとルベドは立ち上がり、ケイテニアス山を見つめていく。この先に、自らを襲い続ける違和感の答えがあるのかと。
「行くのかよ?親分。」
「そうだな…不安の種は絶たないと…皆が安心できはしない。」
「ダメだよッ!!」
サキの叫び声が響く。とても不安そうな表情をしている、今にも泣きそうだ。
「ダメだよ…なんか…嫌な予感がするの…あの先は…怖い。」
そんなサキを、ルベドは優しく抱きしめていく。
「心配するな、本機は凄いんだぞ?知っているだろう?大丈夫、すぐに帰って来る。」
「ル…ルベドちゃん。」
抱きしめたサキから手を離し、続いてマダラに向き直っていく。
「頼むぞ、マダラ。」
「へいへい。他の連中には説明しとくからよ…早く帰ってきてくれよ?アンデッドが急に押し寄せてこないとも限らないんだからよ?」
こくりと一つ頷く。そして、再度サキに向き直る。
「すぐに帰って来る、約束だ。」
「…うん。約束だよ。」
そう言い、ルベドは翻し、歩を進めていく。
向かう先は―――ケイテニアス山。
♦
こつこつと、ルベドはケイテニアス山を登っていく。スルクー3から見て分かってはいたが、中々に殺風景な山だ。
木々は余りなく、見晴らしのいい風景が続いていく。そんな中を、ルベドはゆっくりと歩いて進んで行く―――道しるべを通りながら。
ルベドが進む先々には、砕け風化した様な骨がポツポツと落ちている。殺風景な風景の中、この白亜の骨は非常によく目立つ。
恐らく、この骨を辿っていけば、異常の正体を突き止められる。その様な、謎めいた確信がルベドにはあった。
警戒を怠らず、進むルベド―――そして。
「…アンデッド反応。」
ルベドのアンデッド感知に引っかかりがあった。ルベドの目が細まり、反応のあった場所を射抜いていく。
アンデッド感知は、感知できるだけで、そのアンデッドの正体が何かなどと、そのような具体的な事までは分からないが、ここまで何もなかった所に、突如現れたアンデッドの反応―――普通である筈がない。
目を細めたルベドが、尚も進んで行く。
「…?なに…なんだこれは?」
歩を進めていれば、アンデッドの反応が急速に増えていく。歩を止めたルベドに、一瞬の混乱が押し寄せてくる。
この反応―――千や二千では利かない。
ストンと、ルベドの中に落ちる何かがあった。
違和感が急に解消された様な、胸につっかえた物が取れた様な、その様な感覚だ。
「なるほど…そういうことか。」
この膨大な数のアンデッド反応。そして、スルクー3の明らかな違和感。
点と点が繋がった。
「スルクー3もまた、インべリアと同じという事か。」
そう言う事だ。ここスルクー3もまた、インべリアと同じように、住人がアンデッドとなり滅んだという事だろう。
ここまで一度もアンデッドを見なかった。しかし、ここにきての急速なアンデッド反応。アンデッドとなった住民が、ここケイテニアス山に集まっていると言う結論にルベドは至る。
「ふん、何が破棄された都市だ…適当な情報を掴ませてくれたな…あの『馬野郎』は今度あったらとっちめてやるとしよう。」
情報屋の『ミノタウロス』に悪態を付きながら、ルベドは更にケイテニアス山を進んで行く。そして、進めば進む程にアンデッド反応は増えていく。
そんなルベドの元に、現れるは『骨の鳥』だ。『ボーン・ヴァルチャー』と呼ばれる、骨のハゲワシが、ルベドの周囲を飛び回っている。
「…ふん。」
―――ガシリ。
驚異的な速度で、ルベドはボーン・ヴァルチャーを掴み取る。ボーン・ヴァルチャーも何が起きたか待ったく分かってはいないのだろう。気づいたら掴まれていたと言う様な雰囲気で、掴まれたルベドの手で暴れ回っている。
「偵察のつもりか?余り本機を舐めるなよ?なぁ、見ているんだろう?」
ボーン・ヴァルチャーに向け、そう呟く。この言葉が意味する事は、このアンデッドは偵察の為に作られた、もしくは操られたアンデッドだという事だ。
こそこそと自分の事を嗅ぎまわる奴に、嫌味を言ったルベドが―――ボーン・ヴァルチャーを放り投げた。
オーバースローで放り投げられたボーン・ヴァルチャーは、想像を絶する速度で一直線に飛んで行き、数キロ先で消滅していった。
そして、その瞬間―――悍ましい声が響く。
「ふははは…なるほど―――汚物だったか。」
「うん?」
汚物とか言う言葉が聞こえ、ルベドがなんのこっちゃと小首を掲げた―――その時。
「ん…なに?」
数キロ先―――ボーン・ヴァルチャーが消滅した付近に、突如巨大な影が出現していく。影はどんどんどんどん大きくなっていき、ある形を形成していった。
「うん?あぁ、なんだ…なにかと思えば『ドラゴン』か。」
そう、その形成された形は―――ドラゴンだ。
しかし、その大きさは筆舌に尽くしがたかった。
およそ、百㍍は優に超えるであろう、巨大なドラゴンが、長い首をうねらせ、その禍々しく赤く光る眼を、ルベドに向けていた。
「ふははは…ドラゴンをまるで臆さんか…やはり汚物で間違いない様だな。」
そう言いながら、巨大なドラゴンは、ニチャリとした笑みを作り、ケタケタ笑う。
そんなドラゴンに冷ややかな視線をルベドは送っていく。
汚物と言う意味はよくは分からないが、このドラゴンが、スルクー3の―――いや、この近隣の異常の元凶であるのは間違いないだろうとルベドは推測していく。
冷ややかな視線を送りながら、無言でドラゴンを見つめるルベドを見て、ドラゴンはまたも、ケタケタ笑いながら喋り掛けてくる。
「ふはは…どうした?臆していない風を装って、実は恐怖で震えているのではないか?」
「ふん…本機が恐怖するだと?笑わせるな、何様のつもりだ?『
「ふははははッ!
―――ピクリ。
心底楽しそうに笑うドラゴンとは正反対に、ルベドの眉間には皺が寄っていく。この皺は、不快感の表れだ。ルベドの機嫌が急激に悪くなっていく。いつもは余り感情を表に出さず、表情も能面その物の様なルベドが、ここまで不快感を露わにするのは非常に珍しい。
「…ふん、良く喋る奴だな…どうやらこの世界のドラゴンは、口だけは達者な様だ。」
「ふはは…この世界…か…招かれざる客人が、偉そうにしおって…しかし、やはり汚物よの、そのふてぶてしい態度―――気に入らんわッ!!」
瞬間吹き荒れる―――殺気の嵐。
豹変したかのように、ドラゴンは荒々しい殺気をまき散らし、怒りに顔を歪ませていく。
しかし、その様な殺気を浴びせられても、ルベドはどこ吹く風だ。殺気をまき散らすドラゴンを、さも大した事は無いと言わんがばかりの表情で見つめている。
「なんだ?なんか急に怒ったぞ?ぷんぷんしたいのは本機だがな。…まぁいい、おいドラゴン…いや『トカゲ野郎』、その様な殺気を本機に叩きつけておいて、無事に済むと思うなよ?まぁ、しかし本機は優しいのだ、謝ってこの山から姿を消すなら、見逃してやってもいいぞ?」
「…クックックッ…ふははははッ!!やはり汚物ッ!!どこまでも癪に障る奴らよのぉッ!!安心しろ、元よりここからお前を生かして返すきもないッ!!」
『
瞬間、広範囲を、半透明の空間が覆いつくしていった。
―――ピクリ。
ルベドの眉が動く。
「…知らないな…こんな物は。恐らくは、転移阻害の魔法かスキル、もしくは―――武技と予想する…まぁいい…いずれにしろ、本機には効かんがな。」
「ふははははッ!!これで逃げられぬぞッ!汚物よッ!!」
「好きにしろ、元より逃げる気もない。」
ルベドのその言葉と共に、ドラゴンがその赤く禍々しい瞳を更に輝かせた。
それは―――『最強のドラゴン』。
この世界の覇者にして―――『竜の王』。
『始原の魔法』を操りし、『真なる竜王』。
真なる竜王にして―――『六竜の一角』。
「我は『
『キュアイーリム=ロスマルヴァー』!
『
『キュアイーリム=ロスマルヴァー』
今ここに、『世界最強』対『世界最強』の火蓋が切って落とされた。
転移後世界!最強の一角!
ドラゴン界の『プリキュア』こと!
『キュアイーリム』さん、現る!!
強いのはどっちだッ!!
どうもちひろです(ΦωΦ)
キィィィングッ!クリムゾォォォンッ!
時は消し飛ぶゥゥゥッ!!
はい!これで、ルベドの歩んだ、この大陸での
数年が消し飛びました!
どれくらい消し飛んだかと言うと
20巻で完結の作品が、単行本1巻から19巻くらい
まで、一気に消し飛んだと思ってください
ここに至るまで、様々な出来事がありました
沢山困惑しました
沢山考え事もしました
沢山喧嘩もしました
だからこそ、彼女は沢山成長しました
言葉の節々や、行動に、ちょっとした気遣いや
この世界での常識を鑑みた考え方があると
感じてもらえたなら凄く嬉しいです
構想はきちんとあるので、いつかきちんと書いて
見たいなと、密かに思っています
ジャイアントの親分は、ちょいちょい出くわします
出くわすたびに、悪だくみしてます
彼は『ロケット団』みたいな感じです
憎めない子悪党といった所でしょうか
親分の凄い所は、この世界であれほどの力を
持っているにもかかわらず、「やべぇ!」と
思ったら、脇目も振らずに全力で逃げ出せる
事ですね、これ、結構すごいです
エインシャントを絞め殺せる様な奴が
木っ端みたいに喚きながら逃げるんです
うぅん…凄い…長生きの秘訣ですね
マダラは結構すごい奴で、獣槍術と言う流派
の使い手です
ルベドや人間達は、亜人達から舐められるのは
必死ですが、振りかかる火の粉は、マダラが
振り払ってくれます
チャッピーとノリーオも強いです
亜人の傭兵団にメンチを切られて、ブチギレて
ボコボコにした事もあるほどです
ルベドはその光景を、体操座りで眺めていたそうです
三人揃っている時に喧嘩を売られれば
「はぁ?」「はぁッ!?」「はぁぁぁッッッ!!?」
と、どこかの三兄弟みたいになるとか…
次回は後編です…次で番外編もおわりです
個人的には凄く寂しいです
楽しかったな、この番外編…
『とびっきりの最強対最強』というタイトルで
誰がくんの?と思って頂けていたなら
凄くうれしいです
そうです、ルベドを迎え撃つ最強は…
キュアイーリムさんです
時系列的には、『亡国の吸血鬼』の時と同じくらいです
ルベドさんは強いです
すごく強いです
なので、戦いになる相手は、必然絞られます
ツアーくる?と思った方もいるでしょう
残念ながら、奴ではありません
正直、ツアーでは役不足だと、ちひろは思ったんで…
Finalルベドと戦えるのは、キュアイーリムさんしか
いないと、ちひろは思いました
ぶっちゃけ、ツアーよりキュアイーリムさんの方が
強いだろう…?って思ってます
それ、あなたの感想ですよね?って感じですが
そうなんです、感想なんです
ちひろの感想は、ツアーより強い…なんです
ツアーの全貌が完全に明らかになれば
また違った感想をもつんでしょうけど
現状、オバロを読んで、出てきた敵の中で
明らかに能力もスケールも別格です
勝てんの?これ?って思うくらいです
まぁ、プリキュアですしね、強くて当然でしょう
あれは、モモンガだから勝てたんです
色々な意味も含めてですね
ツアーとキュアイーリムが正面切ってやり合えば
勝つのは…ツアーかなぁ…?とは思います
ツアーは、明らかな『聖』のクラスに寄ってます
キュアイーリムは『ネクロマンサー』…
属性の相性が悪いです…
相性は、オバロに置いてとても重要です
そこがオバロの良い所です
AがBに勝てる、CはBに勝てない
だからと言って、AがCに勝てるとは限らない
これがオバロの魅力だと思ってます
ここで言いたい強さとは、『プレイヤー視点』での
強さだという事です
キュアイーリムは余りにも特殊過ぎます
プレイヤーとしては、これほど怖い物もないでしょう
プレイヤーの事を、心底憎んでるし
ぶつけやすさもピカイチだったので
キュアイーリムさんになりました
ちひろ(ΦωΦ)「それでは、次回よ―――」
千葉セバス「あっひゃァァァッ!
じぃぃぃかいよこくぅぅぅ!!」
ちひろ( ゚Д゚)「えぇッ!生き返ったッ!!」
BGM―――『愛〇たりないぜ』
大陸中央部を旅し、遂に見つけた安寧の地!
その名も―――スルクー3ッ!!
そこでルベドを待ち受けていたのは
この世界最強の存在―――ドラゴンだったッ!
インべリアを亡ぼした元凶であり
『対プレイヤー』を掲げた竜の集団
その名も―――『六竜』ッ!!
その一角―――『キュアイーリム』ッ!
世界最強対世界最強の戦いの火ぶたがぁッ!
今切られたァッ!!
次回ッ!!とびっきりの最強対最強ッ!後編ッ!
千葉セバス「ルベドよッ!!
やッさッしッさを知るまでッ
闘えッッッ!! 」
ちひろ(ΦωΦ)「プリキュアよ、天に帰る時がきたのだ」