焼肉屋で腹を満たした後、二人は解散・・・していなかった。それどころか二人は別の場所に移動していた。
「困ったらオレに相談しろとは言ったが・・・、まさか早速頼まれるとは思わなかった」
「イレギュラー
「んなことできるか!お前は戦い慣れてるだろうけど、まだ未成年なんだ。大人の保護は要るだろ。もし警察に見つかってもオレなら顔が効くし、誤魔化せる。それに、場合によっちゃオレのサイドエフェクトも役に立つ筈だ」
現在、二人は昼間にイレギュラー
『ユーマ、オサムが話したいようだ』
「む、繋いでくれ」
それまで静かにしていたレプリカが唐突に喋る。どうやらレプリカは遠隔通信もできるらしい。レプリカを通して聞こえてくる三雲の声と遊真たちの話を聞く限り、悠一と接触した三雲はどうやらサイドエフェクトについて知りたかったようだ。ボーダー隊員とはいえC級。余計な混乱を避けるためにも情報が制限されていることは多い。三雲が知りたいと思っても可笑しくはないだろう。
そして、上記の理由が分からない悠一ではない。悠一が情報制限をしていないという事は三雲は恐らく近いうちに何かがきっかけでB級に上がる可能性がある。
『・・・空閑、おまえ今どこにいる?』
「学校。昼間のイレギュラー門についてレプリカが原因に心当たりがあるって言ってるから調べてる」
『おまえ、ボーダーに任せるとか言ってなかったか?』
「なんか見つかったらオサムにも教えてやるよ」
『(コイツ、いつ寝てるんだ?)』
「保護者もいるから安心してくれていいぞ。じゃあ、また明日」
『は?保護者?おい待て空g・・・』
三雲が呼び止めようとしたのに容赦なく通信を切る空閑。中々酷いなと思いつつ、伸太郎はレプリカに話しかけた。
「なあ、レプリカ」
『なんだ?シンタロー』
「心当たりって何のことだ?」
『ふむ、まだ伝えていなかったな。実は・・・』
レプリカは《ラッド》というトリオン兵についてシンタローに説明をした。
「つまり、ソイツら隠密偵察用の小型トリオン兵がいるかもしれないと?」
『その通りだ。私の知る限り、ヤツらに門を開く機能など無かった。その為、なんらかの改造がヤツらに施されている可能性がある。またそれに伴い行動パターンの変更もされていると考えるのが妥当だろう』
「なるほどな。形は分かるか?」
『今、見せよう』
レプリカは宙に八角形に三対の足が生え、長い尻尾を持つトリオン兵を投影した。控えめに言って気持ち悪い形状だ。
「よし、形が分かったらこっちのもんだ」
「??」
それだけ言って伸太郎が軽く瞬きをすると、その髪と同じ濡羽色の瞳が元の色とは似ても似つかない深紅の瞳に変わっていた。
「シンタローさん、その目・・・」
「そう驚いてくれるなよ。お前も持ってるだろ?」
赤い目を光らせながらヘラリと笑う伸太郎とサイドエフェクトを知られていたことに遊真は少し驚いたような顔をするが、素直に頷いた。
「お前のがどんな能力かはしらんが、オレのサイドエフェクトは《視野の拡大》だ。分かりやすいものなら建物の透視だな。四年前の大規模侵攻の時、この能力のお陰で大切な人はもちろん、市民をオレの力の及ぶ範囲で助ける事ができた」
「いいの?おれにそんな事教えて」
「大丈夫だ。サイドエフェクト1つがバレたところでオレは揺るがない」
「へー、嘘じゃなさそうだ」
遊真が少し面白そうに笑ったことに気づかず、伸太郎は赤い瞳で辺りを見回す。うち、一点を見て小さく呟いた。
「アレか・・・《トリガー
「む、昼間のトリガーとは違うのか」
「ああ、アレは少し特別でな。今は無理だがその内話す」
天井へ向けて伸太郎は軽く弧月を振り抜いた。四角型に切り抜かれたそこからポロッとラッドが二機落ちてくる。伸太郎はそれらの中心部を素早く弧月で突き刺した。
「コレか?」
「おお!」
『見事』
ペチペチと手を叩く遊真に、弧月を引き抜いたラッドを一体渡す。遊真は顎に手を当ててまじまじとラッドを観察した。
「見た感じは前と変わってないけど・・・。レプリカ、頼んだ」
『承知した』
レプリカが解析を始めたのを横に、伸太郎は遊真に話しかけた。
「遊真、レプリカを持って車に乗れ。家まで送ってやる」
「えー、おれはずっと動けるよ」
「お前の事は尊重したいが、服装は変えろ。レプリカの予想が正しかった時、おれは本部に報告に行かなきゃならない。その時、お前を直接庇うのは難しくなる。それにもし、誰かに見られた時に制服だと連絡されて後で学校で面倒なことになるぞ」
「んー、シンタローがそう言うならそうする。面倒事はおれもゴメンだからな」
「ああ。ありがとな」
深夜の空いた道路をそこそこのスピードで車を走らせる。学校からさほど遠くない遊真の家に着くと、遊真は解析を続けているレプリカを車に乗せたまま荷物を持って着替えに行った。
「・・・こう見ると、本当に弟が出来たみたいだな」
『シンタロー、私から頼みがある』
「おう?なんだ?」
『私がもし、ユーマの側に居られなくなったら、ユーマを頼む』
「・・・縁起でもないことを言うんだな」
『人生に不測の事態は付きものだ。何がきっかけで離れ離れになるかなど予想はできない。これは保険だ』
「そうだな、何が起こるかなんて分からないよな・・・。分かった。その時はオレが責任持ってあいつの面倒みてやるよ」
『恩に着る、シンタロー』
伸太郎はやけにしんみりした顔でレプリカの話に同意する。遊真のことも気に入ってる為かさほど悩まずに承諾した。
話し終えるのと同時に遊真が戻ってきた。
「おまたせ、準備できたぞ」
『ちょうど良かったなユーマ、解析が完了した。このラッドは間違いなくイレギュラー門の原因だ。現在感知しただけでもザッと数千体がこの三門市に潜伏している。』
「ふむ、数が多すぎるな・・・」
全部倒すのに何十日掛かるやらと遊真は少し面倒そうにぼやく。伸太郎は何か思い付いたのかレプリカに向き直った。
「なあ、レプリカ。コイツ自体には攻撃力はないと考えていいんだよな?」
『ああ、その通りだシンタロー。ラッドは攻撃力を持たないいわゆる雑魚と言われる敵だ。ただ先程も言ったようにその数があまりにも多い』
「分かった。レプリカ、並びに遊真、イレギュラー門発生原因の解明の協力にいちボーダー隊員として感謝する。
ここからは人数も多く、大半が三門市民で成り立っているボーダーの仕事だ。遊真、動くなら動くで目立たないように頼むぞ。何か言われたらB級以上の隊員にオレの名前を出せ。B級からは隊服が違うから見分けも付くだろう」
「了解」
「レプリカはユーマを見といてくれ」
『心得た』
伸太郎は車に乗りつつ、助手席の窓を開けて遊真に話しかける。
「遊真、行きたい場所があるならボーダー本部の途中までなら送れるぞ」
「いいや、大丈夫だよ。これを機に街を歩いて道を覚えるのも悪くないし」
『こちらのことは気にせず、シンタローはシンタローのすべき事を果たせ』
「・・・ああ。そうだな、気を使わせて悪い。行ってくる」
伸太郎が車を発進させ、遠ざかるのを見ながら遊真はレプリカと共に付近のラッドの駆除に出た。のだが、途中で遊真は何かに気付き、街灯の下で止まる。
「あ、シンタローさんに伝え忘れた」
『繋ぐか?』
「頼む」
レプリカはいつの間にか伸太郎に忍び込ませていた分身と通信を始める。
「シンタローさん、聞こえてる?」
『ああ、どうした?何か不都合でもあったか?』
「このラッドの発見については、夕方に会ったオサムって奴に手柄をツケておいて」
『どうして、と聞きたいところだが了解した。お前がそう言うなら』
「ありがと」
『それじゃあな』
よほど急いでいるらしく、伸太郎は話が終わると直ぐに通信を切った。
「それにしても急いでたな」
『ユーマ、私たちも動こう』
「おう」
ユーマは今度こそラッドを駆除すべく夜の街を駆け出した。
☆☆☆
深夜ということもあり、
「鬼怒田さん、イレギュラー門の原因はコイツだ。解析して朝までにマップに映るように反映してくれ」
「結局あいつが言った通りになったか・・・。分かった、今起きてる隊員を先に動かせるようにできる限り早く反映させよう」
鬼怒田さんは目の下に濃い隈を作っている少々目つきの悪い人だ。本部開発室長という肩書きに恥じない実績も持っており、例えば門誘導システムの開発。本部基礎システムの構築、ノーマルトリガーの量産成功など、ボーダーを語る上で欠かせない重要な部分をやってきた人だ。ラッドの解析くらいなら2時間もあれば完了することだろう。
「根付さんは朝にボーダーから市民へ向けての放送をする準備を!」
「これだけ時間があれば十分ですよ」
根付さんはメディア対策室長を担っている男性だ。テレビはもちろん、新聞や雑誌などのあらゆる媒体に対応し、ボーダーの印象向上及び、問題の処理・隠蔽をするなど、ボーダーが堂々と活躍していくには欠かすことのできない人だ。今回も上手く情報を伝達してボーダーが動きやすくなり、市民の協力も得られるような発表をしてくれるはずだ。
午前七時半時を回ったところで全隊員にある指令が下された。今回はC級隊員まで動員し、小型トリオン兵の一斉駆除が始まった。またそれと同時にメディアでもその旨を通達し、一般の人からも発見報告を募った。
指揮はもちろん伸太郎・・・ではなく、同じS級隊員の迅悠一が取り、彼を中心として昼夜を徹して作戦は行われた。
伸太郎曰く『今回の場合、オレはサイドエフェクトを活用して余計なことを考えず駆除に参加した方が効率がいい。それに、家の周りにいる個体はオレが確実に潰して回りたい』
とのこと。
丸一日を使って無事に事態は収束し、こうしてラッドによるイレギュラー門発生事件は幕を下ろした。
那須さんを早く出したいのに、どこで出せば良いのやら・・・。ちなみに伸太郎がラッド駆除してる時に横で那須さんも一緒に活動してた。実はお家がご近所さんな設定。やっぱり二次創作は最高だぜ!
三 三
3 <ワートリと言えばこの顔
原作?あれは神(原作者)が創りたもうたものなので言うまでもなし。むしろ、ワートリに関しては作者様が長い間休載されて、もう帰ってこないのかな?って思ってたところで戻ってきてしっかり連載されてらっしゃるから本当に尊敬の極み。
私なんか直ぐに執筆速度落ちるのに・・・。
ワートリ買い直したいけどお金が無いのが最近の私の悩みです。