顔が怖いトレーナーがジーンに自分の担当ウマ娘になって欲しいと頼んだ!
ジーン「……はい?」
思わず聞き返す。え、どういうこと?担当って……まだ2週間しか通っていない僕が、東条ハジメさんの担当になるってことだよね?しかも、それがどうしてなのか分からない。
ハジメ「まぁ、お前は新入生だし、実力は未知数だが……。素質は間違いなくある。正直、今の段階ですでに得体が知れない力を感じる。それに……」
ハジメさんは僕をじっと見つめる。うぅ、見透かすように見られてなんか怖い。
ハジメ「……お前は何か特別なものを持っている気がする。それを確かめたい。俺はトレーナーだ。才能を開花させてやるのも仕事のうちだ」
ジーン「う~ん……」
僕は腕を組んで考える。特別なものって言われても思い当たる節はない。そもそも自分自身がどこまでテイオーさんやマックイーンさんみたいなレースが出来るかも分かってないし。僕が難しい顔で悩んでいると、ハジメさんはニヤリと笑った。
ハジメ「別に嫌なら断ってくれてもいい。だけど、俺は断言できる。ジーン。お前は帝王に勝てる」
ジーン「‼」
そこまで言われたら僕としても断れない。それに、断るとハジメさんの期待に応えられないかもしれないと思うと申し訳なくなってきた。よし、覚悟を決めよう。どうせ入学したばかりだ。ジーとしても、ドーにもならないしね。
ジーン「分かりました。それじゃあ、僕でよければお願いします」
ハジメ「うし、決まりだな!」
彼は嬉しそうに拳を握る。良かった。少しは喜んでくれたようだ。僕はふっと笑みを浮かべると、彼は表情を引き締めた。
ハジメ「あぁ、それともう一つだけ言っておくことがある」
ジーン「えっと、なんですか?」
ハジメ「このことは内緒にしてくれ。もちろんロr……秋川理事長たちにもな」
ジーン「?分かりました……」
なんで?とは思ったけど、ハジメさんが真剣な様子だったので、余計なことは言わなかった。
ハジメさんの話が終わったところで、僕はこの場所を去った。トレセン学園の校門をくぐり、寮に向かっていると、僕の横を金髪のウマ娘が通り過ぎた。すれ違う時に彼女の方を見ると、とても整った顔立ちをしている。思わず目を奪われてしまった。
そんな時だった。僕の耳元で声が聞こえた。
??「自分自身を信じて」
ジーン「え」
驚いて振り返るも誰もいない。周りを見渡しても誰もいなかった。気のせい?いや、でも確かに聞いた。なんだろ今の?不思議な感覚に襲われながら、再び歩き出す。門限まであと5分。急がないと。寮に戻ると、既に多くのウマ娘たちが戻っていた。部屋に戻り、荷物を置くとすぐに制服から寝間着へと着替える。その時、ポケットに入れておいたスマホが震えた。画面にはチャットアプリの新着メッセージが表示されている。
ウララちゃん<明日選抜レースなんだって!!がんばって!!
ジーン「ウララちゃん………」
ジーン<ありがとう。頑張って来るよ!
さて、明日も早いしもう寝るか。そう思って布団の中に潜り込む。すぐに睡魔が襲ってきて、僕は( ˘ω˘)スヤァ……と眠りについた。
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翌日、僕は早めに起きた。今日は選抜レースが行われる日だ。僕は緊張しながら身支度を整えると、寮を出て学園へと向かった。学園に着くと、ジーンを含めた新入生は体操服に着替えるように指示され、着替えた生徒はトラックに集められていた。いよいよ選抜レースが始まる。
ジーン「(うわぁー………みんな速そう)」
他の生徒たちを見て、思わず息を飲む。だってそうだろ?僕は今まで運動らしい運動はして来なかった。だから不安でいっぱいだ。本当に大丈夫かな?いや、やるしかない!そう決心すると、目の前には東条ハジメさんがいた。
その隣には栗毛の女性がいる。彼女は一方的にハジメさんに向かって言葉を投げている。ハジメさんは「ああ」とか「へぇー」とか言っているけど、明らかに聞いてない人のセリフだよねそれ? ちなみに後から聞いたんだけどハジメさんの隣にいる女性の名前は「北上アキ」というらしく、名家の出身らしい。どうりで美人なわけだよ。
そしてついに、選抜レースが始まった。最初のウマ娘がスタートラインに立つ。スターターがピストルを構えると同時に駆け出した。
ゴールまでの距離が短いがため、全力で走る。父さんがまだトレーナーだった頃に耳が痛くなるほど言った言葉がある。
父『いいかジーン。勝負は1番速い人が実力があるのはもちろんのこと、最後までその位置を落とさない人も実力がある証拠になる』
幼いジーン『そうなの?』
父『ああ。それに、最後の最後に油断したり手を抜いたりする奴は大体、負ける。最後まで油断せず、今の目の前にあるものに集中するんだ』
幼いジーン『わかった!』
――
遠くで選抜レースを見ている東条ハジメと北上アキの2人。
ハジメは腕を組みながら、隣で熱弁しているアキの言葉を聞いている。しかし、その目は真っ直ぐと前を向いているだけで、彼女の方を見ていない。ハジメはアキに視線を向けることなく、口を開いた。
ハジメ「アキ。少し黙っていてくれ」
アキはその言葉を聞くと、不満げに顔を歪めた。
アキ(……こいつ、私の話に興味なし!?ちょっとくらい興味持ちなさいよ!)
ハジメ「どうした。腹でも下したのか?」
アキ「あんたねぇ……」
アキはハジメの肩を掴んで激しく揺らす。
アキ「なんなの?もしかして私嫌われてる?ねえ、どうして?」
ハジメ「落ち着け」
アキ「これが落ち着いていられると思う?30分近くも熱弁したのに話を聞いてくれないなんて……普通ありえないでしょ!」
ハジメ「ありえない?30分も呼吸せずに瞳孔が開ききってる方がおかしいだろう」
アキ「え」
ハジメ「え」
アキ「………」
ハジメ「……」
アキ「……ソーランソーラン」
ハジメ「お前もう喋んな」
アキ「(´Д⊂グスン」
2人のやりとりを遠くから見ながら、ジーンは思った。
ジーン「この2人は仲が良いのか悪いのかよく分からないな」と。
そして間もなくジーンが走る順番がやって来た。緊張して動きがロボットのようにギクシャクしているが、それでもなんとかスタート地点に着いた。スターターが持つピストルが鳴りスタートする。ジーンは全速力で走り抜けた。結果は3着だった。他の子たちと比べても特に悪くはない結果だと言える。ハジメはジーンの結果を聞きながら、静かに笑みを浮かべた。
アキ「………あの子がそうなの?」
ハジメ「ああ。アイツがジーンだ。アキ………これから面白くなるぞ?チャンネルを変えずにしっかり見ておけ」
アキ「ええ。変えるチャンネルなんてないけど分かったわ」
ハジメはそう言ってアキから離れてレースが終わったジーンに近づくため歩き出した。
ジーン「はぁ、ダメだ。こんなことなら父さんの言う通り、普段の生活からトレーニングしておくべきだったかな………」
と、そんなことを言いながらジーンは息を整えていると、後ろから誰かに話しかけられた。
ハジメ「お疲れさん」
ジーン「あ、ハジメさん。ありがとうございます」
ハジメ「気にするな。まぁ……3着だけど、とりあえず頑張れたじゃないか」
ジーン「はい!次はもっと速く走れるようにします!!」
ハジメ「その意気だ。でだ、今日はこの後時間あるか?あるよな?行くぞ」
ジーン「えちょっ!待ってください!!まだ準備がーー!!」
ハジメさんは僕の腕を掴むと、そのまま引っ張って行った。僕は抵抗むなしく連れていかれるのであった。
【トレーナー会議】
秋川「質問! 東条トレーナーは?」
アキ「用事があるみたいで来れないらしいです」
モブトレ全員(またか!!)
登場人物紹介
名前:東条ハジメ
性別:???
年齢:28歳
東条ハジメは、普段は冷静で無表情な怖い顔をしているが、内面ではめんどくさがりでのんびりした性格を持つ。元々は優秀な能力を持っていたが、研修時代に一悶着あり、その結果、能力を発揮する場を失い、今のようなめんどくさがりになってしまった。その性格は、ウマ娘たちにも影響を及ぼしてしまう。一例として、厳しいトレーニングより成長させようとする。そのやり方は他のトレーナーからは異端と見られてしまっている。
その怖い顔とめんどくさがりな性格は、時にはウマ娘たちにとって壁となることもあるが、その裏には真剣な思いや、彼女らの成長を願う熱意がる。