2012年の夏頃、地方のイオンモールにて。ダンボール戦機のラジコンのイベントで司会を務めた謎の二人組の正体……
吉本プラモデル部のゆう太さんと片倉ブリザードさんでした。長年の謎が解けた(笑)
時刻は午後10時47分。早朝に新聞配達の仕事があるため早めに就寝したアスナだったが、CCMの着信音で目を覚ましてしまう。
「……ん~? 誰よこんな時間に……はい、もしもし?」
「姐さん! お休みのとこ申し訳ねえが、今すぐ大浴場に来てくんねえか? 兄貴がピンチなんだ!」
「え? ネギに何かあったの?」
「今エヴァの奴と戦ってるとこっス! 姐さんのクラスメイトが操られて、助けながら戦ってんだ!」
「はあ!? ネギ一人で戦ってんの!?」
「だから姐さんの力を貸してほしいんだ! アキレスを忘れずにってうわあ!!『ガキィィン』」
エヴァンジェリンの攻撃に怯み、カモは誤って通話を切ってしまった。アスナのCCMからは『ツーツー』という音しか聞こえなくなる。
「あのバカ! また一人で突っ走って! あたしが行くまで倒れるんじゃないわよ!」
アスナはアキレスを手に取り、眠気も忘れて一目散に大浴場へと急いだ。
大浴場では、エヴァンジェリンがネギを追い詰めていた。空中を浮遊しながら、三叉の槍の一端をネギの首元に突き刺そうとしている。
「ぐうっ……!」
「ほらどうした?押し返してみろ! 奴の息子だろ?」
左手で槍を掴んで押し返そうとするも、力が解放されたエヴァンジェリンのパワーには敵わない。
(そうだ、押してダメなら……)
ネギはブースターの向きを変え、槍を掴んだまま後ろに宙返りした。
「なっ!? ぐはっ!!」
エヴァンジェリンの体が宙を舞い、背中から壁に叩きつけられる。
「や、やるじゃないか……」
「マスター、ご無事ですか?」
「兄貴、LBCSで飛べる時間はあんまり長くねえぞ! 兄貴は男なんだから」
「わかってるよ! 降りる前にアキラさんと亜子さんを解放しないと」
体勢を立て直したエヴァンジェリンは攻撃魔法を放った。
「今度こそ撃ち落としてやる! 魔法の射手・デビルソウル!」
槍の先端から悪霊のような魔力の塊が三つ、禍々しい咆哮を上げながら迫ってくる。
ネギは軌道を読んで回避するが、魔力塊は消えることなくネギを追い続ける。
「うわあっ! 避けても追ってくるー!」
「フハハハ! 闇魔法の追尾弾だ!」
一発目をギリギリ躱したところで死角から二発目がブースターを掠める。体勢を崩したところを三発目が直撃する。
「ぐあっ!!」
「兄貴しっかりしろ! 落ちてるっスーー!!」
衝撃でネギはLBCSのコントロールを失う。真下のプールへと墜落し、派手に水飛沫が舞い上がる。
「ぷはっ!」
「下が風呂で助かったぜ……」
「ネギ君覚悟」
水中で待ち構えていたアキラ。プールを素早く泳ぎ、ネギに接近する。勢いよく振り下ろしたアンカーの一撃が大浴場の床に亀裂を入れた。
「ひぃっ!」
「武装解除が難しいならブレイクオーバーだ!」
「強引だけどしょうがないよね。魔法の射手・ソードビット!」
魔力で八本の刃を生成し、アキラへと飛ばす。
「無駄や。マジックウォール」
亜子はアキラの前に立ち、アンカーから遠距離攻撃を無効化する壁を出す。ソードビットは壁に触れた途端、消滅してしまった。
「チッ、アシスト役がいたっスか」
「包囲します。ディメンションΣ」
茶々丸は三体の暗黒の球体に分裂し、そのうち二体はネギの周囲を旋回しながら射撃する。もう一体はネギの肩に乗っているカモをつけ狙う。
「いででで! またこれかよー!」
「くそっ、逃げられない!」
「今だ、やれ!」
「アタックファンクション、オーシャンブラスト」
アキラは自身の周囲にプールの水を集め、アンカーを振り回して渦を作る。高圧の水流をネギに向けて放出した。
(まずい……!)
ネギに襲いかかる大量の水。ニヤリと嗤うエヴァンジェリン。もうだめかと諦めかけたそのとき……
「ライトニングランス!」
大浴場の入り口から、電気を帯びた青白いエネルギーが放たれた。水流に横からぶつかり、水を伝って電気が流れる。
「「うあああっ……!」」
「な…なにっ!?」
アキラと亜子はオーシャンブラストを逆流した電気に感電し、LBCSが解除された。先ほどの二人と同様、気を失って倒れ込む。
「なんとか間に合ったわね!」
「アスナさん! 来てくれたんですね!」
「姐さんありがとうございますーー!!」
先ほどまで余裕の無い表情をしていたネギとカモだったが、アスナの援護により窮地を救われた。ネギは笑顔を取り戻し、カモは涙を流して喜んでいる。
アスナは茶々丸の分裂体を蹴散らし、槍を持ったままの拳でネギの頭を小突く。
「このバカネギ! 逃げればいいのに一人で戦って! 心配したんだからね!?」
「ご、ごめんなさい……」
「操り人形が全滅……フン、所詮ただの小娘か」
気絶した四人を一瞥するエヴァンジェリン。クラスメイトに対する容赦の無い発言にアスナは憤る。
「あんたもいい加減にしなさいよ! ネギを襲ったりまきちゃんたち操ったり! ただの小娘って、あんた何様よ!」
「マスター、停電復旧まであと1時間と12分です」
「もたもたしてられんな。茶々丸、ぼーやを集中攻撃だ!」
「了解です」
ネギの頭上から急襲するエヴァンジェリンと茶々丸。
「やらせないわよ!!」
アスナは槍を両手で持ち、穂先と末端で二人の武器攻撃を防ぐ。
「邪魔をするな!」
「ネギ!早く逃げて! あと1時間耐えるのよ!」
「う、うんっ!」
ネギはブースターを噴かし、大浴場の窓を割って逃走した。
「逃がすか! そいつの相手はいいから追うぞ茶々丸!」
「はい、マスター」
大浴場を飛び出したネギはそのまま飛行を続けた。エヴァンジェリンと茶々丸もその後を追う。
「兄貴、どこまで行くんスか?」
「学園の外! エヴァンジェリンさんは学園の結界から出られないからね」
「なかなかせこい作戦じゃないか」
「げっ、来たっスよ!」
「もう一度撃ち落としてやる! 魔法の射手・デビルソウル!」
「同じ手はくらいませんよ! 魔法の射手・ソードビット!」
闇の魔力の塊が三つ、ネギに襲いかかる。ネギも光の刃を八本生成し、迎撃を図る。
ネギに向かって愚直に飛んでくる魔力塊に刃が突き刺さる。
だが魔力塊は怨念のようにしぶとく、二本、三本と刺さるがまだ消えず、四本目が刺さりようやく消滅。二個目の魔力塊も同様に破壊した。
「やるな。だが、」
ネギの背後から撃ち損じた一発が着弾し、爆発を起こした。
「「うわぁ!!」」
「ひとつ落とし損ねたな。LBCSも使いこなせてないし、そろそろ限界なんだろ?」
LBCSの制御が覚束なくなり、急激に高度を下げるネギ。
「兄貴、あの橋に降りようぜ! ブースターの出力が落ちてやがる!」
「くっ、もうちょっとなのに……」
ブースターを止め、学園の外へと架かる橋の上に着陸する。
「結界の外には行かせんぞ」
エヴァンジェリンと茶々丸は速度を上げて先回りし、ネギの通路を塞ぐ。
「ううっ……」
「俺っちに任せろ! オコジョフラーッシュ!!」
カモは密閉容器からマグネシウムの粉塵を空中にばらまき、ライターで着火して閃光を起こした。
ちなみにこのマグネシウムの粉塵、コアスケルトンを修理したときの削りカスである。
「ちぃっ、目眩ましか!」
「ありがとうカモ君!」
エヴァンジェリンと茶々丸は目を覆い、その隙に結界の外へと急ぐネギ。だが、すぐにエヴァンジェリンが回り込み、槍を突きつける。
「エヴァンジェリンさん! もう諦めてください!」
ネギは剣を構え、エヴァンジェリンの隙を窺う。
「茶々丸、包囲しろ」
「発動、ディメンションシグ…」
「させるかあっ!!」
橋の向こうからアスナが猛スピードで疾走してきた。その勢いのまま茶々丸の背中に右肩でタックルをかました。衝撃で互いの装甲にヒビが入るほどの威力だった。
「もう来たのか、体力バカめ」
「アスナさん! 茶々丸さんを頼みます!」
「オッケー! 手出しはさせないわよ!」
アスナはうつ伏せに倒れた茶々丸の右腕を右手で掴み、さらに背中のハッチが開かないように左手で押さえつけた。
「ぐっ…マスター、申し訳ありません」
「まあいい、ぼーやのLBCSは限界が近い。私一人で仕留める!」
「……こうなったら僕の全力を出します。LBCS解除!」
ネギの体からK・アーサーの鎧が外れ、丸腰となった。
「何をする気だ?」
「ちょっと!? 装着してないと危ないわよ!」
「セットアップ、エクスカリバー!」
ネギが叫ぶと、K・アーサーの持つ剣だけが巨大化した。ネギの背丈ほどの長さの剣を両手で持ち、構える。
「兄貴!? 武器だけ出してどうするんスか!?」
「来れ雷精風の精! 雷を纏いて吹きすさべ! テンペストブレイド!!」
剣を媒介にして呪文を唱えるネギ。周囲には嵐が巻き起こり、剣から発生した電気のエネルギーが空へと伸びる。暴風と雷鳴が空気を振動させ、凄まじい轟音をかき鳴らす。
「な、なによこれ……」
「そうか! 兄貴は適合率が低いから、大技はこうやって撃つしかねぇんだ!」
「そんな不完全な技など消してくれる! アタックファンクション、デビルソウル スワーム!!」
槍を地面に突き刺し魔方陣を描くと、巨大な悪魔が姿を現した。
悪魔が咆哮を上げると、無数の悪霊がネギに襲いかかった。
「なんだこの技!? デビルソウルの強化版か!?」
「怯むな兄貴! やっちまえー!!」
ネギの周囲に発生した嵐と大量の悪霊がぶつかり合う。強力な必殺ファンクション同士の力比べである。
「ネギー! 負けるんじゃないわよーー!!」
「うおおおおーーー!!」
嵐が悪霊をかき消し、悪霊が嵐の勢いを弱めていく。不完全な技だとみくびっていたエヴァンジェリンだったが、ネギの技の威力は想像を超えていた。
「押しきれない!? こいつにまだこんな力が……!」
雷を纏った剣を右上から斜めに振り下ろす。巨大な悪魔とエヴァンジェリンを、雷で焼きながら袈裟斬りにした。
「ぐあああっっ!!」
「マスター!」
巨大な悪魔は斬られ、跡形もなく消滅。高圧の電流によるダメージをLBCSが軽減しきれず、感電するエヴァンジェリン。装甲は煙を出し、エヴァンジェリンの体から剥がれ落ちる。
「やったぜ兄貴! これでエヴァンジェリンは丸腰だ!」
「ぜぇ、ぜぇ……僕の、勝ちです……」
魔力の大半を使い果たし、息を切らすネギ。
エヴァンジェリンも橋の欄干にもたれかかりながら立ち上がる。LBXに戻ったヴァンパイアキャットを拾い上げ、握りしめる。
「くっ、まだ決着はついてないぞ! LBCSが無かろうと……うぁっ!」
未だ溢れ出る魔力で空を飛ぼうとしたその時、エヴァンジェリンに強い衝撃が走った。
「予定よりも停電の復旧が7分早い!」
「ど、どうしたの!?」
「マスターの魔力を抑える封印が復活しました! このままでは湖に!」
橋の下へと転落するエヴァンジェリン。持っていたヴァンパイアキャットを手離し、共に落下する。茶々丸はアスナの拘束を振りほどき、慌てて救出へと向かう。
湖に落ちたかに見えたエヴァンジェリンだが、体が水に沈むことは無く、『ゴゴゴゴ……』という噴射音を聞く。
「……茶々丸か?」
「僕ですよ」
ネギは咄嗟にLBCSを再装着し、ブースターを噴かしながらエヴァンジェリンを抱きかかえていた。
「ぼ、ぼーや……! なぜ助けた!?」
「え? だって、エヴァンジェリンさんは僕の生徒じゃないですか」
「……」
少し顔を赤らめ沈黙するエヴァンジェリン。それが意味するものは感謝か呆れか、はたまた含羞か。
「マスター、落としましたよ」
ヴァンパイアキャットを空中でキャッチした茶々丸。LBXの胴体には、大きな斬り傷と焼け痕が痛々しく刻まれていた。
LBXが破損したにもかかわらず、エヴァンジェリンは表情ひとつ変えることなく、無言でそれを受け取る。
三人は橋の上に戻り、学園への帰路に就く。
「さて、これで一件落着っスね」
「もうこんなことはやめて、授業にも出てもらいますからね」
「フン、わかったよ。おまえには助けられたしな。呪いを解くのも後回しにしてやる」
「安心してください。呪いのことは僕が猛勉強して、マギステル・マギになったら解いてあげますから」
「それまで何年待たなきゃならないんだ! おまえの血があればすぐに解けるんだよ! 私はまだ諦めた訳じゃないからなー!」
結界が復活し、再び魔力を封じられたエヴァンジェリン。彼女が本来の力と自由を取り戻すのは、まだまだ先の事である。
To be continued
余談
プールに落ちたときにCCMを持っていましたが、『CCMはある程度の防水性能がある』という前提で書いてます。水に浸かる場面で毎回壊れてたら話が進みませんので。