麻帆良の小さな戦士たち   作:ハクアルバ

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ダンボール戦機には神谷重工が、ネギまには那波重工があります。今回は重工の御令嬢の話を書いてみました。


ep.17 御令嬢の役目 千鶴編

2003年4月16日

 

修学旅行6日前の放課後、千鶴と夏美は商店街の書店で本を探していた。

 

「ちづ姉、ここも売り切れらしいよ」

 

「あらぁ、昨日入荷したばかりなのに?」

 

二人が探しているのはLBXバトルの専門書である。しかし、発売日当日に麻帆良中の書店から売り切れてしまい、新刊コーナーには同日発売の分厚い児童誌が残っていた。

 

「LBX関連は人気だからねー。っていうか、ちづ姉もLBX始めたんだ」

 

「私の実家のことは知ってるでしょ?」

 

「うん、那波重工だよね。デクーとか作ってるとこ」

 

「LBX事業に少しは貢献しろって言われて、『ジ・エンプレス』のテストプレイヤーをやらされてるんだけど、これが全然勝てないのよ~」

 

「あー、家の仕事を手伝えってやつね」

 

「負けてばかりだから、これじゃ試験データにならないって言われて……それで、専門書で勉強しようってわけ」

 

初心者向けのLBXの操作についてはLマガや分厚い児童誌にも記述があるが、千鶴はLBXの基本操作は既に習熟していた。千鶴が求めているのは"勝つ方法"である。

 

「専門書なんか読まなくても、誰かに稽古つけてもらったら?」

 

「それがね~、あやかは真面目すぎて説教くさいし、アスナさんや古菲ちゃんにはボコボコにされるし、双子ちゃんにはトラップに引っかけられるし、結局どう戦ったらいいかわからないのよー」

 

「ちづ姉、もっと相手を選んだ方がいいよ……」

 

「どっかにいい師匠いないかしら?」

 

二人が商店街を歩いていると、自分たちと同じ中等部の制服を着た少女が一人、商店街の一角にある模型店に入って行った。

 

「ん? あれ本屋ちゃんじゃない?」

 

「本屋ちゃんが模型店? 違和感あるわね……」

 

「気になるよね。ちょっと覗いてみよっか」

 

 

 

「いらっしゃい」

 

「こんにちはー。今日も使わせてもらいますねー」

 

のどかはこの店の店主を勤める熟年女性と挨拶を交わし、店の奥へと消えていった。

 

夏美は店の窓から中を覗き込もうとする。

 

「本屋ちゃん何してんのかな?」

 

「夏美ちゃん、覗き見なんて失礼よ。普通に入りましょ」

 

カランカランとドアベルが鳴り、二人は店に入る。店内には大量のプラモデルの箱が所狭しと並べられていた。

 

「いらっしゃい……あら、もしかしてあなた、那波重工のお嬢さんじゃない?」

 

「はい、千鶴と申します」

 

「ほらやっぱり! 那波重工製のLBX、結構売れてるのよ。特にデクーシリーズはミリタリー系が好きなお兄さんたちに人気でねー」

 

「そうなんですかー」

 

店主は最近流行りのLBXについて商談を始めるが、千鶴はあまり興味を示しておらず、生返事をする。

 

「そうそう、6月にタイニーマキナからオーディーンが発売されるじゃない? 発売前からすごい人気で、予約の電話が鳴り止まなくて困っちゃうのよ」

 

「へ、へぇー。すごい売れ行きですねー」

 

「那波重工からも何かない? オーディーンを超えるくらい売れそうな新商品」

 

「え、えーっと……」

 

LBXの知識が少ない千鶴は答えに詰まる。

 

突如、会話を遮るように年代物のダイヤル式電話が鳴り響いた。

 

「またアレの電話ね。もう予約いっぱいなのに。はいもしもし」

 

商談から解放された千鶴は思わず安堵の息を漏らす。

 

「夏美ちゃん、オーディンってなにかしら?」

 

「知らないの!? 今度発売のLBXの新機体だよ。ていうか伸ばし棒足りないよ!」

 

「ふーん」

 

「ふーんって……ちづ姉、実家のLBXをもっとアピールしなくていいの? このままじゃお客さん取られちゃうよ?」

 

「そんなこと言われても、私LBXのことはあんまり詳しくないし……」

 

「もう! ……あ、そうだ。本屋ちゃんは?」

 

「こっちよ。LBXの練習してるみたい」

 

店の奥のあまり広くはない空間。周囲の棚の中にはたくさんのプラモデルが飾られており、床にはマジックダンボール製のジオラマが四台設置されていた。店内に設けられた対戦スペースである。

 

のどかはジオラマの前に立ち、手元のCCMでLBXを操作している。

 

「本屋ちゃん、一人で練習?」

 

「……」

 

夏美の呼びかけに気づかないのどか。集中するあまり周囲が見えなくなるのは彼女の悪癖である。

 

「おーい、本屋ちゃーん」

 

「ひゃっ!? あ、那波さん、夏美さん……」

 

「それウォーリアーだよね。本屋ちゃんの?」

 

「いえ、お店から借りてるんですー。自分のLBXは持ってないので……」

 

「まだ買わないの?」

 

「いろんな機体を試してから決めようと思ってます。ウォーリアーは使いやすくてかっこいいけど、クノイチやクイーンはかわいいしー……」

 

「本屋ちゃんまでLBXに興味持ったのね。私はLBXの魅力なんてよくわからないわ」

 

「それテストプレイヤーのセリフじゃないよ……」

 

「え……那波さん、テストプレイヤーなんですか?」

 

「テストプレイヤーといっても、バトルして記録を集めてるだけよ。でも全然勝てないし、戦闘データの質が悪いってダメ出しされるし、もう辞めちゃおうかしら。そもそもLBXってテストプレイヤーなんかいなくても作れるんでしょ?」

 

「テストプレイヤーは必要だと思います……」

 

平日の放課後という時間帯もあり、店には学校帰りの学生の姿が増えてきた。

 

「あら、いらっしゃい」

 

「おばちゃん、こんにちはー」

「ジオラマ使わせてもらうよー」

 

LBXで対戦する子供たちを視界に入れながら、のどかは自分の意見を述べる。

 

「LBXは『危険なオモチャ』とも呼ばれてて、使い方を間違えるとケガをします。それでもLBXは子供たちを笑顔にしてくれるんです……テストプレイヤーというのは、子供たちの笑顔を作るために必要な仕事だと思うんですー……」

 

「そこだ! 必殺ファンクション!」

「うわっ、やられたー」

 

「みんな楽しそうだよね。LBXバトルって結構危険だから、テストプレイヤーがちゃんとデータを取らなきゃダメだよね」

 

子供たちの熱心な表情を見た千鶴。何のためにテストプレイヤーがあるのか。千鶴はようやくそれを理解した。

 

「言われてみれば、テストプレイヤーの役目なんて考えたことなかったわ。まさかあなたにお説教されるとはね」

 

「い、いえ……別にそんなつもりは……」

 

「本屋ちゃん、いい事言ったんだから自信持ちなって!」

 

「は、はいっ」

 

「そうねぇ……子供たちのためにも、まだまだ頑張ってみようかしら」

 

「あ、あの……那波さんのLBX、見せてもらってもいいですかー?」

 

千鶴はすぐにスクールバッグからLBXを取り出し、のどかに見せる。のどかは見たことのない機体に興味を持ち、それをまじまじと見つめる。

 

「ジ・エンプレスっていうのよ」

 

「ストライダーフレームですねー。装甲が薄くてスピードはありますが、打たれ弱いんですよねー」

 

「なるほど、だからすぐにやられてたのねぇ」

 

「避けながら戦えってこと?」

 

「そうですねー……戦い方はハルナに教えてもらうのがいいと思います。ハルナのジョーカーもストライダーフレームでハンマー使いなのでー」

 

「ハルナさんね、わかったわ。教えてくれてありがとね」

 

「じゃあねー」

 

店をあとにする二人にのどかは左手を振る。右手に持ったCCMでLBXの操作練習を再開した。

 

「早速パルのとこ行って教えてもらう?」

 

「そうねぇ。子供たちのお手本にもなりたいからね」

 

テストプレイヤーとしての認識を改め、子供のおもちゃに真剣に向き合うことにした千鶴であった。

 

「それにしても、みんなLBXにハマり過ぎじゃない? 家の事情でやらされてるちづ姉はともかく、本屋ちゃんまで興味持つなんて」

 

「夏美ちゃんは流行りに乗らないの?」

 

「私はやらないよ。LBXなんか持ってたら余計子供っぽく見られるもん」

 

「あら、そうなの?」




ちづ姉の異名は『女帝』ですので、ジ・エンプレスを持たせました。武器はハンマーのアフロディーテです。

ネタが思いつけば、"あやか編"も書いてみようと思います。
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