麻帆良の小さな戦士たち   作:ハクアルバ

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前回の続きですが、ちょっと趣向を変えて事件の犯人の一人称視点で書いていきます。


ep.19 LBXの魂 後編

「皆さん、おはようございます」

 

「「「おはようございます!」」」

 

おはようございます。

 

「今日の欠席は…いつも通り相坂さんだけですね」

 

 

 

 

 

私、出席してるんだけどなー……

 

 

 

 

 

いくら私に存在感がないからって、居ない人扱いされるのは辛いです。

 

いじめられてるわけではありません。私は"幽霊"なので、皆さんに認識されないから仕方ないんです。

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

 

あ、授業終わりましたね。

 

今日も流行りのLBXバトルが学園のあちこちで始まります。

 

校則でおもちゃは持ってきたらダメってことになってるんですが、学園はLBXメーカーと繋がりがあるみたいで、LBXだけは黙認されてるんだとか。

 

LBXバトルはプレイヤーの性格とか戦略とかがバトルに反映されるので、見てて面白いです。

 

個人的に委員長さんのジ・エンペラーの戦い方が好きですね。ハンマーの重さに振り回されず、流れるように戦うスタイルがかっこいいです。

 

「なんか飛び方がめちゃくちゃじゃない?」

 

「う、うまくいかないんですー……」

 

宮崎さん、新しいLBXの操作で苦戦してるみたい。ブースターを使った飛行が難しそう。

 

やっぱり、見てるだけはさみしいなー。私も皆さんと遊んでみたかったなぁ……

 

幽霊だからLBXにもCCMにも触れません。せめて私に"体"があったら……

 

「のどか、使いにくいなら無理しなくていいです」

 

「も、もうちょっとだけやらせて……」

 

……あれ?

 

私の体がLBXになってる……いつの間にか取り憑いちゃったみたいです。

 

これ、のどかさんのファントムなんですが、乗っ取っちゃっていいんでしょうか?

 

「いっくよー! 覚えたての必殺ファンクション!」

 

『アタックファンクション ライトスピア』

 

ひゃあ!? 危ない!

 

「ナイス回避です!」

 

「私、ガードしたはずなんですけどー……」

 

「ん? システムエラーかな? 宮崎さん、ファントムのコントロールを切ってください」

 

「は、はいー……」

 

機械だけど、人間の体と同じ所に関節があって動きやすいなー。そういえば、()()()()ってこんな感じでしたね。懐かしい……

 

「え? 勝手に歩き始めた……?」

 

「わ、私動かしてないですよー?」

 

今なら気付いてもらえるかも? 皆さん、私です! 出席番号1番の相坂さよです!

 

「なんか手振ってるです!」

 

「そんなバカな! ファントムが勝手に動くなんてありえません! まさか……ブレインジャック!?」

 

「これはスクープ! 題して『LBXの暴走!』」パシャパシャ

 

「ど、どうなってるのー?」

 

あー、声は出せないんですね……どうしよう……

 

「ハカセさん、ファントムにMチップは入れてましたか?」

 

「入れてません。コアスケルトン自体自分で製作したので」

 

Mチップ? 何のことでしょう?

 

「いいんちょ、Mチップってなあに?」

 

「LBXの行動を緊急停止させるための安全装置ですわ。市販のLBXには搭載が義務付けられてます」

 

へー、そうだったんですか。初めて聞きました。

 

「Mチップが入ってないのであれば、どうにかして止めるしかないですわね」

 

そんな……せっかく気付いてもらえるチャンスなのに……

 

「龍宮? LBXで何してんの?」

 

「ていうかLBX持ってたですか。意外です」

 

「なるほどな、あれは幽霊が取り憑いてる」

 

「え…えーー!? 幽霊!?」

 

あ、気付いてくれた……!

 

「なんでわかるの?」

 

「私のアサシンはスコープ越しに特殊な電磁波を探知できる。この電磁波の形は人間。つまり、幽霊のいたずらってことだ」

 

そう! そのとおりです! 幽霊のいたずらです!

 

だから、アサシンのライフルを向けるのはやめていただけませんか?

 

「そ、そもそも幽霊なんているはずが……」

 

「委員長、もしかしてびびってる?」

 

「幽霊の仕業とはいえ、セキュリティを怠ったハカセにも責任がある。後で仕事料もらうからな」

 

「わ、わかりました」

 

「悪霊め、神社の巫女として除霊してくれる!」

 

『バキュンバキュン』

 

ひぃぃ! やめてくださーい!

 

「逃げられたか」

 

「今のファントムのマニューバ見ました!? あれこそ私が想定していた動きです! 諦めかけてましたがやはりファントムには市販化の可能性が!」

 

「なに興奮してるですか。被害が出る前になんとかして止めるです」

 

「今教室から何か飛んでいきませんでした?」

 

「あっ、ネギ先生いいところに! 緊急事態ですわ!」

 

「実はね、かくかくしかじか……」

 

私を捕まえるための作戦会議をしてるみたいです。夕方で人が少なくなってるので、廊下まで声が聞こえてきます。

 

「みんな見て! さっき撮ったファントムの写真に人の顔が!」

 

「ひいっ! 心霊写真!?」

 

「あっ! この人うちのクラスの『相坂さよ』って人ですよ! 生徒名簿に1940って書いてありますから、63年前に亡くなったんですね……」

 

「やっぱり幽霊なんだねー……」

 

「この世に未練がある霊は怪奇現象を起こす。悪霊にはさっさと成仏してもらわねば」

 

私、悪霊だと思われてるみたい……まだ成仏したくないなぁ……この体も返さないとまずいよね……

 

「ん? おい兄貴、あれファントムじゃねぇか?」

 

「ほんとだ。皆さん、いましたよ!」

 

見つかった!? どうしよう、窓を割って逃げようかな……?

 

「もう逃がしませんわ! Mエッグ起動!」

 

タマゴのような物体が割れるとジオラマが飛び出し、周囲には緑色の壁が現れました。

 

なんですかこれ……

 

「マジックダンボールの周りにバリアを追加したものです。バトルが終わるまで逃げられませんわ!」

 

(こりゃバリアというより魔法障壁だな。なんで委員長が持ってんだ?)

 

(委員長さんはタイニーマキナでテストプレイヤーやってるんだよ。発売前のアイテムの実用試験を任されてるんだって)

 

バトルフィールドに閉じ込められました。ということは……

 

「アサシン、Ready」

「ジ・エンペラー!」

「いくよ、キャットちゃん!」

「K・アーサー!」

 

四対一でバトルスタート。圧倒的に不利です。

 

「悪霊退散ですわ!」

 

「委員長、びびってなかった?」

 

「LBXによる被害を阻止したいんです! びびってなんかいられませんわ!」

 

ジ・エンペラーのハンマー攻撃はくらいたくないです! とにかく回避!

 

「待ちなさい!」

 

避け続けてたら、K・アーサーとキャットちゃんに囲まれました。地上は危ないので空中に逃げます!

 

「相坂さよが取り憑いてからファントムの動きが変わったな」

 

「なるほど、相坂さんのバランス感覚で姿勢制御をこなしてるみたいですね。この動きをデータ化してアルゴリズムを作れないかな?」

 

「空中なら僕が!」

 

ひいっ! ついてこないでください!

 

「相坂さん、ごめんなさい!」

 

剣を槍でガードしようとしたけど、押し負けてそのまま地面に叩きつけられました。生身の体じゃないので痛みはありませんが、強い衝撃を感じました。

 

「くらえー、キャットちゃんのトリプルヘッドスピアー!」

 

あーもう! 何度も穂先で突っつかないでくださーい! だったら私も槍で攻撃させてもらいます!

 

「あ~ん! キャットちゃんにひどいことしないでー!」

 

LBXバトルをやってみたいとは思ってましたが、こんな形でやることになるなんて……こうなったら、幽霊らしく!

 

「え、消えた!?」

 

「ファントムの『インビジブル』です!」

 

「どこにいるかわかんないよー!」

 

「まき絵さん落ち着いて! インビジブルで消えても影は残ってるから、影がある所にいるはずです!」

 

「なるほど! さすがネギ君!」

 

「……影なんて見当たりませんわ」

 

「空中でインビジブルを使ったんですね。こうなると簡単には見つかりませんよ」

 

「「そ、そんなー!?」」

 

今のうちに逃げなきゃ! でも外にはバリアがあるし、私一人でこの四機を倒せそうにないし……

 

『バキュン』

 

きゃあ!!

 

「姿は消せても、電磁波は消せてないようだな。私には効かんぞ」

 

今の一撃でインビジブルが解けてしまいました。

 

ちょ、キャットちゃん? 羽交い締めにしないでください!

 

「つかまえたー!」

 

は、はなしてくださーい! うう……せめて声が出せたら……

 

「まき絵さん! そのまま掴んでてください!」

 

ひええ~! のどかさーん!ハカセさーん! ファントム返しますから、助けてくださーい!

 

「もー! じたばたしないでー!」

 

『朝倉さーん! 隣の席の相坂さよです! 聞こえてたら、助けてくださーい!』

 

「ん? 何これ!? 私のCCMから声がするんだけど!」

 

「また怪奇現象ですか!?」

 

「朝倉さん、見せてください……これは、ファントムからの音声通話です!」

 

『も、もうやめてください! こんなの、クラスメイトにすることじゃないですよー!』

 

「ファントムの音声……つまりこれが相坂さんの声ってことですか」

 

「クラスメイト……相坂さんは、悪霊じゃない……?」

 

 

 

「おとなしくしてなさい!」

 

結局、除霊されちゃうのかな……

 

「観念しろ。必殺ファンクション!」

 

『アタックファンクション ホークアイドライブ』

 

弾丸が三発……もうダメかも……

 

 

 

 

 

私は、皆さんと友達になりたかったのに……!

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってくださーーい!!」

 

『アタックファンクション ソードサイクロン』

 

K・アーサーが弾丸を防いでくれました。

 

ネギ先生、私を助けてくれたんですか?

 

「龍宮さん、やめてください。この人は悪い幽霊なんかじゃないんです」

 

「みんな、これ聞いて!」

 

 

 

『あれ? もう攻撃しないんですか……?』

 

 

 

「これは……相坂さよの声か……?」

 

「しないよ。だって私たちクラスメイトじゃん」

 

『わ、私の声が聞こえるんですか!?』

 

「朝倉さんのCCMに相坂さんの声が届いてるです」

 

「さっきは攻撃しちゃってゴメンね?」

 

「すまなかった。おまえの正体も知らずに」

 

「さよちゃん、私たちと友達になろ?」

 

『……はい! 私、ずっと一人で……さみしかったんですー! うわーーん!!』

 

「ハカセさん、ファントムは私じゃなくて、さよちゃんにあげてもいいよねー?」

 

「構いませんよ。いいデータを集められるのなら、幽霊でも大歓迎です!」

 

『あ、ありがとうございます! では改めて、相坂さよです。皆さん、これからもよろし…おね……』

 

「相坂さん?」

 

『…………』

 

「あれ? 動かなくなったよ?」

 

「声も聞こえない……成仏しちゃったのかなー?」

 

「言い忘れてましたが、スペックのせいでバッテリーの消費が早いので気をつけてくださいね」

 

動けませーん! 誰か充電してくださーい!




さよちゃんとファントムは幽霊が、龍宮とアサシンはスナイパーが共通点です。

さよちゃんの機体はあくまで"ファントム"として開発されたため、別のLBXになることはありません。実際のプラモデルもそうでしたね。

次章から修学旅行の話に入りますが、その前に次回だけミゼレムクライシス後の世界の話を書きます。
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