とある平行世界の2054年
ブラックミゼルの討伐に成功し、今なお残存ミゼレムの脅威から世界を守り続けている装甲娘たち。
高校2年生の川村アミ
高校1年生の花咲ラン
高校3年生のジェシカ・カイオス
高校2年生の古城アスカ
四人はかつてミゼル事変の収束に貢献した功績から"レジェンド"と呼ばれている。LBXの使い手としてだけでなく、世界を守るためにLBCSの使い手としても戦い続ける道を選んだ。
彼女たちは現在、ミゼレムの討伐任務を終え、ダックシャトルの中で束の間の休息を取っていた。
「はぁー、今日も疲れたなー……」
「残存ミゼレムの完全消滅まであと少しよ。地方はどうしても人手が足りないから、私たちが頑張らないと」
「そうだよアスカ! 気合いで乗り切ろうよ!」
任務から帰還し、シートにへたりこむアスカ。目標の達成が目前に迫り、ジェシカとランはアスカを鼓舞する。
「ランはいいよなー。体力あるから人一倍動けるし、オーバーセンスだってすんなり会得したし」
「すんなりじゃないもん! 結構苦労したんだからね!? アスカはもっと食べて、体力つけなきゃ! 昔はよく食べてたじゃん」
「俺はそのうちモデルの仕事があるから、脂肪増やすわけにはいかねーの」
休憩がてら談笑するレジェンドたち。
そこにブリーフィングルームから出てきたアミが声をかける。
「みんな、ちょっといい?」
「どしたのアミ?」
「このLBX、誰かの忘れ物かしら? ジオラマの中にあったのよ」
アミが手にしているLBXは"ジャッジ"。4年前、灰原ユウヤが使っていたLBXである。
「あ、それ? 前にユウヤが来たときに置いてったんだ。「ラン君がLBCSを使いこなせるようになったから、僕の昔の体験談は役目を終えた。過去の自分、そしてジャッジとも決別するよ」って言ってさ」
アミの質問に淡々と答えるラン。第3回アルテミスの決勝で破壊されたジャッジだったが、ユウヤは自身の過去を振り返るために敢えてジャッジを修復していた。
「処分しないの? ユウヤはいらないって言ってたんでしょ?」
「う~ん……なんとなくだけど、これは処分しちゃいけない気がするんだ。『新しい持ち主を待ってる』って感じがして」
「なんだよそれ~。LBXに意志があるみてーじゃん」
ランはアミからジャッジを受け取り、ショルダーバッグの中にしまう。
「ミゼレムの件が全部片付いたら、慰安旅行しましょうよ。ユウヤたち男子レジェンドも誘って」
「賛成ー!」
「おっ、いいね。俺も行くぜ!」
報酬はモチベーションを高める方法のひとつ。ジェシカの提案に心を踊らせる一同。
「バカンスかー。私はアロハロア島に行ったことないから、いつか行ってみたいなー」
「そっか、アミはあの時日本で療養中だったよね」
「おーし、バカンスに一日でも早く行けるように、ミゼレム退治頑張ろうぜ!」
壊滅したトキオシティの上空で、旅行計画に花を咲かせる四人。その時、機内にアラートが鳴り響いた。
「な、なんなの!?」
「救難信号よ。メタモR、非常用回線を開いて」
『了解だモ!』
ジェシカの指示で非常用回線が繋がり、音声のみの通信が始まる。ミゼレムによる通信傍受対策のため、普段は使わない回線を使うようにしている。
「宇崎だ。おまえたち、大至急タイニーオービットまで来てくれるか?」
「拓也さん!? どうしたんですか?」
タイニーオービットの社長、宇崎拓也。現在はLBX事業を休止し、ミゼレムに対抗するためのLBCS開発に協力している。
「所属不明のLBCSがタイニーオービットに侵入し、強化ダンボールの開発データを盗んだらしい」
「強化ダンボール……? 何のために?」
「はっきりとはわからんが、ミゼレムの仲間であれば強化ダンボールのデータを悪用し、強固なバリアを作るかもしれん」
「そうなると討伐が面倒になりそうだな……」
先ほどまでの休息ムードが一転。最悪の事態を想定し、その場の全員に緊張が走る。
「そのLBCSってどんなやつですか?」
「イフリートだ」
それを聞いた途端、アミの表情がこわばる。檜山蓮……かつてレックスと呼ばれた男が使っていたLBXを思い出したからだ。彼女はイフリートと戦ったことはないものの、その脅威は対峙した山野バンから聞いていたため、四人の中で唯一スペックを理解していた。
「どうやらデータベースに無い未登録のLBCSらしい。奴の出す炎のせいでまだ誰も近づけてないんだ」
「そこで俺たちの出番ってわけか」
「ああ。奴はまだ社内にいる。逃げられる前におまえたちがイフリートと接触し、奴を拘束してくれ」
「「「「了解!」」」」
『目的地変更! 全員シートベルトを閉めるモ!』
神威島に帰還するはずだったダックシャトルはトキオシティの上空で旋回し、タイニーオービットへと急行した。
タイニーオービット社
LBXの国内最大手メーカーであったが、ミゼレムの襲撃によりLBXの生産を停止。技術者はミゼレム対策として試作型LBCSの研究開発を進めていた。
現在、侵入者の放火により火災が発生。社員は避難を余儀なくされた。
「アスカ、まだいける?」
「なんとかな。さっきトマトジュース飲んで栄養補給したし」
「よーし、行くわよ!」
「「「「LBCSコネクト!」」」」
社屋の近くに着陸したダックシャトルから、四人のLBCSが飛び出した。研究部の化学物質にでも引火したのか、社屋からは火柱と黒煙が立ち上る。
「うわっ、ひっでー……ここに突入すんのかよ」
「LBCSなら問題ないわ。さっさとイフリートを見つけて捕まえるわよ」
LBCSの生命維持機能のひとつに体感温度を調節する機能がある。これがある限り、火災現場だろうが寒冷地帯だろうが問題なく活動ができる。
「なにこれ!? 壁が熔けてる!?」
「イフリートの炎で強引に穴を開けたのね」
「ひえー、無茶苦茶しやがって」
イフリートを纏う者が社屋に侵入した際、社内の重要部門を守るために防護壁が下ろされていた。しかし、その防護壁も高熱で熔かされ、役目を全うしていない。
その防護壁の奥にある開発室。数多のLBXを世に送り出してきたタイニーオービットの中枢。イフリートを身に纏う少女はそこにいた。
「やっと見つけた。これが本物の強化ダンボールの開発データ。これで世界を変えられる……」
開発データを自身のデバイスにダウンロードするイフリート。丁度ダウンロード作業を終えた所だった。
「いた! あいつだね!」
目標を発見し、武器を構える四人。イフリートはコンピューターの前から動こうとしない。
「イフリートの適合者はコウヅキクレアだけのはず。もう一人いるなんて聞いてないんだけど?」
「あなた、何者なの?」
「もうここまで来たのか……私に近づくな。さもなくば、消し炭になるぞ」
四人に背を向けたまま脅しをかけるイフリート。両手の拳が朱く染まり、炎が発生する。
「そうはいかないんだよな」
「強化ダンボールの開発データ、返してもらうわよ!」
四人に囲まれ、臨戦態勢を取ろうとしたイフリートだったが、
「くっ……貴様、抵抗はよせ!」
急に頭を抱え、苦悶の表情を浮かべる少女。腕の装甲で顔が隠れ、四人は少女の顔を視認できない。
「あいつ、何やってんだ?」
「……仕方ナイ」
イフリートの背中から伸びる四本の帯が淡く光り始めた。
「まさか必殺ファンクション!? やらせるもんか!」
ランがイフリートに掴みかかり、アミもそれに続く。
「やめろ! 来るナ!!」
帯の発光が次第に強くなる。イフリートは二人を振りほどこうと抵抗する。
「二人とも、そいつに近づいて大丈夫か?」
ジェシカとアスカはイフリートの攻撃に備え、少し距離を取っている。
「ジェシカとアスカ、今のうちにイフリートを攻撃して! LBCSを解除させるのよ!」
「流れ弾が当たっても、文句言わないでね!」
ジェシカはジャンヌ・Dの銃を連射し、アスカはヴァンパイアキャットの槍を突き刺す。
だが発光は収まることなく、更に強さを増す。その場の全員があまりの眩しさに思わず目を閉ざす。
「うわっ!」
「な、なによこれ……」
「来るなァーーー!!!」
まばゆい光が収まると、イフリートの姿が忽然と消失した。
「イフリートと一緒にアミとランが消えた!? そ、そんな……」
「アミー! ランー! いたら返事してくれー! どこ行っちまったんだよー!!」
イフリートの近くにいたアミとランも、姿を消してしまった。
状況を受け入れられず混乱するジェシカと、必死に呼びかけるアスカ。タイニーオービットの社内の何処を探しても、三人が発見されることはなかった。
「……おい」
「おい、起きろ!」
To be continued
当初はジェシカとアスカもネギまの物語に組み込む予定だったのですが、登場人物の人数や作者の技量の関係で二人に絞り込むことに……ジェシカとアスカの活躍を期待してた方、申し訳ございません。
『ユウヤがジャッジを修復して置いていった』というくだりはでっちあげです。原作設定ではありません。