ま、いっか。
ep.21 ここはどこ?
所属不明のLBCSイフリートを拘束しようと立ち向かった四人のレジェンド。
しかし、まばゆい光に阻まれ拘束することは叶わず。花咲ランは閃光を目の前で浴びたショックで気を失っていた。
「……おい」
(う~ん……?)
「おい、起きろ!」
「え!? あたし、寝てた……?」
誰かの呼びかける声で目を覚ますラン。
目を開けると、そこには臙脂色の学生服を着た金髪の少女が立っていた。
「やっと起きたか」
「あれ? イフリートは?」
「イフリート?」
「ていうかここどこ? みんなどこ行ったの!?」
先ほどまでランがいたのは、火災が発生した社屋の一室だった。だが現在、彼女の視界にあるのは夕暮れの森の中に佇むログハウス。急に見知らぬ土地へと切り替わり困惑するラン。
「おまえの仲間のことは知らんが、ここは麻帆良学園だ」
「麻帆良学園……ってどこ? 聞いたことないんだけど」
「それより、おまえのその格好はなんだ?」
「なんだって言われても…LBCSだよ。知らないの?」
「知っとるわ! なぜLBCSの格好のままなのかと聞いとるんだ! 魔法の秘匿義務を忘れたのか!?」
「魔法? 秘匿義務? なんのことかわかんないよー……」
(こいつ、魔法のことを何も知らないのか?)
エヴァンジェリンの言ってることが理解できず戸惑うラン。
(なんか変な子供に絡まれちゃった……あたし、なんでこんな所にいるんだろ? タイニーオービットでイフリートを取り押さえようとして、気がついたらここに……わけわかんない)
「そうだ、CCMで助けを呼ぼう」
ランはCCMを取り出し、アミに電話をかけた。しかし、
『おかけになった電話番号は現在使われておりません』
「あ、あれ? じゃあジェシカは? アスカは?」
『おかけになった電話番号は現在使われておりません』
仲間に連絡を取ろうとするものの、連絡先は悉く同じメッセージを吐く。家族、同級生、友人の親、LBXメーカーの社員……誰でもいいからとにかく連絡ができる相手を探すため、アドレス帳の片っ端から電話をかける。
「マスター、どうされましたか?」
ログハウスに戻ってこないエヴァンジェリンを気にかけた茶々丸。二人のもとへ駆け寄る。
「茶々丸、そいつを見張っておけ。逃がすんじゃないぞ」
「了解です」
茶々丸にランを監視させ、CCMで学園長に連絡を取るエヴァンジェリン。
「ほぉ、珍しいのぉ。おぬしから電話を寄越すとは」
「LBCSのことで話がある」
「なんじゃ?」
「魔法を使えない者がLBCSを使いこなせる…と言ったら信じるか?」
「それはありえんわい。LBCSの動力源は魔力だからのう。そんなこと、ワシの数倍長く生きとるおぬしの方がよく知っとるはずじゃが?」
「さっきLBCSを装着したままの女が倒れてたんだ。今は茶々丸に見張らせてる」
「なんと……そやつの特徴は?」
「高校生くらいで赤い髪の女だ。魔法のことは何も知らないらしい。こいつの処遇をどうする?」
「魔法を知らない……うーむ、さすがにそやつを野放しにはできんのう……LBCSが露呈すれば、魔法の存在がバレるのも同然じゃからの」
「魔法協会も災難だな。ただでさえマジックダンボールの件で翻弄されてるのにな」
「マジックダンボールをわざと壊して悪用したのはおぬしじゃろうに……そうじゃ、今日はその子を保護してやってくれんか?」
「私が?」
「女子寮は今空きが無いんじゃ」
「拘置所にでもぶちこめばいいんじゃないか?」
「それはこれから会議して決める。こんな前例の無いこと、ワシ一人で決められんわい」
「それもそうだな」
「一応その子の名前を聞いておきたい」
エヴァンジェリンはCCMを耳から離し、ランに問いかける。
「おい、おまえの名前は?」
「あたし? 花咲ラン」
誰にも電話をかけられず、冷や汗をかくラン。CCMに集中し、エヴァンジェリンの顔も見ずに答える。
「うむ、わかった。処遇が決まるまでその子を頼んだぞ」
「フン、しょうがないな」
学園長との電話を切るエヴァンジェリン。
「どうしよう、誰にも連絡できない……まさか、CCMが壊れた……?」
全ての連絡先をしらみ潰しに試したランだったが、誰とも通話することができなかった。ランの表情はみるみる青ざめる。
「そこのおまえ」
「な、なに?」
「いつまで
「はいはい、解除すればいいんでしょ」
(この子なんなの? どう見ても年下なのにさっきから偉そうなんだけど)
年下に命令されることに嫌悪感を感じながらも、素直に言うことを聞くラン。LBCSを解除したことで体感温度を調節する機能も停止し、ようやく現在の気温を感じ取る。この日は4月21日。春の夜の空気は少し肌寒く感じた。
「今日は私の家に泊まれ。夕飯と風呂も用意してやる」
「え、いいの?」
「もう日が暮れてるし、おまえの仲間とも連絡が取れないんだろ?」
「あ、ありがと……お世話になるわけだし、あんたたちの名前聞いていい?」
「エヴァンジェリンだ」
「絡繰茶々丸です」
(この茶々丸って人、アンドロイドだ……ミゼルとかは人間と見分けがつかないくらいだったけど、この人はバレバレだね。耳の形がなんか変だし、膝の関節とかどう見ても機械だもん)
ランは二人に連れられ、ログハウスの中へと入る。
「ここが私の家だ」
「お邪魔しまーす。わぁ…この家、人形がいっぱいあって、ドールハウスみたい。あ、ヴァンパイアキャットがある!」
人形の中に混ざるヴァンパイアキャットを見つめるラン。連絡のつかない古城アスカを思い起こす。
「どうした? LBXを凝視して」
「これ、友達が使ってるLBXと同じなんだ」
「ほぅ、奇遇だな」
「エヴァちゃんもLBXが好きなの?」
「腐れ縁だ。LBXなんて、好きでも嫌いでもない」
(腐れ縁? よくわかんないけど、そういう人もいるんだ……)
その後、エヴァンジェリンの家で夕飯をもらい、入浴を済ませたラン。茶々丸が用意した布団で就寝する。
(……なんか眠れないなー)
寝つけないランは布団の外に出る。
「どこ行く気だ?」
「お手洗い…借りていいかな?」
「好きにしろ」
「はぁ……なんでこうなっちゃったんだろ? 無事にみんなと会えるのかな……? 電話は相変わらず繋がらないし……
さみしいなぁ……」
「お手洗い、長いですね」
「……」
To be continued
原作ではエヴァンジェリンは携帯を持ってませんが、『サウザンドマスターに魔力を封じられて以降、CCMを持つようになった』という設定にしてます。
あ、この場面16話でも書いたな。