2003年4月 新学期
マジックダンボールの欠陥、新ルールの追加もどこ吹く風。LBXの人気はさらに広まり、メインターゲットである子供を中心に多くの人がLBXを手にしていた。
ネギが受け持つ3-Aの生徒にも、流行りに乗ってLBXバトルを始める者がいた。
「アキラ、LBXで対戦しよーよ。ホームルームまでまだ時間あるし」
「ゆーなもLBX始めたんだ」
3-Aの教室では、裕奈とアキラと亜子の三人が朝練を終え、制服に着替えていた。
「ジャンヌ・D! おとーさんの出張のお土産だよー」
「ガンマンかー。かっこええやん」
裕奈の手には二丁拳銃の使い手であるジャンヌ・Dが握られている。
「じゃいくよ、トリトーン」
アキラの機体は水中戦を得意とするトリトーンである。二人は机の上に展開したバトルフィールドにLBXを投げ入れた。
「初心者だからお手柔らかにね~」
「私も初心者だけどね」
ジャンヌ・D、トリトーンから少し距離を取り銃弾を連射する。トリトーンはダッシュで弾丸から逃げるが、何発か被弾してしまう。射撃に集中するジャンヌ・Dに接近しアンカーを振るうが、
「おっと! この子身軽だから当たらないよー」
ジャンヌ・Dは横ステップで回避し、トリトーンの攻撃を躱す。そしてすぐにトリトーンに発砲。
トリトーンの攻撃を躱しては撃ち、躱しては撃ちの繰り返しである。ジャンヌ・Dの一方的な攻撃により、トリトーンの体力は残り25%を切った。
「アキラやられっぱなしやん」
「この勝負もらったー!」カチッカチッ
「……あれ? 弾切れ?」
「チャンス!」
仕返しとばかりに、ジャンヌ・Dに容赦なくアンカーを振るう。
「うわっ、ちょっ、リロードできなっ」
ガァン!
アンカーの一撃がクリーンヒットし、決着がついた。
「あー! あとちょっとだったのにー!」
「見事な逆転負けやなー」
「悔しいから戦い方の勉強しよっと。Lマガに戦術論とか書いてないかなー?」
LBXマガジン、通称"Lマガ"は新商品の情報や、初心者向けの戦術指南が書かれた情報誌である。裕奈はLマガの戦術欄を読み始めた。
「ウチもLBX始めよかなー」
「亜子も興味ある?」
「だってみんな楽しそうやし」
「じゃまずは機体選びからだね」
亜子とアキラはLBXのカタログを開き、気になる機体を探す。
「ズール、ムシャ……うーん、なんかピンとこんなぁ」
「水中型とかどうかな? ナズー、シーサーペント、マッドロブスター」
「最後のエビやん! ん?この水兵みたいな子かわいくない?」
亜子は白いLBXを指し示した。水兵帽のような頭部のLBXで、トリトーンと同じ形のアンカーを持っている。
「マリーフェインだね。この子も水中型だよ」
「これにしよっかなー? そういや昨日、まき絵帰ってないんやけど、そっち泊まってない?」
「いや? 来てないけど?」
「連絡は?」
「電話しても繋がらんのや……」
「ってことは、行方不明!?」
まき絵が昨日から寮に帰ってないと聞き、裕奈とアキラは青ざめた。すると、しずな先生が3-Aの教室に入ってきた。
「みんな聞いて、まき絵ちゃんが桜通りで倒れてて、今学校の保健室にいるの」
「え!? まき絵が!?」
「様子見に行こ」
「「うん!」」
三人はLマガを読むのを止め、保健室に向かった。
それからまき絵たち四人が不在のまま朝のホームルームが終わり、生徒たちは身体測定を始める。
身体測定の最中、美砂はある噂話を切り出した。
「ねえねえ、最近寮で流行ってるあの噂、どう思う?」
「あ~、あの桜通りの吸血鬼ね」
「えー、なにそれ!?」
噂を知らない生徒たちは美砂の話を興味深そうに聞き入る。
「なんかねー、満月の夜になると出るんだって。桜通りの並木道に、化け猫の顔した血まみれの吸血鬼が……」
「キ…キャー!」
「こわいですー!」
美砂はわざとらしく不気味な顔をして語り、鳴滝姉妹は恐怖に怯える。
「吸血鬼なのに化け猫? へんなの。そんなのデマに決まってるでしょ」
アスナは噂話を全く信じていないようだ。
「こんな感じかえ?」
木乃香は噂の吸血鬼の想像図を黒板に描いた。牙の長い猫がドラキュラのマントを羽織っている。
「かわいー!」
「これならむしろ会ってみたいなー!」
「あ、あれ……?」
木乃香の描いた想像図が女子生徒たちに好評で、怖がらせようとした美砂は拍子抜けしてしまった。
(フン、なめられたものだな……)
猫のイラストにクラスが盛り上がる中、一人の女子生徒が眉間に皺を寄せる。
「先生ーー!大変やーー! まき絵が…まき絵がーー!」
「亜子さん!? どうしたんですか!?」
慌てた様子の亜子に呼ばれ、ネギたちは保健室に向かう。保健室のベッドの上では、まき絵が静かに寝息を立てていた。
「桜通りで倒れてたんだって」
「まさか、噂の猫吸血鬼にやられたとか?」
(ほんの少しだけど、まき絵さんから魔力を感じる……まさか、魔法使いの仕業……?)
「ん……あれ? なんでみんないるの?」
「あ、まき絵起きたよ」
「よかったー。心配したやん」
まき絵が目覚めて、ようやく一安心する亜子たち。
「ていうかここどこ? 今何時?」
「まき絵さん、いいですか? 落ち着いて聞いてください。ここは学校の保健室で、今は朝9時です」
「え?学校!? 私、寝坊しちゃったー!?」
「まき絵さん、何かあったんですか?」
「えーっと……桜通りでおっきな猫ちゃん見た気がするんだけど、その後は覚えてなーい」
まき絵はネギの質問に曖昧にしか答えられない。事件当時の記憶のほとんどが飛んでしまったようだ。
まき絵が起き上がると、アスナはまき絵の首元についた何かの噛み跡を見つけた。
「うわ、噛まれてるじゃん。大丈夫?」
「ほんとだ。傷跡がちょっと痛いかな」
「長時間寝込むくらいやから、何かの感染症かもしれんな。一応病院行って見てもらい?」
「えー、私元気なんだけどなー」
亜子はまき絵の身を案じ、医療機関での受診を促した。まき絵は渋々といった様子だ。
その日の夜、部活を終え帰路につくアスナたちは桜通りの近くを歩いていた。
「やっぱり猫吸血鬼はいるんだって」
「どうせ野良猫の見間違いです」
ハルナはまき絵の件を証拠として噂を信じたが、夕映はデマと断言した。
「のどか、私たち書店寄るから先帰っててー」
「噂とか関係なしに、この時期は不審者が出やすいので気をつけるです」
「うん」
「……本屋ちゃん一人で大丈夫かな?」
「心配なん? 吸血鬼とかデマゆーたんアスナやろ?」
「あ、桜通り……か、風強いですね……ちょっと急ごうかなー。こ、こわくない~……」
早歩きでさっさと通り抜けようとするのどか。
(ちっ、いちいち
突如として、並木道の合間から"ドォン!"と何かの爆発音が鳴り響く。
「ひゃあ!!?」
のどかは爆発音に驚き、その場で尻もちをついてしまう。腰を抜かしたのどかの目の前に、一人の不審者が現れた。
「LBCSコネクト、ヴァンパイアキャット。宮崎のどか、悪いけど少しだけその血を分けてもらうよ」
「キャアアアア!!」
そこにいたのは、猫の耳を生やした吸血鬼だった。
To be continued
裕奈はアーティファクトの二丁拳銃のイメージからジャンヌ・Dを持たせました。
アキラは水泳部で力持ちという設定から、水中型でハンマー使いのトリトーンに。
亜子のアーティファクトはナースなので、旧装甲娘で救護班だったマリーフェインを選びました。
そして、エヴァンジェリンはヴァンパイアキャットです。共通点は吸血鬼で、ミドルネームのキティの意味は子猫ですので。