麻帆良の小さな戦士たち   作:ハクアルバ

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ep.09 LBCSの戦い

夜の桜通りを歩いていたのどか。そこに突如として何かの爆発音が鳴り響き、並木道の合間から一人の少女が姿を現した。

 

「LBCSコネクト、ヴァンパイアキャット。宮崎のどか、悪いけど少しだけその血を分けてもらうよ」

 

自身の背丈を越える長さの三叉の槍を持ち、先端を獲物に向ける。のどかは腰を抜かし、その場で気を失ってしまった。

 

「待てーー! 僕の生徒に何をするんですかー!」

 

桜通りの周辺を見張っていたネギは突如現れた不審者に気付き、現場に駆けつけた。

 

「もう気付いたか……」

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル、魔法の射手・戒めの風矢!」

 

呪文を詠唱し、魔力の矢を放つ。矢はヴァンパイアキャットの装甲に直撃するものの、大したダメージを与えられなかった。

 

「効かんな」

「LBCS!? じゃあこれならどうだ! 魔法の射手・ソードビット!」

 

ネギは魔力で八本の光の刃を生成して飛ばした。しかし……

 

「ハルベルトガード」

 

相手は槍の防御ファンクションで自身に薄い壁を貼る。ネギが放った刃は全て壁に弾かれてしまった。

 

「くそっ、これもダメか!」

 

「ほう、必殺ファンクションの代用魔法か。器用なことをするじゃないか」

 

「えっ!? き、君はウチのクラスの……エヴァンジェリンさん!?」

 

相手の顔を見て驚くネギ。自分の教え子が事件の犯人であることに動揺している。

 

「LBCSを使えるってことは、あなたも魔法使いですね? なぜこんなことを……」

「私にかけられた呪いを解くためだよ。ネギ先生、おまえの血もいただく!」

 

「戦うしかないんですね……LBCSコネクト、K・アーサー!」

 

教え子との対峙に戸惑いながらも、ネギはK・アーサーを装着し、剣を構える。

 

「K・アーサー……やはり奴の息子か。忌々しいものを受け継ぎおって」

 

顰めっ面でネギを睨むエヴァンジェリン。K・アーサーとは因縁があるのか、槍を持つ手には力がこめられる。

 

「奴って、僕の父さんのことですか……? 何か知ってるんですか!?」

「お父さんの話が聞きたいか? 私を追い詰めたら教えてやるよ」

 

LBCS同士の戦いが始まった。エヴァンジェリンは槍の末端を持ち、ネギに襲いかかる。

 

「おまえのLBCSの実力、見せてもらうぞ!」

 

女子中学生とは思えないような足の速さでネギとの距離を詰め、手にした槍で刺突を仕掛ける。

 

「は、速い!」

 

回避が間に合わず、慌てて剣で防御するネギ。

 

今度は走りながら槍を振りかざし、先端をネギに叩きつけた。

 

「ぐぅっ!」

 

なんとか剣で防いだものの、遠心力の乗った一撃がネギの右手をしびれさせた。

 

エヴァンジェリンの俊敏さと槍のリーチの長さを生かした攻撃に翻弄され、ネギはひたすら防御に徹する。

 

(強い……エヴァンジェリンさん、LBCSの扱いに慣れてる!)

 

「どうした! それでも奴の息子か?」

「くっ、このっ!」

 

ネギも攻撃を当てようと剣を振るが、素早い身のこなしで躱されてしまい、ただ空を切るばかり。

 

(アスナさんのアキレスと同じで、盾を持ってないな。カウンターを狙ってみるか……)

 

ネギは攻撃をやめ、相手の出方を見ることにした。

 

「何か考えてるみたいだが、おもちゃ遊び(L B Xバトル)の感覚で私を倒せると思うなよ?」

 

エヴァンジェリンはネギから離れ、槍を空高く投げ飛ばした。槍は夜空の闇に紛れ、見えなくなった。

 

「武器を捨てた!?」

「さあぼーや、かかってこい」

 

丸腰になったエヴァンジェリンはネギを挑発する。

 

(今なら攻撃のチャンスだけど、これは罠かも……エヴァンジェリンさんの実力は不明だし、下手に間合いに入ると何をされるかわからない……よし、これでいこう)

 

少し考えたネギはその場を一歩も動かず呪文を唱えた。

 

「風花・武装解…」ドスッ

 

呪文の詠唱が完了しようとした途端、空からエヴァンジェリンの投げた槍が落ちてきた。穂先はネギの後ろ髪を掠め、地面に突き刺さった。

 

「ひぃっ!」

 

「惜しい。あと10cmずれてたら、脳天に突き刺さってたのに」

「こ、これを狙ってたんですか!?」

 

武器を捨てたと思い込み、相手を警戒して動かなかったネギの判断ミスである。危うく致命傷を負う所であった。

 

「武装解除の呪文を撃とうとしたな。目には目をだ、氷結・武装解除!」

 

エヴァンジェリンはフラスコと試験管を取り出し、それぞれの魔法触媒を混ぜて氷の魔法を巻き起こした。

 

「うわぁっ!」

 

武装解除を喰らったK・アーサーの鎧は砕け散り、ネギの体から外れてLBXに戻ってしまった。その隙にエヴァンジェリンは槍を拾い、走り去った。

 

「さっきの音、何やったん?」

「あっ! ネギと本屋ちゃん!」

 

エヴァンジェリンと入れ違いにアスナと木乃香がやってくる。先ほどの爆発音を聞き、のどかの身を案じて駆けつけた。

 

「しまった、逃げられた! LBCSも解除させられたし」

「えるびー、なんやて?」

「いえ、なんでもありません!」

 

「ちょっとネギ、本屋ちゃんの服破れてるじゃないの! あんたがやったの?」

「え、いつの間に!? 違います!僕のせいじゃないですって!」

 

ネギは戦闘に集中していて気付かなかったが、のどかは武装解除魔法の巻き添えをくらっており、制服のほとんどが砕け散っていた。

 

「そ、そうだ。二人とも宮崎さんを頼みます! 僕は犯人を追いかけますので!」

「あっ、こらーー!!」

 

のどかを二人に押し付けたネギはエヴァンジェリンの後を追う。

 

「エヴァンジェリンさん、逃がしませんよ。LBCSコネクト!」

 

再びK・アーサーを装着。背中のブースターを噴かせて上昇し、空から探すことにした。

 

「ん? あれは……?」

 

空中からエヴァンジェリンを探していると、あるものを見つけた。桜通りの並木道の木陰に破損したマジックダンボールが放置されていたのだ。

 

「そうか、さっきの爆発音はこれだったのか。ということは、エヴァンジェリンさんは……」

 

LBCSを使える魔法使いにあって、エヴァンジェリンに無いもの……ネギはそれに気が付いた。

 

「……いた!」

 

エヴァンジェリンは体育館裏のゴミ捨て場にいた。彼女は上空のネギの存在に気付いていない。ここぞとばかりにネギは攻撃を仕掛ける。

 

「もう逃がしませんよ! 魔法の射手・ソードビット!」

「くっ…ハルベルトガード!」

 

攻撃に気付いたエヴァンジェリンはすぐさま防御ファンクションで壁を張る。しかし、先ほどソードビットを弾いた壁は"バキィン"と音を立てて呆気なく砕け散った。

 

「やっぱり()()()()ですね。これで終わりです! 風花・武装解除!!」

 

風の魔法が吹き荒れ、ヴァンパイアキャットはエヴァンジェリンの体から剥がされた。

 

「やるじゃないか。しかしなぜ私が魔力不足だとわかった?」

 

「エヴァンジェリンさんは攻撃系の呪文や必殺ファンクションを一度も使ってませんよね。氷結・武装解除もわざわざ魔法触媒を使ってましたし、魔力が十分にあれば他にも技を使ってたはずです」

 

「ほう、攻撃魔法を使ってないだけで魔力不足と判断できるのか? 根拠はそれだけか?」

 

「まだあります。壊れたマジックダンボールを見つけたんです。わざと壊してカウンターシステムを誤作動させた。なぜなら、LBCSを使うのに必要な魔力そのものが不足してるから……ですよね?」

 

「正解。よく見抜いたな。……奴のことを教える約束だったな。私が魔法を使えなくなったのはおまえの父、サウザンドマスターの仕業だ」

 

「え、父さんが……?」

 

教え子であるエヴァンジェリンから父親の情報を得られるのは、ネギにとって想定外の収穫だった。

 

「奴に掛けられた呪いのせいで私は魔力を極限まで封じられ、この15年間ずーっとこの学園で中学生生活をやらされてるんだよ!!」

 

「そ、それは本当なんですか!?」

「嘘ついてどうする!?」

 

エヴァンジェリンの立場と父親の所業が、ネギには信じられなかった。

 

「で、でも、それと僕の血に何の関係が…」

「このバカげた呪いを解くには、奴の血縁者であるおまえの血が大量に必要なんだ。観念しておとなしく血を吸われるがいい」

 

「観念って……追い詰められてるのはそっちですよ!? 今は魔法もLBCSもろくに使えないじゃないですか!」

「そうだ。だからパートナーを呼んでおいた」

 

エヴァンジェリンが手で合図をすると、麻帆良の女子中等部の制服を来た人物が現れた。

 

「こんばんは、ネギ先生」

 

「えっ、君は3-Aの…」

「紹介しよう。私のパートナー、絡繰茶々丸だ」

「ええーーっ!? 茶々丸さんがパートナー!?」

 

自分の生徒がもう一人敵として現れ、またもや動揺するネギ。

 

「私に捕まりたくなければ、こいつを倒してみろ」

「でも、生身の生徒に攻撃なんてできません!」

「フン、甘いことを……やれ、茶々丸」

 

「発動、(インフィニティ)ドライブ」

 

茶々丸は自身を強化するファンクションを作動した。体内の電圧を高めることでモーターの回転数が上がり、茶々丸の体温が上昇する。頬は紅潮し、放熱用の髪の毛からは温風が吹き出される。

 

「これは…補助ファンクション!?」

 

「攻撃力と防御力を上げるファンクションだ。これでおまえ(L B C S)と対等だな。文句は言わせんぞ?」

 

「では参ります」

「こ、来ないでください!」

 

茶々丸への攻撃を躊躇い、剣を構えたまま後ずさるネギ。茶々丸はネギの間合いに堂々と踏み込み、剣を両手で掴んで奪い取ろうとする。

 

「な、なにするんですか!」

 

必死に抵抗するものの、表情ひとつ変えない茶々丸に力負けし、剣を奪われてしまう。さらに茶々丸は奪い取った剣を遠くに投げ捨ててしまった。

 

「そんな……」

 

「申し訳ありません、マスターのご命令ですので」

「くっ……放してくださいっ…!」

 

茶々丸はネギにヘッドロックをかける。ネギはブースターを噴かせて逃れようとするが、飛び立つことができない。

 

「どうだ、これが茶々丸の力だ。ではおまえの血、吸わせてもらうぞ」

 

エヴァンジェリンがネギの血を吸おうとしたその時、

 

「コラーー! そこの変質者どもーー!」

「ん?」

「ウチの居候に何すんのよーー!!」

 

ドゴッ

 

「はぶぅ!?」

 

ネギの後を追ってきたアスナは、エヴァンジェリンと茶々丸に強烈な跳び蹴りを放った。

 

「あ、あれ? あんた達ウチのクラスの…あんたらが犯人なの!? 二人がかりで子供をいじめるような真似して…答えによってはタダじゃ済まないわよ!?」

 

「ぐっ…ぼーやの保護者か。よくも私の顔を足蹴にしてくれたな……」

 

顔面に蹴りをくらい、痛みに表情を歪めるエヴァンジェリン。

 

「お、覚えておけよ~!」

 

茶々丸と共に夜の林の中へと消えて行く。

 

「あっ! 待ちなさいよーー!! ……行っちゃった」

 

「う…うわーーん! アスナさーーん!」

「わっ!? ちょっとネギ」

 

「こ、こわかったですーー!」

「あーもう、ひっつかないでよー。LBCSも外したら? 誰かに見つかったら困るでしょ?」

 

緊張の糸がほぐれたのか、アスナの目の前で泣き出すネギ。教師をしているとはいえ、彼の精神年齢はまだまだ年相応の子供だった。

 

 

To be continued




・LBCSには威力の低い魔法攻撃は効果が薄い。
・LBCSを解除させるには、武器や必殺ファンクションでダメージを与えてブレイクオーバーさせるのが一般的。
・LBCSを解除されても、LBXのダメージが少なければ再コネクトが可能。魔法による武装解除はあくまで一時しのぎ。

という設定で書いております。

ちなみに、原作で空を飛んでたエヴァンジェリンですが、この回では一度も飛んでいません。LBCSの維持に魔力を消費しているので、魔力に余裕がないからです。
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