悪夢の悪魔   作:黒プー

13 / 17
チェンソーマンアニメと漫画同時に更新されたぞ! お前らもちろん両方見てるよな!?


ホテルにて 4

…何してんの? お前

 

澪ちゃんの影から人型の本体を露わにしたエンティティが、凄まじい圧が周囲一体を満たす。

…誰一人として動けない。動いたら間違いなく殺される。

そう思わせるような恐ろしい殺意だった。

 

「ヒッ…はっ…あっ…」

「…落ち着いて、コベニちゃん。交渉の余地は…あるだろうから。」

『何? この後に及んでまだ交渉しようとしてんの? バカにしてる?』

 

キレている。間違いない。言葉を間違えたら一瞬で殺されるだろう。

 

『くふふ…良いぞ、そのまま争え…』

『うるせえよ雑魚。汚ねえ笑い方してんじゃねえよ。』

『え』

 

私たちを見て笑っていた永遠の悪魔の一部が一瞬で消し飛ばされる。

 

『が…あ』

『今僕が喋ってるんだよ。雑魚のくせに汚ねえ笑い方で話遮るのやめてくれない?』

 

その一撃で弱点を貫かれたのか、永遠の悪魔は、それだった肉塊を残して死んだ。

 

『さて。やかましいのは死んだ。で? 僕とどう交渉しようって言うんだい? 』

「…っ」

 

本気だ。この悪魔は間違いなく私たちを殺す。澪ちゃん以外本当にどうでも良いんだ。

…アキ君だけでも逃さないと…何か…交渉できるものは…

 

「…お前は良いのか、エンティティ」

『何がだい? 早川アキ。』

「っアキ君!?」

『君に話しかけてないから今すぐ死にたくなかったら黙ろうか、姫野。』

 

ダメ、だめだよアキ君…あなたはまだ死んじゃダメなのに…!

 

「お前がここで俺たちを殺すのも良いだろう。だが誰が澪を運ぶんだ?」

『…僕が運べば良いだけだと思うよ?』

「悪魔のお前が運んできたこともを病院が受け入れると思っているのか?」

『…』

「俺たちを生かして返してくれるなら、澪を病院まで送る。俺たちを生かせば澪も生きる。だが殺せば、お前は彼女を見捨てることになる。違うか。」

 

アキ君のその言葉に、エンティティは少し考えるふりをした。

そして何か思いついたのか、再びこちらを向く。

 

『ならそこのマムを刺したクソアマ以外は助けてあげよう。別にそいつ一人いなくなったところでマムを運ぶのに支障はないだろう?』

「…!」

「ヒェッ!?」

 

エンティティはコベニちゃんを指差しつつ、そう提案してきた。

…コベニちゃんを差し出せば、助かる。私も、アキ君も。

ならそれで良いんじゃないか?

 

「…アキ君」

「…姫野先輩?」

「コベニちゃん一人でみんな助かるんでしょう?」

『そうだね。そいつ差し出せば他は全員生かして返す。これは契約だ、と言っておこう。』

「…なら」

 

契約、といった。この契約を結べば、間違いなく助かる。

するべきだ。確実に生き残るならその道を選ぶべきだ。

 

「…いや。誰も差し出さない。」

「アキ君!?」

『…へぇ? 強情だね?』

「…俺たちはデビルハンターだ。デビルハンターが死ぬのは…」

 

アキ君は刀に手をかけつつ、言う

 

「…悪魔に負けた時だけだ。」

『…ふふ、あはははは! やはり君は面白いね、早川アキ! …良いよ、今は全員生きて帰そう。』

 

思わずホッとする。よかった。差し出さなくてもみんなで帰れる。

 

『ただし。そのクソアマが公安を抜けたとき。確実にそいつの命をもらう。…そのくらいなら良いだろう? 死にたくないなら寿命が来るまで公安にいればいい。』

「…わかった」

「えっえっえ!?」

『…さ、まずはマムを病院へ運んでもらうよ? 死んじゃったら僕がとっても悲しいからね?』

 

いつも通りの口調へと戻り、澪の影に本体を戻すエンティティ。…なんとか、生き残れたか。

 

「…ん」

 

目が覚めたらまた病院だった。…なんだか最近このパターンが多い気がする。

 

『やーおはようマム! 気分はどうだい?』

「大丈夫。」

『そりゃよかった! なんせ脇腹ブッ刺されて血が止められなくて本当にやばかったからね! 本当に生きててよかった!』

「…そっか」

 

そうだ。私、コベニさんに刺されたんだ。

よかった、生きてて。

 

『あの娘にはきっちりお灸を据えといたからもう大丈夫! あ、それと。』

「? 何かあるの?」

『うん。なんか飲み会があるからって。4課全員揃うし澪ちゃんも一緒にーってさ。』

「い、いく! 行くって伝えておいて!」

『マムならそう言うと思ったよ。バッチリ伝えてあるよ〜』

「ありがとう!」

 

4課全員という言葉を聞いて、思わず食い気味に行くと言ってしまった。

マキマさんが4課の人はみんな優しいと言っていた。仲良くなれるといいな。

 

『飲み会は二日後だってさ。起きれてよかったね、結構ギリギリだったよ?』

「そうだったんだ…」

 

…本当に起きれてよかった。

 

「「「「「「「乾杯!」」」」」」」

 

目が覚めてから2日後。私は公安の近くにある居酒屋に来ていた。

 

「うわ〜良い匂いがいっぱいすんなぁ!」

「プハー! しみるー!」

「! これ美味しい!」

『やっぱライムレモンジュースは正義。はっきりわかるね。よかったね〜マム〜』

 

お酒は20になってから、ということもあり、私とデンジさんはそれぞれジュースとお茶を頼んでいる。

正直、飲み会に私みたいなこともがいても良いのかわからなかったが、姫野さんが

 

「楽しけりゃなんでも良いでしょ!」

 

と言ってくれて、私たちもご相伴に預かることができた。

そんなわけで美味しいジュースを飲みながら時々テーブルに乗る料理をつまんだりしていると、居酒屋の扉が開かれ、何人か人が入ってくる。その中には、見覚えのある顔があった。

 

「あ、コベニさん」

「ヒィッ!?」

「あ…」

 

思わず声をかけるが、ものすごく怯えた表情をしながら反対側に座ってしまった。

 

『全っ然目合わせないじゃん。おもしろ。』

「笑い事じゃないよ…」

『びびらせすぎたかなぁ』

「何したの…」

 

エンティティ、割と自由なので私が目を光らせておかないとすぐに何かやらかすのだ。

みんなに迷惑かけないように見張っておかないと…

 

「おいっ! 唐揚げ食わないならもらうぞ!」

「あっ!」

 

ちょっとずつ食べたいからと自分の小皿に取り分けておいた唐揚げが、パワーさんに横から取られてしまう。

むむむ。取られないように気をつけないと。

 

『ッスーちょっと待っててねマム?

そういうと、エンティティが私の影から飛び出してくる。

 

『よっこいしょ。 …パワーさん? 人のもの取るなって教えたよね?』

「な、なんじゃうぬは! 別にいいじゃろ! そいつが食わんと言ったんじゃ!」

『マムがそんなこと言うと思ってるのかなー?』

 

…エンティティの背中から何かモヤが出ているように見える。

 

「ピャッ!? お、お主まさかエンティティか!?」

『御名答! …さて、人のもの食べちゃった上に謝らないやつはどうしてやろうかな〜?』

「す、すまぬ! 私が悪かった! だからやめてくれー!」

『…ま、謝ってくれたし許してやろう。』

「た、助かったぁ…」

『…ついでに僕も色々もらっちゃおうかなー』

 

そんなやりとりがあり、私とパワーさんの間に人の姿になったエンティティが座る。

すると、男の人たちがなぜか盛り上がり出す。

 

「(な、なんかすげえ美人が!?)」

「(誰の部下だ!?)」

「おい澪! その人誰だよ!?」

 

反対側で姫野さんと話していたデンジさんがわざわざ席を立ってこちらにやってきた。

 

『なんだいデンジ少年、忘れちゃったのかい?』

「えっなんで俺の名前知ってるんすか!?」

「だ、だって、その人エンティティだから…」

 

そういうと、デンジさんは一度エンティティの顔を見て、再び私の方に向き直る。

 

「…まじ?」

『大マジさ。私エンティティだよ。』

「…お邪魔しました。」

 

エンティティがそういうと、デンジさんはすごすごと帰っていった。

 

「…帰っちゃった。」

『うーむ、まあまあ魅力的だと思うんだけどね、このボディ。お気に召さないかぁ。』

 

そんなふうにエンティティと話していると、向こう側から話す声が聞こえる。

 

「ほら、新人歓迎会だ、新人は立って自己紹介!名前と年齢と、契約している悪魔を言え。」

「公共の場で契約している悪魔を言うな。手の内は信用している人間にしか見せちゃいけないぞ。」

「相変わらず固いやつだな。」

「まー大丈夫!大丈夫でしょ!」

「私は趣味聞きたいな〜。趣味で人間わかるでしょ?」

 

…どうやら自己紹介する雰囲気らしい。

 

「ど、どうしよう…」

『何さマム。名前と年齢言えば良いっしょ。』

「で、でも…自己紹介は印象に残るようなことしなきゃいけないって本で…」

『気負いすぎだって。』

 

どう言うことを言おうか迷っていると、他の人が次々自己紹介を終わらせていく。

 

「うう…」

『んもー、相変わらずプレッシャーに弱いねぇ…』

「次、そっちの子…新人だよな?」

「で、でかいな…」

 

私の番が回ってきた…と思ったが、なぜかエンティティが呼ばれる。

 

『おん? 私かい?』

「さっき言ったろ、新人歓迎会だって。自己紹介くらいしろよ。」

『んやぁー、なんと言いますか、私新人じゃないよと申しますか。』

「今まで一回も見たことないのに新人じゃないわけあるか。」

「そっちの小さい子は? 妹ちゃん?」

『んー…ちょい待ちで』

 

席を立っていたエンティティはそういうと、屈んで私だけに聞こえるように話す。

 

『めんどいなー…これバラしちゃっていい?』

「だ、だめ! わ、私が自分でやる!」

『お、じゃよろしくマム。』

 

エンティティが座り、代わりに私が立つ。

 

「え、えっと、澪です。えっと、9歳です。趣味は…趣味…あ、料理することです!」

「…9歳?」

「こ、今年で9歳です。」

「…そっちのお姉さんじゃなくて…あなたがデビルハンター?」

「は、はい。」

 

そう質問に答えると、知らない4課の人がアキさんに何か話しかけている。

何話してるんだろ。

 

『おおかた、「なんで小学生デビルハンターやってんの!?」とかじゃないのかな、全く、僕がいるのに心配性だなぁ。』

「エンティティの力見たことない人だし…」

『んはは、それもそうか。…おや。幹事のご到着か。』

「え?」

 

エンティティの見ている方向…居酒屋の入り口を見ると、ちょうどマキマさんが入ってきたところだった。

 

『マキマー、お先にいただいてるよん』

「…君が影から出てきてるなんて、珍しいね。」

『たまにはいいっしょ。別にマムの負担にはもうならないしね。』

「永遠の悪魔を倒したから?」

『そーそー。一瞬で消し飛ばしても恐怖溜まるもんだね。やっぱ人間より悪魔ビビらせた方が効率いいわ。』

「そっか。…澪ちゃんも楽しんでる?」

 

急にマキマさんが話しかけてくる。

 

「は、はいっ!」

「そんなに気合い入れなくてもいいよ。ジュース飲んでるだけでもいいからね。」

「あ、はい!」

 

マキマさんは私の斜め向かいに座りながら話を続ける。

 

「永遠の悪魔倒した時、刺されちゃったんだってね。」

「あ、えと…」

「…別にコベニちゃんを罰したりはしないよ。エンティティから色々聞いてたからね。本人は納得してないみたいだけど。」

『ハッ、納得とかするわけないじゃん。 そもそも簡単に錯乱しすぎだよ、人間は。』

「…彼女は()()()()()()()人間なの。君のせいで公安を辞められちゃったら困る。なるべく自重してね。」

『…へいへい。君に嫌われるのはごめんだ、そうするよ。…公安抜けてからならいい?』

「…いいよ。」

『やったぜ。』

 

…なんだかすごく怖い会話を聞いてしまった気がする。

なるべく目を離さないようにしなきゃ…

 

「…私はあっちいくけど、楽しんでね。」

「はい!」

 

そう言うとマキマさんは、デンジさんたちがいる方に行ってしまった。

 

その後は飲み大会やら大食い大会やら色々起こっていたが、なんだかんだあって飲み会もラストスパートになっていた。

 

「…っ」

「あ、アキさん…飲み過ぎですよ…あんまりお酒強くないのに…」

「…悪い…」

『男のプライドってやつかぁ? 若くていいねぇ。』

 

私はというと、酔い潰れてダメになっているアキさんを介抱していた。

普段は全然飲まないのに、今日はやけに飲んでいた。

そんなふうにしていると、後ろから誰かに抱きつかれる。

 

「みーおーちゃ〜ん」

「ひゃっ…!?」

「ンフフ〜、可愛い声出しちゃって〜、そんなに抱きつかれたのが嬉しいのかい〜このこの〜!」

「んっ…そ、そこは…ダメですっ…!」

「ざんね〜ん、ぎゅーしてあげるって…どっかで言ったから〜離してあげな〜い」

「や、やめてっ…くださいっ!」

 

さっきから姫野さんに胸とか腰とかすごい触られるっ…なんだかっ、ちょっと暑くなって…

だ、だめ…こ、これは良くない気がする…!

 

「え、エンティティ! た、助けっ…ひゃっ!?」

『…えっちい。ナイス供給や姫野。』

「きょ、供給!? ちょっ、んんっ! 本当に助けてっ!?」

 

だ、だめ、全然頼りにならない! だ、誰か助けてっ!

…そんなふうにもがいていると、本格的に嫌な予感がしてくる。

 

「…う」

「ひ、姫野…さん?」

「おえっ」

「ひあああああああああああああああ!?!?!?!?」

 

な、何これ!? 臭い!? 気持ち悪い!?

 

「…姫野先輩飲ませるべきじゃねえな…」

「ダハハハハハ!!!! ゲロだ! ゲロをかけられとるわ!」

『ちょっ、助けてって言ってたのそう言うこと!? やべえとりあえず引き剥がさなきゃ!? くっそ硬え!?』

「…トラウマもんだなこりゃ。」

「あらら。…すいません、何か拭くものをー。」

 

「うう…ひぐっ…ぐす…」

「あーらら、派手にばら撒かれちゃったね、こりゃ9歳で経験するもんじゃないね…」

「洋服…お気に入り、だったのに…」

「あららら…」

 

洋服についたゲロは、トイレの洗面台で洗ったところで落ちるはずもなく、ニオイも取れず、結局捨てることになった。

アキさんは気にするなって言っていたからいいのかもしれないけれど、あの洋服は私のお気に入りだった。

 

「アキくんが予備の服持っててよかったね、持ってなかったらもっと酷いことになってたかもねー…」

「う…うわあああああああんん!!」

「あららら! ごめんね!」

 

ヤダヤダヤダ! 今より酷い目に遭うのやだあああああ!

 

『んもー、トラウマ掘り返しちゃダメでしょ…マム9歳だよ?』

「ごめんね、あんまり小さい子のお世話とかしたことなくて…」

『よーしよし、マム大丈夫だからね、あんなゲロまみれにならなくてもいいからねー?』

「うう…ぐす…」

『さて、僕らも帰ろっか?』

 

エンティティが抱っこして私を持ち上げてくれる。普段なら嫌だけど、今日はもう嫌だと言う気持ちが強くて、身を任せてしまう。

 

『おっと。暴れないの珍しいね。そんなにいやだったの? ゲロ。』

「……やだ」

『そりゃそうか。デンジくんなんか持ち去られてたけど、僕らはとりあえずアキくん家に帰るよ。寝ててもいいからね?』

「…うん。」

 

エンティティの背中かお腹かわからないけど、抱えられていると揺れでだんだん眠くなってくる。

 

『…おやすみ。せめていい夢を。』

「…んん」

 

そのまま私は眠ってしまった。




【朗報】デンジ、地雷を避ける
【悲報】デンジ、もらいゲロで結局姫パイに持ち帰られる

ゲロぶっかけられてギャン泣きする澪ちゃん可愛いね。

そしてさらっとエンティティの能力公開です。簡潔に説明すると悪魔ぶっ殺したら強くなります。
夢って見たらすぐ忘れるじゃないですか。それがなんか吸い取られるような感覚だなと個人的に思ったのでこんなかんじの能力が実装されました。
ちなみにまだ能力隠しています。DBDキラーを呼び出す能力に関わっていますが、その能力の全貌が明かされるのは多分もっと先でしょう。
今回は、永遠の悪魔に一瞬とはいえ強い恐怖を植え付けたためばっちり恐怖を回収できました。
力が増えたのでついでに人間にもなれるように。やったねえんてて。
ちなみに女体化させた理由は感想欄で「えんててって女神らしいぜ」と言われたから。どんな感じかはみんなの想像力を使え!

1部アニメ、流石に原作全部までは今年中に出ないと思うので、先に2部のストーリーで書こうと思うのですがどうでしょうか

  • ええやん
  • 1部から順番に書けカス

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。